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「昴……良かった」 その笑顔と声にグッと込み上げるものがあったがどうにか堪えて、いつものように微笑み言った。「おはよう。なまえ」 そして、大事な壊れものにするみたいにそっとキスをした。「風邪うつるよ」 それは、彼女が風邪の時によくオレに言う台詞。(オレの日常がやっと戻って来たな。お帰り……) 彼女のおでこに自分のおでこをつける。彼女の柔らかく弧を描く唇を見つめ──。「良いよ。風邪なんて、オレがもらってやる。だから、全部よこせ……」 オレもいつもの台詞を口にしながら、愛しさを込めてもう一度口づけた。──ドタドタ、バタバタ── 走る足音が聞こえたが、今はどうでも良い気がしてスルーした。「ちょっと! 病院の廊下は走るな! あっまた、お前達か? 本当に毎回、毎回……」 おっかない事で有名なナース長の、廊下から聞こえて来る説教もこの際スルー。まだ、彼女の唇を離したくない。 そう思った瞬間、ドアが開き『あっ!!』とハモる声がした。 怒られてたのは、うちの連中だった……。そして、オレも説教を食らう羽目になった。 でも──。(こうして呑気に説教されるのも、彼女が無事だった証拠だよな) そう思ったら嬉しくて、ついにやけてしまい、ますます叱られた。「全く。怒られて笑うとは、一体どういう連中なんだ。一柳なまえさん!」「はっ、はい!」 噂では体脂肪率5%、身長が190cmとも聞く。元プロレスラーか軍隊上がりではないかと思うような、でかく立派なガタイに機動隊員用の編上げブーツを愛用するこのナース長。そのナース長に突然名前を呼ばれ、焦る彼女。それも仕方ない事で、ベッドから見れば完全に見下ろされる形だ。誰だって焦る。「この連中を相手にしていると四六時中説教する事になりそうだ。私の平和の為にも、一日も早く元気になって退院しなさい! では、私は先生を呼んで来るのでくれぐれも騒がないように」 ナース長は彼女にそう言って出て行った。彼女はぽかーんと見送った後で、笑い出した。「なーんだ。いい人じゃんか。あはは……やっぱ人間は、見た目で判断しちゃなんねーな」 いつもの彼女らしい光景に、如月が泣き出した。「うわーん、チビ! 助かって良かったー! スゲー心配したんだぞー。わーん……」「何だ、普段一番チビをいじめるくせに。ま、俺達も同じ気持ちだ。本当に良かったよ」「明智さん、俺、いじめてませんよーうっうぅ……」「なんやねんなー。如月、チビがびっくりしとるで」「あ、あのぅ……如月さん? ごめんね。心配掛けて」「あら? チビ助、心配したのは如月だけじゃないんだけど? 私もすっごーく心配したのよ? お父さんをこんなに心配させて! この親不孝者。だいたいね。アンタは毎度毎度、心配ばかり掛けて。私をハゲさせたいとか、寿命を縮めたいとかなわけ? 今回もね……」「え、そ、そんなつもりじゃ……あ、あぅ……。ご、ごめんなさい……」 ブツブツ言う室長に彼女が焦った顔で謝る。そこへ医師とナース長が来た。
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