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チビ助はそれを腕で拭いながら、スタッとベッドから裸足で立ち上がった。ニタリと笑い低く言う。「あーら、どこ行くつもりー? うふふふ……逃がさないわよー?」 昴は『ひぃー!』っとビビった。 確かに、その時のチビ助は周囲に怒りの空気が漂っているのかと思える程に不気味な迫力があったが、昴の反応も変だ。ヤツらしくない。 それにチビ助が狂った訳でも無さそうだった。何故なら、チビ助は次にキリッとしたしっかりとした声で叫んだ。「如月さん、小笠原さん、窓、封鎖してっ! 藤守さん、明智さん、ドアを封鎖してっ! 室長! 小野瀬さん、ソイツ、捕まえて!」 その声に呆気に取られていたみんなが、ハッと弾かれたように出入口を封鎖した。俺と小野瀬が昴の脇を押さえる。 昴の前に来たチビ助は、物凄い目で睨み付けまた低い声で言った。「さあ、お前にもう逃げ道はないぜ?」 メラメラと怒りながらチビ助が、むんずと昴の頬を下からわしづかんだ。「おい、この偽者野郎。お前誰だ? 昴をどこやった! 言えっ! とっとと素直に全部*ゲロしねーとただじゃ済まさねーぞ!」「え? 誰って? 一柳さんだろー? チビ、正気か?」 如月が言うと、昴も続いた。「そ、そうだぞ。なまえ、何、冗談言ってるんだ。ま、まさかお前、俺が分からないのか?」「あ゛ーあ? フンッ、お前が昴だと? そりゃーどこの昴を、言ってんだい? まさか【一柳昴】だとでも言うんじゃねーだろうなぁ? ふっふふ……冗談も大概にしろよ? あんま、ふざけてっと噛み付くだけじゃ済まさねーぞ? だいたいよ。昴に手、出さねーつーから、我慢して大人しくしてやったのによ。マジ、ムカつくんだよっ! 目覚めて見れば、昴の偽者がご登場とか……笑えねー冗談かましやがって。この僕が、昴を間違う訳がねーだろが。下手な芝居しやがって。ハンッ! てめえごときが昴のフリだと? なめんのも大概にしろ! アホかっ! 僕にはお前が偽もんだと直ぐに分かったぞ。その面は、整形でもしたのかよ? フッ、ご苦労なこったな」 掴んだ頬をぎゅうぎゅうとすると、偽者男が『あがあが』言った。チビ助が構わず続ける。「面、幾ら弄ろうが無駄! お前、耳が別人だからな。耳ってのは、形が一人一人それぞれ、違うんだよ。成長してもずっと変わらないから、短期間に形が変化なんてことはあり得ない。だからさ、その耳が、昴じゃないって誤魔化しようがない証拠。他にも、もっとあるぞ。まず、匂いが違う。あと声も微妙に違うなー。一番の決定的な違いはな、その目だ。僕の昴とお前じゃ、目が全然違う。知ってるか? 目は心を映す鏡って言うんだぜ。お前のその目ん玉は、昴の持つ心の強さも、輝きも、何ひとつ、映しちゃいねー。あのな。僕の昴がさ。んな、覇気のねえ瞳をしてる訳がねーだろうがよっ! 僕の昴をバカにしてんのかお前はっ! ざけてんじゃねーよ。あんまなめてとなあ。その腐った目ん玉、えぐんぞ。ごらぁ゛!」「ひぃー!」 青くなって震え出す男。「それになぁ……もう、本物かどうか確認済なんだよ。お前は、全問不正解。つまりはやっぱり、偽者つー事だな。フン、何を呆気に取られた顔してんだよ。試された事にも、気付かなかったか? 本物と違って、ずいぶん阿呆な野郎だな。おい」*ゲロする:自白する
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