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「おや、そんなに震えて。彼を失うのが怖いですか? その恐怖に怯える目、良いですねぇ。そうですねぇ。貴女次第で止めて差し上げても良いですよ?」「僕、次第……?」「ええ、貴女が彼の代わりに実験台になれば良いのですよ。モルモットにね。……ま、最悪、死ぬかも知れませんからご自分が助かりたいなら、彼を差し出しなさい。私はどちらでも良いですよ? いかがなさいますか?」「そう言って、昴にもって事は……?」「安心なさい。本来の目的の為にも人質は必要です。まあ人質は一人居れば間に合います。ですから、どちらかに実験にお付き合い願いたいのですよ。さあ、どうなさいますか? 彼を差し出してもよろしいですよ。人間は、自分が一番可愛い生き物ですからね。クフフ……」「僕が、実験台になる! 昴に手を出すなっ!」「良いのですか? 何時間も苦しみ、のたうち回った挙げ句に死ぬかも知れませんよ? 彼を差し出しなさい」「あ゛? …………バカか、おめーは。誰が、昴を犠牲になんかするもんかっ! アホな事、抜かすとぶん殴るぞ。バーカ! それにな。僕も、昴も、死なねえよ! ぜってー死なねえ! そうだよ。約束したんだった。臆病風に吹かれちまって忘れるとこだった。フッ、らしくもねえな。だいたいよー。悪党にお願いなんて馬鹿げてるよな。おかしい。そんなの、あいつをバカにしてるな。あーあ、後で謝んなくっちゃ。つーか、あははは。んとに、らしくなかった。ふふふ。どうかしてた。あーぁ、今のお前のアホ発言によぉ、これ以上ない位に腹立ってムカついてなんか目、覚めたよ。おい、僕はひとりじゃねえんだよ。お前なんかに負けたりしねえよ! どんなにボロ雑巾みてーに這いつくばっても、最後にはぜってー立ち上がってお前をとっ捕まえてやる。昴だってそうだよ。あいつもやられたまんまじゃ居ねーぞ。ぜってー立ち上がる。予言してやる。最後に泣くのはお前だよ。フッ、覚えとけよ?」 いつものチビ助らしく不敵にニッと笑い男を睨みつけた。男はチビ助を見下ろし呆れた顔をしただけだった。「本当にバカなひとですね。やりなさい」 数人に取り押さえられたチビ助に、薬が打たれた。幾らも経たない内にチビ助が呻き、陸に打ち上げられた魚みたいにピクッピクッと身体を痙攣させ跳ねた。そしてぐったりとなった。カメラが寄ると苦し気に眉間にしわを寄せ荒い呼吸をしているチビ助の顔が映った。 まるで[死]を予感させるような、その映像は俺の心に衝撃を与えた。抉られるような痛さと、焦りが黒い沁みのように胸に広がった。(マズい。早くしねえと本当にチビ助が、死んじまうかも知れねえ!) そこで動画が切れた。絶句するみんなに後藤が言う。「今のは、犯人側から一回目の電話を受けた直後に、一柳が受け取った動画だ。そして、もうひとつ。一柳が指定先に向かう途中で、用意された新しいスマホで受けた動画とメール、そして会話を録音した音声。これは、一柳自身が俺に預けたスマホに転送して来たものだ。先ずは見てくれ」 ● ○ ● ○ 先程の部屋で、ぐったりするチビ助の髪を掴み頭を引き起こし男が話し掛ける。「どうですか? 次を打つ前に、状態を報告して下さい」「う、ぅっ……さ、寒……い……す、ば……る……」「寒い、ですか? 震えてますねぇ? おや、あんなに熱が高かったのに、今はひんやりしてますね」 男はチビ助に触れ、体温を確認してから脈をとる。「脈は、ちょっと早いですが……まあ、今のところは正常範囲ですね。血圧は? ……ふぅーん、血圧が低い、か。なるほど」 報告書のような物を受け取り確認すると、部下と思われる人物が男に聞く。「次の投与は、どうしますか?」「続けなさい。今、止める必要は無いでしょう。指示を出すまでとにかく投与し続けなさい」『はっ』返事を返し、ぐったりする無抵抗のチビ助を数人で押さえつけ、薬を注射する。
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