感心していると、彼女はハッとして恥ずかしそうに『なんか貧乏くさい事、言っちゃった。そういうの、昴に似合わないね。ごめん……』とバツが悪そうに赤くなった。
オレが黙ってたんで、勘違いしたらしい。
「何で? 謝る事ないだろ。オレの奥さんはしっかり者で、素敵な奥さんって事だろ? 良い事じゃねーか……」
抱きしめると彼女は、腕の中で『ふふっ』と照れて笑い『ありがとう』と言った。
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休暇を交代してもらい調整して休み、二人で銀座の宝石店に出向いた。
父さんの知り合いの店で、亡くなった母も買う時はここを利用していたと聞いている。叔母達は今も贔にしているらしい。
挨拶をされ二人で、見せてもらう。ふと気付くと彼女の様子がヘンだった。入る時『僕、宝石店って初めて。今まで縁がなくて。ちょっと緊張しちゃうな』と小さな声で言ってたが、緊張の為か動きがロボットみたいに不自然で、顔も少し無表情だ。なのに目は、落ち着きなくきょときょとしている。
「どうした?」
「あ、あの、先にカフェでお茶しない?」
「ん? 喉渇いた?」
そう聞くと頷く彼女。少し離れて控えていた女子店員にお茶をしてから、もう一度来る旨を伝えると感じ好くこの近くの[ケーキと珈琲の美味しい店]を教えてくれた。店に着くと『喉がカラカラ』と言う彼女にとりあえず先にアイスティーを頼み、アイスティーが来た時に追加でケーキと珈琲を頼んだ。彼女は本当に喉が渇いていたようで『先に飲んで良い?』と聞き頷くと、スゴい勢いであっという間に飲み終え『ふぅーー』と息をついた。彼女の為に、おかわりの飲み物を追加注文して、ふと見ると目が合った。彼女は『ははは……』とお愛想的に小さく笑い、視線をさ迷わせた。
「ん? 何だ。言いたい事があるんじゃねーか? 遠慮せず言ってみな」
優しく促すとおずおずと口を開く彼女。
「あの、婚約指輪って普段しないものなのかな? 大事にしまって置くの?」
「んーどうかな。着けたかったら普段はめても良いんじゃないかな」
『あの……』と彼女は口ごもり、言って良いのか逡巡してるように見えた。
「何でも言って良んだぞ。遠慮しなくていいからな」
「出来たら……普段着けたいなって思って。せっかくもらったのに、しまって置いて指を通さないのも、残念ていうか……」
「んーオレも、お前が気に入って着けてくれるなら、きっと嬉しいと思うよ。その為にも、お前の気に入ったのを贈りたい。だからサプライズを諦めて、一緒に見に来たんだ」
「あのね、普段着けるにしては……さっき見た指輪の数々は、お高過ぎるんじゃないかな」
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