ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
男はすぐに気付いてオレに言った。「アンタも……悪かったよ。こいつ、こんなナリだし……男がいるなんて考えもしなかった。……すまん。……なまえも、俺が悪かったから。泣くなって」「ああ? てめー! 思い切り女の面殴って泣かしといて、勝手な事言うんじゃねーっ!!」 オレが怒鳴り付けると、男は後ろ頭を掻きながら『うん』と納得するように漏らしてから言った。「……だよな。俺が泣かしたんだもんな……。叩くつもりはなかったんだけどよ。本当、すまん。反省してるよ」 申し訳ないと彼女に向かって頭を深く下げ謝った。「アンタ、誰だか知らないけど……本当に、何の用なの? うちの娘に暴力ふるって、おまけに悔し泣きさせるなんて……。この子はね、滅多矢鱈に泣く子じゃないのよ! それがこれだけ悔しがるなんて、普通じゃないわ。アンタ、……他にもなんか、この子にしたわね?」 室長が腕を組みジロリと鋭く睨み付けて、男に言った。室長も、だいぶ頭に来てるようだ。その声に男がまた頭を下げて謝った。「あー、突然騒ぎ起こしてすまねー……」「あー! どっかで見た事あると思ったらアンタ、あん時のヤツじゃないかっ! 今更、こいつに何の用だよ! こいつにあんな、ひでー事しといて よく、のこのこと……どういう神経してんだよ!」 顔を上げた男をまじまじと見て海司が、真っ赤になって怒り始めた。(ああ? ひでー事だ?……何だ? なまえがこんな風に泣く位の……何があったんだ?)「ん? あ、ああ……アンタ、あん時の兄さんじゃねーか。フッ、相変わらず熱いんだな」 怒る海司と対照的にヤツは怒りなど、気にも止めてない様子で飄々としている。「アンタの人をおちょくった態度も相変わらず変わらねーな」「ああ? そりゃ、悪かったな。俺はガキの頃からこうなんだよ」「……そのズブてぇ、無神経なのも昔からか?」「フン、こりゃまた、随分だなぁ。……ああ、確かにな。無神経だよ。俺は。まだなーんにも知らねーようなガキだったコイツに乗り逃げで、しかも何も言わねーで棄ててったんだ。ヒデーよな。なのに、こんな風に現れてよ。確かに、無神経でズブてー。自覚はしてる。こいつに責められるなら仕方がねー」 海司と言い合う内に、男はさらっと事も無げにとんでもねー彼女の過去を口にする。(乗り逃げで、棄てた、だとっ?! こ、のやろー!!) こんなに軽く言えるという事は、この男の中では[それだけの事]なのかも知れない。 だがその言葉は、オレにとってはドシンと胸に来た。はっきり言って衝撃的だった。オレの中にショックや怒りや嫉妬を生じさせた事に、間違はいない。けれど、オレの中に様々な感情が湧いた丁度その時、腕の中で彼女がビクッと震えた。ヤツの告白に身体を震わせた彼女が、大丈夫なのか心配で気になった。それは諸々のオレの感情を、簡単に上回った。
このサイトの読者登録を行います。 読者登録すると、このユーザーの更新履歴に新しい投稿があったとき、登録したアドレスにメールで通知が送られます。