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室長がうまい事、興奮する叔母をなだめ、応接に通した。 向こうで小さくノックの音がして、また誰か来たようだった。藤守が応対しているようだが、小声で聞き取れない。オレがそちらに気を取られていると、叔母がブツブツ言い始めた。『一柳の家に泥を塗った』だの『だいたい昴さんが、こんな子を選ぶから』だの『貴方は次期当主なんだからそこをもっと自覚して、それなりの方を選ぶべきだったのに』だのと、ギャアギャアと捲し立てた。 この段階でオレは、ムカムカ来ていた。だが文句を言おうとした時、テーブルの下で彼女がぎゅっとオレの手を握った。彼女に視線をやると[頼むから、止めてくれ]とでも言うような顔で、微かに首を振った。 叔母はまた興奮し始め、鼻息荒くなり掛けた。その時絶妙なタイミングで明智さんが紅茶を出してくれた。室長が紅茶をすすめる。文句を言い掛けたが、立ち上った紅茶の良い香りに『じゃあ、いただこうかしら』と紅茶を手にした。紅茶好きの明智さんが淹れたお茶だ。不味いワケがない。叔母は少しの間、旨い紅茶を堪能して大人しくなった。だが、お茶を飲み終えるとまた騒ぎ出した。「だから昴さんに言ったでしょう。この方は、一柳家に相応しくないと。大人しく西園寺さんと結婚していれば良かったのに。そうすれば、紫織さんだってあんな事にはならなかったんですよ。だいたいね。貴女、こんな過去があるのに、知らん顔で一柳に入り込もうなんて。図々しいのも、程があるわ。昴さんだけじゃなく、隆一やお母様までまんまと騙されて。うまく丸め込まれたものだわ。わたくしは、そんなに簡単に騙されませんよ。貴女、一柳に泥を塗った責任はどう取るおつもり?』と言い出し、彼女を責め出した。『申し訳ありません』と頭を下げ謝る彼女に、叔母は言った。「謝罪するおつもりがあるなら、貴女。昴さんとのお話は、白紙に戻して身を引いて下さらないかしら? 貴女も分相応な生活をした方がご苦労が無いのじゃなくて? 分かるでしょう? 今後は一柳とは一切関わらないでいただきたいわ。そうね、職場も変えてちょうだい。貴女、海外にでも留学に行ったらどうかしら? 費用と当面の生活費、慰謝料としてそれなりのものをご用意するわ。悪い話ではないでしょう?」 これを聞いて、オレはもう黙っていられなくなった。我慢の限界だった。「いい加減にして下さい! 何、勝手な事を言ってるんです! オレも父さんも、楓さんも騙されてなんかいませんよ。彼女の良さが分からないのは、叔母さんが人を見る目がないだけでしょう!」「まあ、なんて失礼なっ」「失礼で非常識なのは叔母さん、あなたの方ですっ! おまけに品位の欠片すら無い。呆れます」「んまぁ! なんですって」 睨み合う険悪な雰囲気に、彼女が『昴、落ち着いて。言い過ぎだよ』と止めようとする。.
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