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オレ達が戻る頃には明智さんも帰って来てた。
彼女が捜査室に入ると小笠原が『うっ……。何? 臭いっ!』と言ってハンカチで鼻と口を押さえながら引きつった。明智さんは明智さんで、臭いと様子から何があったかを逸早く察知した。恐縮して焦る彼女に『チビ、慌てなくて良い。ゆっくり用意してお風呂に行って来い』と声を掛け、小笠原に『後で事情を説明してやる。少し我慢しろ』と言った。
そのやり取りの間にオレはお着替えコーナーに行き、着替え一式とタオル、シャンプーやボディソープの用意を整える。
そこへ室長が遅れて帰って来た。手にした紙袋を彼女に差し出す。小首を傾げる彼女。
「着替えよ。着替え。さっき言ったでしょ。これあげるから、今着てるのは、もうポイしちゃいなさい。あっ、でも下着は入って無いわよ」
「下着はもう用意しましたから、ご心配なく」
「あら、昴はさすがチビバカだけあって素早いわね。あー、もうこんな時間か……風呂使って、野郎と鉢合わせも困るわねえ。昴、アンタ、一緒に行ってやんなさい」
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風呂場に行くと使用中の札を下げ、一緒に中に入り鍵を掛ける。
「あの、僕一人でも大丈夫だよ? すごく臭いし……気持ち悪いでしょ? 急ぐから、表で待ってて?」
おずおずとオレから距離を取り言う。
「バァカ、何、余計な心配してんだ。こっち来い」
彼女を引っ張り、いつものようにパッパとシャツのボタンを外してあっという間に下着姿にまでひんむく。脱がした服を透明なゴミ袋に入れる。
下着は別の袋に入れた。これは、下手にそこらに棄てるワケにいかねー。男装用下着と分かったらなまえのとバレる。こんなのしてるのは、警視庁じゃ彼女位なもんだろう。
「下着はうちのゴミと一緒に出すか……」
独り言を呟くと、彼女が『ナベシャツもいっちゃった?』と聞く。
「ああ、シミになったな。さすがに、オレもこれをシミ抜きするのは嫌だ。つーか、うちの洗濯機に入れたくねー。新しいの買ってやるから諦めろ」
『ん』とちょっと、しょんぼりする彼女。
「服のままじゃオレも、濡れるな。いっそ一緒に入るか」
「え? 大丈夫? 警視庁の中だよ。ヤバくない?」
「鍵、掛けたし大丈夫だろ。それにお前、本当はまだ怖いんだろ? 夜のこんな時間に、一人じゃ落ち着いて洗ってられねーだろが? ん? ……図星だろ。素直になんねーと今晩、一人で寝かすぞ」
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