鼻毛スピリッツ
エンドタワー前
ビュティたちはエンドタワーの前でヘッポコ丸たちを待っていた。
「へっくんたち、まだかな~?」
中々来ないヘッポコ丸たち。
ビュティが一人呟いていると―――
「おーーいっ」
ヘッポコ丸が走ってやって来た。
後ろからは破天荒とランバダが歩いて来ている。
「あ、へっくんたちだ」
「「「へっく~~~~~ん!!!!!」」」
ビュティがヘッポコ丸たちの存在を捉えたのと同時に、バカ三人が涙目になりながらヘッポコ丸の元へと走って行った。
しかし・・・
「「「どっせいっ!!!!!!!!」」」
三人は同時に拳を固めて、ヘッポコ丸の腹を殴った。
「おぶっ!!!!!!!」
会心の一撃をくらうヘッポコ丸。
「何やってんだよ!!?」
三人の愚行にビュティが怒るが三人は聞かない。
むしろ、したり顔で腕を組んでいる。
恐らくこいつらに罪悪感というものはないだろう。
伸びているヘッポコ丸をそのままに、ランバダはボーボボに尋ねた。
「フリーパス見つかったのか?」
「ああ、この通りな」
そう言ってボーボボはランバダにフリーパスを見せる。
「行くぞオメーら!!ナドラの野郎をぶん殴りに行くぞ!!!!」
「「「「おーーーーっ!!!」」」」
ビュティ・天の助・首領パッチ・ヘッポコ丸は大きく返事をして、ボーボボと共に走り出した。
勿論、ランバダや破天荒も続く。
エンドタワー受付
「お客様、フリーパスはお持ちでしょうか?」
中に入って受付嬢が開口一番に尋ねた。
「ああ、勿論だ」
ボーボボはフリーパスを受付嬢に見せる。
確認した受付嬢は「では、ごゆっくり」と言ってすんなり通してくれた。
しかし―――
「ボーボボこれ見て!!!」
ビュティが叫んだ。
「どうしたビュティ!?」
ボーボボはビュティが指す方を見る。
「なっ!?これは・・・!!」
ボーボボの目に飛び込んで来たのは、全て下りとなっているエスカレーターだった。
上りは一つもない。
「駄目です、ボーボボさん!エレベーターもなければ上りのエスカレーターもありません!!」
ヘッポコ丸が報告する。
その時―――
『クックックッ、やぁ諸君』
放送口から男の声がした。
勿論、それはナドラのものだ。
「ナドラか!?」
ボーボボが叫ぶ。
『とうとうエンドタワーに辿り着けたようだな。
だが、下りしかないエスカレーターを上がってこれるかな?』
「上等だ!!こんなもん上がり切ってやるよ!!」
天の助は意気込んで下りのエスカレーターを上って行こうとする。
だが・・・
「なにーーーーーーーーーーーーーっ!!!??」
エスカレーターに乗った途端、エスカレーターは物凄いスピードで動き始めたのだ。
天の助はそれに巻き込まれる。
「天の助君!!!」
ビュティが叫ぶと、下りのエスカレーターはゆっくり動きだした。
そして、上の方からエスカレーターの一部となって下って来る天の助が現れた。
ついでに言うなら、血を吐いている。
「何でエスカレーターの一部になってんの!?」
普通であれば細切れなどになっている筈だが、これもボケなのだろうか。
ビュティは少しばかり疑問に思ったという。
『言い忘れていたが、そのエスカレーターは乗ると物凄いスピードで下り始めるのだ。
それを上りきらねば私の元へは辿り着けないからな。精々頑張れ』
そう述べると、放送口から放送マイクを切る音が聞こえた。
「上等じゃねーか!!このエスカレーターを上り切ってテメーの所まで辿り着いてやるぜ!」
ボーボボは威勢よく叫ぶ。
そして―――
「鼻毛真拳奥義『竹馬でGO!!!』
竹馬で物凄いスピードで動くエスカレーターを上り始めた。
首領パッチと天の助も続く。
「そんなんで上り切れるの!!?」
ビュティがツッコむが・・・
「「「うぉおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」」」
三人は踊り場の所まで竹馬で上り切った。
「すごーーーーーいっ!!!」
ビュティは心底驚いたという。
「ふぅ、何とか上り切ったな」
「見ろボーボボ!!まだエスカレーター地獄は続くぞ!!」
一息ついていたボーボボだったが首領パッチのその言葉でグッと拳を握る。
「チクショウ、これでは身が持たんぞ・・・!」
「ポリゴン真拳奥義『メテオ・ポリゴン』」
聞き慣れた声と共に、目の前のもう一つのエスカレーターが巨大な三角錐となっているポリゴンに壊される。
視線を移せば、自分たちが上って来たエスカレーターが同じように壊されており、動かなくなっている。
しかも、ビュティたちはそれから上って来ている。
「物凄く動くつっても所詮は機械だろ」
ランバダは当たり前のように言い放つと、更に上がって行った。
(((俺たちの苦労って一体・・・)))
ランバダにそのつもりは無かったのだが、ボーボボたち3バカは冷めた気持ちになったと言う。
そんな事を続けながら、とうとう最上階の扉の前まで来た。
「とうとうここまで来たね」
ビュティが力強く言う。
「ああ、行くぞ」
ボーボボも力強く言って扉を勢い良く開けた。
「「「オラオラ!!勝負じゃナドラーーーー!!!!」」」
ボーボボ・首領パッチ・天の助はチンピラ宜しく挑発たっぷりの声で中に突入した。
しかし、そこで驚くべき光景を目の当たりにする。
「なっ!?こ、これは・・・!!!?」
中に入れば、天井もなければ壁も無く、いつかのハレクラニ戦の時のように中は絶景となっていた。
しかも、何時の間にか夜になっている。
そして、その部屋の中央にはナドラが佇んでいた。
「やぁ、諸君。待っていたよ」
ナドラは不敵に笑う。
「外から見たらこんな風じゃなかった筈だぞ!?」
ヘッポコ丸が大声で尋ねる。
ナドラは表情を変えずにヘッポコ丸の質問に淡々と答える。
「私の真拳は夜空があるともっと強力になるのでね。
君たちが上って来る間に部屋をオープンにさせてもらった」
「随分余裕じゃねーか」
「騎士はいつだって冷静でなければならないからな」
沈黙が走る。
張り詰めた空気が緊張を高める。
お互い、睨みあったままだ。
―――そして、ナドラが最初に走り出す。
「いざ参る!!!」
「迎え討てーーーーーーっ!!!!!」
「武将になった!!?」
ボーボボ・首領パッチ・天の助は、武将の格好をして馬に乗っていた。
そして、走り出す。
「三日月真拳奥義『三日月斬り』!!」
「鼻毛真拳奥義『武士の生き様』!!」
両者の真拳が混じり合う。
お互い距離を取って離れた後、異変が起きた。
「ふん・・・こんなものか」
ナドラのマントが少し切れた。
つまり、ナドラにボーボボたちの攻撃はあまり効いていなかったようだ。
「ふん、貴様の攻撃もこんなものか」
カッコいい事を言っているが、実際は真っ二つに切れている三人。
なのに顔はしたり顔。
「アナタたち切れてるから!!!!」
ビュティがナイスなツッコミをする。
だが、ナドラは気にする事なく更に不敵に笑った。
「やるようだな・・・ならば、三日月真拳奥義『三日月カッター』!!!」
ナドラは剣を何回も振った。
すると、そこから多くの三日月が現れてボーボボたちを襲う。
「危ない!!」
ヘッポコ丸はビュティを押し倒して三日月をやり過ごす。
「ふん」
ランバダは無表情でそれらを素早く避ける。
破天荒も同じくそれらを避ける。
「なんの!!バカガーーーーーーーードッ!!!!」
ボーボボは首領パッチと天の助を掴みながら前に突き出して防ぐ。
「ギャーーーーーーーーーー!!久々の拷問!!!!!!!」
断末魔の叫びが如く二人は悲鳴を上げた。
だがもうお約束だ。
「三日月真拳奥義『エナジーバスター』!!」
ナドラは左手を前に突き出した。
すると、そこに大きく三日月型の光が現れて、その形通りに光が発射された。
これは強力そうだ。
「なんの!!鼻毛真拳奥義『ミラーバリア』!!」
ボーボボは巨大な鏡を出した。
首領パッチと天の助はボーボボと共に鏡の後ろにいる。
「おっしゃーーー!!鏡の力で跳ね返すぜーーーー!!」
首領パッチは拳を握って勝機ありの顔をする。
だが・・・
「「「ぐばーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」
三日月の光は鏡を貫通して三バカに直撃した。
「やっぱり駄目だった!!!」
ビュティがツッコむ。
「ハッハッハッハッ!!そんな物で跳ね返せると思ったか!?」
ナドラが高笑いをする。
突如、その背後にランバダが現れる。
その手にはポリゴンで作られたであろう剣が握られている。
「!!」
一秒早く気付いたナドラは間一髪で己の剣でそれを受け止める。
ガキィンッと鋭い音が鳴ってギリギリと鍔迫り合いが始まる。
「私の背後を取るとは中々やるじゃないか」
「テメーに聞きたい事がある。レムっていう女を知らねーか?」
「レム?―――私は知らん」
「なら死ね!!!」
ランバダは慣れた手つきで剣を振っていく。
対するナドラはそれを難無く受け流す。
そこに―――
「ランバダ!!お前何だよその剣は!?」
「お前そんなの作れたっけか!!?」
「俺たちにもその剣よこせ!!」
首領パッチ・天の助・ボーボボの順で三人は戦闘中のランバダに詰め寄る。
「邪魔だ!!あっち行ってろ!!!」
ランバダがついでに三人を斬ろうとするが三人はバレリーナになってそれを華麗にかわす。
そして、先程より激しくランバダに詰め寄るのだった。
「よこせよ、よこせよ!!!!」
「一本位いいじゃねーか!!!」
「ランバダのケチんぼ!!!!」
「だーーっ!!もう判った!!ポリゴン真拳奥義『ポリゴンソード』×3!!」
ランバダは観念したらしく、素早くポリゴンで同じ剣を作った。
「「「流石ランバダ!!!」」」
三人は一気に笑顔になる。
そして、その剣を手にする。
「行くぞ!!協力奥義『鶴の舞』!!!」
三人はランバダと一緒になってナドラを攻撃した。
「ぐはっ!!!」
ナドラは流石に四本の剣は受け止めきれず、ダメージを受けた。
だが、ボーボボたちの攻撃は続く。
「そのまま奥義『一閃斬り』!!!」
四人はナドラの横を素早く駆け抜けて行った。
そして、駆け抜け様にナドラを斬りつける。
「ぐはーーーーーーーっ!!!!」
ナドラは大ダメージを受けた。
「凄い!!大ダメージだ!!」
「おやびん最高ーーーーー!!!」
ビュティと破天荒が叫ぶ。
「ランバダ、お前はこんな技を持っていたか?」
こんな技とは『ポリゴンソード』の事だ。
当初、戦った時はこんな技はなく、己の手をポリゴンにしてランバダは戦っていた。
「3世様と修行した結果、この技を習得したんだ。他にもあるがな」
「そうか・・・強くなったな」
ボーボボは強くなったランバダを認める。
だが・・・
「この私を本気にした事を褒めてやろう」
上の方からナドラの声が響いて来た。
見上げれば、ナドラは三日月の上に立っていた。
「アイツ!!何時の間に・・・!!?」
ヘッポコ丸が叫ぶ。
「喰らうがいい!!三日月真拳最大奥義『フォーミング・ムーン』!!!」
ナドラが奥義を唱えると、沢山の小さな三日月が現れた。
そして、それは目にも止まらぬ速さで落下して来る。
スドォーン ズドォーン
三日月は落下すると同時に爆発して行った。
「きゃああっ!!」
驚くビュティ。
そんな時―――
「ナドラ、これで終いにするぞ」
ボーボボの力強い声が聞こえた。
「鼻毛真拳奥義『夜空のランデブー』!!」
「どっかで見た光景だーーー!!!!」
ビュティの言う通り、ボーボボたちは映画て見た事あるような格好をしていた。
それは、自転車に乗って夜空を駆け上るものであり、自転車の籠には宇宙人の格好をした首領パッチがいる。
ちなみに、天の助はボーボボと同じく自転車に乗っている。
「行くぜーーーーーーー!!!」
ボーボボと天の助は自転車をこぎ始めた。
すると、自転車は宙を走り始めた。
「なにぃいっ!!?」
勿論驚くナドラ。
そして、締めにかかる。
「パチパチ星人、離れるのは寂しいよ」
「大丈夫、僕はいつも君の心の中に―――」
少年ボーボボと宇宙人・首領パッチの会話。
ボーボボは首領パッチをガシッと掴んで言い放つ。
「さようなら!!!パチパチ!!!!」
そして、思いっきり投げ飛ばした。
「ぶへっ!!!!!」
首領パッチは星に当たり、ピンボールのようにあちこちの星の激突して行く。
しかし、ナドラには当たらない。
「ハッハッハッハッ!!!!私に当たっていないぞ!!!」
「バカが。お前は気付いていないようだな」
ボーボボは勝利有りと言った顔で言い放つ。
ナドラは片眉を上げて「何だと?」と返す。
ボーボボは続けた。
「パチパチ星人が星に激突した事によってパチパチ星人は星の怒りを買った」
「まさか!!!!」
「もう遅い。上を見な」
ボーボボに言われてナドラは上を見上げる。
そこには―――
「全軍!!突撃ーーーーーーーーーーーー!!!!」
多くの星を従えて首領パッチが突撃して来た。
「鼻毛真拳奥義『キラキラ星2010』!!!」
「ぐはーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
(完敗・・・だ・・・)
ボーボボチームVSナドラ ボーボボチームの勝利
『毛狩り隊Vブロック基地壊滅』
「やったーー!!ボーボボたちの勝ちだーーーーーー!!」
ビュティは喜びに飛び跳ねる。
それと同時にボーボボ・首領パッチ・天の助が着地する。
ナドラはドサッと地面に叩きつけられた。
「ここには居なかったか・・・」
ランバダがポツリと呟く。
そんなランバダにボーボボは声を掛けた。
「ランバダ、俺たちと来ないか?もしかしたら早く見つかるかもしれないぞ」
「根拠は?」
「俺と毛狩り隊は切っても切れない腐った縁にある。奴らは刺客を送り、
俺たちを狙って来るかもしれん。だが、その分だけそいつらを脅して情報を引き出せる」
ボーボボの話しを聞いてランバダは少し考えた。
ここでボーボボたちと別れ、別行動を取ってレムを捜すという手もある。
しかし、その代わり刺客は自分の所には来ないだろう。
4世は自分が先代の毛狩り隊であり、適わないかもしれない事を予想して刺客は送ってこない可能性がある。
だが、ボーボボたちと居ればボーボボの言う通り、ボーボボを狙って刺客が来るかもしれない。
そしてその刺客を脅してレムの情報が手に入れば・・・
プライドが好まないが、レムを助ける為であるとランバダは自分に言い聞かせ、決断を下した。
「お前らと行こう。一刻も早くレムを探す為だ」
「よし、そうと決まったら当番決めだーーーー!!!」
「「わーーーっ!!!」」
ボーボボの言葉に首領パッチと天の助が飛び上がる。
「はっ!?当番決め!!?」
突然の事にランバダは困惑する。
そんなランバダの肩をビュティがちょんちょんと指で叩く。
振り向けば、ビュティが当番表を持っていた。
紙には現在の当番が書いてあり、
買い出し当番―――ビュティ・ヘッポコ丸・破天荒
野営準備当番―――ボーボボ・首領パッチ・天の助
野宿の際の寝ずの当番―――ビュティ以外
と書かれていた。
「さぁ選べ!!ちなみに寝ずの番に置いて男子は強制だからな!!」
ボーボボが高らかに言い放つ。
しかし、ランバダは抵抗する。
「何でこんなこと・・・」
「みんなやってるんだよ!!一人だけナシってのはねーんだよ!!!」
天の助がランバダに詰め寄る。
「死ねっ!!!」
ランバダは天の助がウザくてポリゴン化した手で天の助を切り刻んだ。
「どっしぇーーーーーー!!!!」
ところてんの細切れの出来上がり。
これ以上抵抗してもボーボボたちがウザくなる一方だと考えたランバダは決めるのだった。
「判った。じゃあ、買い出し当番やるよ」
「はい決まりー!!ちゃんとやり通せよ!!」
これにより、ランバダは買い出し当番となった。
そして同時に仲間(?)にもなった。
END
ビュティたちはエンドタワーの前でヘッポコ丸たちを待っていた。
「へっくんたち、まだかな~?」
中々来ないヘッポコ丸たち。
ビュティが一人呟いていると―――
「おーーいっ」
ヘッポコ丸が走ってやって来た。
後ろからは破天荒とランバダが歩いて来ている。
「あ、へっくんたちだ」
「「「へっく~~~~~ん!!!!!」」」
ビュティがヘッポコ丸たちの存在を捉えたのと同時に、バカ三人が涙目になりながらヘッポコ丸の元へと走って行った。
しかし・・・
「「「どっせいっ!!!!!!!!」」」
三人は同時に拳を固めて、ヘッポコ丸の腹を殴った。
「おぶっ!!!!!!!」
会心の一撃をくらうヘッポコ丸。
「何やってんだよ!!?」
三人の愚行にビュティが怒るが三人は聞かない。
むしろ、したり顔で腕を組んでいる。
恐らくこいつらに罪悪感というものはないだろう。
伸びているヘッポコ丸をそのままに、ランバダはボーボボに尋ねた。
「フリーパス見つかったのか?」
「ああ、この通りな」
そう言ってボーボボはランバダにフリーパスを見せる。
「行くぞオメーら!!ナドラの野郎をぶん殴りに行くぞ!!!!」
「「「「おーーーーっ!!!」」」」
ビュティ・天の助・首領パッチ・ヘッポコ丸は大きく返事をして、ボーボボと共に走り出した。
勿論、ランバダや破天荒も続く。
エンドタワー受付
「お客様、フリーパスはお持ちでしょうか?」
中に入って受付嬢が開口一番に尋ねた。
「ああ、勿論だ」
ボーボボはフリーパスを受付嬢に見せる。
確認した受付嬢は「では、ごゆっくり」と言ってすんなり通してくれた。
しかし―――
「ボーボボこれ見て!!!」
ビュティが叫んだ。
「どうしたビュティ!?」
ボーボボはビュティが指す方を見る。
「なっ!?これは・・・!!」
ボーボボの目に飛び込んで来たのは、全て下りとなっているエスカレーターだった。
上りは一つもない。
「駄目です、ボーボボさん!エレベーターもなければ上りのエスカレーターもありません!!」
ヘッポコ丸が報告する。
その時―――
『クックックッ、やぁ諸君』
放送口から男の声がした。
勿論、それはナドラのものだ。
「ナドラか!?」
ボーボボが叫ぶ。
『とうとうエンドタワーに辿り着けたようだな。
だが、下りしかないエスカレーターを上がってこれるかな?』
「上等だ!!こんなもん上がり切ってやるよ!!」
天の助は意気込んで下りのエスカレーターを上って行こうとする。
だが・・・
「なにーーーーーーーーーーーーーっ!!!??」
エスカレーターに乗った途端、エスカレーターは物凄いスピードで動き始めたのだ。
天の助はそれに巻き込まれる。
「天の助君!!!」
ビュティが叫ぶと、下りのエスカレーターはゆっくり動きだした。
そして、上の方からエスカレーターの一部となって下って来る天の助が現れた。
ついでに言うなら、血を吐いている。
「何でエスカレーターの一部になってんの!?」
普通であれば細切れなどになっている筈だが、これもボケなのだろうか。
ビュティは少しばかり疑問に思ったという。
『言い忘れていたが、そのエスカレーターは乗ると物凄いスピードで下り始めるのだ。
それを上りきらねば私の元へは辿り着けないからな。精々頑張れ』
そう述べると、放送口から放送マイクを切る音が聞こえた。
「上等じゃねーか!!このエスカレーターを上り切ってテメーの所まで辿り着いてやるぜ!」
ボーボボは威勢よく叫ぶ。
そして―――
「鼻毛真拳奥義『竹馬でGO!!!』
竹馬で物凄いスピードで動くエスカレーターを上り始めた。
首領パッチと天の助も続く。
「そんなんで上り切れるの!!?」
ビュティがツッコむが・・・
「「「うぉおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」」」
三人は踊り場の所まで竹馬で上り切った。
「すごーーーーーいっ!!!」
ビュティは心底驚いたという。
「ふぅ、何とか上り切ったな」
「見ろボーボボ!!まだエスカレーター地獄は続くぞ!!」
一息ついていたボーボボだったが首領パッチのその言葉でグッと拳を握る。
「チクショウ、これでは身が持たんぞ・・・!」
「ポリゴン真拳奥義『メテオ・ポリゴン』」
聞き慣れた声と共に、目の前のもう一つのエスカレーターが巨大な三角錐となっているポリゴンに壊される。
視線を移せば、自分たちが上って来たエスカレーターが同じように壊されており、動かなくなっている。
しかも、ビュティたちはそれから上って来ている。
「物凄く動くつっても所詮は機械だろ」
ランバダは当たり前のように言い放つと、更に上がって行った。
(((俺たちの苦労って一体・・・)))
ランバダにそのつもりは無かったのだが、ボーボボたち3バカは冷めた気持ちになったと言う。
そんな事を続けながら、とうとう最上階の扉の前まで来た。
「とうとうここまで来たね」
ビュティが力強く言う。
「ああ、行くぞ」
ボーボボも力強く言って扉を勢い良く開けた。
「「「オラオラ!!勝負じゃナドラーーーー!!!!」」」
ボーボボ・首領パッチ・天の助はチンピラ宜しく挑発たっぷりの声で中に突入した。
しかし、そこで驚くべき光景を目の当たりにする。
「なっ!?こ、これは・・・!!!?」
中に入れば、天井もなければ壁も無く、いつかのハレクラニ戦の時のように中は絶景となっていた。
しかも、何時の間にか夜になっている。
そして、その部屋の中央にはナドラが佇んでいた。
「やぁ、諸君。待っていたよ」
ナドラは不敵に笑う。
「外から見たらこんな風じゃなかった筈だぞ!?」
ヘッポコ丸が大声で尋ねる。
ナドラは表情を変えずにヘッポコ丸の質問に淡々と答える。
「私の真拳は夜空があるともっと強力になるのでね。
君たちが上って来る間に部屋をオープンにさせてもらった」
「随分余裕じゃねーか」
「騎士はいつだって冷静でなければならないからな」
沈黙が走る。
張り詰めた空気が緊張を高める。
お互い、睨みあったままだ。
―――そして、ナドラが最初に走り出す。
「いざ参る!!!」
「迎え討てーーーーーーっ!!!!!」
「武将になった!!?」
ボーボボ・首領パッチ・天の助は、武将の格好をして馬に乗っていた。
そして、走り出す。
「三日月真拳奥義『三日月斬り』!!」
「鼻毛真拳奥義『武士の生き様』!!」
両者の真拳が混じり合う。
お互い距離を取って離れた後、異変が起きた。
「ふん・・・こんなものか」
ナドラのマントが少し切れた。
つまり、ナドラにボーボボたちの攻撃はあまり効いていなかったようだ。
「ふん、貴様の攻撃もこんなものか」
カッコいい事を言っているが、実際は真っ二つに切れている三人。
なのに顔はしたり顔。
「アナタたち切れてるから!!!!」
ビュティがナイスなツッコミをする。
だが、ナドラは気にする事なく更に不敵に笑った。
「やるようだな・・・ならば、三日月真拳奥義『三日月カッター』!!!」
ナドラは剣を何回も振った。
すると、そこから多くの三日月が現れてボーボボたちを襲う。
「危ない!!」
ヘッポコ丸はビュティを押し倒して三日月をやり過ごす。
「ふん」
ランバダは無表情でそれらを素早く避ける。
破天荒も同じくそれらを避ける。
「なんの!!バカガーーーーーーーードッ!!!!」
ボーボボは首領パッチと天の助を掴みながら前に突き出して防ぐ。
「ギャーーーーーーーーーー!!久々の拷問!!!!!!!」
断末魔の叫びが如く二人は悲鳴を上げた。
だがもうお約束だ。
「三日月真拳奥義『エナジーバスター』!!」
ナドラは左手を前に突き出した。
すると、そこに大きく三日月型の光が現れて、その形通りに光が発射された。
これは強力そうだ。
「なんの!!鼻毛真拳奥義『ミラーバリア』!!」
ボーボボは巨大な鏡を出した。
首領パッチと天の助はボーボボと共に鏡の後ろにいる。
「おっしゃーーー!!鏡の力で跳ね返すぜーーーー!!」
首領パッチは拳を握って勝機ありの顔をする。
だが・・・
「「「ぐばーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」
三日月の光は鏡を貫通して三バカに直撃した。
「やっぱり駄目だった!!!」
ビュティがツッコむ。
「ハッハッハッハッ!!そんな物で跳ね返せると思ったか!?」
ナドラが高笑いをする。
突如、その背後にランバダが現れる。
その手にはポリゴンで作られたであろう剣が握られている。
「!!」
一秒早く気付いたナドラは間一髪で己の剣でそれを受け止める。
ガキィンッと鋭い音が鳴ってギリギリと鍔迫り合いが始まる。
「私の背後を取るとは中々やるじゃないか」
「テメーに聞きたい事がある。レムっていう女を知らねーか?」
「レム?―――私は知らん」
「なら死ね!!!」
ランバダは慣れた手つきで剣を振っていく。
対するナドラはそれを難無く受け流す。
そこに―――
「ランバダ!!お前何だよその剣は!?」
「お前そんなの作れたっけか!!?」
「俺たちにもその剣よこせ!!」
首領パッチ・天の助・ボーボボの順で三人は戦闘中のランバダに詰め寄る。
「邪魔だ!!あっち行ってろ!!!」
ランバダがついでに三人を斬ろうとするが三人はバレリーナになってそれを華麗にかわす。
そして、先程より激しくランバダに詰め寄るのだった。
「よこせよ、よこせよ!!!!」
「一本位いいじゃねーか!!!」
「ランバダのケチんぼ!!!!」
「だーーっ!!もう判った!!ポリゴン真拳奥義『ポリゴンソード』×3!!」
ランバダは観念したらしく、素早くポリゴンで同じ剣を作った。
「「「流石ランバダ!!!」」」
三人は一気に笑顔になる。
そして、その剣を手にする。
「行くぞ!!協力奥義『鶴の舞』!!!」
三人はランバダと一緒になってナドラを攻撃した。
「ぐはっ!!!」
ナドラは流石に四本の剣は受け止めきれず、ダメージを受けた。
だが、ボーボボたちの攻撃は続く。
「そのまま奥義『一閃斬り』!!!」
四人はナドラの横を素早く駆け抜けて行った。
そして、駆け抜け様にナドラを斬りつける。
「ぐはーーーーーーーっ!!!!」
ナドラは大ダメージを受けた。
「凄い!!大ダメージだ!!」
「おやびん最高ーーーーー!!!」
ビュティと破天荒が叫ぶ。
「ランバダ、お前はこんな技を持っていたか?」
こんな技とは『ポリゴンソード』の事だ。
当初、戦った時はこんな技はなく、己の手をポリゴンにしてランバダは戦っていた。
「3世様と修行した結果、この技を習得したんだ。他にもあるがな」
「そうか・・・強くなったな」
ボーボボは強くなったランバダを認める。
だが・・・
「この私を本気にした事を褒めてやろう」
上の方からナドラの声が響いて来た。
見上げれば、ナドラは三日月の上に立っていた。
「アイツ!!何時の間に・・・!!?」
ヘッポコ丸が叫ぶ。
「喰らうがいい!!三日月真拳最大奥義『フォーミング・ムーン』!!!」
ナドラが奥義を唱えると、沢山の小さな三日月が現れた。
そして、それは目にも止まらぬ速さで落下して来る。
スドォーン ズドォーン
三日月は落下すると同時に爆発して行った。
「きゃああっ!!」
驚くビュティ。
そんな時―――
「ナドラ、これで終いにするぞ」
ボーボボの力強い声が聞こえた。
「鼻毛真拳奥義『夜空のランデブー』!!」
「どっかで見た光景だーーー!!!!」
ビュティの言う通り、ボーボボたちは映画て見た事あるような格好をしていた。
それは、自転車に乗って夜空を駆け上るものであり、自転車の籠には宇宙人の格好をした首領パッチがいる。
ちなみに、天の助はボーボボと同じく自転車に乗っている。
「行くぜーーーーーーー!!!」
ボーボボと天の助は自転車をこぎ始めた。
すると、自転車は宙を走り始めた。
「なにぃいっ!!?」
勿論驚くナドラ。
そして、締めにかかる。
「パチパチ星人、離れるのは寂しいよ」
「大丈夫、僕はいつも君の心の中に―――」
少年ボーボボと宇宙人・首領パッチの会話。
ボーボボは首領パッチをガシッと掴んで言い放つ。
「さようなら!!!パチパチ!!!!」
そして、思いっきり投げ飛ばした。
「ぶへっ!!!!!」
首領パッチは星に当たり、ピンボールのようにあちこちの星の激突して行く。
しかし、ナドラには当たらない。
「ハッハッハッハッ!!!!私に当たっていないぞ!!!」
「バカが。お前は気付いていないようだな」
ボーボボは勝利有りと言った顔で言い放つ。
ナドラは片眉を上げて「何だと?」と返す。
ボーボボは続けた。
「パチパチ星人が星に激突した事によってパチパチ星人は星の怒りを買った」
「まさか!!!!」
「もう遅い。上を見な」
ボーボボに言われてナドラは上を見上げる。
そこには―――
「全軍!!突撃ーーーーーーーーーーーー!!!!」
多くの星を従えて首領パッチが突撃して来た。
「鼻毛真拳奥義『キラキラ星2010』!!!」
「ぐはーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
(完敗・・・だ・・・)
ボーボボチームVSナドラ ボーボボチームの勝利
『毛狩り隊Vブロック基地壊滅』
「やったーー!!ボーボボたちの勝ちだーーーーーー!!」
ビュティは喜びに飛び跳ねる。
それと同時にボーボボ・首領パッチ・天の助が着地する。
ナドラはドサッと地面に叩きつけられた。
「ここには居なかったか・・・」
ランバダがポツリと呟く。
そんなランバダにボーボボは声を掛けた。
「ランバダ、俺たちと来ないか?もしかしたら早く見つかるかもしれないぞ」
「根拠は?」
「俺と毛狩り隊は切っても切れない腐った縁にある。奴らは刺客を送り、
俺たちを狙って来るかもしれん。だが、その分だけそいつらを脅して情報を引き出せる」
ボーボボの話しを聞いてランバダは少し考えた。
ここでボーボボたちと別れ、別行動を取ってレムを捜すという手もある。
しかし、その代わり刺客は自分の所には来ないだろう。
4世は自分が先代の毛狩り隊であり、適わないかもしれない事を予想して刺客は送ってこない可能性がある。
だが、ボーボボたちと居ればボーボボの言う通り、ボーボボを狙って刺客が来るかもしれない。
そしてその刺客を脅してレムの情報が手に入れば・・・
プライドが好まないが、レムを助ける為であるとランバダは自分に言い聞かせ、決断を下した。
「お前らと行こう。一刻も早くレムを探す為だ」
「よし、そうと決まったら当番決めだーーーー!!!」
「「わーーーっ!!!」」
ボーボボの言葉に首領パッチと天の助が飛び上がる。
「はっ!?当番決め!!?」
突然の事にランバダは困惑する。
そんなランバダの肩をビュティがちょんちょんと指で叩く。
振り向けば、ビュティが当番表を持っていた。
紙には現在の当番が書いてあり、
買い出し当番―――ビュティ・ヘッポコ丸・破天荒
野営準備当番―――ボーボボ・首領パッチ・天の助
野宿の際の寝ずの当番―――ビュティ以外
と書かれていた。
「さぁ選べ!!ちなみに寝ずの番に置いて男子は強制だからな!!」
ボーボボが高らかに言い放つ。
しかし、ランバダは抵抗する。
「何でこんなこと・・・」
「みんなやってるんだよ!!一人だけナシってのはねーんだよ!!!」
天の助がランバダに詰め寄る。
「死ねっ!!!」
ランバダは天の助がウザくてポリゴン化した手で天の助を切り刻んだ。
「どっしぇーーーーーー!!!!」
ところてんの細切れの出来上がり。
これ以上抵抗してもボーボボたちがウザくなる一方だと考えたランバダは決めるのだった。
「判った。じゃあ、買い出し当番やるよ」
「はい決まりー!!ちゃんとやり通せよ!!」
これにより、ランバダは買い出し当番となった。
そして同時に仲間(?)にもなった。
END