「んー? ケーキ見に来ただけだろ? あ、ケーキじゃなくてゼリーとプリンか。このゼリー、キレイだな。なまえが、好きそうだ。食べさせてやろうか?」
「え? だ、だから、す、昴ぅー」
オレの肩越しに、小笠原をチラッと見てますます恥ずかしそうになり、困ったような顔になった。そして、オレだけに聞こえる位のすごく微かな声で言った。
「昴ぅー意地悪しないでよぉ。恥ずかしーよ。……お願い」
頬を染め、黒い瞳でじっと上目遣いに見つめられる。マズい。オレは、この顔でお願いされると弱い。しかもこの密着での[お願い]は理性が飛びそうだ。さすがにそれはマズい。今度はオレが焦る羽目になった。
「なまえ、揃ったらすぐ食べられるように、みんなにお茶入れとくか? な? そうしよう。おいで」
『え?』と急な提案に状況が把握出来ずに戸惑う彼女の腕を取り、給湯室に引き摺り気味に慌てて引っ張ってく。
給湯室に入るなり、オレを見上げて何かを言い掛けた彼女の唇をやや強引気味に塞ぐ。彼女は、オレからキスされながらモゴモゴと言う。一旦、唇を離し彼女を見ると目をパチパチさせていた。
(驚く顔も可愛いな。ぜってー誰にも渡さねー)
「す、昴? な、何? どうし──っん……」
また強引に噛み付くように激しく唇を重ねる。
いきなりの激しい口づけに、彼女はオレの胸に手を突っ張り唇を離す。
「ど、どうしたの? 突然。職場でこんなの、ダメ」
「我慢出来ねーんだよ。いいから、大人しくされてろ」
「え? ちょっ……落ち着いてよ。ひ、人が来るって」
軽く押し問答になり、彼女の手を押さえ強引に唇を重ね、深く濃厚にディープなキスで彼女を翻弄する。彼女は『ン……フゥン……』と鼻に抜けるような吐息交じりの声を微かに漏らしながら、それでも逃れようとする。唇が離れ『ダメだったら』と流しの方に向いて、オレに背を向けた。オレは、後ろから腰に手を回し彼女の肩越しに『なあ、良いだろ?』と囁きながら、キスを再開しようとした。
その時だった──。
「ひっ! イ、イヤーーッ!」
彼女がビクッと跳ねるように震え、短く叫ぶ。
意外な反応にオレは『はぁ?』っと思わず声を漏らす。ちょっとショックだった。
が、すぐそんな事気にしてられなくなった。彼女の様子がおかしい。腰が抜けたのか、ガクッと足から力が抜け崩れ落ちそうになる。腕にぐっと力を入れて彼女を支えた。
「なまえ? 大丈夫か?」
プルプルと小さく震えながら『う、うん』と返事をするが、顔色が真っ青だ。
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