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だけど、カマキリはそうじゃなかった。僕は見てしまった。その時、周りに他のメイド達は居なくて、なまえとカマキリだけだった。なまえは椅子じゃなく床板の上に膝を折って座らされてた。 僕は呆気にとられ、暫く呆然と眺め見てしまった。だってなまえは王子だ。使用人がそんなの、あり得ないじゃないか。 カマキリが前をうろうろしなまえはびくびくと、肩をすくめる。カマキリが『さあ! もう一度!』と大きな声で恫喝する。恐る恐る、口を開くなまえ。「たぁ──」「違う! [た]じゃなく[さ]よ! 全くバカな子。早く言い直しなさい」「しゃ、しゃかな、ちぃか、つゅーぷ、てぇなか、とぉりゃ」 なまえはちゃんと言おうとゆっくり一言、一言、一生懸命に言葉を発した。「違うわよっ! 魚! 鹿! スープ! 背中! 空! でしょ? 何度言ったら分かるのよ! 王子のくせに、言葉もちゃんと喋れないなんて情けない! 貴方は真山国の恥よ」 なまえは、怒鳴られ『ひぃっ』と短く叫び、怖がって怯えた。身を庇うよう縮込めて小さくなった。掴まれそうになり、嫌がって暴れたその腕を、カマキリが無理矢理掴んで“ギューゥウゥ!”とつねった。 それを目にして僕は、カッと頭に来た。「何やってるんだっ!」 僕が怒鳴ると、なまえが『つゅー!』と僕の所に逃げて来ようとした。それをカマキリがなまえの襟首を掴んで邪魔する。 僕の問いには答えず、顎を上げ見下すように僕を見る。「あら、あなたはお隣の昴王子。今、なまえ王子はお勉強の最中なので、お引き取り下さい」 カマキリは王子といえども、所詮は子供だと高を括ってか、すました顔で言った。 なまえはバタバタともがき逃げようとしながら『しゅー、しゅー』と、必死に僕に向かって手を伸ばした。「何をしていると聞いているのだ! 即刻、その手を離せ!」 僕が言うとカマキリはフンと鼻を鳴らした。 僕は王子だ。こんな無礼は許さない! 毅然と胸と声を張り言った。「一柳国の王子に対しその態度、何事かっ! 無礼者! 今一度命じる。その手を離せ! そなた、自分のしている事が分かっておるのだろうな? その手の童子は真山国の王子であるぞ! そなたごときが、その様に触れる事など許されぬわ! ましてや、暴力を働くとは言語道断である! わきまえぬか! このうつけ者がっ!」 大人の言葉は、僕は本を読むのが好きだったから、物語などで知っていた。後は、堂々と毅然に言い放つだけだ。それも、心配ない。僕には格好良いお手本がいる。父さんが、怒った時を真似て声を張りビシッと言い放った。.
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