十二月に入り、師走というのがぴったりの忙しい時期をむかえ、忘年会シーズンも到来した。オレ達、いつものメンバーも御多分に洩れず、今夜は忘年会を開いている。参加メンバーは、捜査室の連中、桂木班、公安の三人、真壁、翼さんに結菜と結構な大人数だ。なので会場は室長と小野瀬さんのいきつけで、オレ達にもすっかり馴染みになったマスターの店を貸し切りにした。
彼女は忘年会が決まってから『翼ちゃんと結菜姉も来るんだってさ。マスターの店なら美味しい酒とお料理もあるし、いいよね』と今夜を楽しみにしていた。
乾杯が終わると、彼女達が『女子会しよー』とカウンターを陣取る。
男連中は奥のテーブル席に座り、皆それぞれに飲み食いしながら話に花を咲かせている。
ついさっき、彼女が翼さんや結菜の為に料理を取りにテーブルにやって来て『昴も楽しんでね』と微笑んだ。
カウンターからここまでは、そんなに離れてもいない。これなら、もしも彼女が酔っても対処出来るから安心だ。
いつもよりにぎやかな彼女達の楽しむ声が、オレの所まで聞こえて来る。きっと酒が入り程好く、酔いが回っているせいだろう。
「はぁー久しぶりにすごく楽しいー! ね? 結菜ちゃん」
「ふふ……ですねぇ。翼さんや皆さんに会えるし楽しいです」
「それにさ、誠臣さんやみんな一緒だと安心だよね。時間気にしなくて良いし」
「うん、それは言えてますね。私もやっぱり海司が一緒だと安心します。本当に楽しいな。私達も忘年会誘ってもらえるって、嬉しいですよね」
「うんうん。家にいると機会ないからなー。くるみがまだ小さいから、そうそうは遊びに出られないしね……」
「くるみちゃん、今夜は翼さんのご実家ですか?」
「うん、母が『たまには、羽を伸ばして来なさい』って。いつもは文句言いそうな父まで『くるみの事は私がみてるから、お前は安心して行って来なさい。なんならこっちに、お泊まりでも構わんぞ』ってね。もう孫が可愛くて、仕方ないらしいわ」
「そうなんですね。でも、翼さんのお父様の気持ちも分かります。くるみちゃん可愛いですもん」
「ふふ……ありがとう。結菜ちゃん達は? まだなの?」
「ええ、うちはまだ……その内とは、思ってるんですけど」
「そっか、でもまだ新婚さんだしね。二人で楽しむのも良いわよね。出来たら出来たで可愛いけど、やっぱり子育てもそれなり大変だしね」
「ほーい。お料理貰って来たよー」
そんなやり取りの中に、なまえの元気な声が交じる。どうやらあれから、別のテーブルからも料理を確保して来たらしい。彼女はウェイトレスよろしく、器用に両手に四枚もの皿を持っていた。
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