長編
あれからどれくらい経ったのか。
数秒、いや数時間?
時間の感覚がイマイチ掴めない中、悠は目覚めた。
「うっ・・・ここは?」
悠は起き上がって辺りを見回す。
遠くに山のようなものが見え、自分たちの周りには霧が漂っていた。
一瞬、テレビの世界の霧かとも思ったが、クマ眼鏡をかけてみても霧は晴れなかった。
どうやらここはテレビの世界ではないようである。
あらかたの確認をした所で悠は近くで倒れている陽介たちを起こした。
「陽介、里中、天城、起きろ!」
「んぁ?なんだ・・・?」
「ん~なにごと~?」
「ここ・・・どこ?」
目覚めた三人も同じようにして辺りを見回す。
しかし、こうした非現実的な出来事に慣れている為か、大きくは驚かずにそれぞれは反応を示した。
「あぁ?何だここ?俺たちテレビの世界に落ちちまったのか?」
「いや、眼鏡をかけても霧を見通せなかった。恐らくここはテレビの中じゃないだろう」
「あ、ホントだー。てことはこの霧、普通の霧?」
眼鏡を通して霧を見た千枝だったが、悠の言う通り見通せないのを確認して首を傾げた。
それに対して雪子も同じように疑問符を浮かべながら首をかしげる。
「ここ、どこだろう?山とか見えるけど稲羽のとはちょっと違うよね?」
「うん、あんな感じの山ないよ。あんな仙人とかいそうな山々―――」
『目覚めましたか、戦士たちよ』
「うわっ!?な、何っ!?」
「誰だ」
突然響いてきた声に千枝は飛び上がった。
悠は素早く立ち上がって辺りを警戒しながら声の主を探す。
武器がないのが心許ないが、それでもいざとなれば陽介と共に千枝と雪子を守るつもりだ。
悠のその意思は陽介にも伝わっていて、陽介も悠の隣に立って辺りを警戒した。
すると―――
『安心なさい、私はあなた達に危害を加えません』
悠達の目の前に突然眩い光が出現して悠達は反射的に腕で目を覆った。
やがて光の眩しさが抑え気味になり、目を覆う必要がなくなってきて悠たちはゆっくりと腕を外して目を開く。
するとそこには黄金の光に包まれ、羽衣を纏った美しい女性が佇んでいた。
目の前の光景に驚きつつ悠は女性に尋ねた。
「あなたは・・・?」
『私は名はイヨ。四季の巫女をまとめる天女です』
「四季の巫女?天女?」
女性―――イヨの言葉に陽介は何が何だか分からないといった様子で聞き返す。
それは悠達もそうだった。
四人の疑問に対してイヨは丁寧に説明を始めた。
『あなたたちの疑問に答える前にこの世界について説明しておきましょう。
ここは現世と常世の間にある世界。私のような天女や特別な力を持った巫女が住まう世界です』
「特別な世界っていうと神様とかそーいう部類の感じ・・・ッスか?」
『神と言えば神ですが、厳密には違います。私達は国の平穏と繁栄を願い、神の供物とされた者。
元はあなた達と同じ人の子だったのです』
「神の供物って事は・・・」
「ああ、人柱だったのかもしれないな」
『私達は神の供物となり、神の元に召された後に御役目を授かり、人の子の四季を護る事となりました。
簡単に言えば守護神と言った所です。ここまではお分かりいただけたでしょうか?』
ここまで聞くとイヨと名乗る天女が大分胡散臭く感じられるが、神に会ったことがあるので半分信じる事が出来てしまう。
もっとも、その神とは会ったどころか戦った事もあるし、色々あって現在はお天気お姉さんをしてる訳だが。
それでもすんなりと信じる訳にはいかないので、半信半疑になりながら悠はイヨに先を促した。
「仮にあなたやこの世界があなたの言うようなものだとして、俺たちに一体何の用ですか?」
『はい、実はあなた達にお願いがあるのです。
私は巻物を通してあなた達をこの世界に呼び寄せました。
その巻物に明らかな空白があったのを覚えていますか?』
「覚えてます。こちらの友人の天城が本来であれば少女が描かれていたと言っていました」
悠の発言に雪子は肯定するようち強く頷く。
するとイヨは悲しげに目を細めて悲しそうな声音で語った。
『その少女達が消えてしまったのは鬼に攫われてしまったからです』
「鬼?」
『ええ、私達の天敵とも呼べる存在です。私は巫女達を護るのが役目なのですが、隙を突かれて攫われてしまったのです。
その所為であなた達の住む世界の四季は乱れてしまったのです』
「ええっ!?マジかよ!?」
「四季を司る巫女がいなくなった所為で四季の秩序が乱れた、という事か」
『鬼の目的は現世の混乱と破滅。巫女達の為にも、あなた達の世界の為にもどうか鬼を退治して下さい』
「それはいいですが、どうやって鬼を探せばいいんですか?」
『これを―――』
イヨは儚く上品な輝きを放つ金色の鈴を悠の前に差し出した。
悠は鈴を受け取って尋ねる。
「これは?」
『この鈴は鬼の気配を察知し、鬼が潜んでいる場所を知らせます。
そしてその潜んでいる場所でこの鈴を鳴らすと鳥居が現れ、それを潜ると現世の裏側の世界に行けます』
「その裏側の世界のどこかに鬼がいるんですね?」
『はい。ですが気をつけて下さい、裏側の世界には鬼の手下が跳梁跋扈しています。
あなたたちが心の鎧を有しているとはいえ、油断は出来ません。くれぐれも注意を』
「心の鎧って・・・?」
「きっとペルソナの事だよ」
首をかしげる千枝に雪子が答えを返す。
悠や陽介もそうだろうと思い、頷く。
しかし悠たちがペルソナ使いであると見抜くとは、天女ともなるとそういうのも見抜けるのだろうか。
不思議に思いながら悠はイヨに言葉を返した。
「分かりました、鬼を退治して巫女たちを助けます」
『お願いします』
イヨが目を伏せて懇願すると、悠たちの視界は白い光に包まれていった。
そして、気付いた時には悠たちは雪子の部屋で倒れていた。
続く
数秒、いや数時間?
時間の感覚がイマイチ掴めない中、悠は目覚めた。
「うっ・・・ここは?」
悠は起き上がって辺りを見回す。
遠くに山のようなものが見え、自分たちの周りには霧が漂っていた。
一瞬、テレビの世界の霧かとも思ったが、クマ眼鏡をかけてみても霧は晴れなかった。
どうやらここはテレビの世界ではないようである。
あらかたの確認をした所で悠は近くで倒れている陽介たちを起こした。
「陽介、里中、天城、起きろ!」
「んぁ?なんだ・・・?」
「ん~なにごと~?」
「ここ・・・どこ?」
目覚めた三人も同じようにして辺りを見回す。
しかし、こうした非現実的な出来事に慣れている為か、大きくは驚かずにそれぞれは反応を示した。
「あぁ?何だここ?俺たちテレビの世界に落ちちまったのか?」
「いや、眼鏡をかけても霧を見通せなかった。恐らくここはテレビの中じゃないだろう」
「あ、ホントだー。てことはこの霧、普通の霧?」
眼鏡を通して霧を見た千枝だったが、悠の言う通り見通せないのを確認して首を傾げた。
それに対して雪子も同じように疑問符を浮かべながら首をかしげる。
「ここ、どこだろう?山とか見えるけど稲羽のとはちょっと違うよね?」
「うん、あんな感じの山ないよ。あんな仙人とかいそうな山々―――」
『目覚めましたか、戦士たちよ』
「うわっ!?な、何っ!?」
「誰だ」
突然響いてきた声に千枝は飛び上がった。
悠は素早く立ち上がって辺りを警戒しながら声の主を探す。
武器がないのが心許ないが、それでもいざとなれば陽介と共に千枝と雪子を守るつもりだ。
悠のその意思は陽介にも伝わっていて、陽介も悠の隣に立って辺りを警戒した。
すると―――
『安心なさい、私はあなた達に危害を加えません』
悠達の目の前に突然眩い光が出現して悠達は反射的に腕で目を覆った。
やがて光の眩しさが抑え気味になり、目を覆う必要がなくなってきて悠たちはゆっくりと腕を外して目を開く。
するとそこには黄金の光に包まれ、羽衣を纏った美しい女性が佇んでいた。
目の前の光景に驚きつつ悠は女性に尋ねた。
「あなたは・・・?」
『私は名はイヨ。四季の巫女をまとめる天女です』
「四季の巫女?天女?」
女性―――イヨの言葉に陽介は何が何だか分からないといった様子で聞き返す。
それは悠達もそうだった。
四人の疑問に対してイヨは丁寧に説明を始めた。
『あなたたちの疑問に答える前にこの世界について説明しておきましょう。
ここは現世と常世の間にある世界。私のような天女や特別な力を持った巫女が住まう世界です』
「特別な世界っていうと神様とかそーいう部類の感じ・・・ッスか?」
『神と言えば神ですが、厳密には違います。私達は国の平穏と繁栄を願い、神の供物とされた者。
元はあなた達と同じ人の子だったのです』
「神の供物って事は・・・」
「ああ、人柱だったのかもしれないな」
『私達は神の供物となり、神の元に召された後に御役目を授かり、人の子の四季を護る事となりました。
簡単に言えば守護神と言った所です。ここまではお分かりいただけたでしょうか?』
ここまで聞くとイヨと名乗る天女が大分胡散臭く感じられるが、神に会ったことがあるので半分信じる事が出来てしまう。
もっとも、その神とは会ったどころか戦った事もあるし、色々あって現在はお天気お姉さんをしてる訳だが。
それでもすんなりと信じる訳にはいかないので、半信半疑になりながら悠はイヨに先を促した。
「仮にあなたやこの世界があなたの言うようなものだとして、俺たちに一体何の用ですか?」
『はい、実はあなた達にお願いがあるのです。
私は巻物を通してあなた達をこの世界に呼び寄せました。
その巻物に明らかな空白があったのを覚えていますか?』
「覚えてます。こちらの友人の天城が本来であれば少女が描かれていたと言っていました」
悠の発言に雪子は肯定するようち強く頷く。
するとイヨは悲しげに目を細めて悲しそうな声音で語った。
『その少女達が消えてしまったのは鬼に攫われてしまったからです』
「鬼?」
『ええ、私達の天敵とも呼べる存在です。私は巫女達を護るのが役目なのですが、隙を突かれて攫われてしまったのです。
その所為であなた達の住む世界の四季は乱れてしまったのです』
「ええっ!?マジかよ!?」
「四季を司る巫女がいなくなった所為で四季の秩序が乱れた、という事か」
『鬼の目的は現世の混乱と破滅。巫女達の為にも、あなた達の世界の為にもどうか鬼を退治して下さい』
「それはいいですが、どうやって鬼を探せばいいんですか?」
『これを―――』
イヨは儚く上品な輝きを放つ金色の鈴を悠の前に差し出した。
悠は鈴を受け取って尋ねる。
「これは?」
『この鈴は鬼の気配を察知し、鬼が潜んでいる場所を知らせます。
そしてその潜んでいる場所でこの鈴を鳴らすと鳥居が現れ、それを潜ると現世の裏側の世界に行けます』
「その裏側の世界のどこかに鬼がいるんですね?」
『はい。ですが気をつけて下さい、裏側の世界には鬼の手下が跳梁跋扈しています。
あなたたちが心の鎧を有しているとはいえ、油断は出来ません。くれぐれも注意を』
「心の鎧って・・・?」
「きっとペルソナの事だよ」
首をかしげる千枝に雪子が答えを返す。
悠や陽介もそうだろうと思い、頷く。
しかし悠たちがペルソナ使いであると見抜くとは、天女ともなるとそういうのも見抜けるのだろうか。
不思議に思いながら悠はイヨに言葉を返した。
「分かりました、鬼を退治して巫女たちを助けます」
『お願いします』
イヨが目を伏せて懇願すると、悠たちの視界は白い光に包まれていった。
そして、気付いた時には悠たちは雪子の部屋で倒れていた。
続く