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医者の話じゃオレも二、三日は入院らしいので彼女が眠る今の内に、パジャマに着替えようかと思った。 その時に気付いた。彼女がオレのシャツを掴んでる。 ふと、オレに酷い事をしないでくれと必死に言ってた彼女の顔が、頭を過った。震えてた彼女。 眠ってんのにぎゅっと掴むその手を見て、ちょっと切なくなった。 このぎゅっとしてる分、彼女が怖い思いをしたって事だ。まるでもう離れたくないって訴えてるみたいに感じる。 オレはそこから動くのをやめて、もう一度彼女を抱き寄せ直した。「どこにも行かねーから安心しろ」 そう言って、眠る彼女のおでこに口づけた。 ● ○ ● ○「あっ! コイツ! 昴、ヤツだっ」 昼前のニュースを見ていたら、見覚えのある顔が映った。「ああ……ヤツだな」 遺体が発見されたという内容の報道だった。オレ達はその顔に見覚えがあった。ソイツはあの逃げたテロリストの頭だった。「死んだって、どういう……」「ちょっと待ってろ。室長に詳細を確認してみる」 どうやら他殺らしい。地方で発生したヤマである事や発生直後らしく、今のところまだ掴めてる事はあまりない。でもどのみち後はうちで、というよりハムのヤマ扱いになりそうよと最後に室長が付け加えた。それを彼女に伝えると微妙な顔をしたが『そう』と一言返って来た。「納得行かねーか? でもヤツが戮に関係する国際テロリストならやっぱり石神達が──」「いや、そうじゃないよ。僕が引っ掛かるのは、ヤツはそんなに簡単に殺られるタマじゃねーだろって事」「ああ。そこは引っ掛かるな」「……本当にヤツなのか怪しいもんだ。ヤツは他人の命なんて道具程度にしか思ってない。替え玉なんか幾らでも作りそうだ。確か、ヤツに関する情報は指紋、経歴、ほとんど掴めてないんだろ。例え整形の痕跡が見つかってもヤツじゃないとは断定しかねる。死んだ事になれば、被疑者死亡で幕引きだ。もう追われる事もない。顔変えてのうのうと生きて行けるよ。ま、何の確証もない。ただの僕の憶測だ。けど、僕の読みが当たってたら。ヤツは野放しだ。ゾッとするよ」「確かに、な」「もしヤツが。また狙って来るなら僕は、今度こそ負けない。ヤツを捕まえてやる! 僕は君もお義父さんも絶対守り切る。もう君をヤツの手になんてに渡すもんか!」「なまえ。でも、だからって無茶すんなよ? もしも、ヤツが表れても一人で暴走すんじゃねーぞ?」「きょ、極力……」「あ? 極力じゃねーよ。ダメだ。オレだって、みんなだって、お前と一緒だぞ? もう今回みたいな思いしたくねー。お前がオレを守りたいように、オレだってお前を守りてーんだよ。失いたくねーの! 分かるだろ?」「……昴、そんな顔しないで。辛そうなそんな顔、やだよ」 そう抱き付く彼女を受けとめる。
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