ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どこぞの王子がふと、オレに気が付く。「お客さまでしたね。大変ご無礼を」 そう頭を下げた。隣で姫も頭を下げる。オレも『いえ』と短く答え同じように頭を下げ返す。「なまえくん。お邪魔だろうから、僕達はお庭をゆっくりと拝見させていただくよ」 礼儀も、きちんとわきまえているようだ。悪くない。悪くないが……。「あ、お待ちを。ご紹介致します。こちらは隣国、一柳国の昴王子さま。私の兄のような方です。昴、こちらのご兄妹は──」 なまえが紹介してくれる。挨拶を交わしオレも、一緒にお相手をする事にした。何となく目を離したくなかった。(もしかしたら、なまえのお妃候補かも知れねー) オレはとびきり優しくスマートに振る舞った。(これでオレになびくようならぶち壊してやる。だいたいなまえの兄は大地さまと、このオレだ!) 妙な対抗心と独占欲に燃えひとりそう思った。 ● ○ ● ○ そんな事に気を取られる当時のオレは、もっと大事ななまえの気持ちを見落としていた。いつもなら気付く微かなシグナルに、気付けずにいたんだ。 もしも──あくまで、過程の話だが……。 もしもあの時、ちゃんと見て気付けていたら……もしかすると、二人ともこんなに苦しんで遠回りしたりせずに済んだかも知れない。そう今、思う。 ま、現実はそうはうまく行かなかった可能性もあるが。 何せ、オレがその時のなまえの苦しい心境を知ったのは、もっとずっと後の、結婚し子供も生まれた今なんだ。 ずいぶんと長い間、知らなかった事になる。 なまえからその話を聞かなければ、きっと知る由もなかったんじゃないかと思う。 間抜けな事だ。誰より大事で守りたいひとを、自分で傷付けていたんだから。
このサイトの読者登録を行います。 読者登録すると、このユーザーの更新履歴に新しい投稿があったとき、登録したアドレスにメールで通知が送られます。