オレの肩に顎を乗せ彼女がかみしめるように言う。
「だって、またこうしていられるから……寂しかったよ」
その言葉に、オレも彼女の背に腕をまわし抱きしめ返した。
「ん」
「昴がね、恋しかった。……一人でベッドに寝てると、寝ぼけて隣に昴を探しちゃって。だけど、いないからさ、そこで目が覚めて、もう……眠れないんだ」
「それでソファーで寝てたのか?」
「ん……帰りたくって、帰りたくって、仕方なかった。僕やっぱりもう、一人じゃダメだ。えへへ……弱虫でおかしいだろ?」
「オレもだ。夜中に何度も目が覚めた」
「そっか。一緒か」
「ん」
オレは彼女の肩口に顔を伏せた。彼女の匂いにホッとしてそれだけで癒されてく。
「あーこうしてくっついてると安らぐ。僕、やっと帰れたんだな。ふふ……嬉しいな。ただいま、昴」
「おかえり」
「こうしてると幸せ……ね?」
そう言って『ふふ』っと笑う彼女の声を聞きながら、オレも同じように幸せを感じてた。
それからベッドに横になり恋人繋ぎで手を繋いで、二人で他愛もない話をした。
たったそれだけの事が楽しくて、嬉しくて、仕方なかった。
時折彼女の存在を確かめるように、柔らかい頬にちゅっとキスをしては、じゃれ合った。
戯れると、風呂上がりに塗ってやった桃のボディローションがふわっと香った。二人で申し合わせたように『はぁー。良い香り』とハモってしまい、絶妙なタイミングにどちらともなく笑い合う。
暫くするとやっぱり彼女は、疲れていたようで寝息を立て始めた。
そっと引き寄せて眠る彼女に『おやすみ』とキスを落とし目蓋を閉じた。
その夜、隣に感じる彼女の寝息とぬくもりに安心したのか、久しぶりに朝までぐっすりと眠った──。
25。へ続く。
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