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● ○ ● ○ そして大地さまは、当時なまえと一番仲の良かったオレに聞きに来られた。オレと一緒の時もやるなら、常にやっているという事だ。もしそうなら、他にも何か原因があるやもと知れぬと確認に来たのだ。 大人になった今ならばオレもその時の大地さまの心境を察する事が出来る。 ご自分の幼い弟君が愛情不足だなんて事を認めるのは、まだ若い大地さまには相当にお辛い事だったろう。 だが、当時オレはまだ八歳のガキだ。そんな微妙な心境など分かる筈もない。大地さまに聞かれ素直に答えてしまったんだ。「昴、君といる時になまえは指をしゃぶるかい?」「いいえ。僕といる時は指しゃぶりなど、見掛けた事がありません」 そう答えると、大地さまは『そうか』と肩を落とされ『やはり、かまってやらなかった私のせいだな』とご自分を責め、どうしたらいいのかと大層お悩みになられた。 それを知った父さんは、大地さまに『たまには遊びに来ないか』と夕食に招待した。食事を済まし僕となまえが遊ぶ傍らで、大地さまの悩みを聞き『君はよくやっているよ』と声を掛けた。黙って聞いていた母さんが提案した。「真山国の者だけでなく一柳国の者も一緒になって、みんなでなまえちゃんのお世話をしましょうよ。子供はこの世の宝物だもの、ね? なまえちゃんは大丈夫よ。あの明るく優しい二人の子だもの。今はなまえちゃんもまだ小さいし、人との接し方が分からないだけなんじゃないかしら。そんなに心配いらないわよ。だって、こんなに可愛い子よ。きっと、すぐに人気者になるわよ」 あっけらかんと明るく言い、なまえに『ねー』と笑った。なまえは、何だか分からない様子だ。とりあえず母さんを真似て『ねー』と笑った。 その笑顔を見て大地さまが、側に来て涙を溢しながら『なまえ、すまぬ。なまえ……』と繰り返し、ぎゅっとなまえを抱きしめた。 なまえは、大地さまが泣いてるので『だーどーぶ、だーどーぶよー。いーこ、いーこねー』と小さな手で、頭を撫で慰めた。 なまえが泣いた時に大地さまが、そうやって頭を撫であやしてるのを見た事がある。きっとそれを真似たんだ。 大地さまは肩を震わせて男泣きに泣き、母さんはもらい泣きし、父さんは僕にこう聞いた。「そうだな、こんなに優しい子だ。すぐに人気者になるぞ。な? 昴、君もそう思うだろう?」『はい』とは同意したものの、何となくそんなに人気者になるのもイヤな気がして、複雑な心境だった。 とにかく、母さんの提案に僕や父さん、大地さまが賛成した。早速、両城のみんなにも伝え協力を願った。 特に大地さまは『皆にも力を貸して欲しい』と頭をお下げになった。 その真摯なお姿に皆心打たれたらしく、なまえを見ると皆が話し掛けるようになった。 そうして、なまえはひとりぼっちでいる事がなくなって来た。
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