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大人の童話風 王子物語番外──過ぎゆく季節、重ねた心。──“ペタ、ペタ”“ずる、ずる、ずっ”“ペタ、ペタ、ペタペタ”“ずー、ずる、ずり” 夜、月だけが照らす廊下にそんな音をさせて、小さな影がひとつ。“ペタペタ、ペタ”“ずっ、ずずー” シルクの白いスモックドレス調のナイティに、揃いのシルクのナイトキャップ──サンタ帽子のような形に、先には毛玉飾りが付いている──姿の幼な子は愛らしいが裸足のままで、少し寒そうに見える。 引き摺るように手にした、柔らかそうな白い大きな枕を“ポサッ”と離すと扉の前に寄り、背伸びをして取っ手を掴み開ける。キョロキョロと室内を見るが、お目当ての探し人は居なかった。そうして、また“ペタペタ”と次の部屋、その次部屋へと探しさ迷い歩く。 手にした枕を落とした後も、いつも持ち歩いている大事な、大好きなテディベアの[くー]だけは、ずっと持っていた。だが、幾部屋も探し訪ねる内にいつしかそれさえも、どこかで手放してしまった。 長い廊下をだいぶそうして歩いたが、探し人も見つからない。ふと気が付けば、なかよしの[くー]もいない。 小さな白い人影は途方に暮れたように、廊下の真ん中にぽつんと佇む。首を傾げ何か考えていたが、おもむろに後ろを振り返った。見渡し[くー]を探すが、目の届く所には何もない。暫くそこで、じっと来た方を見ていた。 諦めたのか、また先に“ペタ、ペタ”と進む。足取りはよろよろとして覚束無い。 その身にはいささか重たく感じる幾つもの扉を、開けた疲れのせいだろう。 よろよろ、よちよちしながらそれでも、一歩、また一歩“ペタ、ペタ”と足を進めた。暫く進むと、足が縺れ“ドタッ、ベチッ”と音を立てて転んだ。 むっくりと何とか立ち上がると“ちゅう、ちゅう”と音を立てて、指をしゃぶり始めた。 ぶつけた膝が痛むのか、歩こうとして顔を歪め立ち止まった。一瞬ベソを掻きそうになり目を潤ませた。けれども、何とか堪えて腕でゴシゴシと目を拭いた。 そして、転んだ時に探し人が、いつもしてくれるおまじないを真似て、空いた片手で自分の膝を擦った。 じーっと廊下の先を見ながら“ちゅう、ちゅう”と指をしゃぶり、もう片方の小さな手で膝を“スリスリ”と擦る。膝は赤くなっている。しゃぶった指を口から出すと声の限りに、その名を呼んだ。「しゅーぅうぅぅ!!」 どこか悲痛さが混じる幼な子のその叫び声は、まるで主の代わりに探し人を探すように、薄暗い廊下を駆け抜けて城中に響き渡って行った。
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