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● ○ ● ○ 支度をして、彼女に声をかける。「支度は出来ましたか?」「ええ、どうかしら?」 多分、不自然でないかと聞いてるんだろう。 壁に耳あり──の諺にもあるように、秘密はどこから漏れるか分からない。秘密がバレる事は、すなわちマルタイ達が危険になり失敗を意味する。 ここは慎重に成らざるを得ない。用心し過ぎる事はない。 いつものようにお互いの名を呼ばず、彼女は既にマルタイを真似始めている。 言葉使い、抑揚、特徴や癖、きっと疲れ無いワケがない。 セレブのお嬢様の婚約者らしく、オレも上品な口調を心掛ける。「ええ、大丈夫ですよ。今夜の君も美しい。マスクを貸してごらん。私がやってあげるよ」「あら、ありがとう。貴方は? 貸して。わたくしが、着けてさしあげてよ?」「それは、ありがとう」「まあ貴方、とても素敵よ。そのファントムの様な衣装も、銀と黒のハーフベネチアンマスクも、よく似合っていてよ。ふふ……マスクをしていても、見惚れてしまうわね」「これはこれは……姫にお褒めいただけるとは、光栄ですね。君もマスクをしていても、とても美しいよ」「あら、ふふ……ありがとう」「姫」 緊張で冷たくなってる手を握り、引き寄せ抱きしめると彼女の耳元で囁く。 「大丈夫、オレがずっとついてる。必ず守ってやる。お前もがんばれ……」 少し離し、見つめてから顔を傾け近付ける。「……おまじないだ」 彼女の唇に、唇を重ねた。唇を離すと微笑み合う。「……さ、姫、お手をどうぞ」 彼女が差し出した手を取ると会場まで、エスコートする。 ● ○ ● ○ パーティーは盛況なようでそこかしこで、談笑する声が聞こえる。 マスクをしていても、その背格好や雰囲気からマルタイと判断して話し掛けて来る人物達を、彼女はマルタイの振りでそつなく相手をしている。「御父様は、お元気かな?」「はい、おかげさまで。元気にしておりますわ」 年輩の男に微笑み返事を返すと、若い男が言う。「君はマスクをしていても、相変わらず美しいね」「あら……お上手ですこと」 別の老紳士が、オレに視線を向け彼女に聞く。「そちらの方は、どなたですかな?」「こちらの方は、わたくしのフィアンセですの」 彼女が微笑みながら答えるのに合わせ、オレは軽く会釈した。「おお、それはそれは……」「ご結婚はいつ頃ですか?」「もう少し先ですわ。また改めて、ご紹介致します……」「そうですな、今宵はシークレットパーティーだ。またの機会を、楽しみにする事にしよう」「この次は、是非……貴女のハートを射止めたこのラッキーな方を、ご紹介して欲しいですね」
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