なんか色々雑多
快適な日曜日。
開いてる窓からは涼しく穏やかな風が吹いていた。
「あ~いい風~」
半兵衛は横になってこの上ない限り和んでいた。
うん、今日もいい天気。
そんな時、窓から可愛らしい三毛猫が入ってきた。
半兵衛は笑顔で迎える。
「いらっしゃ~い、ミー坊」
ミー坊とは半兵衛が勝手に名づけた名前。
首輪が付いているから飼い猫なのだろうがよく遊びに来る。
半兵衛にとっては常連さんだ。
「ニャー」
「にゃー」
鳴き真似をしながら半兵衛はミー坊の喉をなでる。
嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らすミー坊。
和む一人と一匹。
そこに―――
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。
「はーい?」
とりあえず返事をして起き上がる。
ついでにミー坊を抱えて玄関の扉を開けに行った。
「どちらさまー?」
「やぁ、半兵衛」
「やっほ~。暇?」
玄関の扉を開けて現れたのは太公望と甲斐だった。
この二人の組み合わせは珍しい。
「お昼寝するから暇じゃないよ」
「よし、暇だね!これから街に出かけるわよ!」
「何しに行くの?」
「男あさりだそうだ」
「違うわよ!ボーイハントに行くだけよ!」
「人はそれを男あさりと言う」
「いいからとっと行くわよ!」
甲斐は半兵衛を無理矢理引っ張った。
それによってミー坊は逃げてしまう。
「わ~!ミー坊~!」
「よせ、半兵衛。このまま逃がしてやるんだ。食べられるぞ」
「食べないわよ!!」
そんな訳で半兵衛は甲斐に引きずられてボーイハントの旅に連れて行かれる事となった。
商店街あたり
「太公望先輩、俺を巻き込んだでしょ?」
「よく判ったな」
「だって太公望先輩が一人で甲斐ちゃんについて行くとは思わないもん」
「こんな悲しみ満ちた旅に一人では耐えられんからな」
「なんか言った?」
「「別に」」
二人は揃って首を横に振った。
喫茶「NANKA」
三人は喫茶店に入った。
ここのマスターは金髪イケメンで、名前はネメア。
甲斐の最初のターゲットだ。
一生懸命話す甲斐を余所に半兵衛はジュースを、太公望はコーヒーを飲んで雑談していた。
「お前が抱えていたミー坊はメスとオス、どっちなんだ?」
「さぁ?」
「さぁってお前・・・」
「どっちでもいいようにミー坊ってことで」
「ほう」
優雅にコーヒーを飲む太公望と嬉しそうにジュースを飲む半兵衛。
しかし、それを甲斐が邪魔する。
「次行くわよ、次」
「えー?どーして?」
「ネメアさんもう上がっちゃうの。そしたらもう用はないわ」
「不純な動機だな」
二人は引きずられるままに今度はモールにやってきた。
場所はフードコートで、時間もお昼頃なので結構人がいる。
それでも何とか席を確保して何を食べるか考える。
「何食べよっか?」
「そうだな・・・」
「タコ焼き食べるわよ!」
「えー?俺今日はタコ焼きの気分じゃ―――」
「アタシが奢ってあげるから!じゃっ、待っててね!!」
そう言って甲斐はダッシュで『徳ダコ』という名前のタコ焼き屋に並んだ。
その様子を半兵衛は腕枕を作って頭を乗せて眺めた。
「そんなにタコ焼き食べたかったのかな?」
「まさか。ただあそこの『徳ダコ』でバイトしてる趙雲が目当てなだけだ」
「あーやっぱり」
半兵衛は溜め息をつき。太公望は呆れたように頬杖をついた。
「俺、『徳ダコ』より『豊ダコ』の方が好きなんだよね」
「そうなのか?」
「うん。『徳ダコ』って徳川系列の会社が経営してるんだよ。
あの会社の社訓は節約で『徳ダコ』で使われる素材は安いしイマイチなんだ。その代わり値段は安いけどね」
「では『豊ダコ』は?」
「あそこは豊臣系列の会社が経営してて、素材はいいの使ってて美味しいんだ。その分高いけどね」
「成程」
太公望は半兵衛の言わんとする事をそれなりに理解した。
自分も味比べをして考えてみようと思う今日この頃である。
「だが、何故甲斐は一人分だけ買ってくれいいものを私たちの分まで買ったと思う?」
「三人分買えば趙雲が嬉しい顔して好感度がUPすると考えてるから」
「恐らく正解だ」
恐らくどころか大当たりだったりする。
昼食を終えた三人は次はどこに行こうかと話していた。
すると―――
「ああっ!あれは―――!!」
司馬師が紳士服売り場にいるのを甲斐が発見した。
「司馬師さ~~~~ん!!」
甲斐は一目散に司馬師に駆け寄り、あれこれと話しかけた。
そして放置プレイをくらう太公望と半兵衛。
「・・・そこにスポーツ用品があるからそこに入るとしよう」
「うん、いいよ」
司馬師にナンパする甲斐をほっといて二人はスポーツ用品店に入って行った。
太公望が真っ先に向かったのは釣りのコーナーだった。
あれこれと竿を手に取ってはチラッと見てすぐに戻すを繰り返す。
「やっぱ竿にも良し悪しがあったりするの?」
「勿論だ。私的には織田製の竿が一番だと思っているがな」
「ふーん。俺も釣りやってみようかな?」
言いながら半兵衛は適当な竿を手に取って投げる素振りをしてみた。
してみたのだが、釣竿の糸はシュルシュルと宙を舞い、一人のおっさんの頭に引っかかった。
そして釣り針はずるりとおっさんのヅラごとずり落ちて宙ぶらりんになる。
「ど、どどどどどどどーしよう!?」
「も、戻せ!」
「えー!?俺には無理!太公望先輩釣り得意でしょ!?だからお願い!!」
そう言って半兵衛は無理矢理釣竿を太公望に渡した。
「お、おい!」
「頑張って!」
「くっ!―――はあっ!!」
太公望は慣れた手つきで竿を振る。
おっさんのヅラは上手いこと元の頭の位置に戻り、釣り針と糸も無事に戻ってきた。
まさに間一髪。
「すごーい、さすが太公望先輩」
「全知全能たる私にかかればこんなものだ」
しかし、少しドキドキしたのは言うまでもない。
「でも何で飛んだんだろ?」
「大方どこぞのバカが悪戯してそのままにしたんだろうな」
「迷惑な事してくれるよね~。あ、それよりペットショップ行かない?和むよ」
「いいだろう」
そんな訳で二人は今度はペットショップに冷やかしに行く事にした。
ペットショップ
半兵衛は真っ先に子猫が入ってるショーケースの前に立った。
「子猫だ~」
半兵衛は嬉しそうな顔をしながら寝ている子猫が入ってるショーケースに顔を近づける。
子猫は一瞬起きてチラッと半兵衛を見たが、またすぐに目を閉じて寝た。
「やっぱ猫は可愛いな~」
「犬は犬で可愛いぞ?」
そう言ってる太公望の指は子犬のショーケースに押し当てられていた。
子犬はケース越しにその指を一生懸命舐めようとしている。
健気で可愛いものだ。
ペットショップへの冷やかしもそこそこに、二人はモール内を歩き回り始めた。
そんな時、半兵衛はインテリショップでサングラスを見かけ、近寄った。
「グラサン発見」
半兵衛は適当なのを一つ選んでかけて見せる。
「どうどう?チョイ悪って感じしない?」
「いや?」
「え~?」
「お前がかけるとただ遊んでる子供にしか見えないな」
「ちぇ~。じゃあ次、太公望先輩がかけてよ」
「ふむ、いいだろう」
半兵衛に言われ、太公望はサングラスを選んだ。
その中でレンズが四角いのを選んでかけて見せる。
「どうだ?」
「ん~、悔しいけど似合う。ちょっと外してみて?」
「こうか?」
「そうそう。うん、外す仕草が芸能人っぽい」
「そうか。まぁ、全知全能である私ならば当然のことだ」
太公望は小さく笑ってサングラスを元の場所に戻した。
その間に半兵衛は今度はメガネに目をつけた。
「俺がメガネしたらどうなるかな?」
「・・・名探偵コ○ン、か?」
「いいね~」
「私がしたらどうなる?」
「・・・ただのインテリキャラ?」
「“ただの”は余計だ」
二人はその場をあとにした。
二人が次に訪れた所は夏を乗り越えるグッズコーナーだった。
太公望は適当に見ていたが、半兵衛は蚊避けグッズに釘づけだ。
「蚊取り線香の買い置き買っとかないと。あ、虫を寄せ付けないアイテムか・・・これも買っとこ」
「やけに真面目に見るな」
「俺の安眠を守る大切なアイテムだからね」
半兵衛はこれまでにないくらい真面目な顔で答えた。
よっぽど虫に安眠を邪魔されるのが嫌らしい。
いや、誰でもそうか。
それでも半兵衛のこれは徹底してるかもしれない。
「やっぱムヒはこれだね。これが一番効く」
「そうなのか?」
「うん。太公望先輩もどう?」
「考えておく」
そんな訳で半兵衛は蚊避けグッズを大量に買った。
「全く、あの二人どこ行ったのよ?」
甲斐はキョロキョロと辺りを見回しながら太公望と半兵衛を探していた。
適当に歩いていると、少し離れた所で何かのリズムに合わせて叩かれる太鼓の音が聞こえた。
しかし、その太鼓の音は本物ではない。
ゲームセンターとかでよく見かけるあの太鼓の音だ。
「それにしても上手ね~。誰がやってるのかしら?」
甲斐は興味本位でゲームセンターの方に足を向けた。
そして立ち止まる。
「フルコンボ~!」
「全知全能たる私には当然の結果だ」
ゲームセンターの太鼓の音―――すなわち『和太鼓の達人』をプレイしてたのは半兵衛と太公望だった。
しかもフルコンボ出して喜んでる。
いや、それはいいか。
「アンタたち・・・何やってんの?」
「あ、甲斐ちゃんだ」
「見ての通り、和太鼓の達人をしてるのだが?」
「こんなか弱い乙女を一人にして何やってんのよ!?」
「私たちを残して男の元に走って行った奴に言われたくないな」
ごもっとも。
「それでも勝手にどっか行かないでよ。アンタたち探してる間に5人もイケメンに声かけちゃったわよ!」
「え~?それって絶対俺たちはついでに探したよね?」
「そして5人に振られたのか、哀れだな」
「うっさいわね!振られてないわよ!相手の方が急がしかったみたいで手短に済ませたのよ!」
「見事に上手くかわされてるねー」
「賢明な判断と言えよう」
「何か言った?」
甲斐が睨むと二人はすぐに首を横に振った。
ここで言い返したら熊殺しの二の舞になるかもしれない。
「まぁいいわ。今日は帰りましょ」
二人は心の中でガッツポーズをした。
よっぽど嫌だったらしい。
帰り道、甲斐はとぼとぼと歩いていた。
「あ~あ、今日もいい人捕まえられなかったな~。どうしてだと思う?」
甲斐は意見を求めたが返事はない。
「二人共?」
振り返ってみるが、太公望と半兵衛の姿はなかった。
タイ焼き屋の前
「あんこの方先に食べちゃおっと」
「邪道とは言え、クリームも美味いものだ」
二人はタイ焼き屋でタイ焼きを買って食べていた。
こみえてもイケメンな二人なので、女性客がそんな二人に見惚れてタイ焼き屋に並んでいたとか。
END
開いてる窓からは涼しく穏やかな風が吹いていた。
「あ~いい風~」
半兵衛は横になってこの上ない限り和んでいた。
うん、今日もいい天気。
そんな時、窓から可愛らしい三毛猫が入ってきた。
半兵衛は笑顔で迎える。
「いらっしゃ~い、ミー坊」
ミー坊とは半兵衛が勝手に名づけた名前。
首輪が付いているから飼い猫なのだろうがよく遊びに来る。
半兵衛にとっては常連さんだ。
「ニャー」
「にゃー」
鳴き真似をしながら半兵衛はミー坊の喉をなでる。
嬉しそうにゴロゴロと喉を鳴らすミー坊。
和む一人と一匹。
そこに―――
ピンポーン♪
インターホンが鳴った。
「はーい?」
とりあえず返事をして起き上がる。
ついでにミー坊を抱えて玄関の扉を開けに行った。
「どちらさまー?」
「やぁ、半兵衛」
「やっほ~。暇?」
玄関の扉を開けて現れたのは太公望と甲斐だった。
この二人の組み合わせは珍しい。
「お昼寝するから暇じゃないよ」
「よし、暇だね!これから街に出かけるわよ!」
「何しに行くの?」
「男あさりだそうだ」
「違うわよ!ボーイハントに行くだけよ!」
「人はそれを男あさりと言う」
「いいからとっと行くわよ!」
甲斐は半兵衛を無理矢理引っ張った。
それによってミー坊は逃げてしまう。
「わ~!ミー坊~!」
「よせ、半兵衛。このまま逃がしてやるんだ。食べられるぞ」
「食べないわよ!!」
そんな訳で半兵衛は甲斐に引きずられてボーイハントの旅に連れて行かれる事となった。
商店街あたり
「太公望先輩、俺を巻き込んだでしょ?」
「よく判ったな」
「だって太公望先輩が一人で甲斐ちゃんについて行くとは思わないもん」
「こんな悲しみ満ちた旅に一人では耐えられんからな」
「なんか言った?」
「「別に」」
二人は揃って首を横に振った。
喫茶「NANKA」
三人は喫茶店に入った。
ここのマスターは金髪イケメンで、名前はネメア。
甲斐の最初のターゲットだ。
一生懸命話す甲斐を余所に半兵衛はジュースを、太公望はコーヒーを飲んで雑談していた。
「お前が抱えていたミー坊はメスとオス、どっちなんだ?」
「さぁ?」
「さぁってお前・・・」
「どっちでもいいようにミー坊ってことで」
「ほう」
優雅にコーヒーを飲む太公望と嬉しそうにジュースを飲む半兵衛。
しかし、それを甲斐が邪魔する。
「次行くわよ、次」
「えー?どーして?」
「ネメアさんもう上がっちゃうの。そしたらもう用はないわ」
「不純な動機だな」
二人は引きずられるままに今度はモールにやってきた。
場所はフードコートで、時間もお昼頃なので結構人がいる。
それでも何とか席を確保して何を食べるか考える。
「何食べよっか?」
「そうだな・・・」
「タコ焼き食べるわよ!」
「えー?俺今日はタコ焼きの気分じゃ―――」
「アタシが奢ってあげるから!じゃっ、待っててね!!」
そう言って甲斐はダッシュで『徳ダコ』という名前のタコ焼き屋に並んだ。
その様子を半兵衛は腕枕を作って頭を乗せて眺めた。
「そんなにタコ焼き食べたかったのかな?」
「まさか。ただあそこの『徳ダコ』でバイトしてる趙雲が目当てなだけだ」
「あーやっぱり」
半兵衛は溜め息をつき。太公望は呆れたように頬杖をついた。
「俺、『徳ダコ』より『豊ダコ』の方が好きなんだよね」
「そうなのか?」
「うん。『徳ダコ』って徳川系列の会社が経営してるんだよ。
あの会社の社訓は節約で『徳ダコ』で使われる素材は安いしイマイチなんだ。その代わり値段は安いけどね」
「では『豊ダコ』は?」
「あそこは豊臣系列の会社が経営してて、素材はいいの使ってて美味しいんだ。その分高いけどね」
「成程」
太公望は半兵衛の言わんとする事をそれなりに理解した。
自分も味比べをして考えてみようと思う今日この頃である。
「だが、何故甲斐は一人分だけ買ってくれいいものを私たちの分まで買ったと思う?」
「三人分買えば趙雲が嬉しい顔して好感度がUPすると考えてるから」
「恐らく正解だ」
恐らくどころか大当たりだったりする。
昼食を終えた三人は次はどこに行こうかと話していた。
すると―――
「ああっ!あれは―――!!」
司馬師が紳士服売り場にいるのを甲斐が発見した。
「司馬師さ~~~~ん!!」
甲斐は一目散に司馬師に駆け寄り、あれこれと話しかけた。
そして放置プレイをくらう太公望と半兵衛。
「・・・そこにスポーツ用品があるからそこに入るとしよう」
「うん、いいよ」
司馬師にナンパする甲斐をほっといて二人はスポーツ用品店に入って行った。
太公望が真っ先に向かったのは釣りのコーナーだった。
あれこれと竿を手に取ってはチラッと見てすぐに戻すを繰り返す。
「やっぱ竿にも良し悪しがあったりするの?」
「勿論だ。私的には織田製の竿が一番だと思っているがな」
「ふーん。俺も釣りやってみようかな?」
言いながら半兵衛は適当な竿を手に取って投げる素振りをしてみた。
してみたのだが、釣竿の糸はシュルシュルと宙を舞い、一人のおっさんの頭に引っかかった。
そして釣り針はずるりとおっさんのヅラごとずり落ちて宙ぶらりんになる。
「ど、どどどどどどどーしよう!?」
「も、戻せ!」
「えー!?俺には無理!太公望先輩釣り得意でしょ!?だからお願い!!」
そう言って半兵衛は無理矢理釣竿を太公望に渡した。
「お、おい!」
「頑張って!」
「くっ!―――はあっ!!」
太公望は慣れた手つきで竿を振る。
おっさんのヅラは上手いこと元の頭の位置に戻り、釣り針と糸も無事に戻ってきた。
まさに間一髪。
「すごーい、さすが太公望先輩」
「全知全能たる私にかかればこんなものだ」
しかし、少しドキドキしたのは言うまでもない。
「でも何で飛んだんだろ?」
「大方どこぞのバカが悪戯してそのままにしたんだろうな」
「迷惑な事してくれるよね~。あ、それよりペットショップ行かない?和むよ」
「いいだろう」
そんな訳で二人は今度はペットショップに冷やかしに行く事にした。
ペットショップ
半兵衛は真っ先に子猫が入ってるショーケースの前に立った。
「子猫だ~」
半兵衛は嬉しそうな顔をしながら寝ている子猫が入ってるショーケースに顔を近づける。
子猫は一瞬起きてチラッと半兵衛を見たが、またすぐに目を閉じて寝た。
「やっぱ猫は可愛いな~」
「犬は犬で可愛いぞ?」
そう言ってる太公望の指は子犬のショーケースに押し当てられていた。
子犬はケース越しにその指を一生懸命舐めようとしている。
健気で可愛いものだ。
ペットショップへの冷やかしもそこそこに、二人はモール内を歩き回り始めた。
そんな時、半兵衛はインテリショップでサングラスを見かけ、近寄った。
「グラサン発見」
半兵衛は適当なのを一つ選んでかけて見せる。
「どうどう?チョイ悪って感じしない?」
「いや?」
「え~?」
「お前がかけるとただ遊んでる子供にしか見えないな」
「ちぇ~。じゃあ次、太公望先輩がかけてよ」
「ふむ、いいだろう」
半兵衛に言われ、太公望はサングラスを選んだ。
その中でレンズが四角いのを選んでかけて見せる。
「どうだ?」
「ん~、悔しいけど似合う。ちょっと外してみて?」
「こうか?」
「そうそう。うん、外す仕草が芸能人っぽい」
「そうか。まぁ、全知全能である私ならば当然のことだ」
太公望は小さく笑ってサングラスを元の場所に戻した。
その間に半兵衛は今度はメガネに目をつけた。
「俺がメガネしたらどうなるかな?」
「・・・名探偵コ○ン、か?」
「いいね~」
「私がしたらどうなる?」
「・・・ただのインテリキャラ?」
「“ただの”は余計だ」
二人はその場をあとにした。
二人が次に訪れた所は夏を乗り越えるグッズコーナーだった。
太公望は適当に見ていたが、半兵衛は蚊避けグッズに釘づけだ。
「蚊取り線香の買い置き買っとかないと。あ、虫を寄せ付けないアイテムか・・・これも買っとこ」
「やけに真面目に見るな」
「俺の安眠を守る大切なアイテムだからね」
半兵衛はこれまでにないくらい真面目な顔で答えた。
よっぽど虫に安眠を邪魔されるのが嫌らしい。
いや、誰でもそうか。
それでも半兵衛のこれは徹底してるかもしれない。
「やっぱムヒはこれだね。これが一番効く」
「そうなのか?」
「うん。太公望先輩もどう?」
「考えておく」
そんな訳で半兵衛は蚊避けグッズを大量に買った。
「全く、あの二人どこ行ったのよ?」
甲斐はキョロキョロと辺りを見回しながら太公望と半兵衛を探していた。
適当に歩いていると、少し離れた所で何かのリズムに合わせて叩かれる太鼓の音が聞こえた。
しかし、その太鼓の音は本物ではない。
ゲームセンターとかでよく見かけるあの太鼓の音だ。
「それにしても上手ね~。誰がやってるのかしら?」
甲斐は興味本位でゲームセンターの方に足を向けた。
そして立ち止まる。
「フルコンボ~!」
「全知全能たる私には当然の結果だ」
ゲームセンターの太鼓の音―――すなわち『和太鼓の達人』をプレイしてたのは半兵衛と太公望だった。
しかもフルコンボ出して喜んでる。
いや、それはいいか。
「アンタたち・・・何やってんの?」
「あ、甲斐ちゃんだ」
「見ての通り、和太鼓の達人をしてるのだが?」
「こんなか弱い乙女を一人にして何やってんのよ!?」
「私たちを残して男の元に走って行った奴に言われたくないな」
ごもっとも。
「それでも勝手にどっか行かないでよ。アンタたち探してる間に5人もイケメンに声かけちゃったわよ!」
「え~?それって絶対俺たちはついでに探したよね?」
「そして5人に振られたのか、哀れだな」
「うっさいわね!振られてないわよ!相手の方が急がしかったみたいで手短に済ませたのよ!」
「見事に上手くかわされてるねー」
「賢明な判断と言えよう」
「何か言った?」
甲斐が睨むと二人はすぐに首を横に振った。
ここで言い返したら熊殺しの二の舞になるかもしれない。
「まぁいいわ。今日は帰りましょ」
二人は心の中でガッツポーズをした。
よっぽど嫌だったらしい。
帰り道、甲斐はとぼとぼと歩いていた。
「あ~あ、今日もいい人捕まえられなかったな~。どうしてだと思う?」
甲斐は意見を求めたが返事はない。
「二人共?」
振り返ってみるが、太公望と半兵衛の姿はなかった。
タイ焼き屋の前
「あんこの方先に食べちゃおっと」
「邪道とは言え、クリームも美味いものだ」
二人はタイ焼き屋でタイ焼きを買って食べていた。
こみえてもイケメンな二人なので、女性客がそんな二人に見惚れてタイ焼き屋に並んでいたとか。
END