エイムズ兄弟とイベント
一年の終わりへと真っ直ぐに進む12月最後のイベントはクリスマス。
漸く兄と元通りの兄弟仲に戻れた上での久しぶりのクリスマスという事でフィンは兄へのプレゼントについて張り切っていた。
しかし―――
「え?マフラーがいいの?」
なんと驚く事にその兄直々にクリスマスプレゼントの中身を指定されたのだ。
口数の少ないレインは静かに頷くのみでフィンは戸惑う。
「それはまぁ、別にいいけど・・・でも兄さま、手編みのマフラー持ってなかった?ウサギ柄のやつ」
「たった今手袋になる運命が決まった」
「ウサギ柄のマフラーが一瞬にして毛糸玉に!?」
つい先程までレインの首元を温めていたウサギ柄のマフラーが目にも止まらぬ早さで毛糸玉に様変わりし、レインの手の中に収まる。
手先の器用なレインは裁縫が得意だが編み物も上手で、市販で売っている商品と遜色ない程の出来栄えだ。
かくいうフィンもレインにウサギ柄のマフラーを編んでもらって愛用しているくらいだ。
なのでわざわざフィンがクリスマスプレゼントに用意しなくてもレインが自分で編んだウサギ柄のマフラーを使えば良いと思うのだが兄直々のお願いとあらばフィンも聞かない訳にはいかない。
「じゃあマフラーにするね?ウサギ柄のがあるか分からないけど」
「ないならそれで良い。お前のセンスに任せる」
「うっ、一番プレッシャーがかかる言葉・・・」
ずしりと重く圧し掛かる兄の言葉にフィンの肩はガクッと下がる。
対するレインは『フィンが選んだマフラーなら全部喜んで受け取って使うから本当に何でも良い』という意味で任せると言ったので何故フィンがプレッシャーを感じるのか理解が及ばなかった。
相変わらず言葉の足りない兄である。
そうして訪れたクリスマス当日。
二人で一緒に作ったクリスマスのご馳走やケーキを堪能した後はお待ちかねのプレゼント交換の時間。
温かい部屋で愛兎達に囲まれながら二人はプレゼントを贈り合った。
「はい、兄さま。リクエスト通りのマフラーだよ」
「ああ、助かる」
無表情だが声が僅かばかり弾んでいるのをフィンは聞き逃さない。
喜んでくれているようだがプチサプライズを用意しているのでもっと喜んでくれる事だろう。
丁寧に包装紙を解いていく兄を見守るフィンの瞳は悪戯っ子のように輝いていた。
「これは・・・グレーのウサギのマフラーか。悪くない」
「でしょ?ウサギのデザインもクールだから兄さまに似合うと思ったんだ」
流石は俺の弟、世界一のセンスだ、というのをレインは相変わらず心の中で呟く。
けれど嬉しそうにしている雰囲気はフィンに伝わっているので問題はなかった。
マフラーを取り出して袋をテーブルに置こうとしたところで重みが残っている事に気付く。
まだ何か入っているのだろうかと思って中を覗き込むとパステルカラーの黄色のタオルが入っているのが見えた。
手を伸ばして掴むとフワフワの手触りが伝わり、取り出して広げるとそれは可愛らしいウサギ柄のタオルであった。
「タオル・・・?」
「可愛いからついでに買っちゃった。兄さまが好きそうなデザインだし、喜ぶかと思って」
「一生大切にする」
「気に入ってくれたみたいで良かったよ!」
兄の重たい発言には慣れっこなフィンは嬉しそうに笑った。
それから少しだけ時は流れて年明けの正月の空気が薄れた頃。
レインはフィンからクリスマスプレゼントで貰ったマフラーを巻いてマックスと共にイーストンに訪れていた。
今回は神覚者としてではない、OBとしての訪問だ。
イーストンではOB・OG会というものがあり、在校生と交流した後に同窓会が開かれる。
レイン自身はあまりそうしたものに興味はなかったのだが親友のマックスに誘われてしまっては断れない。
それにこのイベントを理由にフィンに会いに行く事が出来る。
同窓会も適当なタイミングで抜け出してギリギリまでフィンと一緒にいるつもりだ。
だが、レインがこの催しに参加したのにはもう一つの目的があった。
それは―――
「おや、レインではないですか」
アビスに会う事。
そして今まさにその本人が声をかけて来た。
更に都合の良い事にいつかのクリスマス会のプレゼント交換で当てたというフィンが用意したプレゼントのマフラーを巻いて。
「どうも、お久しぶりです」
「ああ」
「この間の新聞読みましたよ。ドラゴン退治で大活躍したそうですね」
「大した事じゃねぇ。それよりお前のそのマフラーはフィンから貰った物だったな?」
「ええ。正確にはお誘いいただいたクリスマス会のプレゼント交換で当たった物ですが」
「らしいな。俺もこの間のクリスマスでフィンからマフラーを貰った」
「良かったですね。とてもよく似合ってますよ」
「当然だ。フィンが俺の為に選んで買った物だからな」
「ウサギ柄というのがそれを裏付けてますね」
「俺の為に選んで買ったからな」
「は、はぁ・・・?」
『俺の為に選んで買った』を二度も口にしてウサギ柄のマフラーを強調するレインにアビスは戸惑う。
彼にしては珍しい自慢にどう反応して良いか分からないでいた。
少なくともアビスの知っているレインはたとえ神覚者になろうとも溺愛する弟が二本線に覚醒して貴重で稀有な回復魔法を覚えようともひけらかしたり自慢をするような真似はしなかった。
むしろ神覚者になってもその瞳は遠いゴールを見つめており、溺愛する弟が回復魔法を覚えたら悪い人間に利用されないようになるべく隠そうとするようなそんな人間であった筈だ。
それをこんなマフラー如きを自慢するとはどういった了見なのか。
いくら溺愛する弟にクリスマスプレゼントで贈ってもらったからといってここまで自慢するのもレインにしては何だかおかしな話だ。
一体どういう事なのかと助けを求めてマックスに視線を送ると彼は笑いを堪えるように肩を震わせていた。
「あ、兄さま!」
「・・・悪いが話はここまでだ」
溺愛する弟ことフィンの登場に真っ先に反応したレインは一方的に話を打ち切ってその場を後にする。
残されて呆然とするアビスの傍に未だ笑いを堪えているマックスがやってきて肩を叩く。
「ごめんな、アビス。レインの奴はどうしてもお前に対抗したかったみたいでさ」
「対抗?」
「ほら、お前が使ってるそのマフラーってフィン君からのだろ?クリスマス会のプレゼント交換で当てたっていうさ。レインはそれが羨ましかったんだよ。だからわざわざフィン君にクリスマスプレゼントはフィン君が選んだマフラーがいいってお願いしたんだよ。アビスが貰ったマフラーは誰が使っても問題ないように選んだのに対して自分のはフィン君が自分専用に選んでくれたものだぞって」
「ふふっ、そこまでして対抗したかったんですね」
いつもの厳格な雰囲気とは裏腹にまるで子供のような理由と行動にアビスは思わず吹き出して静かに笑う。
誰もが憧れる戦の神杖レイン・エイムズの意外にも子供っぽい一面が見れたのは大変貴重である。
そしてやはりというか、その一面に関係しているのがレインの溺愛する弟のフィンというのが微笑ましくてより一層笑いが込み上げてくる。
「私は知らない内に罪深い事をしていたようですね」
「大罪レベルだぞ~?まぁレインの中ではフィン君に選んでもらったマフラーを自慢出来てチャラになったと思うけどな」
「意外に子供っぽいところがあるんですね」
「フィン君が絡むと顕著だぞ」
「何となく想像がつきます」
二人は弟と話し込んで幸せいっぱいのレインを見てもう一度噴き出した。
END
漸く兄と元通りの兄弟仲に戻れた上での久しぶりのクリスマスという事でフィンは兄へのプレゼントについて張り切っていた。
しかし―――
「え?マフラーがいいの?」
なんと驚く事にその兄直々にクリスマスプレゼントの中身を指定されたのだ。
口数の少ないレインは静かに頷くのみでフィンは戸惑う。
「それはまぁ、別にいいけど・・・でも兄さま、手編みのマフラー持ってなかった?ウサギ柄のやつ」
「たった今手袋になる運命が決まった」
「ウサギ柄のマフラーが一瞬にして毛糸玉に!?」
つい先程までレインの首元を温めていたウサギ柄のマフラーが目にも止まらぬ早さで毛糸玉に様変わりし、レインの手の中に収まる。
手先の器用なレインは裁縫が得意だが編み物も上手で、市販で売っている商品と遜色ない程の出来栄えだ。
かくいうフィンもレインにウサギ柄のマフラーを編んでもらって愛用しているくらいだ。
なのでわざわざフィンがクリスマスプレゼントに用意しなくてもレインが自分で編んだウサギ柄のマフラーを使えば良いと思うのだが兄直々のお願いとあらばフィンも聞かない訳にはいかない。
「じゃあマフラーにするね?ウサギ柄のがあるか分からないけど」
「ないならそれで良い。お前のセンスに任せる」
「うっ、一番プレッシャーがかかる言葉・・・」
ずしりと重く圧し掛かる兄の言葉にフィンの肩はガクッと下がる。
対するレインは『フィンが選んだマフラーなら全部喜んで受け取って使うから本当に何でも良い』という意味で任せると言ったので何故フィンがプレッシャーを感じるのか理解が及ばなかった。
相変わらず言葉の足りない兄である。
そうして訪れたクリスマス当日。
二人で一緒に作ったクリスマスのご馳走やケーキを堪能した後はお待ちかねのプレゼント交換の時間。
温かい部屋で愛兎達に囲まれながら二人はプレゼントを贈り合った。
「はい、兄さま。リクエスト通りのマフラーだよ」
「ああ、助かる」
無表情だが声が僅かばかり弾んでいるのをフィンは聞き逃さない。
喜んでくれているようだがプチサプライズを用意しているのでもっと喜んでくれる事だろう。
丁寧に包装紙を解いていく兄を見守るフィンの瞳は悪戯っ子のように輝いていた。
「これは・・・グレーのウサギのマフラーか。悪くない」
「でしょ?ウサギのデザインもクールだから兄さまに似合うと思ったんだ」
流石は俺の弟、世界一のセンスだ、というのをレインは相変わらず心の中で呟く。
けれど嬉しそうにしている雰囲気はフィンに伝わっているので問題はなかった。
マフラーを取り出して袋をテーブルに置こうとしたところで重みが残っている事に気付く。
まだ何か入っているのだろうかと思って中を覗き込むとパステルカラーの黄色のタオルが入っているのが見えた。
手を伸ばして掴むとフワフワの手触りが伝わり、取り出して広げるとそれは可愛らしいウサギ柄のタオルであった。
「タオル・・・?」
「可愛いからついでに買っちゃった。兄さまが好きそうなデザインだし、喜ぶかと思って」
「一生大切にする」
「気に入ってくれたみたいで良かったよ!」
兄の重たい発言には慣れっこなフィンは嬉しそうに笑った。
それから少しだけ時は流れて年明けの正月の空気が薄れた頃。
レインはフィンからクリスマスプレゼントで貰ったマフラーを巻いてマックスと共にイーストンに訪れていた。
今回は神覚者としてではない、OBとしての訪問だ。
イーストンではOB・OG会というものがあり、在校生と交流した後に同窓会が開かれる。
レイン自身はあまりそうしたものに興味はなかったのだが親友のマックスに誘われてしまっては断れない。
それにこのイベントを理由にフィンに会いに行く事が出来る。
同窓会も適当なタイミングで抜け出してギリギリまでフィンと一緒にいるつもりだ。
だが、レインがこの催しに参加したのにはもう一つの目的があった。
それは―――
「おや、レインではないですか」
アビスに会う事。
そして今まさにその本人が声をかけて来た。
更に都合の良い事にいつかのクリスマス会のプレゼント交換で当てたというフィンが用意したプレゼントのマフラーを巻いて。
「どうも、お久しぶりです」
「ああ」
「この間の新聞読みましたよ。ドラゴン退治で大活躍したそうですね」
「大した事じゃねぇ。それよりお前のそのマフラーはフィンから貰った物だったな?」
「ええ。正確にはお誘いいただいたクリスマス会のプレゼント交換で当たった物ですが」
「らしいな。俺もこの間のクリスマスでフィンからマフラーを貰った」
「良かったですね。とてもよく似合ってますよ」
「当然だ。フィンが俺の為に選んで買った物だからな」
「ウサギ柄というのがそれを裏付けてますね」
「俺の為に選んで買ったからな」
「は、はぁ・・・?」
『俺の為に選んで買った』を二度も口にしてウサギ柄のマフラーを強調するレインにアビスは戸惑う。
彼にしては珍しい自慢にどう反応して良いか分からないでいた。
少なくともアビスの知っているレインはたとえ神覚者になろうとも溺愛する弟が二本線に覚醒して貴重で稀有な回復魔法を覚えようともひけらかしたり自慢をするような真似はしなかった。
むしろ神覚者になってもその瞳は遠いゴールを見つめており、溺愛する弟が回復魔法を覚えたら悪い人間に利用されないようになるべく隠そうとするようなそんな人間であった筈だ。
それをこんなマフラー如きを自慢するとはどういった了見なのか。
いくら溺愛する弟にクリスマスプレゼントで贈ってもらったからといってここまで自慢するのもレインにしては何だかおかしな話だ。
一体どういう事なのかと助けを求めてマックスに視線を送ると彼は笑いを堪えるように肩を震わせていた。
「あ、兄さま!」
「・・・悪いが話はここまでだ」
溺愛する弟ことフィンの登場に真っ先に反応したレインは一方的に話を打ち切ってその場を後にする。
残されて呆然とするアビスの傍に未だ笑いを堪えているマックスがやってきて肩を叩く。
「ごめんな、アビス。レインの奴はどうしてもお前に対抗したかったみたいでさ」
「対抗?」
「ほら、お前が使ってるそのマフラーってフィン君からのだろ?クリスマス会のプレゼント交換で当てたっていうさ。レインはそれが羨ましかったんだよ。だからわざわざフィン君にクリスマスプレゼントはフィン君が選んだマフラーがいいってお願いしたんだよ。アビスが貰ったマフラーは誰が使っても問題ないように選んだのに対して自分のはフィン君が自分専用に選んでくれたものだぞって」
「ふふっ、そこまでして対抗したかったんですね」
いつもの厳格な雰囲気とは裏腹にまるで子供のような理由と行動にアビスは思わず吹き出して静かに笑う。
誰もが憧れる戦の神杖レイン・エイムズの意外にも子供っぽい一面が見れたのは大変貴重である。
そしてやはりというか、その一面に関係しているのがレインの溺愛する弟のフィンというのが微笑ましくてより一層笑いが込み上げてくる。
「私は知らない内に罪深い事をしていたようですね」
「大罪レベルだぞ~?まぁレインの中ではフィン君に選んでもらったマフラーを自慢出来てチャラになったと思うけどな」
「意外に子供っぽいところがあるんですね」
「フィン君が絡むと顕著だぞ」
「何となく想像がつきます」
二人は弟と話し込んで幸せいっぱいのレインを見てもう一度噴き出した。
END
