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「すまねー。悪かったよ。なぁ……。何でお前、こんな所に居んの? 似合わねーよ」「私だって好きでいる訳じゃないわ。仕方ないのよ」 女は諦めたようなそんな顔になった。「どういう意味?」「良いわ。今日はあの男も居ないし、話すわ。私はついこの間まで、薬品会社の研究者だったのよ。経営が思わしくないとかで、倒産するって噂が流れたの。それからほんの僅かな期間に、会社に動きがあった。いきなり、社員ごと会社が身売りして経営者が変わったのよ。私達、社員は買い取り先の企業がこんな怪しい組織に絡んでるなんて全然知らなかった。不透明で不安だって引き抜きを受けて会社を変わった同僚もいた。けれど、私は経営者が変わっても長年手掛けて来た研究が続けられるなら良いや、なんて気楽に考えていたの。……直ぐに後悔したわ。会社に残った後で、研究を続けていたら偶然に──思っても無かった怖い薬が出来てしまったのよ。これで研究も中止かと思ったのに。上は、とんでもない事を要求して来たの。生物兵器として海外に出すからもっとデータをと……」「例の、投与すれば必ず死亡する薬か?」 女が頷いた。「研究チームの何人かが、承諾出来ないと上に抗議したわ。でも……」 身体を自分で抱くようにし震えながら続けた。「恐ろしい事になったの。逆らった連中の中から、あの男が言う所の[抜けても差し障りのない連中]が見せしめと臨床実験を兼ねて、無理矢理……投与されたの。まだ解毒薬も無い薬よ。私達は助けようと必死になったけど……。結局、みんな、もがき苦しんで死んだわ。研究チームの残った連中も、あの男に人質を取られた。私も妹が人質になってる。逆らえば大事な人が殺される。大事な人のもがき苦しむ姿なんて見たくない。みんな歯向かう気力も無くなり、何でも従ったわ。研究部署以外の連中も逆らう者や逃げようとした者、外部に情報を漏らそうとした者、全て消えた。みんな、恐ろしくてやっぱり言いなりになった。この間、大勢警察に捕まったけどそれはそういう人達よ。私達以上に、みんな何も知らないわ」「なら、みんな普通の会社員なんだな?」 女が頷いた。「あの男の元からの部下は数人、みんな怖い奴等よ。ほら、私以外にここに来る男。あの嫌なヤツいるでしょ? アイツは元からあの男の部下なの。アイツの仕事は、貴方の監視と残った私達が、あの男の言い付けをきちんと守るか、見張る事よ。で、私の仕事はここに移された研究室で、他の研究者と開発を進める事と、貴方の監視って訳。……ごめんなさい。でも、私達も殆ど軟禁状態なの。貴方とあまり変わらないのよ。違うのは、鎖か、人質で縛っているかの差ね」 女がため息をついた。
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