カードの精霊たちの日常

「すまない、ウチの馬鹿弟子がやらかした。後輩の子を迎えに来てやってくれないか」

日差しの気持ち良い麗らかな午後、ガガガマジシャンの携帯にブラック・マジシャンが屋敷の固定電話から連絡を入れてきた。
後輩で恋人のガガガガールは今日もブラック・マジシャン・ガールと調合実験をしてくるのだと言って学校をサボって屋敷へと直行したのを覚えている。
この間の媚薬クッキーのような危ない物を作らなければいいと思っていたがその祈りが天に届くことはなかったようで。
それにやらかしたのは絶対ブラック・マジシャン・ガールだけの所為ではないとガガガマジシャンは確信していた。
あの後輩の事だ、絶対にまた余計なものを見つけてそれにブラック・マジシャン・ガールを乗せたに違いない。
ただ、やらかすと言うからには実験に失敗した可能性が十分にある。
勉強の苦手な後輩はブラック・マジシャン・ガールと一緒になって適当な調合でもしたのだろう。
その光景が脳裏にありありと浮かんでガガガマジシャンは遠い空を見上げて力なく承諾の返事をした。

「今行きます」






屋敷に到着したガガガマジシャンを待っていたのは変わり果てた姿の恋人とブラック・マジシャンの弟子。
一言でいうと猫になっていた。
あの愛玩動物として広く愛されている猫だ。
ブラック・マジシャン・ガールは濃い金色のフワフワの毛並みで、ガガガガールは薄い金色のサラサラな毛並みの猫になって緑色のソファの上でちょこんと座っていた。
可愛らしい猫と美人な猫、ペットショップで売られたら間違いなく高値がつく上に引く手あまただろう。
そんなどうでもいい事を頭の隅で考えているガガガマジシャンにブラック・マジシャンが疲れたように軽く息を吐きながら説明を始める。

「すまん、私の弟子が調合する材料の量を間違えてこうなった」
「ニャハッ☆」
「ニャハじゃない!反省しろ!!」

笑って誤魔化そうとするブラック・マジシャン・ガールの頭に掌を強く押し付けてやや無理矢理に頭を下げさせるブラック・マジシャン。
「ニーニー!」と反省の言葉か、はたまた抗議の言葉を上げるブラック・マジシャン・ガールに心の中で合掌しながらガガガマジシャンはガガガガールを見下ろす。

「・・・昆虫型モンスターが吐き出す毒を中和する薬を作ると聞いていたが?」
「ニャハッ☆」
「お前も反省しろ」

ブラック・マジシャンと同じように掌をガガガガールの頭に押し付けて無理矢理頭を下げさせる。
ついでに毛の根本からわざと引っ張るようにゴリゴリ撫で回してやったら「ニ〜!!」という明らかな抗議の声と共にパシパシと手首を柔らかい肉球で叩れた。

「すいません、おかしな薬を作ろうと話しを持ちかけたのは間違いなく俺の後輩です」
「気にするな。その話に容易く乗ったこちらの弟子が一番バカだ」

目線下のソファからニャーニャーと抗議の鳴き声が上がってくるが二人はそれを華麗に聞き流して話を続けた。

「ちなみにこれはどういった薬で?」
「獣系の種族に変身する為の薬だ。調合する獣系種族の毛の量によって変身形態が異なってくる。量が多ければ獣族になり、量が少なければ半獣族となり、獣人族の薬を目指すならば絶妙な量の調合が求められる。そして多すぎた結果がこれだ」

呆れたように視線で二匹のガールを見下ろすブラック・マジシャンを追ってガガガマジシャンは「なるほど」と呟いた。
この二人の事だ、半獣を目指して作ろうとしてしていたに違いない。
そして作ったそれを使って何をしようとしていたかは大体想像がつく。
自分とブラック・マジシャンに迫ってくるというある意味での非常事態は避けられたが別の非常事態が二人のガールの身に降りかかったのは自業自得と言うべきか。

「・・・恐らく半獣族の薬を作ろうとしたのでしょうが何故こんな失敗を・・・」
「簡単だ、単純に数量を見間違えただけだ」

ガガガマジシャンは見下ろそうとする顔をぐっと真正面に据えて堪えた。
これ以上はブラック・マジシャンの弟子であるブラック・マジシャン・ガールに恥をかかせられない。
失敗の原因を追及した時点で恥もへったくれもないがこれ以上は憚れた。
勿論ブラック・マジシャン・ガールだけの責任とは言わないが。

「治し方は?」
「一日経てば元通りになる。その代わり・・・その、なんだ・・・」
「?」

珍しく歯切れ悪く言葉を濁すブラック・マジシャンにガガガマジシャンは首を小さく傾げる。
無言でその先を促すとブラック・マジシャンはチラリと机の上に置かれた、布の被せられたカゴに視線を送って重たく口を開いた。

「・・・獣族に変身をすると服が脱げる・・・そして元に戻る時はそのままの状態だと言う事だ」

一瞬、頭が考えるのをやめた。
いや、思考を停止したと言った方が正しいだろうか。
とにかく思考が停止する瞬間をガガガマジシャンはもう一人の冷静な自分で認識して、思考が停止するとこんな風になるのか、などと呑気に考察した。
しかし思考が再び動き始めると途端に心は動揺し、けれど体は普段の癖からそれを他人に悟られまいと小さく溜息を吐くという行動に出た。
この問題にはブラック・マジシャンも腕を組んで疲れたように溜息を吐いており、ガガガマジシャンと同じ心境である事が窺えた。

「とにかくそういう事だ。家に連れ帰って明日になるのを待てばお前の後輩も―――」

言いながらソファを振り返るブラック・マジシャンだがそこに二匹のガールの姿はなく。

「ニャー」

小さな泣き声と共に扉がギィィ・・・と開く音が部屋に小さく響く。
ブラック・マジシャンとガガガマジシャンがそれを目で追った時には二匹のガールの姿は小さく開いた扉の隙間の向こうに消える所だった。

「待ちなさいガール!!」

一瞬呆然としていたブラック・マジシャンだったが、すぐに我に返って二匹を追いかけ始める。
その後にガガガマジシャンも続いて二匹を追いかける為に走った。

「逃げるんじゃない!部屋で大人しくしていなさい!」
「二ーッ!」

あの「ニーッ!」は間違いなく「やだー!」という意味だろう、とガガガマジシャンは意外と冷静になっている頭で分析した。
そんな事を考えている間に二匹のガールは偶然開いていた扉の隙間に入り込んで行ってしまう。
しかしブラック・マジシャンが躊躇いなくその扉を開け放って入ったのでガガガマジシャンもそれに続いて中に入って行く。
部屋の中は書斎だった。

「ガール!出てきなさい!」

しんと静まり返る書斎にブラック・マジシャンの声が響く。
しかし声は愚か物音一つすら返ってこない。
二人で辺りを注意深く見回しながら探していると―――

「・・・何をしているんだ?ガール」
「・・・ニャハ?」

本と本の間に挟まってどう見ても無理のある本のフリをしていたブラック・マジシャン・ガール。

「よお」
「ニャ・・・」

机の上で招き猫の真似をしていたガガガガール。
二人の男は容赦なくその大きく無骨な手で愛らしい猫を鷲掴もうとするが猫の方が早かった。
ブラック・マジシャン・ガールは本の隙間から飛び出し、ガガガガールは滑るように机から降りるとまた部屋を出て行ってしまった。

「ガール!!」

後追ってまた屋敷の中を走り回る。
二匹のガールは今度は素早く階段を上っていき、途中の踊り場で右と左で分かれていた階段を左側の方へと上って行く。
そして上ってすぐの所にある部屋のドアノブにブラック・マジシャン・ガールが飛び上がって掴まる事によってドアノブが下がり、僅かに扉が開く。
その開いた隙間にガガガガールが入って行き、続いて飛び降りるのと同時にブラック・マジシャン・ガールが入って行った。
なんと無駄な連携技だろうか。
今度はその部屋に入って行くのかと思いきやブラック・マジシャンは立ち止まり、腕を横に出してガガガマジシャンを制した。

「悪いがこの部屋はガールの部屋だ。ここで待っていてくれないか」
「分かりました」

頷き、ブラック・マジシャンが律儀にも部屋のノックをして「ガール、入るぞ」と言って入って行くのを眺めつつ扉の横の壁に寄りかかって腕を組む。
一見隙があるように見えるガガガマジシャンの立ち姿は、しかしその実はかなりの神経を張り巡らせていた。
二匹のガールがここから出て来た時に備えていつでも動けるようにと準備をしているのだ。
しかし気を集中している所為で思わぬ障害が発生する。

「ガール!大人しくするんだ!・・・コラ!タンスの中に入るんじゃない!」

ドタバタと走り回る音と二匹の猫の鳴き声、そしてその後に聞こえて来た『タンスの中に入るんじゃない』。
後者のセリフにガガガマジシャンは一瞬身を固くして張り巡らせていた神経を少し緩める。
あらぬ事を想像しそうになったが頭の中でそれを砕いて再浮上させないようにする。
決して下着を思い浮かべてしまったとかそんなんじゃない。
ところで一体どうやってタンスの中に入ったのかが少し気になる所である。

「待て!そっちは危ないぞ!」

ブラック・マジシャンの慌てたようなセリフにガガガマジシャンは身構える。
何か良からぬ事が起きたのは間違いない。
部屋の中の様子を窺っていると苦虫を潰したような表情を浮かべたブラック・マジシャンが出て来た。

「ガールたちが窓から木の枝に飛び移った。戻ってこれないように部屋の窓を閉めてきたから外に行くぞ!」
「はい」

二人して先程駆け上がった階段を今度は駆け下りて行く。
それにしても窓から木の枝に飛び移るだなんていよいよ猫らしくなってきたようである。
普通ならば慣れない動物やモンスターに変身すれば戸惑ってあまり動けなくなると思うのだが・・・いや、それよりも好奇心や冒険心が勝る二人だ、未知の体験に対する恐怖などは微塵もないのだろう。
この分だと木の上に飛び移ったけど高くて降りられない、というベタな展開はなさそうである。
ガガガマジシャンのその考えは、玄関を出て屋敷の脇に高くそびえ立つ木の下に来る事によって現実のものとなる。
二匹のガールはあまりの高さに怖がるどころか欠伸をしてそのまま昼寝をしそうな勢いだった。

「ガール!降りてきなさい!」

「ニャ~・・・フゥ・・・」

欠伸を漏らすブラック・マジシャン・ガールにブラック・マジシャンは額に手を当てて疲れたように溜息を吐いた。
ガガガマジシャンは鋭い眼光をガガガガールに向けてみたが、ガガガガールにはどこ吹く風。

「・・・俺の鎖を枝に引っ掛けて登りましょうか?」
「いや、それをしている間に逃げられる可能性があるのと枝が折れてお前が怪我をする恐れがある。それに・・・」
「それに?」
「・・・人前であまり見せたくはなかったがやむを得まい・・・」

ブラック・マジシャンはまた溜息を一つ吐くとブラック・マジシャン・ガールを見上げながら腕を広げ、心配するような優しい声色で呼びかけた。

「ガール、そこは危ない。私が受け止めてやるから降りてきなさい」
「ニャンッ!」

ロケットもかくや、ブラック・マジシャン・ガールは足場を蹴ると一直線にブラック・マジシャンの胸に飛び込んで来た。
受け止めた反動でブラック・マジシャンの体が軽く後ろにのけ反るが、想定していた反動だったので特に大きく後ろに倒れ込む事なく抱き留めた。
ブラック・マジシャンの腕の中のブラック・マジシャン・ガールはそれはそれはとても幸せそうに彼の胸に頬擦りをして甘えている。

「情けないだろう・・・こうする事で漸く言う事を聞くんだ・・・」
「いえ―――」

ガガガマジシャンは緩く首を横に振るとガガガガールを見上げる。

「・・・ガール」

「?」

「―――来い!」

「ニャッ!」

ガガガマジシャンが自分の胸を親指でドンッと打つと、同じようにガガガガールが足元を蹴って一直線にガガガマジシャンの胸に飛び込んで来た。
こちらも軽くのけ反る程度で後退りなどをする事はなかった。
腕の中でこれでもかと甘えるガガガガールに溜息を吐きながらガガガマジシャンも疲れたようにブラック・マジシャンの方を見て呟く。

「・・・こっちも似たようなものなので」
「お互い苦労するな・・・」

二人の男の盛大な溜息なんか気にも留めず二匹のガールたちは大好きな者の腕の中で微睡むのであった。







二匹のガールが眠って大人しくなった隙にガガガマジシャンはガガガガールの服を受け取って自宅に帰還した。
そして自分のTシャツを用意してその中にガガガガールを潜り込ませて一日経つのを待った。
結果、ガガガガールは翌日になるとブラック・マジシャンの言う通り元の姿に戻るのであった。

「あ、戻った!ガガガ先輩、戻りましたよ!」
「そうか・・・」

相槌を打つのと同時に自然を装って顔を逸らす。
自分のTシャツ一枚だけを纏ったガガガガールの現在の服装は非常に危険なものがある。
黒のTシャツにハッキリと浮かび上がる滑らかな双丘のライン、袖や裾から伸びる白い腕と張りのある太腿。
何よりも自分のTシャツを着ているという事実。
耐えるのだ、これは試練なのだから。

「アタシが戻ったんだからガール先輩も戻ったかな?てか、やっぱ猫と人型サイズだと見える世界って違いますね~」
「・・・お前いつか出禁喰らうぞ」
「え?アタシとガール先輩は仲良しだからそんな事されませんって」
「お弟子様じゃなくてブラック・マジシャン様にだ」
「師匠の人は優しいですからそんな事しないですよ」

何を根拠にそんな事言うのやら・・・いや、きっとブラック・マジシャン・ガールから色々聞いているのだろう。
だからといってそれとこれとは別だと思うのだが。

「それより先輩!朝ご飯何か買ってきて下さいよ~!私、コーヒー作って待ってますから~」
「・・・っ・・・お前も服を着て行くぞ」

無防備に腕に抱き付いてさりげなくパシリさせようとする後輩を諫めつつガガガマジシャンは何とか己の理性と本能の境界線を踏み越えないように耐え忍ぶのであった。






時は一日前に戻ってブラック・マジシャンの屋敷。
ブラック・マジシャン・ガールを彼女の部屋に連れて行って寝かせようとしたブラック・マジシャン。
しかし直前で腕からスルリと抜けられて逃げられてしまう。

「ガール!」

ブラック・マジシャンの呼び止める声など聞き入れずブラック・マジシャン・ガールは自分の部屋とは反対側の部屋―――ブラック・マジシャンの部屋まで一目散に走り去って行った。
そして昼間に見せたような、ドアノブに掴まってノブを下ろし、開いた扉の中にスルッと入って行ってしまう。

「ガール、自分の部屋で寝なさい」

ブラック・マジシャンの枕の上に寝転がるブラック・マジシャン・ガールに手を回せば「ニャ~ャ~!」とイヤイヤするように首を横に振られて抵抗された。
オマケに枕に爪を立てているものだからこれ以上無理に引っ張れば枕が破れてしまう恐れがある。
こうなってしまっては頑固な弟子の事だ、ブラック・マジシャンは小さく溜息を吐くとフワフワの毛玉を掴むのをやめ、とんとんとその体を横に優しく叩いて横にズレるように暗に語り掛ける。
するとそういう事にばかり聡いブラック・マジシャン・ガールは嬉しそうにゴロンと横に転がるとその場所を主に返還した。
それからブラック・マジシャンはタンスから紫色のガウンを取り出すとそれをブラック・マジシャン・ガールの傍に置いた。

「明日の朝起きたらこのガウンを着るんだぞ、いいな?」
「ニャー」

左前足を上げ、ついでに尻尾をゆらりと揺らして返事をする弟子の姿に思わず頬が緩み、そのフワフワの毛並みを2,3回撫でる。
触り心地の良い、柔らかな毛だ。
するとブラック・マジシャン・ガールはご機嫌であるのを示すかのように尻尾を大きく揺らして自らも一生懸命師匠の手を追って頬擦りしてきた。

「お休み、ガール」
「ニャァ」

部屋の電気を消して二人は眠りに就くのであった。



そして翌日。

「元に戻った~!お師匠サマ、元に戻りましたよ!!」
「ん、そうか・・・って!服を着なさい服を!!」
「あ、そうだった」

ガバリと起き上がって元に戻った事を確認したブラック・マジシャン・ガールはブラック・マジシャンを揺り起こすと元の姿の自分を見せた。
しかし何も纏っていない生身の肌を朝から見せつけられたブラック・マジシャンは即座に顔を背け、必死に頭の中から先程見た光景を消しにかかった。
その間にブラック・マジシャン・ガールは紫色のガウンを身に纏って「着ましたよ、お師匠サマ!」と声をかけてきた。
恐る恐るゆっくりと振り返ってみれば、だぼだぼのガウンを確かに着ている弟子が一人。
しかし豊かな胸によってどうしても谷間が覗いて見えているが、いつものようになるべく視線を向けないように努力した。

「全く、調合のミスの原因が見間違いだとは情けないと思わないのか」
「誰だって失敗はありますよ」
「今回は猫になるだけで済んだがもしも危険な調合だったらお前もあの後輩の子もタダで済んではいなかったんだぞ。反省しろ」
「そう言われてみると・・・ごめんなさい・・・」

先程の唇を尖らせる表情とは打って変わって、肩を落として眉を八の字に下げるブラック・マジシャン・ガール。
己の身ならともかく、友人のガガガガールに危険な被害が及ぶ事を想像して反省しているのだろう。
これに免じて説教はここまでにしてやるとしよう。

「今後は見間違えて失敗する事のないように気を付けるんだぞ」
「はぁーい・・・」
「さて、では説教はここまでにして朝食にするか」
「あ!その前にお師匠サマ!一つお願いがあります!」

バッと右手を挙げて引き止めてくる弟子に「何だ?」と首を傾げてみせる。
瞳を輝かせながらブラック・マジシャン・ガールは一言。

「昨日みたいに頭を撫でてください!」
「・・・は?」
「ほら、昨日の夜寝る前に私の事を撫でてくれたみたいに頭を撫でて下さいよ!」
「お前は本当に反省しているのか・・・」
「してますよ~!でもそれとこれとは別です!ほら早く頭を撫でて下さい!」

無駄に意思の強い瞳で見つめてくるブラック・マジシャン・ガールに溜息を一つ溢す。
もう少し説教が必要だったかもしれない。
けれどこの要求を呑まなかった所でこの弟子が大人しくなる筈もなく。
それにまぁ、頭を撫でるくらいならいいか。
この娘は人間だった頃から何かとこういった事を要求してきた。
その度に仕方ないながらも応えてやったら幸せそうな笑顔を見せてくれた。
ブラック・マジシャンは密かにその笑顔が好きだった。

「・・・代わりに朝食はお前が作るんだぞ」
「はーい!」

返事だけは元気で一人前だ。
けれども猫の時と変わらない癖のあるフワフワの髪を撫でていたらそんな事はどうでもよくなってきた。
幸せそうな笑顔を浮かべるブラック・マジシャン・ガールにつられて穏やかな笑顔を見せるブラック・マジシャンなのであった。






END
2/6ページ
スキ