料理を見て、翼さんと結菜が声を揃えて言う。
「うわー美味しそう! なまえちゃんありがとう!」
「えへへへぇ。美味しそうだよね。男性陣のテーブルからいっぱい取って来ちゃった」
「でもなまえちゃん、器用ねぇー。片手で二枚なんて高級レストランのウェイター……じゃなくてウェイトレスさんみたい」
「ふふ……いいよ。ウェイターでも。前にフレンチのフロア係のバイトしてた事があるんだ。こうやって持つとさ、片手に二枚持てるの。ほら。で、ここにもう一枚乗せて持つと三枚持てる。三枚になると、ちょっと重いから二枚が楽かな」
二人に持ち方を、教えてやってるらしい。
(便利そうだから、後でオレも教えてもらおう)
「へぇ、練習したら出来るようになるかな」
「うん、翼ちゃんも出来るよ。慣れだよ慣れ」
「そうか、慣れね。でもなまえちゃんは、本当に色んなバイトしてるわねー」
「そうだねぇ。学生時代はバイト生活だったからね、結構色々やってるよ。翼ちゃんは、あんまりしなかったの?」
「うん、うちは父がねーあれやっちゃダメ、これやっちゃっダメって、うるさくて。説得しようにも話も聞いてくれなかったの。だから私、未経験な事が沢山あるわ。けど……経験の差って出るわよねぇ。なまえちゃん、私より若いけどしっかりしてて大人で尊敬しちゃうわ」
「ん? 若いって言っても大して違わないじゃん。でもさ、翼ちゃんはもう立派なママじゃん。すごいよ。僕のが尊敬しちゃうよ」
「ふふ……なまえちゃんに、そう言われると嬉しいわ。そうねぇ……私がちゃんとママやれるのは、誠臣さんのおかげかも。なまえちゃんだって、これから結婚じゃない。案外すぐにママかもよ? でも本当、様になっててカッコ良かったわ。だからついウェイターって言っちゃって」
「あ、翼さんもやっぱりカッコいいって思いました? なまえちゃんがウェイターの制服で料理運んだら、見惚れちゃうかも知れないですよね」
「あー言えてるー。ファンとかつきそうよね!」
「ははは……翼ちゃんも結菜姉もオーバーだなぁ。さ、食べよっか?」
「うんっ! 食べよう。私、お腹なりそう」
「ふふ……結菜ちゃんたら。じゃあ食べよう」
翼さんが言うと、彼女達は元気良く声を合わせて『いただきまーす』とパクパク旨そうな顔で食い『美味しーい♪』と皆で喜んだ。料理に舌鼓を打ち、カクテルを飲みながら会話を弾ませている彼女達は、いつもに増してイキイキしているようだ。楽しそうななまえを見て、フッと頬をゆるめていると藤守が『昴、飲もうや』と酒を持ってやって来た。
(オレも楽しむか)
『おう』と答え、グラスを交わす。その内、桂木さんや他の連中も来て、オレも仲間に囲まれ盛り上がった。
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