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● ○ ● ○「ただいま、戻りましたー。今のところ、収穫はゼロでーす」 中に入って行くと彼女がそう言った。「昴、チビ助お帰り。そう、お疲れさん」 室長が迎えてくれる。彼女に『報告はオレが』と声を掛ける。彼女から『ありがとう。お願いします』と返事が返る。 彼女は時計に目をやると、脇に抱えてた雑誌を無造作に机にポンっと放った。淡々とはしつつも、どこか気だるそうな顔している。ポケットに片手を突っ込み、片手で頭をワシャワシャと掻きながら、お茶を淹れに行った。 それを見て室長がオレに『何かあった?』と聞いた。オレは『はぁ……実は』と言いながら彼女が机に投げ出した雑誌を手に、室長の前に置いた。 そこへ、けたたましく『大変! 大変ー!』と叫びながら如月が雑誌を手に、血相を変えて駆け込んで来た。事態を報告しようとして、同じ雑誌が室長の手の中にあるのを見つけて『あ』っと言った。昼前で戻って来ていた連中が『何だ、何だ』と寄って来て如月の雑誌を覗いた。 そこにはどこから手に入れたのか、彼女の昔の写真と共に隠し撮りのオレ達のツーショットや顔が分かる写真が載っていた。昔の彼女の写真はビジュアル系のファッションでバイクと共に写ったものや、運動会でした更級に特攻服と揃いハチマキ姿で誰かとやり合う姿などが数枚、記事の合間に掲載されている。どれも如何にも[不良]ですと言わんばかりの写真だった。「うわぁ。なんや、これ」「記事も酷いんですよ!」 言う如月の手から雑誌を取り上げ、小笠原が淡々と読み上げた。要するに記事には[地元で評判の手がつけられない程の素行が悪い不良少女が、運良く警察官になり警視総監の一人息子を、不良時代に遊び捲って身に付けた寝技などを駆使してうまい事やり、まんまと世間知らずのお坊っちゃまをたぶらかし骨抜きにして、結婚にこぎ着けた]というような内容が、下世話な表現で面白おかしく好奇心を煽るように書かれていた。皆が思わず、眉間にシワを寄せた。明智さんが溢す。「酷いな。実際のチビとはかけ離れた人物像じゃないか。あいつはそんなヤツじゃないぞ」「ほんまですねぇ。確かに昔、尖ってましたけど昔からチビは真っ直ぐで優して仲間思いのええやつでしたよ。そないな、ええとこがいっこも書いてへん! こんなん無いわ」「大丈夫かな……彼女。俺達は、チビを知ってるからこの記事が、いい加減な事分かるけどさ」 小笠原が眼鏡のブリッジを押し上げながら、心配そうに呟いた。如月がそれを受けて続けた。「そうですよね。この写真に記事じゃ、知らない人は本当の事だと思いますよ」 とはいえ、この雑誌はもう世に出てしまっている。これを見た彼女を知らない人間達が、悪印象を持ってしまったとしても、時、既に遅しでどうにもならない。事実は違いますと一人、一人、説明して歩くワケにもいかないのだから。みんなにもそれは分かっているのだろう。ほとんど同時にため息をついた。
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