筋肉ファンタジー

レインの建てた家で二人で住み始めてしばらくした頃。
いつものように大きなベッドで二人並んで寝ていたある夜、フィンはふと目を覚ました。

(んん・・・トイレ・・・)

隣で眠る兄を起こさないようにそっと静かにベッドから抜け出してフィンは用を足しに行った。
心地の良い眠気が遠のかない内にさっさと用を済ませて手を洗い、寝室に戻って扉を開ける。
するとすぐ目の前にレインが立っていた。
たった今起きたのだろう、暗闇に慣れた目には起きたてぽやぽやの様子が見て取れた。

「あれ?兄さま、どうしたの?」
「・・・どこに行っていた」
「どこって・・・トイレだけど?」
「俺に黙ってどこかに行くな」

びっくりする程の過保護発言にフィンは一瞬動きを止める。
けれど聞き覚えのある兄のセリフに、ああ、と気付いて小さく噴き出す。

「兄さま、ここは兄さまと僕の家だよ?危ない事なんてない。でしょ?」

先程のレインのセリフは路上暮らし時代にフィンによく言っていたセリフだ。
危険と隣り合わせの路上において無力な子供なんてのは犯罪のターゲットにされやすい。
特にフィンはナルコスなどの攻撃魔法が使える年齢ではなかったので反撃手段がないに等しかった。
そうした事からレインは度々フィンに傍を離れるな、黙ってどこかに行くなと言い聞かせていたのである。
まさかその台詞をこの歳になっても聞く事になろうとは、と小さく笑い声を漏らす。
きっとレインは寝ぼけているのだろう。
その証拠にほんの少し首を傾げて逡巡した後、フィンの言っている事を理解したのかバツが悪そうに目を逸らした。

「・・・泥棒がいたら危ねぇだろ」
「兄さまが僕やウサギ達の為に徹底して防犯魔法を張り巡らせたのに?」
「うるせぇ。とっとと寝るぞ」

手を引っ張られて強制的にベッドに連行される。
それでもフィンはクスクスと笑い声を漏らし続けた。
二人分の体温が抜け出した事でベッドの中はほんの少しだけ冷えてしまっていた。
眠気が遠ざかりそうになったフィンだったがレインがぎゅっと抱き締めて頭を撫でてくれたので途端に眠気が舞い戻ってくる。

(あの頃と同じだぁ・・・)

過酷な時期を二人だけで生きていた頃、寒がったり夜も泣いていたフィンをレインはいつもこうして抱き締めて頭を撫でてくれていた。
とても安心出来てフィンはいつもすぐに寝入っていた。
勿論それは今も同じで、フィンの瞼は瞬く間に重くなって落ちていく。

「・・・おやすみ、フィン」

フィンが寝入ったのを確認してからレインもゆっくり目を閉じて眠りに落ちるのだった。






END
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