マッシュ・バーンデッドとゴブリンゲーム
「というのが今回のゴブリンゲームの結末だ」
「ゴブリン側全敗してんじゃん」
しかも殆ど自爆、と付け足してマックスはおかしそうに笑う。
ゴブリンゲームを終えたマッシュ達は寮のキッチンでフィンが捌いた刺身をランスが綺麗に盛り付けた海鮮丼を食べていた。
勿論その席にはマックスも呼ばれており、レインからゴブリンゲームの顛末を聞いて笑っていたのが冒頭の会話である。
しかしレインの話す内容は簡潔的である事もあり、それを補足するようにマックスの隣に座るドットが口を挟む。
「マックス先輩、レイン先輩別の意味でひでーんすよ?弟贔屓するわ不正取引でマッシュを買収するわスカシピアスのホラ信じるとかヤバかったんすから!」
「何がホラだ。これだから品の無いチンピラは」
「ホラも大ホラだろバカタレピアス!フィンも怒ってただろーが!!」
「え?ホラって何?レイン、何を教えられたんだ?」
「この世の兄姉は生まれた時から『兄弟センサー』なるものが搭載されているらしい。弟や妹の危険等を察知出来るそうで俺にも搭載されているそうだが、そうなのか?」
何も知らない子供が知識を教え込まれてそれをスルリと覚えるように、乾燥したスポンジが瞬く間に水を吸収するように、ランスが吹き込んだ話をそのまま信じ切っている様子のレインをマックスは呆然と見つめる。
が、次の瞬間にはイタズラを閃いた子供の如く目を輝かせて大きく頷いた。
「ああ、その通りだ!」
「「マックス先輩!!?」」
馬鹿げた話に明らかに便乗しにかかっているマックスにドットもフィンも驚く。
しかしマックスはすぐに訂正はせずにそのまま話を続ける。
「俺のとこの兄貴二人にもセンサーが搭載されてて俺はそれを見た事があるんだ!」
「そうなのか?」
「あれは小さい頃、一人で森に虫捕りをしに行ったんだがその時に魔獣と遭遇してな。絶対絶命のピンチにどこからともなく箒に乗った兄貴達が現れて俺を助けてくれたんだ」
「ちょっ先輩!?嘘ですよねそれ!?」
「どうして俺がピンチだって分かったんだ?って聞いたら兄貴達は『兄弟センサーがお前の危機を察知したんだ』ってセンサーを見せてくれたんだ」
「やっぱり嘘だ!これ絶対嘘だ!!」
「最近では好感度メーターってのが追加されたみたいで俺からの好感度が数値として現れて分かるようになったらしい」
「それは本当か!!?」
「ランス君がめっちゃ食いついた!?」
「先輩教えてくれ!どこでそのメーターは付けられるんだ!?俺の兄妹センサーにそれは付いていない!」
「付いてなくていいでしょ!!」
「マーチェット通りにフルホンっていう本屋があるだろ?あそこのコミックスの棚が置いてある通路に床下の扉があって―――」
「ランス君これこそホラだから!!兄さまもメモ取らないで!!」
大真面目にメモを取ろうとするランスとレインにフィンがツッコミを入れて止めようとする。
そんな二人を見てマックスは大笑いをした後に、レインに兄弟センサーはただの冗談であると明かした。
割と本気で信じていたレインはとても不満そうで。
「また嘘だったのか」
「あっはっはっはっ!悪い悪い!だってお前素直に信じちゃうからつい面白くってさ!」
「チッ」
「そう怒るなって。それにそういう実物的なものじゃなくて感覚的な話だけどさ、お前にも立派に兄弟センサーはあると思うぞ。フィン君に何かあった時にタイミング良く遭遇してるし」
「虫の知らせで何となくフィンが心配になる時があるからな」
「レインさん、それが兄弟センサーというものです」
「キミまだそれ言うの?」
「ちなみにアンナの俺への好感度は限界突破してます」
「さっき『俺には付いてないから教えてくれ』って言ってたよね?」
「分かったんです、付いてなどいなくてもアンナも俺の事を愛してくれているのだと」
「あはは、そう・・・」
「・・・フィンの俺への好感度は・・・高い、筈だ・・・」
「フィン君レインの事大好きだよね!!?」
手を組み、自信なさげに暗く俯くレインの姿が見ていられなくなってマックスは即座にフィンに確認を取る。
わさびを付け過ぎてつーんとなっていたマッシュにお茶を渡してやりながらフィンは「え?急に何ですか」と驚きつつも素直に頷く。
「何が何だかよく分からないですが兄さまの事はとっても大好きですよ。今も昔もこれからもずっとずっと大好きです!」
「ほらレイン、フィン君のお前への好感度も限界突破してるぞ!お兄ちゃん大好きだって!」
自信持てって!とマックスはレインの肩を叩いてレインを励ます。
好感度限界突破の下りは聞いていなかったフィンは何が何だか分からないままだったが、少し明るくなったレインをもっと元気な気持ちにさせようともやしのナムルを出してあげた。
弟の気遣いと優しさにレインはとても嬉しそうにするのだった。
そんな仲睦まじい兄弟愛が繰り広げられている一方でレモンがゴブリンゲームの感想を話しながらマッシュに詰め寄っている。
「マッシュ君、ゴブリンゲーム楽しかったですね!またみんなで遊びましょう!」
「うん。今度はアベル君たちも誘ってみよっか。七魔牙のメンバーのみんなを入れたら結構な大人数になるだろうし」
「ちったぁメタ推理とかもなくなって盛り上がるかもな!マックス先輩もどうっすか?」
「お、いいねぇ。俺、ゴブリンゲーム得意だから場を荒らしちゃうかもよ?ゴブリンとして何度も騙して来たからな」
「あら先輩、サイコパスの才能がおありでして?」
「おありでしてよ?」
「何故お嬢様口調・・・」
「僕もゴブリン力を磨くよざます」
「マッシュ君に伝染した!?でも微妙に変!!」
寮のキッチンは賑やかな笑いに包まれるのだった。
オマケ
あらすじ:ガチでゴブリンが紛れ込んだ
「もうまどろっこしいんで僕に殴られる覚悟がある人だけ嘘をついて下さい」
「僕はゴブリンじゃないよマッシュ君!信じて!!」(半泣きのフィン)
「あ゙あ゙?」(フィンを守るようにして前に立つレインwithパルチザン)
「私もゴブリンじゃないです!この婚姻届けが何よりの証拠です!!」(相変わらず重いレモン)
「俺がゴブリンならこのペンダントを開けられる筈がない。おはようアンナ、今日も元気か?『うん、お兄ちゃん!今日も元気いっぱいだよ!』」(相変わらず頭のおかしいランス)
「なんだよお前ら、ビビり過ぎだって」(なんだか余裕なドット・・・?)
「ゴブリン発見」
「ゴハァッ!!」
「躊躇いなし!!」
ちなみにドットはゴブリンによってベッドの下に押し込められていた。
END
「ゴブリン側全敗してんじゃん」
しかも殆ど自爆、と付け足してマックスはおかしそうに笑う。
ゴブリンゲームを終えたマッシュ達は寮のキッチンでフィンが捌いた刺身をランスが綺麗に盛り付けた海鮮丼を食べていた。
勿論その席にはマックスも呼ばれており、レインからゴブリンゲームの顛末を聞いて笑っていたのが冒頭の会話である。
しかしレインの話す内容は簡潔的である事もあり、それを補足するようにマックスの隣に座るドットが口を挟む。
「マックス先輩、レイン先輩別の意味でひでーんすよ?弟贔屓するわ不正取引でマッシュを買収するわスカシピアスのホラ信じるとかヤバかったんすから!」
「何がホラだ。これだから品の無いチンピラは」
「ホラも大ホラだろバカタレピアス!フィンも怒ってただろーが!!」
「え?ホラって何?レイン、何を教えられたんだ?」
「この世の兄姉は生まれた時から『兄弟センサー』なるものが搭載されているらしい。弟や妹の危険等を察知出来るそうで俺にも搭載されているそうだが、そうなのか?」
何も知らない子供が知識を教え込まれてそれをスルリと覚えるように、乾燥したスポンジが瞬く間に水を吸収するように、ランスが吹き込んだ話をそのまま信じ切っている様子のレインをマックスは呆然と見つめる。
が、次の瞬間にはイタズラを閃いた子供の如く目を輝かせて大きく頷いた。
「ああ、その通りだ!」
「「マックス先輩!!?」」
馬鹿げた話に明らかに便乗しにかかっているマックスにドットもフィンも驚く。
しかしマックスはすぐに訂正はせずにそのまま話を続ける。
「俺のとこの兄貴二人にもセンサーが搭載されてて俺はそれを見た事があるんだ!」
「そうなのか?」
「あれは小さい頃、一人で森に虫捕りをしに行ったんだがその時に魔獣と遭遇してな。絶対絶命のピンチにどこからともなく箒に乗った兄貴達が現れて俺を助けてくれたんだ」
「ちょっ先輩!?嘘ですよねそれ!?」
「どうして俺がピンチだって分かったんだ?って聞いたら兄貴達は『兄弟センサーがお前の危機を察知したんだ』ってセンサーを見せてくれたんだ」
「やっぱり嘘だ!これ絶対嘘だ!!」
「最近では好感度メーターってのが追加されたみたいで俺からの好感度が数値として現れて分かるようになったらしい」
「それは本当か!!?」
「ランス君がめっちゃ食いついた!?」
「先輩教えてくれ!どこでそのメーターは付けられるんだ!?俺の兄妹センサーにそれは付いていない!」
「付いてなくていいでしょ!!」
「マーチェット通りにフルホンっていう本屋があるだろ?あそこのコミックスの棚が置いてある通路に床下の扉があって―――」
「ランス君これこそホラだから!!兄さまもメモ取らないで!!」
大真面目にメモを取ろうとするランスとレインにフィンがツッコミを入れて止めようとする。
そんな二人を見てマックスは大笑いをした後に、レインに兄弟センサーはただの冗談であると明かした。
割と本気で信じていたレインはとても不満そうで。
「また嘘だったのか」
「あっはっはっはっ!悪い悪い!だってお前素直に信じちゃうからつい面白くってさ!」
「チッ」
「そう怒るなって。それにそういう実物的なものじゃなくて感覚的な話だけどさ、お前にも立派に兄弟センサーはあると思うぞ。フィン君に何かあった時にタイミング良く遭遇してるし」
「虫の知らせで何となくフィンが心配になる時があるからな」
「レインさん、それが兄弟センサーというものです」
「キミまだそれ言うの?」
「ちなみにアンナの俺への好感度は限界突破してます」
「さっき『俺には付いてないから教えてくれ』って言ってたよね?」
「分かったんです、付いてなどいなくてもアンナも俺の事を愛してくれているのだと」
「あはは、そう・・・」
「・・・フィンの俺への好感度は・・・高い、筈だ・・・」
「フィン君レインの事大好きだよね!!?」
手を組み、自信なさげに暗く俯くレインの姿が見ていられなくなってマックスは即座にフィンに確認を取る。
わさびを付け過ぎてつーんとなっていたマッシュにお茶を渡してやりながらフィンは「え?急に何ですか」と驚きつつも素直に頷く。
「何が何だかよく分からないですが兄さまの事はとっても大好きですよ。今も昔もこれからもずっとずっと大好きです!」
「ほらレイン、フィン君のお前への好感度も限界突破してるぞ!お兄ちゃん大好きだって!」
自信持てって!とマックスはレインの肩を叩いてレインを励ます。
好感度限界突破の下りは聞いていなかったフィンは何が何だか分からないままだったが、少し明るくなったレインをもっと元気な気持ちにさせようともやしのナムルを出してあげた。
弟の気遣いと優しさにレインはとても嬉しそうにするのだった。
そんな仲睦まじい兄弟愛が繰り広げられている一方でレモンがゴブリンゲームの感想を話しながらマッシュに詰め寄っている。
「マッシュ君、ゴブリンゲーム楽しかったですね!またみんなで遊びましょう!」
「うん。今度はアベル君たちも誘ってみよっか。七魔牙のメンバーのみんなを入れたら結構な大人数になるだろうし」
「ちったぁメタ推理とかもなくなって盛り上がるかもな!マックス先輩もどうっすか?」
「お、いいねぇ。俺、ゴブリンゲーム得意だから場を荒らしちゃうかもよ?ゴブリンとして何度も騙して来たからな」
「あら先輩、サイコパスの才能がおありでして?」
「おありでしてよ?」
「何故お嬢様口調・・・」
「僕もゴブリン力を磨くよざます」
「マッシュ君に伝染した!?でも微妙に変!!」
寮のキッチンは賑やかな笑いに包まれるのだった。
オマケ
あらすじ:ガチでゴブリンが紛れ込んだ
「もうまどろっこしいんで僕に殴られる覚悟がある人だけ嘘をついて下さい」
「僕はゴブリンじゃないよマッシュ君!信じて!!」(半泣きのフィン)
「あ゙あ゙?」(フィンを守るようにして前に立つレインwithパルチザン)
「私もゴブリンじゃないです!この婚姻届けが何よりの証拠です!!」(相変わらず重いレモン)
「俺がゴブリンならこのペンダントを開けられる筈がない。おはようアンナ、今日も元気か?『うん、お兄ちゃん!今日も元気いっぱいだよ!』」(相変わらず頭のおかしいランス)
「なんだよお前ら、ビビり過ぎだって」(なんだか余裕なドット・・・?)
「ゴブリン発見」
「ゴハァッ!!」
「躊躇いなし!!」
ちなみにドットはゴブリンによってベッドの下に押し込められていた。
END