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● ○ ● ○ その件の後、なまえは『強くなりたい。先ず体力をつけるのに、早朝ランニングする』と言い出した。一人では、危ないので一緒に走る事にした。それからオレは父さんに頼んで、合気道と空手に通わせてもらった。交渉し、なまえの分は出世払いで必ず払うからと、一緒に通えるようにしてもらった。一、二年経ってから父さんが、警察官になるなら剣道と柔道もやっておくと良いぞと言うので、だいぶ身に付いて来た合気道と空手の日を減らして剣道、柔道も習う事にした。 強くという思いが影響するのか、なまえは服装や振る舞いが男子っぽくなって行った。小さな頃からスカートは、はかなかったが、中学に入っても制服を嫌がり学校ではもっぱらジャージを着用し、普段着も男子のような格好を好んだ。行動もまた然り。絡まれてる女子がいると助けに入った。一人で助けに入り喧嘩になる事も多く、生傷が絶えなかった。そんななまえは学校で不良だの怖いだのと噂され友達が出来ず、オレはそれがちょっとだけ心配だった。だが、助けた子達がなまえを慕い集まるようになり、徐々に仲間は増えて行った。新しい仲間がなまえの周りに増えても、オレ達の関係性は変わらずにいられた。なまえは新しい友達が出来ると、必ずオレに紹介した。そうやって、いつも彼女はオレが疎外せず済むように、さりげなく自分の隣にオレの為の居場所を作って置いてくれた。 ● ○ ● ○ そうこうする内になまえが十四、中学三年になり、オレは十八、高三になった。二人とも進路を決める年だ。なまえは、中卒で働くと言い始め、みんなから『せめて高校は行った方が良い』と説得され、奨学金の申請をして高校を目指す方向に話は進んだ。 問題はオレだった。ハーバード大への留学を迷っていた。そんなオレになまえは言った。「何、悩んでんの? ハーバード行く為に僕と出会う前からスクールに通って準備して来たじゃん。あんなに努力してムダにする気? 一柳のおじちゃんだって、応援してるよ。成果も出さず諦めるつもり?」「…………」「らしくない。僕の知ってる一柳昴は目標があるなら黙々と人知れず努力して成し遂げる、そんな男だよ。がむしゃらにやってさ、留学行って来なよ。昴お兄ちゃん」「じゃあ、さ……確か十二月中旬から一月下旬までと、五月中旬から八月下旬まで休みがあるから戻って来るよ」「クスッ。それこそ、昴お兄ちゃんらしくねーじゃん。行く前からそんなハンパでどうすんのさ。それじゃ身につかねーだろ? フフ……僕が言うまでもなく分かってるくせに。その長期休暇はフィールドワークやインターンシップとかに当てるもんなんだろ? 行くならとことん勉強してさ、ちゃんとものにして来てよ。んで、すげー成績残して胸張って帰って来なよ。それには、先ずはハーバードの狭き門を無事突破しないとね」「お前、……寂しくねーのかよ?」 分かり切った事を聞くオレを見てなまえは一旦黙ると姿勢を変えた。ベッドに腰掛けたまま片足を上げ、立てた膝の上で頬杖をついて『ふふ……』と笑い出す。オレはソファーから立ち上がり『何で笑うんだよ』となまえの隣に移動した。なまえは軽めの口調で言った。
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