筋肉ファンタジー

神覚者・監督生・学業の三足の草鞋を履くレインは非常に多忙である。
その為、大戦を通して再び元の兄弟仲に戻れたフィンと中々兄弟の時間を取れずにいた。
マックスに勧められたウサギに依存しなければならない程に突き放すのが極めて苦痛だった最愛の弟との距離を取り戻すという奇跡が起きたのに世の中とは無常なものである。
そして今日も今日とて神覚者の仕事で魔法局に出向いていたが少し早く上がる事が出来た。
といっても夕食の一時間くらい前の時間だ。
フィンにはウサギの世話を頼んでいるがきっともう終わっていて今は部屋に戻っているだろう。
会いに行ってもいいがマッシュ達と遊んでいたり課題を片付けているのを想像したら邪魔する訳にも行かず、足はそちらを向こうとしない。
結局今日もフィンに会えずじまいかと一人音もなく溜息を吐いて漸く辿り着いた寮の自身の部屋の扉を開ける。

「戻った」
「あ、お帰り、兄さま!」

予想だにしてなかったフィンの出迎えの声に驚いたレインは弾かれたようにそちらの方を見る。
そこにはレインのベッドに座り、ウサギ達に囲まれて困ったような表情を浮かべるフィンの姿があった。
大好きなものと大好きなものの組み合わせの光景に瞬く間に疲れを忘れてフリーズするレインを困らせてしまったと思ったのだろう、フィンは申し訳なさそうに眉根を寄せると弁解を始めた。

「ウサギ達のお世話はとっくに終わってるんだけど帰ろうとしたら囲まれちゃって・・・ウサぞうとかも膝の上からどいてくれなくて、どかそうとしたら怒るし・・・他の子達も構ってほしいみたいで全然離れてくれないんだ」
「・・・そうか」

困り果てるフィンを他所にウサギ達が一斉にレインの方を向いて視線が交わる。
ウサギ達のつぶらな瞳は主人の帰還を喜んでいるというよりは何かをやり遂げたような、褒められるのを期待して待っているような色を浮かべていた。
この時、レインとウサギ達にしか分からない何かが伝わり合う。

(よくやった、お前達)

レインが心の中でそう呟くとウサギ達は一斉にプゥプゥと鼻を鳴らし始めた。

「わっ!?な、何!?兄さまが帰ってきてご機嫌・・・とか?」
「さぁな」

曖昧に答えながらフィンの傍まで行くとフィンの左側にいたウサ子とウサ美とウサ太郎がまるでレインに場所を譲るようにフィンの背中側に避難する。
そしてレインが遠慮なくフィンの左側に腰掛けるとウサ子とウサ美とウサ太郎が再び出て来てレインの膝の上だったり傍に身を寄せて来た。
とても察しの良い愛兎達にお礼として今度リンゴを買ってきておやつに振舞おうと密かに決める。
それはそれとして折角ウサギ達が作ってくれた貴重で大切な時間を有意義に過ごす為にもレインはウサ子とウサ美とウサ太郎を順番ずつ撫でてやりながらフィンに話を振る。

「今日はこの後は急ぎの用事でもあるのか?」
「ううん、特に何もないよ」
「なら、夕飯までウサギ達の相手をしていってくれ」
「それは全然いいけど・・・今日はどうしたんだろう?いつもはこんな事ないのに」
「さぁな」
「あ、そういえば今日の魔法史のテストね、兄さまが教えてくれたお陰で高得点が取れたんだよ!先生にも褒められて―――」

ニコニコと笑顔を浮かべながら今日あった事を報告するフィンの声に耳を澄ませる。
日常の話は愚か、こうして声を聴くのもここ最近なかった。
けれどウサギ達がその機会をこうして作ってくれた。
リンゴのついでに高級なニンジンも買って来てあげようとレインはもう一つ密かに決めるのであった。





END
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