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「てめぇ! なまえを離せ!」 彼女の悲鳴にハッとして叫んだ。オレの声に、彼女からヤツの注意が一瞬逸れた。その隙に室長と小野瀬さんが、後ろから彼女を奪い助ける。彼女を奪われた事に男が、また気を取られる。その一瞬の隙を逃さずに、男の腹を思い切り蹴った。──ドカッ! ガッ!── オレの蹴りはヤツの腹に入った。が、ヤツのパンチもオレに入り、衝撃で二人して後ろに飛び腰をついた。腕を自慢するだけの事はあるようで、ヤツのパンチにオレの口端が切れ血が滲んだ。 それを見た彼女が、悲鳴のように『いやーっ! 昴ーーっっ!』オレの名を叫ぶ。夢中で室長と小野瀬さんを振り切り、オレの元に駆けて来た。オレを覗き込み『昴、大丈夫?』と聞いて来る。彼女は泣きそうな顔で、青ざめている。 男がオレと彼女を見て言った。「あ? 昴だ? ……誰、お前?」「……てめえ……昴に、俺の……大事な人に、何しやがるっ! バカはそこで待ってろーっ」 彼女は怒り心頭に発し、その場で後ろの男に怒鳴った。怒りで周りの空気が振動したかと錯覚させる程の、迫力があった。「あ? 大事な? ……もしかしてこいつ、お前の今の男?」 男を無視して、ポケットからハンカチを出すとオレの切れた口端をそっと拭い『大丈夫?』と心配気に聞く。『ああ、平気だ』と頷くと、また泣きそうな顔になり『……ごめんね』と言った。 そして、何か──怒りか、あるいは涙か──を堪えるように一旦俯いた。 拳を白くなる程強く握りしめ、スッと立ち上がると男に向かい、低く言葉を絞り出した。「……許せねぇ。てめぇは、本当に、許せねーよ。俺だけならいざ知らず、昴にまで手ー出しやがってっ!! このばかやろーっ!」 ギッ! と目尻を吊り上げ睨み付けると、殴り掛かって行った。 ところが……。──ビュン────パシッ── パンチは軽く手で受けられ、──ヤアッ!──── ヒョイ── 気合いを込めて放った蹴りも、難なく避けられる。その後の攻撃も全て避けられ、見事に歯が立たない。「……ムダだ。見切れてんだ。それじゃ、通じねー。だいたいよ。今日、警視庁からずっと後をつけて来たのに……。お前、全然気が付かなかったろ?」「ああ?」「フンッ、昔と違って……ずいぶんぬるい暮らし、してたんだな」「チッ、るせーっ!!」 彼女が悔しくて仕方ないという顔で、半ばヤケ気味に殴り掛かかって行った。が、やはり軽くいなされ、一発も決まらない。彼女が手を抜いているワケじゃない。むしろ全力に近い。それをもの語るように彼女は、攻撃しながら息を切らし始めた。男は乱れも無く、汗一つ掻いてない。状況を一言で言うなら[格が違う]そんな言葉がぴったりだ。 男は、そんな彼女の後ろ首を掴み、ひょいっと吊し上げた。まるで子猫でも掴むように、いとも簡単に。そうして、覗き見るように目線を合わせる。「ムダだって言っただろう……止めとけ。確かに昔よりは、強くなったみたいだけどな。だが、他ヤツには通じてもオレには赤ん坊、相手にするようなもんだよ」「ちっくしょー!! 離せーぇ! 大事な昴にーぃ! よくもーっ! ゆるせーんっ!」.
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