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その日そこを通ったのは、学校に迎えに来た運転手さんの車で新しく増やした習い事の教室へ行った帰り道の事だった。 僕はお父さんの勧めでハーバード大に留学する為のスクールや、他にもいろんな習い事をやっている。お父さんは言った。「良いかい? 昴。今は色んな事をやってみなさい。それで、君が得意と思う事や好きな事、これは良いと思うものが見つかったら、それを一生懸命やりなさい。いつかきっと君の役に立つ筈だ」「はい、お父さん」 どうせ、学校を終えてすぐ帰ってもトメや他の使用人達がいるだけだ。お父さんはいつも、いつも、忙しい。それに、お母さんも……もう、いない。 お父さんは、警察官でお母さんが生きている頃から忙しかった。僕が起きている時間には、めったに帰って来ない。 お母さんが生きてる頃は、通っていたのはハーバード向けのスクールだけだった。習い事の日以外は、いつもホームルームが終わるとすぐに帰宅した。迎えの車に乗り帰宅すると僕は、お母さんの部屋に急いだ。そんな僕をお母さんは、笑顔で迎えて抱きしめてくれた。それから僕の話すその日の出来事を楽しそうに聞いてくれた。そして、僕が話し終えると決まって言った。「昴、お父さんはお忙しいからあまりお家にいられなくて、あなたも寂しいわね。お母さんもあなたと、お外で一緒に遊んであげられないし。ごめんなさいね……。でもね、昴。お父さんも、お母さんも、あなたがとっても大好きよ」 僕も決まってこう答えた。「僕も、お母さんもお父さんも大好きだよ。お父さんは悪い人をやっつけて、困ってる人を助けてるんでしょ?」 そう、僕が聞くとお母さんは嬉しそうに言った。「そうよ、昴。お父さんは悪い人を捕まえて、困ってる人を助けてるの。世の中にはね、沢山困ってる人がいるから、みんなが、お父さんの助けを待ってるのよ。だから、お父さんも一人でも多くの人の力になるように、一生懸命頑張ってるの。昴のお父さんはね、優しくて、強くて、男らしい、ヒーローみたいな人よ。ふふ……かっこいいんだから」「お母さんもお父さんが、大好きなんだよね?」「ふふ。お母さんはね、昴と、お父さんが大、大、だーいすきよ。ふたりは、とーっても大事なお母さんの宝物なの」 優しい笑顔でそう言いながら、膝の上に抱いて頭を撫でてくれるお母さんが、僕は大好きだった。そうされるのがすごく嬉しかったんだ。 そんな事を、ぼんやり考えていると運転手さんが言った。「あー、通行止めか……」「どうしたの?」「急な工事で、通れないんだそうです。昴坊っちゃん、お腹はまだ大丈夫ですか? 回り道をするので、お家に着くのがいつもより少し遅れそうです」「そうか。かまわないよ。お腹もまだ平気だ」 そう答えると車は、知らない道を走り始めた。住宅が沢山ある静かな綺麗な道だった。初めて通る道はなんだか面白くて、僕は夢中で眺めた。そういえば、お母さんが元気な頃、お父さんの運転でお出掛けした。海で夕日を見たり、ドライブしてこんな風に知らない所を走った。僕が外を眺めてるのをバックミラーで見た運転手さんは、車をゆっくり走らせて『乗り出しちゃダメですよ』と言いながら、窓を開けてくれた。
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