ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
──と、みんなの後ろから、フッと笑う声がした。その声に振り向くとお茶を持った彼女が立っていた。オレ達は記事に気を取られて、彼女が気配を消すのが得意なのを忘れていた。『いつからいたのか』聞くと『ん? ずっと。小笠原さんが記事を読む時にはいたよ。あ、冷めたかな』何でもないように言い、みんなにお茶を渡して行く彼女。小笠原が焦る。「ごめん、俺……」「ん? 何? 全然。だってどうせ読むつもりでいたんだ。読む手間が省けたよ。つーかさ、イケメンが揃いも揃って、んなお通夜みたいな顔してちゃ、色男が台無しだよー」 お茶を配り終えトレイを冷蔵庫の上に置くと、小笠原の手から雑誌を取り自分の席に腰掛けた。皆が目で追う中、平然と足を組み眺め始めた。そして、口角を上げてフッと笑った。「カッコ良く写ってんじゃん。こんな写真、どこから持って来たんだ? 見た事ねーから国やきよだって持ってねーだろうな。お宝写真か、ふふ……」「なまえ……」 あまりに平然と振る舞う彼女に逆に心配になる。「んー? 何?」「何って君、大丈夫?」 小笠原が聞く。また何でもなさそうに『んー? 大丈夫だよ』と雑誌を捲りながら答える彼女。「あのさうまい嘘のつき方、知ってる?」「うまい嘘のつき方?」 嘘が一番似合わない彼女の言葉を、明智さんが復唱するように繰り返した。「ん、教えてあげようか。それはさ、真実の中に嘘を紛れ込ませるんだ。そうすると真実と一緒にある事で、嘘まで信憑性持って響くんだよ。この記者は、それをきっと知ってるんだな」 淡々と言う彼女。「この記事の通りな所もいっぱいだ。確かに、僕は素行不良のガキだったもん。そりゃ、族じゃなかったし街中を暴走する事もなかった。だけど、クサクサした夜に峠をかっ飛ばした事もある。理由は違うけど喧嘩も日常茶飯事。地元で評判の、ってのもある意味じゃ、本当」「そやけど、チビ。それだけやないやん。俺は知ってるで。チビはええ事も沢山して来たやないか」「そうだぞ、チビ。山口を逮捕して表彰だってされたんだろ。俺は凄い事だと思う」 藤守と明智さんが言う。「そうだね。悪い事も、良い事もして来た。僕は別にそれを後悔してない。こんな記事が出た今でも、やっぱり後悔はしてないんだ」『でも』とため息をついた。「僕は、僕のして来た事だから良いけど。それじゃ済まない人達がいる。僕の過去が、こんな風に記事になった事で確実に迷惑を掛ける事になる人達がいるんだ」 そこで、言葉を切りオレを真っ直ぐに見た。眉間にシワを寄せ言う。「昴、ごめん。僕の過去は……この記事は、きっと一柳の人達に迷惑を掛ける。君やお義父さんには特に迷惑が掛かると思う。僕は、それをどうやって償えば良いのか分からない。それじゃ済まないだろうけど、今は謝る事しか出来ない。こんな事になって本当に、申し訳ない」 彼女は立ち上がり、深く頭を下げた。
このサイトの読者登録を行います。 読者登録すると、このユーザーの更新履歴に新しい投稿があったとき、登録したアドレスにメールで通知が送られます。