そう脅かすと、焦って『や、やだ。本当は、怖いです……』と本音を言った。
「やっぱり、な。だからオレがキレイに洗ってやるよ」
(さてと、早く洗ってやらねーと)
そう思いサッサと服を脱ぎ裸になると、彼女の手を引いて浴室へ。
いつもよりも、念入りに髪や身体を洗ってやる。自分の身体をクンクンと嗅いだ後で髪を引っ張り『もう、臭くない?』と気にする彼女。また思い出したのか、ブルッと震え彼女の肌に鳥肌が立つ。
「ん、もうキレイだし臭いもしねーけど、お前が気になるなら、もう一回洗ってやるよ」
もう一度泡立てて丁寧に洗ってやり、最後に肌の臭いを嗅いで『ほら、もう石鹸の良い香りしかしねーよ。クンクンしてみ』
自分でもクンクンしてみて、臭いが取れたのが分かるとやっとホッとしたように力が抜け、漸くリラックスしたようだった。恐らくは無意識だと思うが、現場からずっと彼女は緊張し全身を強張らせていた。何とかしてやりたかったから、オレも内心ホッとした。
「本当に、お前は無理ばっかしやがって」
おでこをコツンと軽くこずく。
「お前、かなり怖かったんだろ? 泣きそうだったもんな。無理してんの、すぐ分かった」
「……だってぇ」
「仕事だから仕方ないつーんだろ。お前の言いそうな事も、分かってるよ」
そう言って抱きしめてやる。
「もう、怖くねぇ? 怖くなったらな、こうやってぎゅってしてやるから、我慢しねーで言うんだぞ? 夜も怖くないように抱っこして寝てやるよ。なまえ……頑張ったな。偉かったぞ」
そうやって褒めてやる。
「ねぇ、それダメ……」
「ん?」
「僕、我慢出来なくて……泣いちゃうよ」
見ればまた泣きそうになり、それを堪えようと唇を噛む彼女。
「良いよ。オレしかいねーし。もう我慢しないで、泣いても良いんだ」
抱きしめながら優しく言ってやると、彼女はぐしゅぐしゅとほんの短い間、オレの腕の中で泣いた。
(いくら仕事と割り切って我慢してても、怖がりの彼女にはやっぱり相当キツい仕事だった筈だ。それをやって退けたんだから、本当に頑張ったよな……)
背中をポンポンとあやしながら、そう思っていた。
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