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● ○ ● ○「おじさん、来たわよ」「やあ、いらっしゃい。凛子ちゃん、お帰り。相変わらずいい女だな。おや、一柳さんも一緒かい。久しぶりだねぇ。元気だったかい? いつもテーブル席開けて置いたからどうぞ」(二人の馴染みなんだ……同期、だもんな。ある、ある)「おや、新顔くんも一緒かい? こりゃあ、腕をふるわなきゃな」「そうよ。おじさん。私達の可愛い後輩なんだから。美味しいのうんと出してサービスしてよ」「はいはい。分かったよ。じゃあ、ゆっくりしてって下さいね。気に入ったら、どうぞご贔屓に」 そう言って笑い掛けるおじさんに、ぺこりと頭を下げて僕達はテーブル席に着いた。奥にあり、広めのボックス席でゆったりしてた。居心地が良さそうだ。「ねぇ、君、真山さん。なんか好き嫌いある? どれも美味しいわよ。好きなの頼んで。あ、お酒はイケる口?」 差し出されたメニューを受け取り、ぼんやり考える。(そうか、職場だから。僕は今[真山]さんだった……) 結婚して[一柳]になってからも職場では、旧姓を使ってる。『うちは人手不足だから。せめて異動シーズンまでは何としても居てもらう』と室長が掛け合って、直ぐに異動にならずに済んだ。 同じ課に夫婦一緒なんて無いから、特例と考えて良い。 そういう状況下では旧姓のが何かと都合が良いらしい。旧姓を使うのを昴は『仕方ねーな』と言ったが、僕らの事を隠してもいない。『悪い事をしてるワケじゃねーんだ。隠す必要はない』とそれまでと変わらず自然に舞っている。 人事の課長も彼に直接は言い難いらしい。何となく仄めかしながら『夫婦関係にあるのは、出来たら余り目立たないように』と僕に釘を刺さした。因みに、昴には言ってない。[警視総監のご子息扱い]は多分彼は好まない。嫌な気分を味わうだろう。それに【一柳】の名前は今の僕には、まだちょっとビッグネームだし、暫く今まで通りで良いっていうのは、僕には魅力的だった。だから[暗黙の条件]を了承した。 メニューを見ながらぼんやりとそんな事を思い出している内に、昴が僕の好きな物を頼んでくれていた。 彼は相変わらず優しいし素敵だ。みんなの言う通り凛子さんと比べたら、彼の隣に僕では見劣りするかも知れない。けど、そうだとしても僕は彼と離れたくない。(僕ももっと頑張って凛子さんみたいに素敵に、なおかつ仕事もこなせる女にならないとな。……女子力って、どうやって上げるのかな……) 僕は、いつの間にかまた、色の付いてない素っ気ない自分の爪を眺めてた。「ん? どうしたの? 爪なんか眺めて。そういえばね、さっき課内の子が、近くに良いネイルサロンがあるって言ってたのよ。知ってた?」 凛子さんが僕と昴に聞く。昴が『いや』と答え、僕にビールジョッキを渡してくれる。「あら、一柳はお洒落に敏感じゃなかった?」「ああ?」「今や男もネイルサロンに行く時代でしょう。ねぇ?」 凛子さんが僕に話をふる。
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