結局心配してるみんなも一緒に、彼女の話を聞く事にした。
先日実家で楓さんや親戚達と、挨拶を兼ねて食事をした。その際にどういう式にするつもりか、オレは楓さんに話した。その後父さんに呼ばれ一時席を外した事があった。
その間に楓さんが『あなた達の事を反対している訳じゃないわよ? でも、ああは言っても昴のお式を、そんなにこじんまりやる訳にいかないわよねぇ。隆一関係のお客様を全く呼ばないという訳には、いかないんじゃないかしら。ましてや、昴もあなたも警察官なのだし……立場というものもあるでしょう? 男は、尚更ね……。昴にはまだそこら辺の事が、見えてないのね』と心配気に言ったのだそうだ。そして、それに乗じた叔母さん達からも『結納、どうするのかしら。まさか、やらないなんて事、ないわよね?』と聞かれて答えに窮した。彼女は、それをオレに言い出せずに、一人で悩んでたらしい。
「で、レンタル家族か……」
室長が言うと彼女が小さくコクッと頷いた。室長は項垂れたままの彼女の頭をガシガシと撫でてから言った。
「そう。でも、チビ助はそれで良いの? レンタル家族を頼めばその場は凌げるけど。アンタ、昴の婆さんと親戚、騙す事になるわよ?」
彼女は、バッと顔を上げ室長を戸惑った顔で見た。その後で、深く眉間にシワを寄せた。
「やっぱりねえ。そこまでは考えてもなかったか。アンタ、この頃余裕ないしね。何でもいいけど、こーれ。いっつもそんな顔してるとしわが出来て、ブスになるわよ」
そう言って彼女の眉間をビシッと指で弾いた。『あっ、痛っつー』と眉間を撫でる彼女の横で室長が『そうかー……』と考え始める。
「アンタ自身の良さが一番重要で、そんなのどうでも良さそうだけどねえ。でも、婆さんの言うのも一理あるわねえ。現実ってのは、そうシンプルにはいかないものよね……結納は私が親代わりで立ち会えば何とかなるんじゃない? 後は、披露宴か。私達が家族代わりっていっても、上司とか同僚として席に着くと、親族席に座るのがいなくなるか」
「そないにきっちり席分けしなくても、ええんとちゃう?」
「んー僕にも、初めてでよく分かんないけど……とにかく僕のせいで昴が、恥かくと困る」
彼女がまた項垂れた。
「だから、恥なんてかかねえよ。考え過ぎだ」
「んー……」
彼女が眉を下げシュンとする。
「チビー、お祝い事なんだからそんな顔するなよー。俺達も一緒に考えるからさ」
「そうや、なんやええ方法もあるやろ」
如月や藤守が彼女を元気付けようと声を掛ける。
「なまえ、いっそのことさ」
「ん?」
オレを見る彼女に言う。
「いっそのこと、二人きりで結婚式挙げるか?」
「え?」
「それでお前が笑ってられるなら、それが一番良い。オレは、お前にそんな顔させたくて式をしたいんじゃねー。オレはな、お前さえいれば、十分なんだよ」
「昴……」
.