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短編リョ幸

「越前は、俺とテニス、どっちが大事だい?」

試すような、からかうような表情で問いかけてくる好きな人は、本当に意地も性格も悪い。告白してから早1年、それをかわされ続けて早1年にもなってくると、相手を見る余裕ができるようになった。これは、遊ばれている。

「…あんた、わかってて聞いてるでしょ」

「いいや?聞いてみただけだよ」

抑えたつもりだが、拗ねた顔になったのがバレていたのか、なんとも可笑しそうな顔で見下ろされる。それが不本意で、ふいと目線を逸らした。

「テニスより、あんたの方がいいって言ったら、付き合ってくれんの」

「それは保証できないかなあ」

なら遊ばないで欲しい。が、答えないことには離してくれないだろうと経験上知っている。小さなため息を一つついて、帽子を深く被った。

「…50と50くらい」

「100が上限で?」

随分と意外そうに眉を上げる。

「君は正直なのか、素直じゃないのか、どっちなんだい」

次第に面白くなってきたのか、やけに楽しそうに、くつくつと子供のように笑った。今日は機嫌が良いらしい、なんて、ぼんやりと思う。

「俺からテニス以外で半分も奪っといて、まだ足りないの?」

「嘘でも俺を選ぶとこだろう、そこは」

自分から聞いておいてこういう事を平気で言ってくるこの精神は流石と言わざるを得ない。

「いいじゃん。だって…」

忍び笑いを止めた彼の、まだ笑みが残る瞳を見つめて距離を詰めた。

「あんたも、テニスも、テニスしてるあんたも好きなんだから、全部合わせたら100くらいにはなるでしょ」



「……君は面白いね、本当に」

彼は一瞬、ほんの一瞬だけ、時が止まったように固まった後、僅かに目を細めて微笑を溢す。普段の調子の声、表情に見えるそれは、でもどこかいつもよりも余裕が少なかった。ふ、と笑いが込み上げてくる。

「ねえ、幸村さん。付き合ってよ」

これで何十回目かになるいつもの告白。彼は毎度の決まり文句で返してくる。

「君ぐらいの男と、俺が付き合う訳ないだろ。出直してきなよ」

自信に満ちたその目が、その表情が、やっぱり好きだった。

「上等じゃん。楽しみにしてなよ」

「はは、できるものならね」

穏やかに、しかし挑発的な色を含んだ言葉に興奮する。明日は、どうやってこの調子を崩してやろうか。そんなことを考えながら、彼の透き通った碧色の瞳を見つめ返した。












貴方はリョ幸で『50/50』をお題にした140字SSを書いてください。

お借りしました~!
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