なんか色々雑多
今日は皆で宴会。
日々の激戦を労うという名目で開かれた。
困難がまだ目の前で立ちはだかっているというのに人間はこうやって羽を伸ばす。
しかし、これが逆に次の戦で大きな力を発揮する手助けになる秘訣でもある。
「お疲れ様、半兵衛」
孫呉の姫君にして虎の娘・孫尚香が半兵衛の杯に酒を注ぐ。
中々気の利いた娘だ。
周りの者はおしとやかにしろと言っているらしいが、このように気が利いていればその必要はないように思える。
おしとやかでなくても気遣いさえ出来ていればそれでいいと私は思う。
「はい、太公望さん。お疲れ様!」
「甲斐姫よ、言われてやるのは気遣いではなくて白々しいだけだ」
「うそっ!?」
気を取り直して二人の会話に少し耳を傾けよう。
「半兵衛は今日は大活躍だったじゃない。とってもカッコ良かったわよ」
「いや~、それ程でもないですよ~。尚香殿も大活躍だったじゃないですか」
「それでも半兵衛には適わないわ」
「またまた~。そんな謙遜しちゃって~」
仲良く談笑する半兵衛と尚香。
ここまでだったら他の者たちの会話に耳を傾けていた方が楽しいが、それをしない理由が一つ。
それは―――
「ならば姫の労いは私がします」
孫呉の若き軍師・陸遜の存在が二人の間に乱入して来るのが予想の範囲内だったからだ。
少し面白くなりそうだから他に耳を傾ける訳には行かん。
「どうぞ、姫」
「ありがとう、陸遜」
尚香は気づいていないようだが陸遜の行動には、彼にとっては大きな意味がある。
それは尚香を取られまいとするある種の防衛策だ。
身分の差はあれど陸遜は尚香に好意を持っている。
しかし鈍感な尚香は全くそれに気づかず、自由奔放に動き回る。
ちなみに、陸遜の最大のライバルは半兵衛だ。
何でもキャラが被るとか被らないとか。
「ニャー」
「猫の鳴き声?」
「もしかして―――」
「はーい、今回は三毛猫を拾っちゃいました~」
そう言って半兵衛は帽子の中から三毛猫を取り出した。
また拾ったのか。
まぁ、猫は嫌いではないし、むしろ好きの部類だ。
後で私も可愛がるとしよう。
「可愛い!抱っこさせて?」
「いいですよ」
「今度はどこで拾ってきたの?」
「寿春城に立ち寄った時についてきたんですよ」
「そうなんだ~」
言いながら尚香は猫を愛でる。
陸遜はそれを微笑ましそうに眺める。
しかし、半兵衛に何か負けたという悔しさのオーラが見えるのは気のせいだろうか?
「帰ったぞ!」
おや、鍛練に出ていた孫権が帰ってきたようだ。
松風に乗って顔を真っ赤に・・・・・・真っ赤に?
「二次会はここか~!?」
違う。
「権兄様・・・酔ってる・・・」
「鍛練に出た筈がどーして酔ってるんだろう・・・」
「鍛練に向かった所は小田原城ですし・・・パーティーを組んだのは周泰殿と酒呑童子―――」
「「あ・・・」」
孫権と酒呑童子を組ませる事を今後一切禁止しよう。
「すまん、少し喉が渇いたからと言っていたから瓢箪の中の酒を飲ませたらこんなことになった」
「お前はあの大惨事を忘れたのか?」
「あれは人間の芸ではなかったのか?」
「あれが人の芸なら私はとうに人を嫌っている」
酔っ払い孫権を見て逃げる者や便乗すれば難を逃れられると考える者。
明らかに前者が賢明な考えであるが逃げる事は皆無。
なぜなら―――
「逃げるな!愚か者!!!」
いつにない孫権の威厳ある一喝に、考えとは裏腹に体が逃げる事をやめてしまうからだ。
恐らくは本能的に逃げれば死ぬ、という思いがあるからだろう。
それにしても、酒はここまで人を変える。
しかもこれは悪い意味でだ。
「よく見ておけ、かぐや。酒に逃げるとこのようになる」
「はい、太公望様」
教育は今の内にしっかりしておかなければいけない。
でないと甲斐姫のように品のない攻撃の掛け声をしてしまうからな。
「それ酷くないですか!?」
「事実だ」
さて、酔っ払った孫権に対して今度はどんな大惨事が起こるか見物だ。
「福島!!」
「な、なんだよ?」
「今すぐ一人で妖蛇を討伐してこい!!」
「ええっ!?無茶ッスよ!!」
「そこの道から行けるから行ってこい!!」
「マジッスか~!?」
項垂れながらも福島正則は妖蛇討伐ミッションに出かけた。
普通だったら行くふりをして逃げるものだがあの男の頭の回転は鈍く、
そんなことを思いつかずに真面目に一人で妖蛇を討伐しにいくだろう。
心の中で合掌しておくとするか。
「加藤清正!!」
「な、なんだ?」
「好きな女を大声で言ってみろ!!」
「ええーーーーっ!!!??」
おや、今度は公開処刑か。
いくらねね大好き丸出しの加藤清正でもこれは公言出来ぬか?
しかも大声で。
「どうした、言えぬのか!?」
「お、俺は・・・おねね様が大好きだーーーーーーーーーー!!!!」
気持ち悪いな。
「かぐや、あんな男を好きになるなよ」
「はい、太公望様。それに守備範囲外ですから大丈夫です」
よしよし、いい子だ。
それにしても、あの温厚なかぐやにまで見放されるとは・・・加藤清正も終わったな。
「だからどうした!!」
孫権は何が気に入らなかったのは判らないが、理不尽にも加藤清正を背負い投げした。
これはこれで良かったかもしれん。
「次は伏犠!!モノマネをしろぉ!!」
「マジか・・・」
マジだ、やれ。
「反抗期か?」
「逃げてきたのか?女禍」
「退散して来たと言ってくれ」
まぁどうでもいい。
さて、伏犠のモノマネを拝見するとしよう。
「そ、そうだな・・・」
「早くしろ」
「た、太公望の真似!――――全知全能たる私に全て任せるといい」
後で殺す。
「手伝います、太公望様」
「私も手伝おう。あんなモノマネは面白くない」
「同感です」
理由はどうあれ、協力者がいるのはいい。
合体無双が出来るからな。
「わっはっはっはっ!!」
何?笑っただと?
「面白くないわーーー!!!」
違ったようだ。
伏犠は哀れにも大筒に入れられて打ち上げられた。
ざまぁ。
「権兄様やめて!みんな一生懸命やってるじゃない!」
「それでも面白くないものは面白くないのだ!」
「そうだ権!次は夏候惇を指名してやろーぜ!」
「はーい、黙っててねー」
余計な口を挟んできた孫策を半兵衛が大筒に入れて打ち上げる。
奥方である大喬は慌てもせず、ただ見ていた。
その目はとても冷たく・・・そう、伏犠が他の女にセクハラをした時の女禍の軽蔑の眼差しくらい冷たかった。
それもその筈、状況が悪化しそうになったのだ。
無理もない。
「伏犠様は他の女性にセクシュアル・ハラスメントをしたのですか?」
「そうだ。だからあの男の事はゴミを見るような目で見ていいんだぞ」
「いや、それでは甘い。かぐや、うじ虫は好きか?」
「大嫌いにございます」
「ならばその大嫌いなうじ虫を見るような目で伏犠を見るんだ。いいな?」
「はい」
正しい教育をするのは気持ちがいい。
さて、宴はどうなった?
「えぇ~い!兄に逆らうと言うのか尚香!!」
「逆らうわよ!みんなの為にも!」
勇ましい姫君だ。
こういうのは嫌いではない。
それに周りの者も彼女を英雄を見るような目で見ている。
「久々に兄妹喧嘩でもするか?尚香よ!」
「いいわ!絶対に負けないんだから!」
「ならば来るがいい!妹とて容赦はせぬ!」
そう言って孫権は猫じゃらしを取り出した。
果たして酔っ払っているからなのか、実の妹相手に手加減をしているのかは判らない。
しかし、尚香は武器を取り出した。
こっちは本気らしい。
「尚香殿大丈夫ですか?なんなら俺が代わりますけど」
「大丈夫よ半兵衛。兄の不祥事は妹である私が始末するのが筋」
おお、立派な事を言うな、孫呉の姫君は。
「でも・・・少し手伝ってって言ったら手伝ってくれる?」
「勿論ですよ」
「私も手伝います、姫」
「ありがとう、半兵衛、陸遜」
一対三人、一見すれば卑怯に見えるが酔っ払った孫権相手なら十分だ。
「行くわよ!真・合体技!!!」
尚香・半兵衛・陸遜による真・合体技。
それはかなりの手ごたえがあり、孫権を撃破するのは可能に見える。
「これで決まり!!」
尚香の掛け声と共に力強い光の柱が孫権を貫く。
勝負あり。
やはり、人間は力を合わせれば強大な力に打ち勝つ事が出来るようだ。
「ありがとう、二人共!権兄様を抑える事が出来たわ!」
「いえ、皆の為、引いては尚香様の為を思えばこそです」
流石軍師・陸遜。
ちゃっかりアピールをしている―――・・・何だ?
とてつもない力を感じる。
あの遠呂智をも凌駕するような力を―――。
「少々お前らを侮っていたようだ」
タイトルを『無双OROCHI』から『無双SONKEN』に変えた方がいい気がしてきた。
「第二形態です!孫権様は真の姿を現したのです!」
「やけに興奮するな、かぐや」
「最近見た戦隊ものがそうでしたから。太公望様も今度ご一緒に如何ですか?」
「いいだろう」
「ふん!」
「ぐあっ!!」
「ふんっ!」
「うっ!!」
孫権がなんだかよく判らない力で陸遜と半兵衛を壁に打ち付ける。
実際の戦いでもその真の姿とやらになって活躍してほしいものだ。
「半兵衛!陸遜!」
「尚香」
「に、兄様・・・!」
「兄に逆らったことを後悔させてやろう」
本当になんだこの展開。
「見ていれば判ります!だからお静かに!」
「ああ、悪い」
「負けない!私に力を貸してくれた半兵衛や陸遜の為にも私は負けない!」
「来るがいい!!尚香よ!!!」
そして尚香と孫権が激突した。
両者の戦いは激しく、互角に見える―――と思ったら大間違いだ。
ほぼ尚香が一方的に攻撃を繰り出している。
孫権はと言うと、尚香に攻撃する寸前で手を止めてしまう。
実の妹を傷つけない為の本能が働いているのだろう。
そこを考えると人間はまだまだ奥深いな。
「終わり!!」
尚香が孫権の顎を蹴り上げて勝負は決まった。
何故か尚香はボロボロである。
攻撃は喰らわなかった筈だが・・・。
「見事、だ・・・尚香・・・よ・・・」
魔王の役が板についてるな。
「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・!」
そう言って尚香は晴れやかな笑みを浮かべてその場に倒れた。
「尚香!!」
「尚香様!」
今まで隣にいた甲斐姫やかぐやが尚香に走り寄る。
彼女たちだけではなく、戦いを見守っていた者たちも尚香・半兵衛・陸遜に駆け寄る。
「しっかりして!尚香!!」
「尚香様!!」
「安心しろ、息はしている。疲れて意識を失っただけだ」
そうでなければ大変な事になっているぞ、孫堅。
「三人はまさに英雄ですわ!」
たまには良い事を言うではないか、甄姫。
「ほんじゃ、三人の英雄は別の所で寝かせて後片付けでもするか。んで、その後は祝杯を挙げるぞ!」
「お前様、そんな事をしたら本末転倒だよ?」
「大丈夫じゃて!孫権にはまた鍛練に出てもらう。本人にもわしが上手く言うわ」
「鍛練のお供は私がします」
「・・・俺も・・・行きます・・・」
「ええんか?周泰、練師?」
「ええ、構いません」
「・・・俺もです・・・」
「ほんじゃ任せたぞ!」
「じゃあ、みんなでお片付けするよ!」
秀吉とねねの号令の下、皆は片付けを始めた。
寝室
「ん・・・あれ?ここは?」
「姫・・・?ここは一体・・・」
「さぁ?私も今起きたばっかりだから」
「んん・・・おいで~・・・」
「あら、半兵衛ったら猫の夢でも見てるのかしら?」
「目覚めたようだな、英雄たちよ」
「太公望殿!」
「ねぇ、私たちはどうしてここにいるの?権兄様は?」
「う~ん・・・どうかしたの~?」
「孫権は君の奮闘あって鎮圧する事が出来た。今は説教を受けている。
そして君たちは力を使い切って倒れ、皆によってここに運ばれたのだ」
「そう・・・良かった」
「あ、でも片付けはいいの?」
「英雄にそんな事をさせる訳ないだろう?君たちはもう少し休むといい」
「じゃあ俺、もうひと眠りしよーっと」
「んー、じゃあ私も」
「ならば私も少しだけ眠りましょう」
「あ、半兵衛~。起きたら・・・猫ちゃんたちと遊ぼう・・・ね・・・」
「いいですよ~・・・」
「わた、し、も・・・」
「やれやれ、眠ったか」
「太公望様、ここにおられたのですか?
孫堅様と氏康様が釣りを教えてほしいと探していました」
「判った、今行く」
三人の英雄によって陣地に平和がもたらされた。
→オマケ
おまけ
「なぁ、女禍」
「戻ってのか、伏犠?」
「まぁな。それより、かぐやが俺をうじ虫を見るような目で見てくるんだが・・・」
「正しい反応じゃないか」
「酷い・・・」
END
一番理不尽なのは伏犠(笑)
日々の激戦を労うという名目で開かれた。
困難がまだ目の前で立ちはだかっているというのに人間はこうやって羽を伸ばす。
しかし、これが逆に次の戦で大きな力を発揮する手助けになる秘訣でもある。
「お疲れ様、半兵衛」
孫呉の姫君にして虎の娘・孫尚香が半兵衛の杯に酒を注ぐ。
中々気の利いた娘だ。
周りの者はおしとやかにしろと言っているらしいが、このように気が利いていればその必要はないように思える。
おしとやかでなくても気遣いさえ出来ていればそれでいいと私は思う。
「はい、太公望さん。お疲れ様!」
「甲斐姫よ、言われてやるのは気遣いではなくて白々しいだけだ」
「うそっ!?」
気を取り直して二人の会話に少し耳を傾けよう。
「半兵衛は今日は大活躍だったじゃない。とってもカッコ良かったわよ」
「いや~、それ程でもないですよ~。尚香殿も大活躍だったじゃないですか」
「それでも半兵衛には適わないわ」
「またまた~。そんな謙遜しちゃって~」
仲良く談笑する半兵衛と尚香。
ここまでだったら他の者たちの会話に耳を傾けていた方が楽しいが、それをしない理由が一つ。
それは―――
「ならば姫の労いは私がします」
孫呉の若き軍師・陸遜の存在が二人の間に乱入して来るのが予想の範囲内だったからだ。
少し面白くなりそうだから他に耳を傾ける訳には行かん。
「どうぞ、姫」
「ありがとう、陸遜」
尚香は気づいていないようだが陸遜の行動には、彼にとっては大きな意味がある。
それは尚香を取られまいとするある種の防衛策だ。
身分の差はあれど陸遜は尚香に好意を持っている。
しかし鈍感な尚香は全くそれに気づかず、自由奔放に動き回る。
ちなみに、陸遜の最大のライバルは半兵衛だ。
何でもキャラが被るとか被らないとか。
「ニャー」
「猫の鳴き声?」
「もしかして―――」
「はーい、今回は三毛猫を拾っちゃいました~」
そう言って半兵衛は帽子の中から三毛猫を取り出した。
また拾ったのか。
まぁ、猫は嫌いではないし、むしろ好きの部類だ。
後で私も可愛がるとしよう。
「可愛い!抱っこさせて?」
「いいですよ」
「今度はどこで拾ってきたの?」
「寿春城に立ち寄った時についてきたんですよ」
「そうなんだ~」
言いながら尚香は猫を愛でる。
陸遜はそれを微笑ましそうに眺める。
しかし、半兵衛に何か負けたという悔しさのオーラが見えるのは気のせいだろうか?
「帰ったぞ!」
おや、鍛練に出ていた孫権が帰ってきたようだ。
松風に乗って顔を真っ赤に・・・・・・真っ赤に?
「二次会はここか~!?」
違う。
「権兄様・・・酔ってる・・・」
「鍛練に出た筈がどーして酔ってるんだろう・・・」
「鍛練に向かった所は小田原城ですし・・・パーティーを組んだのは周泰殿と酒呑童子―――」
「「あ・・・」」
孫権と酒呑童子を組ませる事を今後一切禁止しよう。
「すまん、少し喉が渇いたからと言っていたから瓢箪の中の酒を飲ませたらこんなことになった」
「お前はあの大惨事を忘れたのか?」
「あれは人間の芸ではなかったのか?」
「あれが人の芸なら私はとうに人を嫌っている」
酔っ払い孫権を見て逃げる者や便乗すれば難を逃れられると考える者。
明らかに前者が賢明な考えであるが逃げる事は皆無。
なぜなら―――
「逃げるな!愚か者!!!」
いつにない孫権の威厳ある一喝に、考えとは裏腹に体が逃げる事をやめてしまうからだ。
恐らくは本能的に逃げれば死ぬ、という思いがあるからだろう。
それにしても、酒はここまで人を変える。
しかもこれは悪い意味でだ。
「よく見ておけ、かぐや。酒に逃げるとこのようになる」
「はい、太公望様」
教育は今の内にしっかりしておかなければいけない。
でないと甲斐姫のように品のない攻撃の掛け声をしてしまうからな。
「それ酷くないですか!?」
「事実だ」
さて、酔っ払った孫権に対して今度はどんな大惨事が起こるか見物だ。
「福島!!」
「な、なんだよ?」
「今すぐ一人で妖蛇を討伐してこい!!」
「ええっ!?無茶ッスよ!!」
「そこの道から行けるから行ってこい!!」
「マジッスか~!?」
項垂れながらも福島正則は妖蛇討伐ミッションに出かけた。
普通だったら行くふりをして逃げるものだがあの男の頭の回転は鈍く、
そんなことを思いつかずに真面目に一人で妖蛇を討伐しにいくだろう。
心の中で合掌しておくとするか。
「加藤清正!!」
「な、なんだ?」
「好きな女を大声で言ってみろ!!」
「ええーーーーっ!!!??」
おや、今度は公開処刑か。
いくらねね大好き丸出しの加藤清正でもこれは公言出来ぬか?
しかも大声で。
「どうした、言えぬのか!?」
「お、俺は・・・おねね様が大好きだーーーーーーーーーー!!!!」
気持ち悪いな。
「かぐや、あんな男を好きになるなよ」
「はい、太公望様。それに守備範囲外ですから大丈夫です」
よしよし、いい子だ。
それにしても、あの温厚なかぐやにまで見放されるとは・・・加藤清正も終わったな。
「だからどうした!!」
孫権は何が気に入らなかったのは判らないが、理不尽にも加藤清正を背負い投げした。
これはこれで良かったかもしれん。
「次は伏犠!!モノマネをしろぉ!!」
「マジか・・・」
マジだ、やれ。
「反抗期か?」
「逃げてきたのか?女禍」
「退散して来たと言ってくれ」
まぁどうでもいい。
さて、伏犠のモノマネを拝見するとしよう。
「そ、そうだな・・・」
「早くしろ」
「た、太公望の真似!――――全知全能たる私に全て任せるといい」
後で殺す。
「手伝います、太公望様」
「私も手伝おう。あんなモノマネは面白くない」
「同感です」
理由はどうあれ、協力者がいるのはいい。
合体無双が出来るからな。
「わっはっはっはっ!!」
何?笑っただと?
「面白くないわーーー!!!」
違ったようだ。
伏犠は哀れにも大筒に入れられて打ち上げられた。
ざまぁ。
「権兄様やめて!みんな一生懸命やってるじゃない!」
「それでも面白くないものは面白くないのだ!」
「そうだ権!次は夏候惇を指名してやろーぜ!」
「はーい、黙っててねー」
余計な口を挟んできた孫策を半兵衛が大筒に入れて打ち上げる。
奥方である大喬は慌てもせず、ただ見ていた。
その目はとても冷たく・・・そう、伏犠が他の女にセクハラをした時の女禍の軽蔑の眼差しくらい冷たかった。
それもその筈、状況が悪化しそうになったのだ。
無理もない。
「伏犠様は他の女性にセクシュアル・ハラスメントをしたのですか?」
「そうだ。だからあの男の事はゴミを見るような目で見ていいんだぞ」
「いや、それでは甘い。かぐや、うじ虫は好きか?」
「大嫌いにございます」
「ならばその大嫌いなうじ虫を見るような目で伏犠を見るんだ。いいな?」
「はい」
正しい教育をするのは気持ちがいい。
さて、宴はどうなった?
「えぇ~い!兄に逆らうと言うのか尚香!!」
「逆らうわよ!みんなの為にも!」
勇ましい姫君だ。
こういうのは嫌いではない。
それに周りの者も彼女を英雄を見るような目で見ている。
「久々に兄妹喧嘩でもするか?尚香よ!」
「いいわ!絶対に負けないんだから!」
「ならば来るがいい!妹とて容赦はせぬ!」
そう言って孫権は猫じゃらしを取り出した。
果たして酔っ払っているからなのか、実の妹相手に手加減をしているのかは判らない。
しかし、尚香は武器を取り出した。
こっちは本気らしい。
「尚香殿大丈夫ですか?なんなら俺が代わりますけど」
「大丈夫よ半兵衛。兄の不祥事は妹である私が始末するのが筋」
おお、立派な事を言うな、孫呉の姫君は。
「でも・・・少し手伝ってって言ったら手伝ってくれる?」
「勿論ですよ」
「私も手伝います、姫」
「ありがとう、半兵衛、陸遜」
一対三人、一見すれば卑怯に見えるが酔っ払った孫権相手なら十分だ。
「行くわよ!真・合体技!!!」
尚香・半兵衛・陸遜による真・合体技。
それはかなりの手ごたえがあり、孫権を撃破するのは可能に見える。
「これで決まり!!」
尚香の掛け声と共に力強い光の柱が孫権を貫く。
勝負あり。
やはり、人間は力を合わせれば強大な力に打ち勝つ事が出来るようだ。
「ありがとう、二人共!権兄様を抑える事が出来たわ!」
「いえ、皆の為、引いては尚香様の為を思えばこそです」
流石軍師・陸遜。
ちゃっかりアピールをしている―――・・・何だ?
とてつもない力を感じる。
あの遠呂智をも凌駕するような力を―――。
「少々お前らを侮っていたようだ」
タイトルを『無双OROCHI』から『無双SONKEN』に変えた方がいい気がしてきた。
「第二形態です!孫権様は真の姿を現したのです!」
「やけに興奮するな、かぐや」
「最近見た戦隊ものがそうでしたから。太公望様も今度ご一緒に如何ですか?」
「いいだろう」
「ふん!」
「ぐあっ!!」
「ふんっ!」
「うっ!!」
孫権がなんだかよく判らない力で陸遜と半兵衛を壁に打ち付ける。
実際の戦いでもその真の姿とやらになって活躍してほしいものだ。
「半兵衛!陸遜!」
「尚香」
「に、兄様・・・!」
「兄に逆らったことを後悔させてやろう」
本当になんだこの展開。
「見ていれば判ります!だからお静かに!」
「ああ、悪い」
「負けない!私に力を貸してくれた半兵衛や陸遜の為にも私は負けない!」
「来るがいい!!尚香よ!!!」
そして尚香と孫権が激突した。
両者の戦いは激しく、互角に見える―――と思ったら大間違いだ。
ほぼ尚香が一方的に攻撃を繰り出している。
孫権はと言うと、尚香に攻撃する寸前で手を止めてしまう。
実の妹を傷つけない為の本能が働いているのだろう。
そこを考えると人間はまだまだ奥深いな。
「終わり!!」
尚香が孫権の顎を蹴り上げて勝負は決まった。
何故か尚香はボロボロである。
攻撃は喰らわなかった筈だが・・・。
「見事、だ・・・尚香・・・よ・・・」
魔王の役が板についてるな。
「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・!」
そう言って尚香は晴れやかな笑みを浮かべてその場に倒れた。
「尚香!!」
「尚香様!」
今まで隣にいた甲斐姫やかぐやが尚香に走り寄る。
彼女たちだけではなく、戦いを見守っていた者たちも尚香・半兵衛・陸遜に駆け寄る。
「しっかりして!尚香!!」
「尚香様!!」
「安心しろ、息はしている。疲れて意識を失っただけだ」
そうでなければ大変な事になっているぞ、孫堅。
「三人はまさに英雄ですわ!」
たまには良い事を言うではないか、甄姫。
「ほんじゃ、三人の英雄は別の所で寝かせて後片付けでもするか。んで、その後は祝杯を挙げるぞ!」
「お前様、そんな事をしたら本末転倒だよ?」
「大丈夫じゃて!孫権にはまた鍛練に出てもらう。本人にもわしが上手く言うわ」
「鍛練のお供は私がします」
「・・・俺も・・・行きます・・・」
「ええんか?周泰、練師?」
「ええ、構いません」
「・・・俺もです・・・」
「ほんじゃ任せたぞ!」
「じゃあ、みんなでお片付けするよ!」
秀吉とねねの号令の下、皆は片付けを始めた。
寝室
「ん・・・あれ?ここは?」
「姫・・・?ここは一体・・・」
「さぁ?私も今起きたばっかりだから」
「んん・・・おいで~・・・」
「あら、半兵衛ったら猫の夢でも見てるのかしら?」
「目覚めたようだな、英雄たちよ」
「太公望殿!」
「ねぇ、私たちはどうしてここにいるの?権兄様は?」
「う~ん・・・どうかしたの~?」
「孫権は君の奮闘あって鎮圧する事が出来た。今は説教を受けている。
そして君たちは力を使い切って倒れ、皆によってここに運ばれたのだ」
「そう・・・良かった」
「あ、でも片付けはいいの?」
「英雄にそんな事をさせる訳ないだろう?君たちはもう少し休むといい」
「じゃあ俺、もうひと眠りしよーっと」
「んー、じゃあ私も」
「ならば私も少しだけ眠りましょう」
「あ、半兵衛~。起きたら・・・猫ちゃんたちと遊ぼう・・・ね・・・」
「いいですよ~・・・」
「わた、し、も・・・」
「やれやれ、眠ったか」
「太公望様、ここにおられたのですか?
孫堅様と氏康様が釣りを教えてほしいと探していました」
「判った、今行く」
三人の英雄によって陣地に平和がもたらされた。
→オマケ
おまけ
「なぁ、女禍」
「戻ってのか、伏犠?」
「まぁな。それより、かぐやが俺をうじ虫を見るような目で見てくるんだが・・・」
「正しい反応じゃないか」
「酷い・・・」
END
一番理不尽なのは伏犠(笑)