机の上にも数本カロリー*ートの空缶。使ってないソファーの側に、小さいかごに洗濯物と思われる衣類がひとまとめにされ、ソファーの背にはネクタイとスーツが無造作に掛けられていたが、思うより散らかってない。
(昔のなまえの部屋と比べると、かなりキレイにしてる。進歩してるということか。しかし……)
「なまえー、カロリー*ートばっかじゃねーか。飯食わないとダメだろ? そこに肌掛けがあるって事はお前、いつもソファーで寝てんの?」
「ここがいいの」
「ソファーが? あっパンツ落ちてる!」
「えっ?! そんな筈──」
そう言うと彼女は焦ったようにガバッと起き上がって、確認の為に振り向いた。
「つーかまーえた!」
「わっ!」
オレの予想通りの行動を、してくれる彼女をすかさず掴まえる。
「あー! 騙したんだ! ズルぅーい」
「こうでもしねーと顔も見られねーだろ」
『むぅー』と口を少し尖らせる彼女に言うと、少し俯きがちになったが顔は何となく見えた。やっぱり眼帯をしている。
数日ぶりに見る彼女は顔色も悪く、昼間聞いた通りげっそりしてた。
彼女の隣に座り、抱き上げて向かい合わせに膝の上に乗せる。思った通り彼女は、少し軽くなったみたいだった。切ない気持ちで頬を撫で、眼帯を外す。『あっ!』と慌てる彼女。アザは目を中心に結構な大きさで、痛々しかった。青黒く少し黄色がかって来てるアザをそっと指で触れた。
「痛てーか?」
「大丈夫」
「また左か。病院に行って検査した?」
「ううん……時間なくて行ってない」
「バカ、ダメだろ?」
「だってぇ……本当に時間ないんだもん」
そう言って拗ねたように膨れた。
たった数日でこんなにボロボロになった彼女を見ればどれだけ大変だったか、そしてきっと必死で頑張っただろう事が伺えた。
「なまえ、頑張ったな」
頭を撫でてやると彼女の顔が歪んだ。
「ダメ。今そんな事言ったら──」
「いいよ。泣いても」
「泣かないもん! まだ、終わってない。今は、泣く時じゃないんだもん。でも……抱っこ」
そう言ってオレに抱き付く彼女を抱きくるんでやった。
「なぁ、なまえ。オレの事信じてる?」
「うん」
「何があっても信じていられるか?」
「……うん。いられる」
「なら、約束だ。この先何があってもオレを信じぬけ。どんな事があってもだ。約束出来るな?」
身体から離し目を見て言うと、彼女もじっとオレの目を見つめた。詳しい説明は、今は出来ない。彼女はこっくりと頷いた。
「うん出来るよ。何があっても昴を信じてるから」
『ありがとう』と彼女をもう一度抱きしめる。
「忘れるな。オレが愛する女はお前だけだ。抱きたい女もお前だけ……愛してるよ」
「僕も昴を愛してる」
そう言って彼女はオレの身体をぎゅっと抱きしめ返した。
連れて帰りたいのを堪えて、一人帰宅する。
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