なんか色々雑多

半兵衛は今日、留守番組だった。

「ふぁ~あ」

強い武将たちをかぐやの過去に戻る力を使って救った為、頻繁に戦に出る必要があまりなくなったのだ。
来たるべき時に備えて休息、ひいてはいつでも援軍に行けるようにする、という事で今は奪還した城で日向ぼっこをしていた。

「眠いな~」

昨夜は軍師会議で長時間話し合った為、夜更かしをした。

いっそのこと寝てしまおうか。いや、寝よう。

縁側の床は板だがまぁいい。
帽子を座布団代わりにして寝る。
それでも痛いと思われるがこの際我慢する。
さぁ横になろうと思った時だった。

「半兵衛」

自分の名前を呼ぶ鈴のような声がした。
ゆるりと振り返ると、そこには呉の姫君・孫尚香が穏やかな笑みを浮かべてそこにいた。

「あ、尚香殿~」
「日向ぼっこしてるの?」
「はい。でも、これからお昼寝する予定です」
「床は痛いでしょ?座布団持ってきてあげましょうか?」
「いいですよ~、姫様にそんな事させる訳にはいきませんし」
「じゃあ、膝枕してあげる」
「それこそ遠慮しますって。一国のお姫様にそんな事をしてもらうなんて―――」
「私たち、友達でしょ?」

尚香の言葉に半兵衛は首を傾げた。

「今はこんな時だから国とかそういうのは関係ないわ。
 だから私の地位も『一国の姫』じゃなくて『反乱軍の武将』よ」
「ん~、でも~」
「大丈夫。誰かが怒っても私がしたくてしたのって言うわ。そしたら誰も文句を言えないでしょ?」

確かにそうではあるがそれでも戸惑われる。
しかし、折角の尚香の厚意を頑なに断るのも失礼に思われる。
半兵衛は意を決し、尚香の厚意に甘える事にした。

「じゃあ―――お願いしますよ?」
「はーい」
「では、失礼しまーす」

少し脱線していた微睡を元に戻し、一礼してから半兵衛は尚香の膝枕に頭を置いた。
武術で鍛えられている太腿は、しかし柔らかだった。
女の子だからだろうか?
しかし、睡眠の大群に押し寄せられて半兵衛の頭は思考をするのをやめた。
それから程なくして半兵衛は規則正しい寝息を立て、夢の旅に出た。

「寝顔、可愛いな」

あどけない顔で眠る半兵衛に尚香は笑みを零した。
頭を撫でると嬉しそうな顔をした、ように見える。
柔らかな陽の光を受け、満足そうに眠る半兵衛を見ていたら尚香も眠たくなった。
その時―――

「姫」

若い男の声が尚香の名を呼んだ。
尚香が振り返る前にその男は隣に座ってきた。
男は―――陸遜だった。

「陸遜」
「こんな所で何をしてるんですか?」








「半兵衛と日向ぼっこ」
「・・・半兵衛殿は寝ていますが」
「細かい事は気にしないの」

笑って返す尚香に対して陸遜は些か不服だった。
密かに想っている尚香の膝枕で眠る半兵衛が妬ましい。
今すぐにでも燃やしたいがそんな事をしたらきっと尚香が怒るだろう。
恐らく、この状況は尚香が望んでやったに違いない。
でなければ流石に異国の軍師と言えど、異国の姫君の膝枕に甘える筈がない。
陸遜はつい、お説教口調になる。

「仮にも尚香様は呉の姫君であらせられます。ですからこういう行動はなるべく控えて下さい」
「今は国とかそういうの関係ないでしょ?
だから私は今は呉の姫じゃないの。反乱軍の武将の一人よ」
「それで?」
「戦以外の時はただの友達、よ」
「本当に半兵衛殿のことを友達を思っているのですか?」
「陸遜?怒ってるの?」

何時になく厳しく言ってくる陸遜に尚香は戸惑う。
しかし、陸遜の瞳は一歩も譲る気配がなく、尚香は観念して陸遜の質問に答えた。

「どちらかって言うと友達より弟感覚かな、半兵衛に対しては」
「弟感覚?」
「ええ、見てると構ってあげたくなっちゃうって言うか、
 母性本能をくすぐられるっていうか、まぁそんな感じ」
「母性本能、ですか・・・」

はにかんで笑って見せる尚香に陸遜は一つ、質問をした。

「姫は私に対してどのような感覚でいらっしゃいますか?」
「陸遜に対して?そうねー・・・

尚香は考える。
その時―――

「ん・・・おねね、様・・・秀吉様が・・・」

半兵衛が寝言を発した。

「フフッ、ねねの夢を見てるのね」

尚香の膝枕で眠っておきながら他の女性の名前を呟くとは言語道断、と陸遜は思った。
かと言って尚香の夢を見られるのも腹立たしい。

「姫、最近この城に通ってる猫をご存じですか?」
「え?そうなの?」
「白くてとても可愛いですよ。今度ご覧になられますか?」
「見たい見たい!今度見せて!」
「ええ、いいですよ」

陸遜は決めた。
こうやって大きな声で喋ってやって半兵衛を起こしてやろうと。


しかし、半兵衛は気が済むまで眠っており、起きる事はなかった。





それでも孫尚香と長い時間話を出来たので結果オーライ













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