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──からんころん── カウベルを鳴らして、ドアが開く。その音に視線をやると、男が一人入って来た。ドアの先にある階段の上で、誰かを探すように中を覗いている。マスターが『すみません。今夜は貸し切りなんですよ』と声を掛けると、男は軽く手を上げ『悪い。すぐ済むから……』と、階段を軽い足取りで降りて来る。 この中に知り合いでもいるらしい。オレは飲みながらなんとなく様子を見てた。 カツカツとカウンターの方に行く。なまえの背後まで行き立ち止まった。 彼女はみんながいる安心感からか、人が来た事など気にせず、好きな酒を楽しんでいるようだ。 やって来た男を見て、翼さんと結菜が『わっ! イイ男……』と芸能人でも見たような顔で、思わず漏らした。──別に負ける気はしねーが── 男はなかなかのもんだった。確かに、女が放っておかなそうな野郎だ。ハンサムな顔立ちに無精髭……。それが男を、ワイルドに見せている。スラッとした長身に、黒のスーツをラフにまとい、緩んだネクタイに、無造作な髪型。あまりお洒落とは言い難いが、崩し加減と全体の雰囲気がその男に程好く合っていた。自分の見え方をよく知ってるらしい。ワイルド系で、オレとはタイプは違うが[イイ男]部類に入るだろう。(アイツ、なまえの知り合い? 国枝とかあっちの仲間か? それにしちゃ、歳が上に見えるが……) 翼さん達が漏らした言葉に、何気なく彼女が振り向いた。男を見て『あっ!』と声を上げ、目を見開いたまま固まった。余程驚いたのか、唖然として瞬きすら忘れてるようだった。彼女が手に持ったグラスを落とす。「おっと。危ねーな」 男が素早くスマートにキャッチし、テーブルに置いた。 オレは声を掛けに行くか、ちょっと迷っていた。というのも、昔の音沙汰のなかった仲間が久しぶりに挨拶に来たようにも見えたからだ。そこに割って入るのも、不粋な気がする。そんな事を考えている内に、男は彼女に柔らかく微笑んで話し掛けた。「よっ、久しぶり、だな。元気だったか?」 その声に彼女は答えなかった。いや、答えられなかったと言うべきか。どうやらまだ、驚きから立ち直れ事も出来ずにいるようだった。「フッ、何だよ。そんなに見つめて。相変わらず良い男で見惚れたか? お前も、良い女になったじゃねーか……」 言いながらごくごく自然な動作で、カウンターチェアーに座り固まり続けている彼女を、引っ張り上げた。そして、彼女を腕に抱くと流れるようにスマートに口づけた。 オレと翼さんと結菜は、いきなりのびっくりな展開に、思わず『あーっ!!!』とでかい声を、同時に上げた。オレ達の声に店の奥で酒を飲み、話に興じ盛り上がっていた男達が、見知らぬ男の乱入に漸く気が付く。.
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