「あのー感動してる所、悪いんですけどーそれだと俺達、チビの晴れ姿見られないんですか?」
如月が聞いて来る。
「オレ達二人きりだからな。まあ、そうなるな」
すると、一斉にブーイングの嵐。みんな『お祝い位させて欲しい』と言う。そんなみんなを見て、彼女が目を潤ませながら『ありがとう』と久しぶりに自然な笑顔を見せた。
「式、九月十五日予定だよね?」
小笠原が眼鏡を上げながら聞いて来る。
「なまえが十月から警察学校だからな。それを逃すと親父の都合もあって来年の正月か春までは難しくなるんだ」
「正月から結婚式は、来賓が多分困るわねえ」
室長が言う。
「九月頃なら、ガーデンパーティー形式でも良いんじゃないか?」
明智さんが口を開く。
「ガーデンパーティー? 軽い感じにならない? それで叔母さま達、大丈夫かな……」
彼女が、心配そうに言う。
「そうか、そういう配慮もいるんだよな」
明智さんが頷く。
「やっぱ、うぜーな。もうあいつ等は適当にかわそう。なまえ中心で──」
「昴ぅ、そういう訳には行かないよ?」
「ま、昴の気持ちは分かる。が、チビの言う通り。そういうのが、拗れると後々面倒な事になる。そして、そういう場合に一番苦労するのは、夫ではなく大抵妻だ」
明智さんが言う。既婚者にそう言われると(これは真面目に考えねーと)という気にさせられる。『そういえばさ』と室長が彼女に向かって切り出した。
「アンタ、秋月家の方達は? それに阿久津先生とか、みんなアンタの親代わりと思ってるんじゃない? 出席しないって?」
彼女がハッとした顔をした。どうやら忘れていたらしい。
「アンタって、しっかりしてそうで抜けてんのよねえ。みんな待ってるんじゃないの? ちょっと聞いてみなさいよ」
室長に促されて、彼女は電話を掛け始める。
「あ、裕子ちゃん? 僕、あのさ結婚式なんだけど──」
彼女が阿久津先生に掛けてる間に、オレが海司に掛ける。
「海司か? 一柳だけど、今良いか?」
秋月家の予定を聞く。特に海司の両親は海外にいるので出席が可能か聞いてみる。海司は電話の向こうで、でかい声で話す。
「親父もお袋も楽しみにしてますよ。親代わりだから、色々してやりたいって。うちの姉貴達も出る気満々です。特に親父は初めて娘とバージンロード歩くって、張り切ってます」
海司の声が届いたのか、室長が叫ぶように言った。
「言っとくけど親代わりが増えても、チビ助とバージンロードを歩くのは私よ! 秋月父でも譲らないわよーっ!」
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