鼻毛スピリッツ
ボーボボたち一行は次の毛狩り隊の基地へと足を運んでいた。
そんな時、ランバダだけある意味違う事を考えていた。
(何でテント?)
夕べ、ボーボボたちと一緒のテントで寝たランバダ。
しかし、テントの中に入ってみれば、ボーボボと首領パッチは更なるテントの中で寝ていたのだ。
テントの中にテントがあると言うある意味不思議な光景にランバダは唖然とした。
中からはいびきは聞こえて来たものの、寝相による被害は無かったので良しとする。
次に寝る時もこんな感じあってほしいが―――。
「着いたな」
ザッとボーボボが足を止める。
目の前には巨大な洋式トイレがそびえ立っていた。
「トイレ!!!?」
勿論、ビュティはツッコミを忘れない。
しかも、良く見ると看板があって
『Wブロック基地』
とパンダの絵と一緒に書かれていた。
「こんなのがWブロック基地!?Wなだけに!!!」
最悪な基地である。
入りたくないビュティだが、ボーボボたちは―――
「わ~い!!Wブロック基地だ~!!」
「早く行こうぜ~!!!」
「待てよ~!!!」
スキップルンルンでWブロックの中へと入って行った。
「底が知れるな」
ランバダは一人呟いてボーボボたちの後に続いた。
仕方ないので、ビュティとヘッポコ丸も後に付いて行った。
Wブロック基地前
Wブロック基地には―――エレベーターがあった。
ビュティ「エレベーター!?」
基地なのに何故エレベーターがあるのだろうか。
そんな事は置いといて、ボーボボはボタンを押す。
しばらくすると、チンと音がなってエレベーターが来た。
しかし、扉が開いて中から毛狩り隊の隊員が二人程出て来る。
「それでさー」
「マジでー?」
呑気に話し合いながらボーボボたちの横を普通に通り過ぎて行く隊員。
そして、ボーボボたちは何事もなかったかのようにエレベーターに乗った。
((ええ~~~~~~~?))
ビュティとヘッポコ丸は複雑な顔をしていたが。
エレベーターの中には沢山の張り紙があるがどれもトイレに関する張り紙ばかり。
『トレイは大切に使おう!』や『ゴミは流しちゃ駄目、絶対!』等といったものばかり。
(何か不快・・・)
ビュティは内心呟いた。
「よし、三階に行くぞ」
「え?最上階の四階じゃないんですか?」
ボタンは全部で四つ。
なのに三階のボタンを押すボーボボ。
「あれを見てみろ」
ボーボボは入口の上を指した。
階ごとの説明が書かれていたが、三階の所には『ボスのトイレ』と書かれていた。
「ボスのトイレ!?」
すかさずツッコむビュティ。
「一階は婦人トイレ。二階は紳士トイレ。四階、屋上は子供用トイレ」
「なんじゃそりゃ!?つか、子供用トイレ屋上!!?」
ランバダが読み上げた階説明をビュティがツッコむ。
デパートみたいな乗りがどこかムカつく。
チンと音が鳴って三階に着く。
扉がガコンと開いてボスと対面する。
「クックックッ・・・よく来たな、ボーボボよ」
男の声が暗い部屋に響く。
「だが、お前の命も今日で終わりだ!!!」
男が叫んで部屋の電気がつく。
すると、男も照らし出される。が、男は洋式トイレに座っていた。
「え!?トイレ中!!?」
「いや、これは椅子だ」
「椅子!?トイレが!!?」
やはり基地がトイレなら中身もトイレなのだろうか。
しかし、男の首から上は和式トイレだった。
「椅子と外見は洋式なのに本人は和式!?」
このツッコミはヘッポコ丸。
矛盾を指摘したと言っても過言ではない。
「へっ、面白いぜ。お前自身が和式ならこっちは洋式で行くぜ」
ボーボボはカッコいい事を言っているように思えるが実はカッコ悪い。
しかも、洋式で行くと言っておきながら腰には和式トイレが装着されていた。
ボーボボだけでなく、首領パッチと天の助も。
「それ和式!!!」
ビュティがツッコむ。
しかし、構わずにボーボボたち三人は突っ込んで行った。
「オラオラーーーー!!!行くぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「俺の名はヨシキ。そして―――」
男―――ヨシキは構えた。
「トイレ真拳奥義『ペッパー締め』!!!!」
トイレットペーパーで三人を締めあげた。
「「「ぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」
断末魔の叫び声を上げる三人。
トイレットペーパーにこれ程の力があっただろうか。
ビュティは疑問で仕方なかった。
ドサッとボーボボたちは床に叩きつけられる。
それを背にヨシキは言い放つ。
「トイレ真拳の使い手だ」
(カッコ悪・・・)
敢えて口にしないビュティ。
ボーボボたちは体勢を立て直すとヨシキに向き合った。
「上等じゃねーか。そのトイレ真拳とやら、絶対に破ってやるよ」
「ふん、やってみろ」
「行くぜ!鼻毛真拳奥義『破壊屋』!!!」
ボーボボ・首領パッチ・天の助はハンマーを持ってヨシキへと走り出した。
だが、ヨシキは―――
「トイレ真拳奥義『流水』!!!」
どこからともなく大量の水を出した。
「「「ぐばぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」
「まだまだ!!トイレ真拳奥義『芳香剤』!!!」
ヨシキは芳香剤を振り撒く。
三人はまたもや悲鳴を上げる。
「「「キッツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」」
「鼻が・・・鼻が・・・鼻が伸びちまうーーーーーーーーーー!!!」
三人の鼻は童話の人形のように伸びて行った。
「伸びるの!?曲がるんじゃなくて!!」
つくづく不思議だ。
そんな事より、ボーボボたち三人は顔を見合わせて、ワナワナと震えだした。
「鼻が伸びたらもう・・・」
「俺たちは・・・」
首領パッチと天の助の順で言う。
次はボーボボだ。
「キツツキになるしかねーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「何で!!!!??」
全く意味が判らない。
キツツキになる理由が全くもって判らない。
しかし、三人はそのままヨシキへと突っ込んで行く。
「鼻毛真拳奥義『キツツキの演奏』!!!!」
三人はヨシキをキツツキが如く突く。
しかし、コンコンコンコン等と言う可愛らしい音ではなく、ドスッドスッドスッと言う刺すような鈍い音しかしなかった。
演奏どころではない。
「ぐっ・・・!!」
それでも一応、ダメージを食らうヨシキ。
そこに―――
「「「ヨシキ様ーーー!!」」」
三つの声がして何かがボーボボたちを蹴り飛ばした。
「ぐおっ!?何だ!!?」
「貴様、よくもヨシキ様を!!」
「ぶっ殺してやるよ!!」
「覚悟しやがれ!!」
そして叫ぶ“何か”。
良く見てみれば、トイレのガッポンする奴とスリッパとトイレ用洗剤だった。
「俺はガッポン!」
「俺はスリッパ!」
「俺は洗剤!!」
「そのまんまだね」
ビュティが冷静にツッコむ。
見りゃ判る。
「お前たち・・・」
「加勢に参りました!ヨシキ様!!」
「奴らに俺たちの力を見せてやりましょう!!」
「今こそ合体の時です!!」
「合体だと!?」
「何が始まると言うんだ」
「ヤベーな」
首領パッチ・ボーボボ・天の助の順で焦りの言葉を述べる。
そして―――
「行くぞ!!合体!!!!!!!!!」
ヨシキの身体が光を放つ。
スリッパがアニメが如く前に出て決めポーズをする。
そして、ヨシキの足に収まった。
次に洗剤が不敵な笑みを浮かべて前に出る。
そしてヨシキの左手に掴まれる。
最後にガッポンが前に出て来る。
そしてヨシキの右手に掴まれる。
ヨシキは不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「右手にガッポン。左手に洗剤。そして足にスリッパ。我、これらを装備して無敵と名乗る」
決めポーズをすると、バックライトが大きく光った。
(トイレを掃除すると言う面ではね)
ビュティは皮肉を含んだツッコミを心の中でする。
しかし、三バカは違った。
「「「かっけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」」」
「どこが!!!??」
やはり三バカと言うべきか何と言うか。
しかも対抗し始める。
「ならばこちらも合体だ!」
「おう!」
「あれだな!?」
「行くぜ!!合体!!!!」
一言言っておくと、ボーボボ融合ではない。
首領パッチは先程のスリッパたちと同じように前に出て決めポーズをする。
そして、両足をボーボボの右手に掴まれる。
天の助も同じことをして決めポーズをする。
そして、頭をボーボボの左手に鷲掴みされる。
「右手に首領パッチ。左手に天の助。これらを装備して最強と名乗る」
「いつものバカガードと大差変わりねーーー!!!!」
ヘッポコ丸がツッコむ。
特に、天の助の頭を鷲掴みする辺りがそれだ。
そして、両者共に構える。
しばしばの沈黙が走った後、ヨシキが先に走り出した。
「いざ参る!!!」
「かかってこいやーーーーー!!!」
ボーボボも走り出した。
「うぉおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ヨシキはガッポンを振り上げる。
しかし、それを首領パッチソード(ネギ)を構えた首領パッチで受け止める。
「遅い!!」
ヨシキは素早くボーボボの後ろに回り、ガッポンを振り上げる。
「何の!!天の助ガード!!!」
ボーボボは惜しみなく天の助でガードしようとする。
しかし、当の天の助は覇気に溢れた顔をしている。
「ガッポン如き、ぬのハンカチガード三枚で防いでやるよ!!!!」
しかし、ガッポンはぬのハンカチごと天の助を貫いた。
『駄目でした』
ごつい顔で血を吐く天の助。
「どんまい」
言葉少なめに声をかけるビュティ。
半ば呆れているようだ。
「我が盾、洗剤は時に攻撃の槍となる!!」
ヨシキは洗剤を前に出して中身をブシュッと出した。
「ぐあ~~~~~!!目にしみる~~~!!!」
首領パッチはもがいた。
「良い子は真似するなよ~~!!」
ちゃんと忠告する辺り、余裕なのかもしれない。
そんな事を繰り広げながらも、ビュティたちは遠くからそれを見つめる。
ランバダに至っては壁に寄りかかって本を読んでいる。
何だかこの戦いがどうでもよく感じて来た。
そんな時―――
「ぐはっ!!!!」
洗剤が吐血した。
「どうした洗剤!!?」
「申し訳ねぇ、ヨシキ様。俺は中身の洗剤が無くなると死んでしまうんだ・・・!」
「バカ野郎!!何でもっと早く言わなかったんだ!!?」
「ヨシキ様の・・・力になり、たくて・・・」
弱々しくなって行く洗剤の声。
何だろう、この茶番劇・・・。
ビュティの心にはそれしか浮かばなかった。
そんな事は知らない洗剤はしかし、力尽きるのだった。
「すまねぇ、ヨシキ様・・・今まで・・・ありがとう、ござい・・・ま・・・す・・・」
洗剤は申し訳なさそうに弱々しく言うと、バタッとその場に倒れた。
「洗剤ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ヨシキが叫ぶ。
「洗剤!」
「洗剤!!」
「バカ野郎、お前って奴はーーー!!」
「泣かしてくれるじゃねーかー!!」
ガッポンとスリッパが叫ぶが、そこに首領パッチとボーボボも続く。
そして、二人はターゲットを天の助に移した。
「テメー!!よくも洗剤をーーー!!」
「覚悟しやがれコンチクショーーーー!!!」
首領パッチが天の助を喝上げしてボーボボが手を鳴らす。
二人には青筋が幾つも浮かんでいる。
「えっ!?えっ!?何で俺が責められるの!?何で!!?」
「自分の罪を判っとらんのか己はーー!!」
「歯ぁ食いしばれやーーー!!」
戸惑う天の助に容赦ない二人は、勝手な事を言いながら天の助に暴力を振るう。
「洗剤の仇ーーーーーーーーーーー!!!!」
首領パッチは両手両足を垂直に立てて天の助の顔面に直撃していく。
「ぶっ!!」
そしてそのまま、ヨシキに直撃するのだった。
お次はボーボボだ。
「洗剤の仇ーーーーーーーーーーー!!!!」
顔をなくして胴体だけとなった天の助ボディをボーボボは振り回す。
「ぐはっ!!」
天の助のところてんボディは意外にもヨシキに大きなダメージを与えた。
「も、いらねーや」
散々、拷問するだけ拷問した天の助&天の助のボディをボーボボはヨシキの和式な頭に押し込んだ。
「わーーーー!!テメェーーーーーーー!!!」
ヨシキが慌てる。
そんなことも構わず、ボーボボはヨシキからガッポンを奪い取って無理矢理押し込む。
バチャバチャと音が鳴る辺り、本当に頭はトイレなのかもしれない。
「ボーボボ!コイツの背中にレバーがあったぞ!!」
首領パッチがヨシキの背中を指して言った。
レバーの周りには『←小 大→』と刻みこまれている。
「何で背中にレバーがあるの!?」
ビュティが驚く。
初めから判っている事だが、断定してヨシキはトイレ人間だ。
「よし首領パッチ!回しちまえ!!!」
「おうよ!!!―――うりゃああああっ!!!!」
首領パッチは勢いよくレバーを『大』の方向に回す。
しかし、勢いがありすぎてレバーはボキッと音を立てて外れた。
「勢いありすぎだよ!!」
ビュティがツッコむ。
だがまぁ、レバーを回したのだがらヨシキの頭の水は流れるのだった。
ジャーッという気持ちいいくらいの音を立てて・・・。
「うわ~~~!!!やめろーー!!つ、詰まって詰まって・・・!!!!」
ヨシキは大慌てで天の助ボディを取り出すとするが、ゴボゴボッというヨシキにとっては嫌な音が鳴る。
つまり・・・詰まったという事だ。
「あっ・・・!!!」
ヨシキはピタリと動きを止めた。
ガッポンとスリッパは口を大きく開けて目を飛び出させる。
最後にゴプッという音が鳴ってヨシキはバタリと倒れた。
ボーボボチームVSヨシキ ボーボボの勝利
「ふん、口ほどにもない奴め」
「チキショーーーーーー!!!」
「ヨシキ様と洗剤の仇ーーーー!!!!」
ガッポンとスリッパが突撃してくる。
だが―――
「廃品回収!!!」
首領パッチが現れてポリバケツをガッポンとスリッパに向けた。
二人(?)は急な事でブレーキも判断も効かず、ダイレクトにポリバケツの中へと入って行った。
首領パッチはそれに蓋をしてガムテープで縛りつけると―――
「はいっ!!!!」
思いっきり力強く投げた。
二人(?)を入れたポリバケツは天井を突き破って天高く飛んで行くのだった。
ボーボボチームVSスリッパ・ガッポン ボーボボチームの勝利
『毛狩り隊Wブロック基地壊滅』
「得る物は何もなかったな」
本から目を離さずにランバアが言った。
まさに彼の言う通りだとビュティは思った。
「それより、天の助は一体・・・」
「俺が何だ?」
天の助の声がしてヘッポコ丸は振り向く。
しかし、天の助は体内にネズミやら汚れやら、体の周りに無数のハエを引き連れていた。
おまけに臭い匂いまでする。
「きたなっ!!!どーしたんだよお前!!?」
「ボーボボたちにヨシキの頭に押し込められて流された後、下水道とか通って来たんだよ」
「コイツ(ヨシキ)の体どーなってんの!?」
下水道という異次元にでも繋がっているのだろうか。
なんにせよ、不思議な人間―――いや、生物だ。
「なぁ、ボーボボ。銭湯でも行こうぜ」
「溶けるよ!!!」
ビュティがツッコむ。
ところてんなのだから溶けて当たり前だ。
なのに自分から行こうなどと言うのは、もはや自殺行為だ。
しかし、ボーボボは気に留めずに頷く。
「どちらにせよ、この戦いで汗をかいた。行くか、銭湯に」
「でも、近くに銭湯なんてあったっけ?」
「あそこに―――・・・」
ボーボボは窓の向こうを指さす。
振り返って見ると、昭和の香り漂う銭湯が少し離れた所に建っていた。
そんな訳で、一行は基地を出て銭湯に向かう事にした。
・・・―――そこで、敵が待ち受けていることも知らずに。
END
そんな時、ランバダだけある意味違う事を考えていた。
(何でテント?)
夕べ、ボーボボたちと一緒のテントで寝たランバダ。
しかし、テントの中に入ってみれば、ボーボボと首領パッチは更なるテントの中で寝ていたのだ。
テントの中にテントがあると言うある意味不思議な光景にランバダは唖然とした。
中からはいびきは聞こえて来たものの、寝相による被害は無かったので良しとする。
次に寝る時もこんな感じあってほしいが―――。
「着いたな」
ザッとボーボボが足を止める。
目の前には巨大な洋式トイレがそびえ立っていた。
「トイレ!!!?」
勿論、ビュティはツッコミを忘れない。
しかも、良く見ると看板があって
『Wブロック基地』
とパンダの絵と一緒に書かれていた。
「こんなのがWブロック基地!?Wなだけに!!!」
最悪な基地である。
入りたくないビュティだが、ボーボボたちは―――
「わ~い!!Wブロック基地だ~!!」
「早く行こうぜ~!!!」
「待てよ~!!!」
スキップルンルンでWブロックの中へと入って行った。
「底が知れるな」
ランバダは一人呟いてボーボボたちの後に続いた。
仕方ないので、ビュティとヘッポコ丸も後に付いて行った。
Wブロック基地前
Wブロック基地には―――エレベーターがあった。
ビュティ「エレベーター!?」
基地なのに何故エレベーターがあるのだろうか。
そんな事は置いといて、ボーボボはボタンを押す。
しばらくすると、チンと音がなってエレベーターが来た。
しかし、扉が開いて中から毛狩り隊の隊員が二人程出て来る。
「それでさー」
「マジでー?」
呑気に話し合いながらボーボボたちの横を普通に通り過ぎて行く隊員。
そして、ボーボボたちは何事もなかったかのようにエレベーターに乗った。
((ええ~~~~~~~?))
ビュティとヘッポコ丸は複雑な顔をしていたが。
エレベーターの中には沢山の張り紙があるがどれもトイレに関する張り紙ばかり。
『トレイは大切に使おう!』や『ゴミは流しちゃ駄目、絶対!』等といったものばかり。
(何か不快・・・)
ビュティは内心呟いた。
「よし、三階に行くぞ」
「え?最上階の四階じゃないんですか?」
ボタンは全部で四つ。
なのに三階のボタンを押すボーボボ。
「あれを見てみろ」
ボーボボは入口の上を指した。
階ごとの説明が書かれていたが、三階の所には『ボスのトイレ』と書かれていた。
「ボスのトイレ!?」
すかさずツッコむビュティ。
「一階は婦人トイレ。二階は紳士トイレ。四階、屋上は子供用トイレ」
「なんじゃそりゃ!?つか、子供用トイレ屋上!!?」
ランバダが読み上げた階説明をビュティがツッコむ。
デパートみたいな乗りがどこかムカつく。
チンと音が鳴って三階に着く。
扉がガコンと開いてボスと対面する。
「クックックッ・・・よく来たな、ボーボボよ」
男の声が暗い部屋に響く。
「だが、お前の命も今日で終わりだ!!!」
男が叫んで部屋の電気がつく。
すると、男も照らし出される。が、男は洋式トイレに座っていた。
「え!?トイレ中!!?」
「いや、これは椅子だ」
「椅子!?トイレが!!?」
やはり基地がトイレなら中身もトイレなのだろうか。
しかし、男の首から上は和式トイレだった。
「椅子と外見は洋式なのに本人は和式!?」
このツッコミはヘッポコ丸。
矛盾を指摘したと言っても過言ではない。
「へっ、面白いぜ。お前自身が和式ならこっちは洋式で行くぜ」
ボーボボはカッコいい事を言っているように思えるが実はカッコ悪い。
しかも、洋式で行くと言っておきながら腰には和式トイレが装着されていた。
ボーボボだけでなく、首領パッチと天の助も。
「それ和式!!!」
ビュティがツッコむ。
しかし、構わずにボーボボたち三人は突っ込んで行った。
「オラオラーーーー!!!行くぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「俺の名はヨシキ。そして―――」
男―――ヨシキは構えた。
「トイレ真拳奥義『ペッパー締め』!!!!」
トイレットペーパーで三人を締めあげた。
「「「ぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」
断末魔の叫び声を上げる三人。
トイレットペーパーにこれ程の力があっただろうか。
ビュティは疑問で仕方なかった。
ドサッとボーボボたちは床に叩きつけられる。
それを背にヨシキは言い放つ。
「トイレ真拳の使い手だ」
(カッコ悪・・・)
敢えて口にしないビュティ。
ボーボボたちは体勢を立て直すとヨシキに向き合った。
「上等じゃねーか。そのトイレ真拳とやら、絶対に破ってやるよ」
「ふん、やってみろ」
「行くぜ!鼻毛真拳奥義『破壊屋』!!!」
ボーボボ・首領パッチ・天の助はハンマーを持ってヨシキへと走り出した。
だが、ヨシキは―――
「トイレ真拳奥義『流水』!!!」
どこからともなく大量の水を出した。
「「「ぐばぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」」」
「まだまだ!!トイレ真拳奥義『芳香剤』!!!」
ヨシキは芳香剤を振り撒く。
三人はまたもや悲鳴を上げる。
「「「キッツーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」」」
「鼻が・・・鼻が・・・鼻が伸びちまうーーーーーーーーーー!!!」
三人の鼻は童話の人形のように伸びて行った。
「伸びるの!?曲がるんじゃなくて!!」
つくづく不思議だ。
そんな事より、ボーボボたち三人は顔を見合わせて、ワナワナと震えだした。
「鼻が伸びたらもう・・・」
「俺たちは・・・」
首領パッチと天の助の順で言う。
次はボーボボだ。
「キツツキになるしかねーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
「何で!!!!??」
全く意味が判らない。
キツツキになる理由が全くもって判らない。
しかし、三人はそのままヨシキへと突っ込んで行く。
「鼻毛真拳奥義『キツツキの演奏』!!!!」
三人はヨシキをキツツキが如く突く。
しかし、コンコンコンコン等と言う可愛らしい音ではなく、ドスッドスッドスッと言う刺すような鈍い音しかしなかった。
演奏どころではない。
「ぐっ・・・!!」
それでも一応、ダメージを食らうヨシキ。
そこに―――
「「「ヨシキ様ーーー!!」」」
三つの声がして何かがボーボボたちを蹴り飛ばした。
「ぐおっ!?何だ!!?」
「貴様、よくもヨシキ様を!!」
「ぶっ殺してやるよ!!」
「覚悟しやがれ!!」
そして叫ぶ“何か”。
良く見てみれば、トイレのガッポンする奴とスリッパとトイレ用洗剤だった。
「俺はガッポン!」
「俺はスリッパ!」
「俺は洗剤!!」
「そのまんまだね」
ビュティが冷静にツッコむ。
見りゃ判る。
「お前たち・・・」
「加勢に参りました!ヨシキ様!!」
「奴らに俺たちの力を見せてやりましょう!!」
「今こそ合体の時です!!」
「合体だと!?」
「何が始まると言うんだ」
「ヤベーな」
首領パッチ・ボーボボ・天の助の順で焦りの言葉を述べる。
そして―――
「行くぞ!!合体!!!!!!!!!」
ヨシキの身体が光を放つ。
スリッパがアニメが如く前に出て決めポーズをする。
そして、ヨシキの足に収まった。
次に洗剤が不敵な笑みを浮かべて前に出る。
そしてヨシキの左手に掴まれる。
最後にガッポンが前に出て来る。
そしてヨシキの右手に掴まれる。
ヨシキは不敵な笑みを浮かべて言い放つ。
「右手にガッポン。左手に洗剤。そして足にスリッパ。我、これらを装備して無敵と名乗る」
決めポーズをすると、バックライトが大きく光った。
(トイレを掃除すると言う面ではね)
ビュティは皮肉を含んだツッコミを心の中でする。
しかし、三バカは違った。
「「「かっけ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!」」」
「どこが!!!??」
やはり三バカと言うべきか何と言うか。
しかも対抗し始める。
「ならばこちらも合体だ!」
「おう!」
「あれだな!?」
「行くぜ!!合体!!!!」
一言言っておくと、ボーボボ融合ではない。
首領パッチは先程のスリッパたちと同じように前に出て決めポーズをする。
そして、両足をボーボボの右手に掴まれる。
天の助も同じことをして決めポーズをする。
そして、頭をボーボボの左手に鷲掴みされる。
「右手に首領パッチ。左手に天の助。これらを装備して最強と名乗る」
「いつものバカガードと大差変わりねーーー!!!!」
ヘッポコ丸がツッコむ。
特に、天の助の頭を鷲掴みする辺りがそれだ。
そして、両者共に構える。
しばしばの沈黙が走った後、ヨシキが先に走り出した。
「いざ参る!!!」
「かかってこいやーーーーー!!!」
ボーボボも走り出した。
「うぉおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
ヨシキはガッポンを振り上げる。
しかし、それを首領パッチソード(ネギ)を構えた首領パッチで受け止める。
「遅い!!」
ヨシキは素早くボーボボの後ろに回り、ガッポンを振り上げる。
「何の!!天の助ガード!!!」
ボーボボは惜しみなく天の助でガードしようとする。
しかし、当の天の助は覇気に溢れた顔をしている。
「ガッポン如き、ぬのハンカチガード三枚で防いでやるよ!!!!」
しかし、ガッポンはぬのハンカチごと天の助を貫いた。
『駄目でした』
ごつい顔で血を吐く天の助。
「どんまい」
言葉少なめに声をかけるビュティ。
半ば呆れているようだ。
「我が盾、洗剤は時に攻撃の槍となる!!」
ヨシキは洗剤を前に出して中身をブシュッと出した。
「ぐあ~~~~~!!目にしみる~~~!!!」
首領パッチはもがいた。
「良い子は真似するなよ~~!!」
ちゃんと忠告する辺り、余裕なのかもしれない。
そんな事を繰り広げながらも、ビュティたちは遠くからそれを見つめる。
ランバダに至っては壁に寄りかかって本を読んでいる。
何だかこの戦いがどうでもよく感じて来た。
そんな時―――
「ぐはっ!!!!」
洗剤が吐血した。
「どうした洗剤!!?」
「申し訳ねぇ、ヨシキ様。俺は中身の洗剤が無くなると死んでしまうんだ・・・!」
「バカ野郎!!何でもっと早く言わなかったんだ!!?」
「ヨシキ様の・・・力になり、たくて・・・」
弱々しくなって行く洗剤の声。
何だろう、この茶番劇・・・。
ビュティの心にはそれしか浮かばなかった。
そんな事は知らない洗剤はしかし、力尽きるのだった。
「すまねぇ、ヨシキ様・・・今まで・・・ありがとう、ござい・・・ま・・・す・・・」
洗剤は申し訳なさそうに弱々しく言うと、バタッとその場に倒れた。
「洗剤ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ヨシキが叫ぶ。
「洗剤!」
「洗剤!!」
「バカ野郎、お前って奴はーーー!!」
「泣かしてくれるじゃねーかー!!」
ガッポンとスリッパが叫ぶが、そこに首領パッチとボーボボも続く。
そして、二人はターゲットを天の助に移した。
「テメー!!よくも洗剤をーーー!!」
「覚悟しやがれコンチクショーーーー!!!」
首領パッチが天の助を喝上げしてボーボボが手を鳴らす。
二人には青筋が幾つも浮かんでいる。
「えっ!?えっ!?何で俺が責められるの!?何で!!?」
「自分の罪を判っとらんのか己はーー!!」
「歯ぁ食いしばれやーーー!!」
戸惑う天の助に容赦ない二人は、勝手な事を言いながら天の助に暴力を振るう。
「洗剤の仇ーーーーーーーーーーー!!!!」
首領パッチは両手両足を垂直に立てて天の助の顔面に直撃していく。
「ぶっ!!」
そしてそのまま、ヨシキに直撃するのだった。
お次はボーボボだ。
「洗剤の仇ーーーーーーーーーーー!!!!」
顔をなくして胴体だけとなった天の助ボディをボーボボは振り回す。
「ぐはっ!!」
天の助のところてんボディは意外にもヨシキに大きなダメージを与えた。
「も、いらねーや」
散々、拷問するだけ拷問した天の助&天の助のボディをボーボボはヨシキの和式な頭に押し込んだ。
「わーーーー!!テメェーーーーーーー!!!」
ヨシキが慌てる。
そんなことも構わず、ボーボボはヨシキからガッポンを奪い取って無理矢理押し込む。
バチャバチャと音が鳴る辺り、本当に頭はトイレなのかもしれない。
「ボーボボ!コイツの背中にレバーがあったぞ!!」
首領パッチがヨシキの背中を指して言った。
レバーの周りには『←小 大→』と刻みこまれている。
「何で背中にレバーがあるの!?」
ビュティが驚く。
初めから判っている事だが、断定してヨシキはトイレ人間だ。
「よし首領パッチ!回しちまえ!!!」
「おうよ!!!―――うりゃああああっ!!!!」
首領パッチは勢いよくレバーを『大』の方向に回す。
しかし、勢いがありすぎてレバーはボキッと音を立てて外れた。
「勢いありすぎだよ!!」
ビュティがツッコむ。
だがまぁ、レバーを回したのだがらヨシキの頭の水は流れるのだった。
ジャーッという気持ちいいくらいの音を立てて・・・。
「うわ~~~!!!やめろーー!!つ、詰まって詰まって・・・!!!!」
ヨシキは大慌てで天の助ボディを取り出すとするが、ゴボゴボッというヨシキにとっては嫌な音が鳴る。
つまり・・・詰まったという事だ。
「あっ・・・!!!」
ヨシキはピタリと動きを止めた。
ガッポンとスリッパは口を大きく開けて目を飛び出させる。
最後にゴプッという音が鳴ってヨシキはバタリと倒れた。
ボーボボチームVSヨシキ ボーボボの勝利
「ふん、口ほどにもない奴め」
「チキショーーーーーー!!!」
「ヨシキ様と洗剤の仇ーーーー!!!!」
ガッポンとスリッパが突撃してくる。
だが―――
「廃品回収!!!」
首領パッチが現れてポリバケツをガッポンとスリッパに向けた。
二人(?)は急な事でブレーキも判断も効かず、ダイレクトにポリバケツの中へと入って行った。
首領パッチはそれに蓋をしてガムテープで縛りつけると―――
「はいっ!!!!」
思いっきり力強く投げた。
二人(?)を入れたポリバケツは天井を突き破って天高く飛んで行くのだった。
ボーボボチームVSスリッパ・ガッポン ボーボボチームの勝利
『毛狩り隊Wブロック基地壊滅』
「得る物は何もなかったな」
本から目を離さずにランバアが言った。
まさに彼の言う通りだとビュティは思った。
「それより、天の助は一体・・・」
「俺が何だ?」
天の助の声がしてヘッポコ丸は振り向く。
しかし、天の助は体内にネズミやら汚れやら、体の周りに無数のハエを引き連れていた。
おまけに臭い匂いまでする。
「きたなっ!!!どーしたんだよお前!!?」
「ボーボボたちにヨシキの頭に押し込められて流された後、下水道とか通って来たんだよ」
「コイツ(ヨシキ)の体どーなってんの!?」
下水道という異次元にでも繋がっているのだろうか。
なんにせよ、不思議な人間―――いや、生物だ。
「なぁ、ボーボボ。銭湯でも行こうぜ」
「溶けるよ!!!」
ビュティがツッコむ。
ところてんなのだから溶けて当たり前だ。
なのに自分から行こうなどと言うのは、もはや自殺行為だ。
しかし、ボーボボは気に留めずに頷く。
「どちらにせよ、この戦いで汗をかいた。行くか、銭湯に」
「でも、近くに銭湯なんてあったっけ?」
「あそこに―――・・・」
ボーボボは窓の向こうを指さす。
振り返って見ると、昭和の香り漂う銭湯が少し離れた所に建っていた。
そんな訳で、一行は基地を出て銭湯に向かう事にした。
・・・―――そこで、敵が待ち受けていることも知らずに。
END