ついでに、教会や神社、式場を幾つか見てまわった。
さすがに疲れた様子の彼女に声を掛ける。
「大丈夫か? 疲れた?」
「うん、ちょっと。なんだか気負っちゃってやけに緊張してさ……」
「じゃあ、ご飯食べて帰ろう。何食べたい?」
お腹が空いてたのか、オレがそう言うと心なしか目が輝いた。そんな彼女にクスッと笑い『ここらへんなら、おすすめは──』いくつか候補をあげると彼女が『どれも美味しそう』と迷う。
「ねぇ昴が選んでエスコートして?」
「りょーかい。では姫、お手をどーぞ」
オレの手に重ねるように差し出された彼女の手を取り、食事に向かった。
● ○ ● ○
食事を済ませ帰宅して風呂から上がり、ミルクティーと珈琲を淹れてソファーに行く。
彼女がパンフレットをバッグに詰めていた。
「ミルクティーでいいか?」
「うん、ありがと」
「それ、室長? 持ってて見せるのか?」
「ん、さっき都内から移動したから、居場所の報告入れたらね『パンフレットもらったら、お父さんにも見せなさいよ』って。気になるみたいだよ」
室長の声真似付きで、説明してくれる。
『ふぅーん、そっか』と、聞きながら珈琲を口に運ぶと彼女が、じっとオレを見る。
「ん? どうした?」
「あのさ、もしかしてこういうの窮屈……ってか、うざくてヤダ?」
「うん?」
「みんな僕の家族がわりって思ってるからさ、色々心配でその……」
「ああ? みんなが口出すのが、嫌じゃねーかって?」
「う、うん。僕からしたら有難いけど、昴は立場が違うし……嫌かなってさ」
「フッ、心配になったんだ? 安心しろよ。大丈夫だ。嫌じゃねーよ。オレもありがてーなと思ってる。……それにオレの親戚のが、よっぽどウゼー」
親戚連中は祖母さんと父さんが、賛成と聞いて表立って反対しなくなった。それでもまだ、彼女の家柄やステータスが気に入らないみてーで、色々仕掛けて来る。大した用もねーのに彼女に電話を掛けて寄越してネチネチ言ったり、彼女一人の休暇を狙ったように突然呼び出し買い物に付き合わせ、荷物持ちをさせた事さえある。頭に来て、文句を言ってやろうとしたら『今から、波風を立てない方が良いよ。僕は大丈夫。それに会う機会がある方が、僕を知ってもえるかも知れないよ』と笑って止められた。彼女はそんな風に鬱陶しいオレの親戚共に、嫌な顔もせず根気よく相手をしてくれている。彼女の頑張りに頭が下がる思いだ。
(本当に、あの連中と来たら……)
思い出し、思わず顔をしかめる。すると、彼女が小さくフフっと笑う。そんな彼女にオレは『んん?』と片眉を上げた。
彼女は、オレにそっと手を伸ばして、眉間に酔ったシワを伸ばすように擦る。
「ほーら、そんな眉間にシワ寄せないの」
それから頬まで手を下ろすと愛し気に両頬を包み、オレを見つめる。
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