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開けた窓から気持ち良い風が吹き込んで来た。風は、お花の香りがした。甘いお花の香りは、お母さんの香りに似ていた。僕は、目を閉じて胸いっぱいに吸い込んだ。何だか傍にお母さんがいるみたいな気がして、久しぶりに楽しくなった。 すると、運転手さんが僕に聞いた。「昴坊っちゃん、この先に公園があるみたいですよ。お腹が大丈夫なら、少し寄って行きますか?」「お腹は大丈夫だけど……良いの?」「はい。少しだけなら。だけど公園の中だけですよ? 公園の外に出て、遠くに行ったりしちゃダメです。約束出来ますか?」「うん、約束するよ」 公園はひかり公園といい、結構広いみたいだった。入り口を入ると樹がいっぱいあって、運転手さんが『これは桜の樹ですね。惜しかったですね。もう少し早く知っていれば、今年も見られたのに。こんなに立派な並木なら、桜の時期に来たらきっと綺麗ですよ』と教えてくれた。「ねぇ、ここは僕の家から遠いの?」 僕が聞くと運転手さんは『うーん』と考えてから答えた。「そうですねぇ。大人なら歩いても来られそうな距離ですが、昴坊っちゃん位の子供が歩くには、ちょっと遠いですね。さっき、入り口の近くにバス停があったでしょ? あれが昴坊っちゃんのお家の近くまで、走っているようですから、あれに乗れば直ぐですよ。昴坊っちゃん、また来てみたいですか? それなら私が車で、お連れしますよ?」「うん! また来たい」「じゃあ今度はトメさんに頼んで、お弁当を作ってもらいましょうか?」「お弁当か。ピクニックみたいで楽しそうだね」 話しながら楽しみで笑顔になった。 樹のアーチがあってそこを行くと、今度は遊具がある所に出た。公園には大人の男の人が一人と、子供が一人いた。男の人がこちらに背を向けていて、丁度子供を肩車をする所だった。肩車された子供は『うわぁーたかーい。僕、肩車初めて! スゴい、スゴい』と嬉しそうにはしゃいだ声をあげた。(肩車か。僕も、お父さんにしてもらったの、もうずいぶん前だ。良いなー) そんな風に思い眺めていると、大人がその子に聞いた。「大丈夫かい? 怖くない? ちゃーんと掴まっているんだよ?」「うんっ!」 僕は、耳を疑った。(今の、お父さんの声だ! 嘘でしょう? 何で、お父さんがいるんだ? お父さんは、お仕事してる筈だ。公園で、なんで知らない子を肩車してるの? そんなワケない!) 信じられない気持ちでじーっと見つめると、子供がこちらを向いて目が合った。その男の子は僕を見ると『あっ!』と言って、何故か驚いた。『どうかしたかい?』と父さんが振り向きそうになった。僕は、周りを眺めていた運転手さんの腕を掴み『行こう!』と言って、来た道を駆け戻った。後ろで『あっ! お兄ちゃん、待ってぇ!』と叫ぶ声がしたが止まらなかった。急いで車に乗り込むと、運転手さんは心配そうに『何かありましたか?』と聞いた。『ううん。何も無いよ。お腹空いたから早く帰ろう』と言って窓の外を見た。
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