緊張がとけたのか、旨そうな顔でケーキを食べ始めてる彼女に聞いてみる。
「じゃあ、デザイン画、描いてもらってオーダーするか? そしたらオレ達だけのリングになるし、お前の希望も叶えられるだろ?」
「デザイン描いてもらうってフルオーダーって事? お高いんじゃない? ……セミオーダー位にしとかない?」
「でも結婚指輪は、ずっとするもんだろう? 何度も買うものじゃねーし。気に入ったのが良いだろ」
「そっか、じゃあ婚約指輪はお手頃なのにしてさ、結婚指輪はそうしようよ」
「ハッハハ。お前は、欲がねぇーな。ところで婚約指輪のお返し、何でも良いの?」
「え? 良いよ。何か欲しいのあるの?」
「ん、それも揃いにしない? ……お前と揃いのもん、持ちてー」
ちょっと恥ずかしかったが、ボソッと本音を付け加えて言うと彼女は、また嬉しそうにふわりと微笑んで言った。
「うん。僕もお揃い持ちたい」
二人揃いのものを探す事にした。
「なぁ、指輪をオリジナルにするならドレスもオリジナルにしねぇ?」
「え? オリジナルってもしかしてオーダー? た、高いよ。ダメ」
「ふふ。そう言うと思った。オーダーじゃなくて、こういう手作りドレス」
オレは手作りドレスのサイトを開き、彼女にスマホを渡す。
「手作りウェディングドレスぅ? え? ウェディングドレス作っちゃうの?」
彼女はスマホの画面を見て『本当だ』と驚きの声をあげた。
「オリジナルで出来るし費用も抑えられる。作り方の講習をしてる所もあるぞ。3Wayでも作れるらしい。良いんじゃないか?」
「ふぅーん。お安く出来てオリジナルかぁ。頑張れば、お得に出来て、ドレスも手元に残るんだぁ……」
彼女がちょっと夢を見るようなポワンとした顔になる。それから、えらく張り切った声を出した。
「よし、それでいこう。僕、頑張るよ。デザインは、一緒に考えてくれるでしょ?」
「つーか縫うのもやってやる」
「でもぉ、大変じゃん。そりゃ僕、下手だけど頑張るよ?」
「ん? お前の事だから頑張るのは想像つくよ。あのさ、前にジンクスの話したろ? あれからオレもちょっと調べたんだ。そしたらな[欧米では、花嫁が一人でウェディングドレスを作って着ると不幸になる]ってジンクスがあるんだと」
「えっ? 不幸に? それは、やだなあ……」
「だから、お前一人で作ったらダメなんだよ。一緒に作ろ?」
「良いの?」
「ああ、お前に似合うドレスを作れるなんて楽しみだ」
「僕の出来なさ加減にイライラするかもよ? ストレスたまるかも……」
「んー指、刺しそうでハラハラするかもな。でも二人で一緒に、そういう過程も楽しもう」
「うん、昴、色々ありがとう。一緒に頑張ろね」
ふわっと微笑む彼女に頷きお茶の後、彼女と宝石店に戻った。
打ち合わせをしてデザイン画を幾つか描いてもらった。彼女が迷ってるようなので、後日また打ち合わせに来る事にして店を後にする。
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