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● ○ ● ○ 二人でみんなに飲み物を配り、彼女が神津にも渡す。「はいよ」「ああ、サンキ……あっ」 ちょっと驚く神津。「ん? 違ったか?」 神津は『いや、ありがとう』とゴクッと一口飲んで、また驚いた顔になった。「この味……覚えてたのか?」「ああ。その位は、な」「え? 何、何? 何の話? あれー? 珈琲じゃなーい。珈琲って言ったのに、何でー?」 如月が、騒ぎながら目ざとくカップの中身に気が付く。彼女が説明する。「ああ。こいつ、イメージでブラック飲むように思われんだけど、実はカフェオレのが好きだったんだ。だからカフェオレにした」「じゃあ、今の会話は?」「大した事じゃないよ。こいつの好みで淹れただけ」「好み?」「温めたミルクをカップに半分。そこに少し濃い目の珈琲を入れて砂糖は小さじ一杯、六グラム……スティックシュガーなら二本分、だったろ?」「ああ、相変わらず旨い。……サンキュー」 それを見ながらオレは、なんとなく給湯室での事を思い出していた。 彼女は、まるで体が覚えてるように自然な動作で、ヤツのカフェオレを淹れた。 そんな風にヤツの為にするのは、正直どうか? と言えばやっぱりおもしろくねーし、多少はズキッとしなくもねー。でも……。(きっと、なまえの事だからヤツの好みを覚えてしまう程、繰り返し淹れてやったんだろうな。そんな男に見棄てられて、スゲー傷付いたに違いない) ……とも考えてしまい、自分の事のように胸が痛んだ。そんな思いで見つめるオレの視線に、彼女が気付いた。ハッとしてカップとオレを交互に見ておろおろし始めた。眉を八の字にし、目を泳がせ泣きそうな顔で困ってる。そんな彼女を見た時思った。(アレは、ヤツのだからと特別、なんて意味合いは多分ねーな。本当に無意識に、何気なくって所か……)「す、昴ぅ。あの──」 心配気な顔で言い掛けた彼女を責める気にはなれず、言い訳をさせる前に『大丈夫だ。分かってるから』と遮り頭を撫でてやった。「なんか美味しそうだなー。喫茶店のやつみたいだなー」「ええなぁ……」「確かに、美味しそうだ」「うん、美味しそう」 如月から始まって藤守、明智さん、小笠原までがそう言って神津のカップをじっと見た。如月が子供のように騒ぎ出す。「俺も飲みたーい!!」「え? じゃあ、淹れ直そうか?」 彼女が言うと藤守が反応し聞いた。みんなもパッと彼女を見る。「えっ? ええの?」「ふふ……構わないけど」「ちょっとアンタ達、これだってチビ助が、せっかく淹れたのよ? わがまま言わないで、ちゃんと飲みなさい。後は、お昼のお茶の時にしなさいよ。それに、進まないでしょ! さっきの続き始めるわよ」「はいっ」 室長にみんなで、返事をしてさっきの続きを、再開する。「そうだ。パーティーは時期的な事があんのか、仮面舞踏会パーティーなんだそうだ」 神津が思い出したように言う。「じゃあ、マスカレードマスクを着けるんだな。……ならメイクとウィッグで、だいぶ似せられるな」 オレが言うと、明智さんが写真を見ながら神津に確認する。
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