鼻毛スピリッツ

前回までのあらすじ


Vブロック基地隊長・ナドラとの激戦を繰り広げたボーボボたち。
ナドラの実力は中々のもので苦戦を強いられた。
しかし、最後は『じゃがいもアタック』によってナドラを倒す事が出来たのだった。


「なんじゃそりゃ!?そんな攻撃で倒してないよ!!」


ナドラを撃破し、Vブロック基地は壊滅した。

ランバダの死と引き換えに―――


「ふざけんな!!俺は生きてるぞ!!!」








ブロック基地を壊滅したボーボボたちは野宿をしていた。


青くて大きなテントと普通サイズでピンクのテントが並んでいる。
それを眺めながらランバダがポツリと呟く。

「でっかいテントが一つと小さい普通サイズのテントが一つ・・・」
「大きい方は男性用で小さい方が女性用なんです」
「ふーん・・・」

説明するビュティ。
すると、必然的に自分はボーボボたちと寝なければいけない事にランバダは気付いた。

「・・・」

想像しただけでも背筋が凍るのが判る。
恐らくは地獄となるだろう。
果たして自分は耐えられるかどうかランバダはある意味自信がなかったという。

「さてと・・・ボーボボ、焚火の準備出来た?」

ビュティは振り返った。

「なぁっ!!!!??」

振り返ると、ボーボボが破天荒を大砲に詰めている光景が目に入った。
破天荒は必死に抵抗している。

「何してんだよボーボボ!!?」
「止めるなビュティ。これは大事な事なんだ」
「何が!?」
「おいコラ離せボーボボ!!何のつもりだ!?」

破天荒が青筋を浮かべてボーボボを睨む。
対するボーボボは無表情のまま、悪びれもせずに言いのける。

「破天荒、お前には毛狩り隊の情報収集をしてもらう」
「はぁっ!?ふざけんな!!何で俺がそんな事しなくちゃいけねーんだよ!!?」
「して来てくれたら首領パッチの生写真あげるから」

ボーボボは破天荒に首領パッチの写真を見せた。
すると、破天荒は暴れるのをやめて笑顔になる。

「よし、乗った!!」

「破天荒さん!!?」

「よし!!!行ってこいやーーーーーーーー!!!!!」

ボーボボは構う事なく大砲を発射させた。

ドッカーーーーーーン

こうして、破天荒は空高く飛んで行ってしまった。

「破天荒さーーーーーーーーん!!!!」

ビュティが叫ぶ。
その後ろでランバダが

(折角、同等で話せる奴がいたのに・・・)

と肩を落としていた。



破天荒  戦線離脱



「別に行かせる必要無かったでしょ!?」
「アイツの出番は早過ぎた・・・」
「真実はそれ!?」

サラッと裏話しをするボーボボとビュティ。
ここは聞かなかった事にして下さい。

「おーい」

そこに、魚を釣って来たであろうヘッポコ丸・首領パッチ・天の助がやって来た。








「あ、お帰り」

ビュティが笑顔で迎える。

「どうだった?」
「この通りさ」

ヘッポコ丸は魚を入れている籠を見せる。
中には沢山の魚がビチビチと水滴を飛ばしながら入っていた。

「俺も沢山釣って来たぞ」

首領パッチも籠を見せる。
中には色とりどりの金魚が入っていた。
苦しそうにビチビチと跳ねている。

「それ金魚!!」

金魚を可哀想に思いながらツッコむビュティ。

「俺も活きのいいのを釣って来たぞ」

そう言って天の助は籠からはみ出てる不細工な男の人魚をビュティに見せた。

「きしょっ!!それは人魚!!何で釣られてんの!?」

果てしなく疑問に思うビュティ。
人魚と言えど、“人”が付く位だから人間と同じ思考回路がある筈。
でなきゃタダのバカとなる。

「腹が減ってたのでつい・・・」

男人魚が照れたように言う。
本当にタダのバカだった。

「戻して来なさい!」

「「はーい」」

ビュティに怒られて首領パッチと天の助はしょんぼりと言った感じで肩を落とした。
そして、トボトボと歩きながら金魚と男人魚を逃がしに行く。

「あれ?そういえば破天荒は?」

破天荒の姿が見当たらなくてヘッポコ丸は辺りを見回しながら尋ねる。
そこに、複雑顔のビュティがヘッポコ丸に言う。

「ボーボボが飛ばした」
「飛ばした!?何で!!?」

「ビュティ、それ以上言うな。言えば面倒な事になる」

ボーボボが横から口を挟んで口止めをする。
ヘッポコ丸はとても気になったが、ボーボボの視線が尋ねてくるなと訴えかけて来る。
恐らく、それらを無視して追及してしまえば消されるだろう。
良くて出番が減るに違いない。
ヘッポコ丸はそう危惧して追及するのをやめた。








串刺しにして焼いた魚を食べながらボーボボはランバダに尋ねた。

「それにしても、よく3世に修行をつけてもらえたな」

3世はボーボボに二回も倒されている。
それにより、3世は少々機嫌が悪いのではないかとボーボボは思っていた。

「まぁな。俺も覚悟はしてたけど案外すんなり修行をつけてくれた」

その代わり殺され覚悟の修行だったけどな、とランバダは付け足す。
やはり少しは機嫌が悪かったのか。
それともただ部下を鍛える為故の行為なのか。

「3世の奴、今はどうしてるんだ?」
「お前に二回も倒されたからしばらくの間は静かに過ごすらしいぞ」
「しばらくって事はまた復活するのか?」
「いや、お前が死んだ後にでも再び世を支配するってよ」
「コールドスリープ装置に入ってか?」
「さぁな」

小さく笑いながらランバダは魚を食べる。

(ランバダさん・・・打ち解けられてるみたい)

ビュティは内心ホッとした。
元は敵だったのだから、少しばかり気まずい雰囲気は出るだろうと思ったが、案外そうでもなかった。
それに安心してビュティは魚を一かじりする。
そこに―――

「あのアヒル何だ?」

首領パッチがビュティの後ろを差す。

「え?」

ビュティは振り返った。
そこには、草むらから顔を出して小さく震えている白いアヒルがいた。
見かけからして子供のアヒルかもしれない。

「わ~!可愛い~!」

ビュティは食べ終わった魚を突き刺していた棒を置いてアヒルに歩み寄った。

「お前、どうしたんだ?他の動物に襲われそうになったのか?」

ビュティが優しく話しかける。
すると、アヒルはそれに答えるかのように前に出た。が・・・

「ハァ・・・ハァ・・・お嬢ちゃんもアヒル好きかい?」

見慣れた男が頭にアヒルとパンツを足して二で割ったパンツを被って草むらから出て来た。
息は荒く、興奮気味。
そう、この男は毛狩り隊暗殺部隊のキラリーノだ。
そして、アヒルとパンツを二で割ったパンツはアヒルパンツのたかしだ。
面識が三回目のビュティ。
しかし、ある意味慣れておらず、いや慣れたくない彼女は叫んだ。

「いやぁあーーーーーーーーーーーーっ!!!変態だーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」

ビュティの防衛本能が働いて、ビュティはキラリーノを思いっきり殴った。

「ぶへっ!!!」

「変態変態変態変態ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

ビュティは少し混乱しながらキラリーノを殴り続ける。

「落ち着け、ビュティ」

ボーボボはビュティをキラリーノから離した。
しかし、そうした所でキラリーノのHPは0に等しい。

(凄いな・・・)

キラリーノを瀕死に追い込んだビュティにランバダは半ば感心したとか。








「ぐぐっ・・・久々の登場なのにこの仕打ち・・・」
「所詮はこんなもんさ」

慰めなのかどうか判らない言葉をかけるたかし。
その時―――

「は、離せ!!!」

天の助の焦る声が聞こえた。
一同が振り返ると、そこには天の助を人質に取る男がいた。
キラリーノと同じく、頭はハゲている。

「何だお前は?」

ボーボボが余裕な声で尋ねる。
男はニヤリと笑って答えた。

「俺は毛狩り隊暗殺部隊のパゲッテルだ。お仲間の命が惜しかったら大人しくしな!!」
「ボーボボ~!!」

涙目になって助けを求める天の助。

「天の助ーー!!」
「待ってろ、今助けるからな!!」

構えるボーボボと首領パッチ。
だが、この二人の言葉を信用してはいけない。

「クソ野郎ーーーーーーーーーーー!!!!!」

首領パッチはマシンガンを乱射する。

「「ぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」」

断末魔の叫び声を上げる天の助とパゲッテル。

「助ける気ゼロだーーーー!!!」

まさかの首領パッチの行動に驚くビュティ。
だが、まだこんなものではない。
お次はボーボボだ。

「天の助を解放しやがれーーーーーーーーーー!!!!」

ボーボボは手榴弾の栓を口で抜いて天の助とパゲッテルめがけて投げた。

ドォーーーーーーーーーーーーンッ

「「ぐばぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」」

「天の助ーーーーーーーーー!!!」

爆破された天の助に同情するヘッポコ丸。
この時、ボーボボと首領パッチは助ける気などさらさら無かった事に気付くヘッポコ丸だった。

(コイツらに仲間意識は無いんだな・・・)

また一つ、ボーボボたちについて勉強したランバダだった。

「先輩!!!大丈夫ッスか先輩!!?」

パゲッテルを揺り動かして無事を確かめるキラリーノ。
どうやらこの二人は先輩と後輩関係にあるようだ。

「お前ら!!それでも人の子かぁっ!!?」

「毛狩り隊は徹底的に潰す。立ち上がれない位な」

ボーボボが二人を見据えて言い放つ。
キラリーノからしてみれば、本当に人の子なのかどうか疑いたくなる発言だ。

「キラリーノ・・・俺は大丈夫だ。それより、やるぞ」
「はい!!」

立ち上がったパゲッテル。
そして、キラリーノと共に並んで構えた。
そこでアヒルパンツのたかしが言う。








「お前ら、よく聞け。この二人が組むと100人斬りなんてお手の元なんだぜ?」

「単体だと?」

ランバダが尋ねる。

「15人がやっとです」

テヘ、とキラリーノは舌を出しながら恥ずかしそうに言う。

「弱っ!!」

当然、ツッコむヘッポコ丸。

「俺は20人が限界です」

同じく舌を出して恥ずかしそうに言うパゲッテル。

「よくそれで100人斬り出来たな!!?」

15と20を足しても35.
そんな二人が組んで100人斬り出来たなどというのは嘘に聞こえる。
白々しい目で見つめるヘッポコ丸。

「な、何だよ!?本当に100人斬りしたんだからな!!」

必死に言い張るたかし。
だが、必死な所がより一層嘘を大きく主張しているようでならない。
そんなヘッポコ丸の視線を他所に、ボーボボがキラリーノに尋ねる。

「キラリーノ」

「何だ?」

「何故お前の先輩だけはまともな服を着ている?」

言い忘れていたが、パゲッテルは普通の毛狩り隊の格好をしている。
それに対してキラリーノは今も昔も変わらない変態的な服だ。
そしてその事を指摘されたキラリーノは涙を流し始めた。

「だって・・・先輩がこれでいいだろって言うから・・・」
「仕方ねーじゃねーか。お前もうユニフォームあったんだから」
「先輩だってあったじゃないッスか」
「洗濯したら縮んじゃったんだよ!!」

くだらない会話を始めた二人。
その内、話の内容は『この間のテレビ見た?』みたいな事に発展して行く始末。
そんな二人を眺めながらボーボボたちは話が終わるの待って寛ぐ事にした。

「アレ無かったっすよね~」
「あ~、判る判る」

「なぁ」

「「ん?」」

ランバダが二人の会話に入る。
二人は同時に視線をランバダに向ける。

「お前ら、レムって女知らねーか?」

「いや?キラリーノ、お前知ってるか?」
「いや、知らないッス」

「じゃぁ、いい」

ランバダは打ち切ってお茶を飲み始めた。
そこで、頃合いを見計らってボーボボが言いだす。

「お前ら、用が無いんなら帰れ。こっちはもう寝る時間なんだ」

「ああ、ごめん」
「今すぐ帰る・・・って違いますよ先輩!!俺たちボーボボ殺しに来たんじゃないッスか!!」
「あ、そーいやそーだった!!」

漫才師たちのコントみたいなやり取りをする二人。
そんな二人に呆れてヘッポコ丸がビュティに言った。








「暗殺って堂々とするもんじゃないよな?」
「うん、もっとこう・・・忍者みたいに、ね?」

それなのにこの二人が暗殺部隊にいる事がとても不思議でならないビュティとヘッポコ丸。
まぁ、そんな事は置いといて気を取り直すキラリーノとパゲッテル。
そして再び構えた。

「暗殺部隊・パゲッテル」
「同じくキラリーノ」

「「参る!!」」

二人はボーボボに向かって走り出した。
ボーボボは二人を見据えて・・・

「アサガオ条約!!」

真拳を使わずして二人を倒した。

「「ぎゃぁあ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!」」

二人は悲鳴を上げて、地面の上にドサッと落ちた。



ボーボボVSキラリーノ・パゲッテル   ボーボボの勝利



「ところでコイツらどうする?」

天の助がキラリーノとパゲッテルを差して尋ねる。

「大砲で飛ばすぞ」

ボーボボは破天荒を飛ばした大砲を用意した。
そして、キラリーノとパゲッテルを詰める。

「また大砲!?」

ビュティはツッコむ。
まぁ、他に方法が無いと言えば無い。
このまま放置してもまた襲って来るだけだ。
ビュティはそのまま何も言わず、ボーボボがキラリーノとパゲッテルを打ち上げる所を見届ける事にした。

「点火っ!!!!!!!」

ボーボボはマッチに火をつけて導火線に火をつけた。

ドーーーーーンッ

二人は綺麗な位に夜空に飛んで行き―――花火となった。

「花火!!!?」
「キレーねー」

ビュティの後に首領パッチがとても和んだ顔で空を見上げる。
何故、花火になったのかとても疑問だ。
そんな事を考えている内に、ボーボボが焚火の火を消した。

「そろそろ寝るぞ」
「あ、うん」

ボーボボは先にテントの中に入った。
それに続いて天の助や首領パッチも入って行き―――

「お休み」

ヘッポコ丸もお休みの挨拶をしてテントに向かった。

「お休みー」

ビュティはその背中に呼びかける。
そして、テントを見ながら立ちつくしているランバダに気付いて声を掛けた。

「寝ないんですか?」
「いや・・・まぁ・・・」

少し嫌そうな顔をするランバダ。
そんなランバダにビュティは首を傾げる。








「どうしたんですか?」
「その・・・アイツらと同じテントで大丈夫かなって・・・」
「ああ、大丈夫ですよ!ヘッくんもここにいない他の人たちも普通に寝られてますから」
「そうか・・・」

それでも少しばかり不安を抱くランバダ。
そんなランバダを他所に、ビュティは

「それじゃ、お休みなさーい」

と軽やかな挨拶を言って、一人ピンクのテントの中へと入っていた。
そして、そこにはランバダだけが残る。

「・・・」

しばしば考えてから、ランバダはテントに入る事を決心した。
入ろうとして、天の助が放り出されているのに気付く。

「何やってんだ?」
「俺が今日の寝ずの番だから起きてろって」
「そうか」
「なーなー、代わってくれよ~」

天の助がランバダに擦り寄る。
勿論、ランバダは・・・

「触るな」

と言って天の助を蹴り飛ばした。
天の助は小さな悲鳴を上げる。
後ろで天の助が何かほざいていたが、ランバダは聞こえなかった事にした。







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