鼻毛スピリッツ
~前回のあらすじ~
ボーボボたちはエンドランドに来ていた。
そこで“イリュージョンブルー”に入り、天の助を仲間にする。
そしてその後に“竜の舞”にいたドラゴン真拳の使い手、竜の助・登り竜と激戦を繰り広げた!!
竜の助にアイスクリームの無料券を人質に取られたボーボボたちの怒りは頂点に達する!!
そして首領パッチによって現れた破天荒と共に極悪非道の限りを尽くして竜の助・登り竜を倒すのだった。
だが、エンドランド経営者兼、Vブロック隊長ナドラに挑戦状を叩きつけられる。
ナドラはエンドタワーの最上階に居る事を告げ、エンドタワーに入るにはフリーパスが必要だとも告げた。
ボーボボは仲間と共に今度は『サーカス』の中へと入って行った。
しかし、『サーカス』では元旧Bブロック隊長・ランバダが敵を拷問にかけているのだった!!
「いやいやいや!!!!
破天荒さんは無料券を持ってただけだしランバダさんは拷問にすらかけてなかったよ!!!!」
ビュティのツッコミはまだ序の口である。
これからもっとビュティのツッコミは炸裂するのだった。
「どーでもいーよ!!!!」
ボーボボたちは、ランバダから詳しい事情を聞く為にジェットコースターに乗っていた。
「何故にジェットコースター!!!?」
分速200Kmの速さで走るジェットコースタに乗りながらもビュティはツッコんだ。
中々のツッコミ魂である。
ちなみに、配列は
一番前はボーボボ・ランバダ
二番目はビュティ・ヘッポコ丸
三番目は首領パッチと破天荒
四番目は天の助
である。
耳元でゴゴゴッと風の音が鳴る中、ランバダとボーボボは大きな声を出しながら会話をしていた。
「つまりこういう事だな!!」
ゴゴゴゴゴ・・・
「自分が弱い事を情けなく感じて」
ゴゴゴゴゴ・・・
「ハンペンと3世の元で」
ゴゴゴゴゴ・・・
「修行をしていた!!」
「そうだ!!」
ゴゴゴゴゴ・・・
「だがある日」
ゴゴゴゴゴ・・・
「修行から帰ってみると」
ゴゴゴゴゴ・・・
「レムが居なくなってたんだな!!!?」
「そうだ!!!!」
こんな風に会話を繰り広げた後、ジェットコースターは出発地点に戻った。
安全バーが上がり、一行は降りる。
しかし、良く見れば天の助の頭はなく、胴体しかなかった。
だがボーボボたちは何事もなかったかのように歩いてい行く。
「ちょっ!?このままでいいの!!?」
「別にいんじゃね?」
首領パッチが鼻をほじりながら投げやりに言いながら出口へと歩き出す。
「待って下さい!おやびん!」
そしてその後を追う破天荒。
ビュティは重い溜息を吐くと、同じく出口へと歩き出した。
「えっ!?このまんまにしちゃうの!?」
「だってどうしようもないじゃん。それに、すぐに復活するよ」
ニコやかな笑みを浮かべるビュティにヘッポコ丸は唖然とした。
しかし、ビュティがあんな態度を取ると言う事は、彼女も段々疲れて来たのだろう。
そんなビュティの後ろ姿を眺めている所に、ある親子が来た。
「ねぇママ。これなーに?」
男の子が天の助の胴体を差す。
「あらヤダ。何かしらねぇ?いいわ、捨てましょ」
男の子の母親は天の助の胴体を掴むと、そのまま投げ捨てた。
そんな一部始終を見てしまったヘッポコ丸はいたたまれなくなり、天の助の胴体を回収したという。
「で?同僚だった奴らとかに連絡はしたのか?」
「一応聞いてみたんだが誰も知らないしか言わない」
「3世にも聞いたのか?」
「3世様には占いをしてもらった。結果は“高く見晴らしのいい所に連れていかれた”そうだ」
「高く見晴らしのいい所?」
ビュティが聞き返す。
さっぱり意味が判らない。
高くて見晴らしの良い所等この世に沢山ある。
そんな事を考えながらボーボボは尋ねた。
「どういう意味だ?」
「俺にも判らん。だが、連れていかれたという事だけは判ったから
こうして毛狩り隊を襲って捜している」
「何も毛狩り隊に限った事じゃないと思うが」
「何かしらの情報を持っていると思ってな。この間もどっかの基地を襲撃したんだが収穫はゼロ」
さらっととんでもない事を口にするランバダ。
そういえば、とビュティはある事を思い出した。
「新聞で早速Uブロック基地が壊滅したってあったんだけど、
もしかしてそれってランバダ・・・さん、が?」
「ああ」
流石というか何と言うか。
ビュティは何とツッコミ、何と言えばいいのか判らなかった。
しかし、同時にある事に気付く。
「これだけしてるって事は、やっぱりレムさんが大切なんですか?」
「当たり前だ。アイツには俺がついてやらないと駄目なんだ」
ランバダは少し俯いて何かを考えるような雰囲気を出す。
恐らくレムの事を考えているのだろう。
そんなランバダを見ながらボーボボは言った。
「このエンドランドは毛狩り隊のVブロック基地だというのは知っているか?」
「ん?ああ」
「Vブロック隊長・ナドラは『エンドタワー』と呼ばれる所の最上階にいるそうだ。
だが、そこに入るにはフリーパスが必要らしい。どうだ?一緒に捜さないか?」
ボーボボの提案にランバダはしばしば思案する。
フリーパスが必要なら一人で敵を倒して片っ端から捜すまでだがそれでは効率が悪い。
ここはボーボボたちと居ればフリーパスがすぐに手に入る確率が高くなる。
ランバダはそこまで考えて頷いた。
「いいだろう。これもレムを見つける為だ」
「よし、敵がいそうな所を探す為に観覧車に乗るぞー!!」
「おーっ!!」
ボーボボの提案に首領パッチは飛び上がる。
そして、二人は観覧車の所へ走って行った。
「本当は遊びたいだけでしょ!?」
ビュティはツッコミながら二人を追い掛けた。
赤い観覧車
赤い観覧車の中は至って賑やかだった。
まぁ、ボーボボと首領パッチがいれば賑やかになるのも仕方ない。
言いだしっぺのボーボボ何かは、窓の外を見ながら首領パッチとはしゃいでいる。
敵を探す気など全く見受けられない。
「ねぇ、敵がどこにいるか検討つけなくていいの?」
「いいんだってそんなの!!」
「そうそう!きっとあのアイスクリーム屋にいるさ!」
一瞬叩きたくなったがビュティはグッと堪えた。
「それに、観覧車に乗ったのはランバダとの親睦を深める為にも乗ったんだ」
「私たち確実に深められないよね!?」
何故なら本人であるランバダが乗っていないからだ。
駄目だこりゃ、とビュティは呆れるのだった。
青の観覧車
青の観覧車では暗い空気が漂っていた。
それもその筈。
ヘッポコ丸と天の助(胴体)しかいないからだ。
「何で俺が・・・」
ヘッポコ丸はポツリと一人呟く。
しかし、胴体である天の助が答える事はなかった。
オレンジの観覧車
オレンジの観覧車の中では何だか微妙な空気が流れていた。
ランバダと破天荒である。
二人は黙ったままだったが、やがて破天荒が口を開いた。
「なぁ」
「ん?」
「俺、あんましお前らと面識がないから判んねーだけどよぉ、レムって誰なんだ?」
「旧毛狩り隊Dブロック隊長、爆睡真拳の使い手の女だ」
ランバダは淡々と答える。
破天荒は「ふーん」と返すと、また尋ねる。
「お前の彼女か?」
「ばっ!そ、それは・・・」
ランバダが一瞬取り乱す。
しかし、自分とレムの関係を考え直して黙りこむ。
自分とレムは上司と部下の関係だったが、今ではそうとは言えない。
曖昧な関係に首を傾げながらランバダは落ち着いたように答える。
「俺にも・・・判らん」
「友達以上、恋人未満みたいな?」
「友達・・・という訳でもない」
「難しい関係だなぁ」
破天荒はぼやいて天井を見つめる。
観覧車の天井は若干灰色で無機質。
ぼーっとしていると、ある事を思い出した。
「そーいやお前、あのハンペン野郎と3世の元で修業してたんだっけか?」
「それがどうした?」
「俺が実力を試してやろーか?」
破天荒はマフラーからそっと自慢の鍵を取り出す。
表情は挑発的だ。
対するランバダは破天荒と同じくらい余裕で、口の端を歪めている。
「お前、強いのか?」
「ああ、強いぜ?おやびんやボーボボ程じゃねーが」
破天荒はその辺の事はよく判っているようだ。
しかし、だからこそ強いのかもしれない。
己を把握し、己がどのくらい強いのか知っている事は賢い事だ。
二人は緊迫した空気が張り詰める中、見つめ合った。
そして・・・
―――――!!!
ランバダに狙いを定める破天荒の鍵をランバダのポリゴン化した手が止めた。
しばしば鍔迫り合いをした後、キィィンという音が鳴って二人の武器は離れた。
そうしてしばらく沈黙が続くと、二人は小さく笑いだした。
「強ぇーな、お前」
「お前も強ぇーじゃねーか」
破天荒は鍵をマフラーの中にしまい、ランバダは手のポリゴン化を解いた。
先程までの緊迫した空気はなくなり、中々良い空気が流れ始めた。
「お前、名前は何だ?」
「俺はランバダ。お前は?」
「俺は破天荒だ。宜しくな、ランバダ」
「ああ、宜しくな、破天荒」
二人は手を出し合い、握手をした。
そして、丸で少年のような笑みを浮かべ合うのだった。
「さて、どうするか」
観覧車を降りたボーボボたち。
最初の発言をしたのはボーボボだった。
「観覧車から探してみたが、どこもフリーパスがありそうには見えなかったな」
「嘘つき。探してなんかいなかった癖に」
ビュティはボーボボを睨みながらツッコんだ。
ボーボボはそれを誤魔化すかのように一つの提案をした。
「よし、ここは二手に分かれて適当に探すとしよう」
「どうやって分けます?」
ヘッポコ丸が質問する。
すると、ボーボボはニヤッと笑って答えた。
「フ、簡単だ・・・この中で、今アイス食べたい奴は俺の方に来い」
「ええっ!?」
「わーい!!」
「アイスだー!!」
ビュティが驚くのを他所に、首領パッチといつの間にか復活していた天の助が笑顔でボーボボの元に行く。
「ちょっ、ボーボボ!!今は遊んでる場合じゃないんだよ!!!」
「まぁまぁ、そんな事よりビュティはどうなんだ?」
尋ねられたビュティは顔を赤くして俯いた。
そして、手を小さく上げながらボーボボたちの方に移動する。
ビュティが自分の方に来たのを確認し、ボーボボはヘッポコ丸たちの方に向き直って尋ねた。
「で?お前たちは?」
「俺はいいです。戦いの時だっていうのに遊んでなんかいられません!」
「俺は今はいらねぇや」
「俺もそんな気分じゃない」
まともな事を言っているヘッポコ丸に対して、破天荒とランバダは投げやりに答えた。
そして―――
「よし、決まりだな。このチームで行くぞ」
ボーボボがまとめるように言うとヘッポコ丸と破天荒は不満の声をあげた。
「ちょっ、待って下さいボーボボさん!!どういう事ですか!?」
「そうだ!ランバダならまだ判るが何でこのガキも一緒じゃなきゃいけねーんだよ!?
ところてんとトレースしておやびんと組ませろ!!」
「何だと!?今のは聞き捨てならないぞ!!」
食ってかかるヘッポコ丸。
ボーボボは仲裁するかのように二人を諭した。
「まぁ待て。まず最初にヘッポコ丸、こうなる事が読めなかったお前が悪い。そこは認めろ」
「くっ・・・!!」
確かに、とヘッポコ丸は納得をせざるを得なかった。
しかし、ヘッポコ丸はそれでも悔しそうな顔をして歯を食いしばるしかなかった。
ボーボボは今度は破天荒の方を向いて諭した。
「破天荒、お前はヘッポコ丸の事を足手まといのに思っているようだが、ヘッポコ丸もやる時はやるぞ」
「はぁ?知らねーよ。俺はガキのおもりはごめんだ」
「なんだとぉっ!!?」
破天荒を睨みつけるヘッポコ丸。
そこに―――
「破天荒!!!」
首領パッチが大きな声で破天荒の名を呼ぶ。
「何ですか?おやびん?」
「男なら・・・男なら・・・」
首領パッチは拳を握りながら俯いて震えていた。
しかも、天の助の前で―――
「一度決めた事は最後まで突き通せーーーーーーっ!!!!!!!!!」
勢いで握っていた拳を力一杯天の助の顔面に喰らわせた。
「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
天の助の顔面はトイレの壁にめりこんだ。
「殴る必要あったの!!!?」
天の助に同情しつつビュティはツッコんだ。
首領パッチは構わずに破天荒を見る。
破天荒は苦しい顔をしながら決断した。
「くっ、おやびんがそう言うなら仕方ねぇ・・・―――ただし、俺の足を引っ張るなよ」
「うるせぇ!!」
ヘッポコ丸が破天荒を睨むが破天荒は涼しい顔をしていて相手にしない。
一方ランバダは、この光景を見て
(いつもこんな感じなのか?)
と内心呟いたとか。
「よし、フリーパスが見つかり次第連絡しろ。それでエンドタワーに集合だ」
「判りました」
ヘッポコ丸は頷き、こうしてボーボボたちは別れた。
ボーボボたちは三輪車をこぎながら次のアトラクションを探していた。
もちろん、ビュティは歩いている。
「ねぇねぇ、どこ行くどこ行く?」
子供のような顔をして復活した天の助が尋ねる。
「ああん?お化け屋敷に決まってんだろ!」
不良の格好をして答える首領パッチ。
「俺はあの“鏡のラビリンス”ってのがいいと思うんだがどうよ?」
もはや暴走族も同然の格好をして尋ねるボーボボ。
(可愛くねぇ・・・)
天の助も含めて内心呟くビュティ。
ボーボボの提案により、ビュティたちは鏡のラビリンスの中へと入る事にした。
鏡のラビリンスの中
中はやや狭く、二人くらいがやっと通れるくらいの広さだった。
加えて上下左右全て頑丈な鏡。
不思議な感覚がするのは気のせいだろうか?
しかし、進む道進む道行き止まりで、文字通り迷路だ。
「ここも行き止まりか・・・」
項垂れるビュティ。
どうやらまた行き止まりの所に来てしまったらしい。
「ここが噂の“鏡の間”ざんすね?ボリーアントワネットさん」
首領パッチが中世の女性貴族の格好をして傘をさしながら尋ねる。
ボーボボと天の助も同じ格好をして傘をさしている。
「ええ、そうですわよ。でも、鏡なだけに繊細で壊れやすいの。だからお気を付けになってね」
「あらやだ、ごめん遊ばせ」
天の助はさしていた傘を折り畳んだ為、その際に傘の先端が鏡に強く当たった。
ガシャーンと悲惨な音を立てて鏡は割れた。
「罰金100万!!」
ボーボボは天の助にアッパーカットをかます。
「ぶーーーーっ!!!!」
そしてそこに同じく折り畳んだ傘で首領パッチが天の助を叩いて来た。
「また始まった・・・」
三人のおふざけ+喧嘩にビュティは呆れて鏡を見た。
鏡にはビュティが映っていなければいけない筈なのに、見知らぬ女の子が映っていた。
「え?どういう事・・・?」
鏡に映っている女の子はビュティより年下に見える。
髪は長髪で金色。
そして水色のベレー帽。
服は水色のチアリーダーのような服で、胸の辺りに『I♡迷宮』と赤い文字で印刷されていた。
そして、その女の子の口が動く。
「こんにちわ」
「ボーボボ!!!!」
助けを求めるようなビュティの声にボーボボは振り返る。
「なっ!?ビュティ!!!」
ボーボボの目に飛び込んで来たのは、鏡の中にいる女の子に鏡の中に引きずり込まれて行くビュティの姿だった。
「ビュティ!!」
首領パッチがビュティの掴まれていない方の手を掴む。
「首領パッチ君!!」
ビュティは笑顔になる。
しかし―――
「ヒロインは私がなるからアナタは永遠に鏡の中にいなさい!!」
逆に鏡の中に押し込んできたのだ。
「ええっ!!?」
驚くビュティ。
この期に及んでまだそんな事を目論んでいた首領パッチに逆に敬意を表したとか何とか。
「何やってんだこのスットコドッコーイ!!!!!」
怒りを露に首領パッチを思いっきり殴るボーボボ。
首領パッチ ダウン
「ボーボボ!!」
あえなくしてビュティは鏡の中に引きずり込まれてしまった。
「ビュティ!!くそっ、バカの所為で!!」
バカとは勿論、首領パッチのこと。
「おいボーボボ!この鏡、向こうに行けるぞ!!」
天の助は先程ビュティが引きずり込まれた鏡に自分の体を半分入れて見せる。
「でかした天の助!!!」
ボーボボは、口は褒めていても態度としては天の助を蹴り飛ばして鏡の中へと入って行った。
首領パッチも続く。
そして―――
「なっ!?何だここは・・・!!?」
ボーボボは驚いた。
それもその筈。
鏡を通って辿り着いた所はどこまでも広がる宇宙だったのだ。
「宇宙だと・・・?」
「ありえねぇ・・・」
呟く首領パッチと天の助。
少し冷や汗が見える。
”フフフ、ここは鏡で作った宇宙よ”
不意に、可愛げな女の子の声が全体に響く。
「この声・・・まさか、ビュティをこの中に引きずり込んだ奴だな!?」
”人聞きの悪い事言わないでよ。ただお友達になろうとしただけじゃない”
ボーボボたちの前に先程のチアリーダーの格好をした女の子が現れる。
「フフフ、初めまして。この“鏡のラビリンス”のアトラクションの責任者であり、
『ラビリンス真拳』の使い手のラリスよ。宜しくね」
ラリスは不敵な笑みを浮かべて挨拶をする。
しかし、ボーボボはそれを睨み返した。
「けっ、そんなこたぁどうでもいいんだよ。さっさとビュティを返せ」
「だったらアタシを倒してみなさいよ」
ラリスはボーボボを挑発する。
こうして、ボーボボチームVSラリスの壮絶なる激闘が幕を開いた。
一方その頃、ヘッポコ丸チームは―――お化け屋敷にいた。
先頭はヘッポコ丸が一人で歩いており、後ろでは破天荒とランバダが並んで歩いていた。
「何もねーな」
「お化けも大して怖くねーし」
二人はぼやくように呟く。
何回かお化けたちや仕掛けが発動したがどれも子供騙しで面白くなかった。
そんな時―――
「ようこそ、当お化け屋敷へ」
天井から声がした。
「誰だ!?」
ヘッポコ丸が叫んで天井を見上げる。
続いて破天荒とランバダも見上げる。
天井には、ドラキュラの格好をした男が天井にぶら下がっていた。
ヘッポコ丸は睨みながら尋ねる。
「何だお前は?」
「当お化け屋敷副責任者・ラキュラスでございます」
「俺たちに何か用か?」
冷静且つ、面倒くさそうに尋ねる破天荒。
しかし、ラキュラスは不敵な笑みを浮かべて答えるのだった。
「フフ、そりゃあ勿論、貴方たちを倒しに来たんですよ!!」
ラキュラスがマントを大きく広げると、それが合図だったのか。
色んな所から一斉にお化け役の人たちが出て来て襲いかかって来た。
「フワァアアアアアッ!!!」
ゾンビがヘッポコ丸に襲いかかろうとする。
しかし、ヘッポコ丸はそれをヒョイとかわして「何すんだ!」と叫んでゾンビを蹴った。
ゾンビはドサッと蹴り飛ばされる
「うらめしや~!」
ろくろ首が破天荒に飛びかかる。
「オラよ!!」
破天荒はろくろ首をお化けたちの群れ目掛けて蹴り飛ばした。
ろくろ首によって多数のお化けたちが片付いた。
「ニャァアアアアアアアッ!!!」
「触るな」
襲いかかって来た化け猫役の人をランバダは無表情で蹴り飛ばす。
化け猫は壁に叩きつけられた。
「こ、コイツら強ぇ~~~!!!」
破天荒とランバダの蹴りの強さに恐れをなしたお化けたち。
お化けたちは破天荒とランバダをターゲットから外し、ヘッポコ丸を見た。
「なら・・・お前をやってくれるわーーっ!!」
お化けたちは一斉にヘッポコ丸に飛びかかる。
ヘッポコ丸になら勝てるとでも思ったのだろう。
様々なお化けたちがヘッポコ丸を襲い、ヘッポコ丸はそれをことごとく倒して行くのだった。
だが、数が余りにも多すぎて倒しても倒してもお化けたちは襲いかかって来る。
しかもタフだ。
「くっ・・・数が多すぎる・・・!!」
やや息が上がって来たヘッポコ丸。
「オイオイ、もうへばって来たのかよ」
「お前弱いな。普通この位で息は上がらんだろ」
丸で他人事のように意見を述べる破天荒とランバダ。
ヘッポコ丸はありったけの怒りを込めて叫んだ。
「だったらお前らも相手してみろよ!!!!」
「今そいつらはお前を相手にしてんだろ?だったらお前が片付けろよ」
「そいつらの意識を俺たちに向けさせる事が出来たらやってやるよ」
そう言いながら二人は近くの大きな石に座る。
そして、二人だけで会話を始めた。
「お前派閥とかあんの?」
「派閥?」
「ないんならハジケ組みに入らねーか?お前なら歓迎するぜ」
「・・・まぁ、考えておこう」
適当に流すランバダ。
そして、そんな三人の姿を影から見る者が一人―――
「クックックッ、弱った所を我が天然水真拳で・・・」
果たして、戦っている戦士と話しこんでる二人の戦士の運命やいかに・・・?
一方その頃、鏡のラビリンスでは・・・
「わ~~い!!宇宙だ~~~~!!」
ボーボボたちがハジケていた。
星であるのにも関わらず、数個の星でお手玉をするボーボボ。
「アハハ!!」と笑いながら金星で玉乗りをする首領パッチ。
ガシャーンと彗星をボウリングピンに充てて「ストライク!!」と喜ぶ天の助。
先程までの緊張感は全く無かった。
「ちょっと三人共!!何遊んでんだよ!?敵のテリトリーなんだからもっと緊張感持とうよ!」
ここに来てどっかから現れたビュティ。
「あ、ビュティだ~!無事だったんだ~!」
うきうき顔でボーボボはビュティに近づこうとした。
だが・・・
「ラビリンス真拳奥義『四方ガラスの非迷宮』」
声がしてビュティの周りを四枚のガラスが取り囲んだ。
「何これ!?ぼ、ボーボボ!!!」
ビュティはガラスを叩く。
しかし、ガラスは強度が高いらしく、叩いてもドンドンドンという音しかしない。
「ビュティ!!!」
ボーボボもガラスを強く叩くが壊れる様子はない。
そんな時、背後から声がした。
「そのガラスはちょっとやそっとの力で壊す事は出来ないわ。例え核を使ったとしても」
振り返ればラリスがいた。
ラリスは不敵な笑みを浮かべている。
しかし、それに対してボーボボは余裕な笑みを浮かべていた。
「フッ、それはどうかな?」
「どういう意味?」
「鼻毛真奥義『クレーンゲーム』」
ボーボボは奥義を唱えて巨大なクレーン車に乗り始めた。
そして、クレーン車を操作し、バーとなっている首領パッチをビュティの上まで下ろした。
「掴まれ!!ビュティ!!」
ボーボボに指示されるまま、ビュティは首領パッチに掴まった。
そしてそのままクレーンを上げてビュティを外に出した。
「しまった、そんな技が・・・!!」
「ボーボボ!!」
「ビュティ、無事だったか!?」
ビュティの無事を確認して安心するボーボボ。
そして、ラリスの方を振り返って宣言した。
「ラリス!!俺は例え女だろうが子供だろうがビュティに手を出そうとする奴は容赦しねぇっ!!
行くぞ!!首領パッチ、天の助!」
「「おうよ!!」」
三人は威勢良くラリスに飛びかかる。
が―――
ビッターーーーーーーーーーーン!!!!!
三人はラリスに攻撃出来る一歩手前で何かに激突した。
それはまるで壁のように硬い。
「「「な~ぜ~じゃ~!!?」」」
三人は悲惨な顔でずるずると崩れ落ちた。
ラリスはラリスで面白そうな顔をしている。
「クスクス、残念。ラビリンス真拳奥義『透明の迷宮』」
「『透明の迷宮』だと?」
「簡単に言えば見えないガラスのような物があるって事よ。それと上と下もね」
「だがしかし!!お前には貫通ダメージを受けてもうらぜ!」
いつの間にか遊○のコスプレをしている首領パッチが叫ぶ。
髪や目つきなんかそのまんまだ。
「行くぜ!!ところてんの戦士・天の助でダイレクトアタック!!」
「ええっ!?何で俺!!?ちょっ・・・体が勝手に・・・!!!!」
天の助の体は天の助の意に反してラリスの元へと走り出した。
「ふんっ!!」
ラリスは思いっきり天の助を殴る。
「ぶへっ!!!」
飛ばされる天の助。
「天の助君!!」
ビュティが叫ぶが天の助は伸びる一歩手前だ。
しかし、そこに首領パッチが追い打ちを掛ける。
「くそ、こうなったら俺は天の助を墓地に送り―――」
首領パッチが墓地送り宣言をすると、天の助の体は足から素早く光となって消えて行った。
「ええっ!!?ちょっと!!?」
天の助が何かを言おうとしたがそれは適わなかった。
「マジックカード・サウザンド豆腐を発動する!!いけ!!千個の豆腐よ!!!!」
すると、千個の豆腐が首領パッチの周りに現れた。
「豆腐!?天の助君を墓地に送ったのに豆腐!!?」
サウザンド豆腐
天の助を墓地に送ることによって発動する事が出来る。
相手に100のダメージを与える。
「攻撃力ショボッ!!」
「所詮は天の助だからな」
「ひどっ!!!」
真面目な顔をして答えた首領パッチにビュティはありったけの同情をこめてツッコんだ。
そんなやり取りをしている間にも千個の豆腐はラリスに突撃していた。
しかし、丸で壁にぶつかったかのように豆腐たちは弾け飛んで崩れた。
「効く訳ないでしょ?―――くらいなさい!!」
ラリスは慣れた手つきで幾つものナイフを投げた。
ナイフは空を切ってビュティたちに襲いかかる。
「きゃあっ!!」
ビュティは己の身を両腕で庇う。
幸い、ナイフは刺さらなかった。
「なんの!天の助ガード!!!!」
いつの間にか復活していた天の助を振りまわしてボーボボはナイフの攻撃を防ぐ。
しかし、それに反してナイフは天の助に刺さって行くのだった。
「ぎゃあ~~~~~~!!久々の拷問~~~~!!!!」
苦しむ天の助。
相変わらず報われないところてんだ。
ナイフによる攻撃が止んだ所でボーボボは勝算ありの顔をした。
「フッ、ラビリンス真拳見破ったぜ」
「何!?」
驚きに目を見開くラリス。
ボーボボは続ける。
「ラビリンス真拳、発動すればそれなりに厄介だが攻撃技が無い。勝負ありだな」
「確かに、ラビリンス真拳に攻撃技はないわ。でも、出口を見つけない限り
抜け出す事は出来ないわ!!」
ラリスはやや焦り気味に言い放つ。
出口など何処にあるのか皆目見当もつかないが、そんな事はボーボボに関係なかった。
「迷宮など、出られなければ壊せばいい!!」
「まさかっ!!?」
「行くぞ、首領パッチ!!」
「おう!!」
「鼻毛真拳協力奥義『ビック・バン』!!」
ボーボボは宣言して首領パッチと距離を取った。
そして、某マンガの主人公の必殺技のようなポーズをとって唱え始める。
「は~~な~~」
「は~~な~~」
「「げ~~~~~~~~っ!!!!!!!!!」」
突き出された二人の合わさった両手から眩い光が放たれる。
光は物凄い速さでぶつかり合った。
そして―――
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!
鏡のラビリンスの建物は吹き飛んだ。
ガラガラパラパラと建物の壁や破片などが散らばる。
「ぷはっ」
ガレキの中からビュティが顔を出す。
土埃がついているだけで無傷のようだ。
「ボーボボ!首領パッチ君!天の助君!」
ビュティが当たりを見回しながら三人の名を呼ぶ。
「ここだぜビュティ」
声がしてビュティは振り向いた。
そこには、ミロのヴィーナスの格好をしたボーボボがいた。
「何故にヴィーナス!!??」
「爆発と言えばヴィーナスだろ?」
「違うよ!―――それより首領パッチ君と天の助君は?」
ビュティはキョロキョロと見回しながら二人を探す。
そして、後ろを向くと・・・
「なぁっ!!!??」
考える人の像ならず考える首領パッチの像。
そして何かの将軍の石像をした天の助がいた。
「何故に石像関連!!?」
ビュティがボケを処理している間に、ガレキの中からラリスが出て来た。
しかし、様子からして戦意は無かった。
「私の負けよ。ラビリンス真拳は建物とかがあって初めて発動するの。
・・・どうぞ煮るなり焼くなり好きにして」
「俺はもう戦えない奴を傷めつけたりはしない」
「ボーボボ・・・」
ボーボボの優しさにビュティは自然と笑みを浮かべた。
「その代わり、エンドタワーのフリーパスを持ってるか?」
「ええ、持ってるわ。欲しいならどうぞ」
ラリスはポケットからフリーパスを出した。
ボーボボはそれを受け取る。
「確かに・・・ビュティ」
「何?」
「ヘッポコ丸たちに連絡だ」
「判った!!」
ボーボボに指示されてビュティはヘッポコ丸たちに電話する。
ボーボボVSラリス ボーボボの勝利
一方、お化け屋敷では・・・
「オラよっ!!」
「ぐはっ!!!」
ヘッポコ丸が最後の一体を倒した所だった。
かなりの大人数を相手にしたのでヘッポコ丸はへとへとだ。
「おー、お疲れさん」
「このくらいでへばるなよ」
破天荒とランバダは労いのような言葉をヘッポコ丸にかける。
ヘッポコ丸は二人を睨みながら抗議する。
「お前ら、少しは手伝え!!」
「何言ってんだ。そうやってすぐ人に頼るからお前は弱いんだよ」
「たかが大人数相手の組手で苦労するなんてこれじゃ隊長一人倒すのは無理だろうな」
「何だとっ!!?」
散々馬鹿にされてヘッポコ丸の堪忍袋の緒が切れそうになる。
だが―――
「そこまでだ!!」
誰かが叫んだ。
三人は声のした方を振り向く。
そこには、宙に浮いて胡坐をかき、侍の格好をしている男がいた。
補足すると、丁髷の部分が水の入っているペットボトルになっていることだ。
「何だお前」
別段驚いた風を見せずに尋ねるランバダ。
男は待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて答えた。
「私の名前は火水 風雷。天然水真拳の使い手にしてこのお化け屋敷の責任者だ!」
「ああ?清水 風雷?」
「ちかーーーーーーう!!火水 風雷だ!!」
破天荒が間違えると火水はすぐに大声で訂正した。
そして気を取り直して続ける。
「そんな事より・・・―――貴様らもここまでだ」
火水は指をパチンと鳴らした。
すると、前後から壁が降りて来て道を塞がれた。
「壁が・・・!!」
「これだけではないそ!天然水真拳奥義『ナイアガラの滝』!!」
火水が唱えると、頭のペットボトルのキャップが弾け飛んで大量の水が滝の如く流れ出来てた。
ドドドドッという音を立てて水は溢れ出し、次第に地面に水嵩が出来て来る。
「マズイ、水が・・・!!」
「フハハハハハッ!!さぁどうする!!?」
高笑いをする火水だが、彼は腰に浮輪を装備していた。
「何で浮輪付けてんだよ!!??お前宙に浮いてるだろ!!!??」
「だって、30cmしか浮けないんだもん」
涙ぐむ火水。
ヘッポコ丸は呆れる事しか出来なかった。
しかし、こんな状況でも破天荒は火水に質問する。
「でもよぉ、浮輪してても出口がなきゃお前も危ないんじゃねーの?」
「フッフッフッ、心配は御無用。―――天井を見ろ!!!」
三人は天井を見た。
天井には人一人が抜けられるくらいの大きさの正方形の空洞があった。
外に出られるようだ。
「水位が上昇すると共に私は浮輪で上へと浮いて行く。そうすればあっという間に脱出さ」
「逆にお前を倒して止めたら?」
今度はランバダが質問する。
「いや、まぁそれは・・・非常用のボタンが一定間隔に設置されてるからそれを押せば何とか・・・」
「何故に一定間隔!!!?」
「何かあったら嫌じゃん?」
「慎重過ぎるだろ!!」
ボケとツッコミが炸裂するがその間にも水嵩は増していくばかりだった。
「なら、速攻で倒すしかないな!!」
ヘッポコ丸は構えた。
「オナラ真拳奥義『水無月』!!」
「何の!!天然水真拳奥義『水鉄砲』!!」
火水は頭を前に突き出す。
すると、溢れ返っている水の中から水球が飛び出して来た。
ヘッポコ丸のオナラの塊は水球とぶつかり、あえなく相殺する。
「くそ・・・っ!!」
「フハハハッ!!まだまだ!!天然水真拳奥義『水鮫』!!!」
火水が奥義を唱えると、溢れ出している水から水の鮫が形成された。
「行けぇっ!!水鮫!!!」
火水が命令すると、水鮫はヘッポコ丸に襲いかかる。
「この野郎っ!!」
ヘッポコ丸は水鮫にグーパンチをかます。
穴は開いたものの、すぐに水で復元された。
「無駄だ!水鮫はこのペットボトルから出ているマイナスイオンですぐに復元される!!」
「マイナスイオンで!!?」
以外な事実にヘッポコ丸は驚く。
しかし、その間にも水鮫との格闘は続く。
「勝つと思うか?」
「五分五分だな」
ヘッポコ丸の勝率について話し合う破天荒とランバダ。
その時、破天荒の携帯が鳴った。
因みに、破天荒の携帯には首領パッチのストラップが付いている。
着信でビュティからだった。
「俺だ。フリーパス見つかったのか?・・・ああ?繋がらない?
―――おい、嬢ちゃんが携帯繋がらないだとよ!!」
携帯を耳から外して破天荒がヘッポコ丸に向かって叫ぶ。
「充電切れてるんだ!!」
「充電が切れてるんだってよ。―――ん、判った」
破天荒はボタンを押して携帯を切った。
「フリーパス見つかったのか?」
「ああ、エンドタワーに集まれだとさ」
「じゃあ、行くか」
ランバダは壁に近寄ると、ポリゴン真拳奥義『オーラ・オブ・ポリゴン』で壁をポリゴンにした。
そして、ポリゴンになった壁を蹴って穴を開ける。
穴からは外の景色が見えていた。
「ええっ!!?ちょっ、ええ!!?反則だーー!!!」
まさかのランバダの行為に火水は驚いた。
しかし、ランバダは無表情で「何だよ?」と言う始末。
「お前!!幾ら何でも反則だろ!!」
「ここにいる必要が無くなったんだ。それの何が悪い?」
「ふざけるなよーーーーーっ!!!!」
火水は怒りに任せてランバダを殴ろうとする。
しかし―――
「失せろ」
ランバダの冷たい声と共に火水は思いっきり蹴り飛ばされた。
「ぐはっ!!!!!」
火水は吐血し、壁にめり込む。
それを確認してランバダは歩きだした。
「行こうぜ」
「ああ」
ランバダが壊した壁から二人は外へと出て行く。
そんな後ろ姿を茫然と見た後、ヘッポコ丸も壁から外に出たのだった。
ヘッポコ丸・破天荒・ランバダVS火水 風雷 ランバダの勝利
END
ボーボボたちはエンドランドに来ていた。
そこで“イリュージョンブルー”に入り、天の助を仲間にする。
そしてその後に“竜の舞”にいたドラゴン真拳の使い手、竜の助・登り竜と激戦を繰り広げた!!
竜の助にアイスクリームの無料券を人質に取られたボーボボたちの怒りは頂点に達する!!
そして首領パッチによって現れた破天荒と共に極悪非道の限りを尽くして竜の助・登り竜を倒すのだった。
だが、エンドランド経営者兼、Vブロック隊長ナドラに挑戦状を叩きつけられる。
ナドラはエンドタワーの最上階に居る事を告げ、エンドタワーに入るにはフリーパスが必要だとも告げた。
ボーボボは仲間と共に今度は『サーカス』の中へと入って行った。
しかし、『サーカス』では元旧Bブロック隊長・ランバダが敵を拷問にかけているのだった!!
「いやいやいや!!!!
破天荒さんは無料券を持ってただけだしランバダさんは拷問にすらかけてなかったよ!!!!」
ビュティのツッコミはまだ序の口である。
これからもっとビュティのツッコミは炸裂するのだった。
「どーでもいーよ!!!!」
ボーボボたちは、ランバダから詳しい事情を聞く為にジェットコースターに乗っていた。
「何故にジェットコースター!!!?」
分速200Kmの速さで走るジェットコースタに乗りながらもビュティはツッコんだ。
中々のツッコミ魂である。
ちなみに、配列は
一番前はボーボボ・ランバダ
二番目はビュティ・ヘッポコ丸
三番目は首領パッチと破天荒
四番目は天の助
である。
耳元でゴゴゴッと風の音が鳴る中、ランバダとボーボボは大きな声を出しながら会話をしていた。
「つまりこういう事だな!!」
ゴゴゴゴゴ・・・
「自分が弱い事を情けなく感じて」
ゴゴゴゴゴ・・・
「ハンペンと3世の元で」
ゴゴゴゴゴ・・・
「修行をしていた!!」
「そうだ!!」
ゴゴゴゴゴ・・・
「だがある日」
ゴゴゴゴゴ・・・
「修行から帰ってみると」
ゴゴゴゴゴ・・・
「レムが居なくなってたんだな!!!?」
「そうだ!!!!」
こんな風に会話を繰り広げた後、ジェットコースターは出発地点に戻った。
安全バーが上がり、一行は降りる。
しかし、良く見れば天の助の頭はなく、胴体しかなかった。
だがボーボボたちは何事もなかったかのように歩いてい行く。
「ちょっ!?このままでいいの!!?」
「別にいんじゃね?」
首領パッチが鼻をほじりながら投げやりに言いながら出口へと歩き出す。
「待って下さい!おやびん!」
そしてその後を追う破天荒。
ビュティは重い溜息を吐くと、同じく出口へと歩き出した。
「えっ!?このまんまにしちゃうの!?」
「だってどうしようもないじゃん。それに、すぐに復活するよ」
ニコやかな笑みを浮かべるビュティにヘッポコ丸は唖然とした。
しかし、ビュティがあんな態度を取ると言う事は、彼女も段々疲れて来たのだろう。
そんなビュティの後ろ姿を眺めている所に、ある親子が来た。
「ねぇママ。これなーに?」
男の子が天の助の胴体を差す。
「あらヤダ。何かしらねぇ?いいわ、捨てましょ」
男の子の母親は天の助の胴体を掴むと、そのまま投げ捨てた。
そんな一部始終を見てしまったヘッポコ丸はいたたまれなくなり、天の助の胴体を回収したという。
「で?同僚だった奴らとかに連絡はしたのか?」
「一応聞いてみたんだが誰も知らないしか言わない」
「3世にも聞いたのか?」
「3世様には占いをしてもらった。結果は“高く見晴らしのいい所に連れていかれた”そうだ」
「高く見晴らしのいい所?」
ビュティが聞き返す。
さっぱり意味が判らない。
高くて見晴らしの良い所等この世に沢山ある。
そんな事を考えながらボーボボは尋ねた。
「どういう意味だ?」
「俺にも判らん。だが、連れていかれたという事だけは判ったから
こうして毛狩り隊を襲って捜している」
「何も毛狩り隊に限った事じゃないと思うが」
「何かしらの情報を持っていると思ってな。この間もどっかの基地を襲撃したんだが収穫はゼロ」
さらっととんでもない事を口にするランバダ。
そういえば、とビュティはある事を思い出した。
「新聞で早速Uブロック基地が壊滅したってあったんだけど、
もしかしてそれってランバダ・・・さん、が?」
「ああ」
流石というか何と言うか。
ビュティは何とツッコミ、何と言えばいいのか判らなかった。
しかし、同時にある事に気付く。
「これだけしてるって事は、やっぱりレムさんが大切なんですか?」
「当たり前だ。アイツには俺がついてやらないと駄目なんだ」
ランバダは少し俯いて何かを考えるような雰囲気を出す。
恐らくレムの事を考えているのだろう。
そんなランバダを見ながらボーボボは言った。
「このエンドランドは毛狩り隊のVブロック基地だというのは知っているか?」
「ん?ああ」
「Vブロック隊長・ナドラは『エンドタワー』と呼ばれる所の最上階にいるそうだ。
だが、そこに入るにはフリーパスが必要らしい。どうだ?一緒に捜さないか?」
ボーボボの提案にランバダはしばしば思案する。
フリーパスが必要なら一人で敵を倒して片っ端から捜すまでだがそれでは効率が悪い。
ここはボーボボたちと居ればフリーパスがすぐに手に入る確率が高くなる。
ランバダはそこまで考えて頷いた。
「いいだろう。これもレムを見つける為だ」
「よし、敵がいそうな所を探す為に観覧車に乗るぞー!!」
「おーっ!!」
ボーボボの提案に首領パッチは飛び上がる。
そして、二人は観覧車の所へ走って行った。
「本当は遊びたいだけでしょ!?」
ビュティはツッコミながら二人を追い掛けた。
赤い観覧車
赤い観覧車の中は至って賑やかだった。
まぁ、ボーボボと首領パッチがいれば賑やかになるのも仕方ない。
言いだしっぺのボーボボ何かは、窓の外を見ながら首領パッチとはしゃいでいる。
敵を探す気など全く見受けられない。
「ねぇ、敵がどこにいるか検討つけなくていいの?」
「いいんだってそんなの!!」
「そうそう!きっとあのアイスクリーム屋にいるさ!」
一瞬叩きたくなったがビュティはグッと堪えた。
「それに、観覧車に乗ったのはランバダとの親睦を深める為にも乗ったんだ」
「私たち確実に深められないよね!?」
何故なら本人であるランバダが乗っていないからだ。
駄目だこりゃ、とビュティは呆れるのだった。
青の観覧車
青の観覧車では暗い空気が漂っていた。
それもその筈。
ヘッポコ丸と天の助(胴体)しかいないからだ。
「何で俺が・・・」
ヘッポコ丸はポツリと一人呟く。
しかし、胴体である天の助が答える事はなかった。
オレンジの観覧車
オレンジの観覧車の中では何だか微妙な空気が流れていた。
ランバダと破天荒である。
二人は黙ったままだったが、やがて破天荒が口を開いた。
「なぁ」
「ん?」
「俺、あんましお前らと面識がないから判んねーだけどよぉ、レムって誰なんだ?」
「旧毛狩り隊Dブロック隊長、爆睡真拳の使い手の女だ」
ランバダは淡々と答える。
破天荒は「ふーん」と返すと、また尋ねる。
「お前の彼女か?」
「ばっ!そ、それは・・・」
ランバダが一瞬取り乱す。
しかし、自分とレムの関係を考え直して黙りこむ。
自分とレムは上司と部下の関係だったが、今ではそうとは言えない。
曖昧な関係に首を傾げながらランバダは落ち着いたように答える。
「俺にも・・・判らん」
「友達以上、恋人未満みたいな?」
「友達・・・という訳でもない」
「難しい関係だなぁ」
破天荒はぼやいて天井を見つめる。
観覧車の天井は若干灰色で無機質。
ぼーっとしていると、ある事を思い出した。
「そーいやお前、あのハンペン野郎と3世の元で修業してたんだっけか?」
「それがどうした?」
「俺が実力を試してやろーか?」
破天荒はマフラーからそっと自慢の鍵を取り出す。
表情は挑発的だ。
対するランバダは破天荒と同じくらい余裕で、口の端を歪めている。
「お前、強いのか?」
「ああ、強いぜ?おやびんやボーボボ程じゃねーが」
破天荒はその辺の事はよく判っているようだ。
しかし、だからこそ強いのかもしれない。
己を把握し、己がどのくらい強いのか知っている事は賢い事だ。
二人は緊迫した空気が張り詰める中、見つめ合った。
そして・・・
―――――!!!
ランバダに狙いを定める破天荒の鍵をランバダのポリゴン化した手が止めた。
しばしば鍔迫り合いをした後、キィィンという音が鳴って二人の武器は離れた。
そうしてしばらく沈黙が続くと、二人は小さく笑いだした。
「強ぇーな、お前」
「お前も強ぇーじゃねーか」
破天荒は鍵をマフラーの中にしまい、ランバダは手のポリゴン化を解いた。
先程までの緊迫した空気はなくなり、中々良い空気が流れ始めた。
「お前、名前は何だ?」
「俺はランバダ。お前は?」
「俺は破天荒だ。宜しくな、ランバダ」
「ああ、宜しくな、破天荒」
二人は手を出し合い、握手をした。
そして、丸で少年のような笑みを浮かべ合うのだった。
「さて、どうするか」
観覧車を降りたボーボボたち。
最初の発言をしたのはボーボボだった。
「観覧車から探してみたが、どこもフリーパスがありそうには見えなかったな」
「嘘つき。探してなんかいなかった癖に」
ビュティはボーボボを睨みながらツッコんだ。
ボーボボはそれを誤魔化すかのように一つの提案をした。
「よし、ここは二手に分かれて適当に探すとしよう」
「どうやって分けます?」
ヘッポコ丸が質問する。
すると、ボーボボはニヤッと笑って答えた。
「フ、簡単だ・・・この中で、今アイス食べたい奴は俺の方に来い」
「ええっ!?」
「わーい!!」
「アイスだー!!」
ビュティが驚くのを他所に、首領パッチといつの間にか復活していた天の助が笑顔でボーボボの元に行く。
「ちょっ、ボーボボ!!今は遊んでる場合じゃないんだよ!!!」
「まぁまぁ、そんな事よりビュティはどうなんだ?」
尋ねられたビュティは顔を赤くして俯いた。
そして、手を小さく上げながらボーボボたちの方に移動する。
ビュティが自分の方に来たのを確認し、ボーボボはヘッポコ丸たちの方に向き直って尋ねた。
「で?お前たちは?」
「俺はいいです。戦いの時だっていうのに遊んでなんかいられません!」
「俺は今はいらねぇや」
「俺もそんな気分じゃない」
まともな事を言っているヘッポコ丸に対して、破天荒とランバダは投げやりに答えた。
そして―――
「よし、決まりだな。このチームで行くぞ」
ボーボボがまとめるように言うとヘッポコ丸と破天荒は不満の声をあげた。
「ちょっ、待って下さいボーボボさん!!どういう事ですか!?」
「そうだ!ランバダならまだ判るが何でこのガキも一緒じゃなきゃいけねーんだよ!?
ところてんとトレースしておやびんと組ませろ!!」
「何だと!?今のは聞き捨てならないぞ!!」
食ってかかるヘッポコ丸。
ボーボボは仲裁するかのように二人を諭した。
「まぁ待て。まず最初にヘッポコ丸、こうなる事が読めなかったお前が悪い。そこは認めろ」
「くっ・・・!!」
確かに、とヘッポコ丸は納得をせざるを得なかった。
しかし、ヘッポコ丸はそれでも悔しそうな顔をして歯を食いしばるしかなかった。
ボーボボは今度は破天荒の方を向いて諭した。
「破天荒、お前はヘッポコ丸の事を足手まといのに思っているようだが、ヘッポコ丸もやる時はやるぞ」
「はぁ?知らねーよ。俺はガキのおもりはごめんだ」
「なんだとぉっ!!?」
破天荒を睨みつけるヘッポコ丸。
そこに―――
「破天荒!!!」
首領パッチが大きな声で破天荒の名を呼ぶ。
「何ですか?おやびん?」
「男なら・・・男なら・・・」
首領パッチは拳を握りながら俯いて震えていた。
しかも、天の助の前で―――
「一度決めた事は最後まで突き通せーーーーーーっ!!!!!!!!!」
勢いで握っていた拳を力一杯天の助の顔面に喰らわせた。
「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!!!」
天の助の顔面はトイレの壁にめりこんだ。
「殴る必要あったの!!!?」
天の助に同情しつつビュティはツッコんだ。
首領パッチは構わずに破天荒を見る。
破天荒は苦しい顔をしながら決断した。
「くっ、おやびんがそう言うなら仕方ねぇ・・・―――ただし、俺の足を引っ張るなよ」
「うるせぇ!!」
ヘッポコ丸が破天荒を睨むが破天荒は涼しい顔をしていて相手にしない。
一方ランバダは、この光景を見て
(いつもこんな感じなのか?)
と内心呟いたとか。
「よし、フリーパスが見つかり次第連絡しろ。それでエンドタワーに集合だ」
「判りました」
ヘッポコ丸は頷き、こうしてボーボボたちは別れた。
ボーボボたちは三輪車をこぎながら次のアトラクションを探していた。
もちろん、ビュティは歩いている。
「ねぇねぇ、どこ行くどこ行く?」
子供のような顔をして復活した天の助が尋ねる。
「ああん?お化け屋敷に決まってんだろ!」
不良の格好をして答える首領パッチ。
「俺はあの“鏡のラビリンス”ってのがいいと思うんだがどうよ?」
もはや暴走族も同然の格好をして尋ねるボーボボ。
(可愛くねぇ・・・)
天の助も含めて内心呟くビュティ。
ボーボボの提案により、ビュティたちは鏡のラビリンスの中へと入る事にした。
鏡のラビリンスの中
中はやや狭く、二人くらいがやっと通れるくらいの広さだった。
加えて上下左右全て頑丈な鏡。
不思議な感覚がするのは気のせいだろうか?
しかし、進む道進む道行き止まりで、文字通り迷路だ。
「ここも行き止まりか・・・」
項垂れるビュティ。
どうやらまた行き止まりの所に来てしまったらしい。
「ここが噂の“鏡の間”ざんすね?ボリーアントワネットさん」
首領パッチが中世の女性貴族の格好をして傘をさしながら尋ねる。
ボーボボと天の助も同じ格好をして傘をさしている。
「ええ、そうですわよ。でも、鏡なだけに繊細で壊れやすいの。だからお気を付けになってね」
「あらやだ、ごめん遊ばせ」
天の助はさしていた傘を折り畳んだ為、その際に傘の先端が鏡に強く当たった。
ガシャーンと悲惨な音を立てて鏡は割れた。
「罰金100万!!」
ボーボボは天の助にアッパーカットをかます。
「ぶーーーーっ!!!!」
そしてそこに同じく折り畳んだ傘で首領パッチが天の助を叩いて来た。
「また始まった・・・」
三人のおふざけ+喧嘩にビュティは呆れて鏡を見た。
鏡にはビュティが映っていなければいけない筈なのに、見知らぬ女の子が映っていた。
「え?どういう事・・・?」
鏡に映っている女の子はビュティより年下に見える。
髪は長髪で金色。
そして水色のベレー帽。
服は水色のチアリーダーのような服で、胸の辺りに『I♡迷宮』と赤い文字で印刷されていた。
そして、その女の子の口が動く。
「こんにちわ」
「ボーボボ!!!!」
助けを求めるようなビュティの声にボーボボは振り返る。
「なっ!?ビュティ!!!」
ボーボボの目に飛び込んで来たのは、鏡の中にいる女の子に鏡の中に引きずり込まれて行くビュティの姿だった。
「ビュティ!!」
首領パッチがビュティの掴まれていない方の手を掴む。
「首領パッチ君!!」
ビュティは笑顔になる。
しかし―――
「ヒロインは私がなるからアナタは永遠に鏡の中にいなさい!!」
逆に鏡の中に押し込んできたのだ。
「ええっ!!?」
驚くビュティ。
この期に及んでまだそんな事を目論んでいた首領パッチに逆に敬意を表したとか何とか。
「何やってんだこのスットコドッコーイ!!!!!」
怒りを露に首領パッチを思いっきり殴るボーボボ。
首領パッチ ダウン
「ボーボボ!!」
あえなくしてビュティは鏡の中に引きずり込まれてしまった。
「ビュティ!!くそっ、バカの所為で!!」
バカとは勿論、首領パッチのこと。
「おいボーボボ!この鏡、向こうに行けるぞ!!」
天の助は先程ビュティが引きずり込まれた鏡に自分の体を半分入れて見せる。
「でかした天の助!!!」
ボーボボは、口は褒めていても態度としては天の助を蹴り飛ばして鏡の中へと入って行った。
首領パッチも続く。
そして―――
「なっ!?何だここは・・・!!?」
ボーボボは驚いた。
それもその筈。
鏡を通って辿り着いた所はどこまでも広がる宇宙だったのだ。
「宇宙だと・・・?」
「ありえねぇ・・・」
呟く首領パッチと天の助。
少し冷や汗が見える。
”フフフ、ここは鏡で作った宇宙よ”
不意に、可愛げな女の子の声が全体に響く。
「この声・・・まさか、ビュティをこの中に引きずり込んだ奴だな!?」
”人聞きの悪い事言わないでよ。ただお友達になろうとしただけじゃない”
ボーボボたちの前に先程のチアリーダーの格好をした女の子が現れる。
「フフフ、初めまして。この“鏡のラビリンス”のアトラクションの責任者であり、
『ラビリンス真拳』の使い手のラリスよ。宜しくね」
ラリスは不敵な笑みを浮かべて挨拶をする。
しかし、ボーボボはそれを睨み返した。
「けっ、そんなこたぁどうでもいいんだよ。さっさとビュティを返せ」
「だったらアタシを倒してみなさいよ」
ラリスはボーボボを挑発する。
こうして、ボーボボチームVSラリスの壮絶なる激闘が幕を開いた。
一方その頃、ヘッポコ丸チームは―――お化け屋敷にいた。
先頭はヘッポコ丸が一人で歩いており、後ろでは破天荒とランバダが並んで歩いていた。
「何もねーな」
「お化けも大して怖くねーし」
二人はぼやくように呟く。
何回かお化けたちや仕掛けが発動したがどれも子供騙しで面白くなかった。
そんな時―――
「ようこそ、当お化け屋敷へ」
天井から声がした。
「誰だ!?」
ヘッポコ丸が叫んで天井を見上げる。
続いて破天荒とランバダも見上げる。
天井には、ドラキュラの格好をした男が天井にぶら下がっていた。
ヘッポコ丸は睨みながら尋ねる。
「何だお前は?」
「当お化け屋敷副責任者・ラキュラスでございます」
「俺たちに何か用か?」
冷静且つ、面倒くさそうに尋ねる破天荒。
しかし、ラキュラスは不敵な笑みを浮かべて答えるのだった。
「フフ、そりゃあ勿論、貴方たちを倒しに来たんですよ!!」
ラキュラスがマントを大きく広げると、それが合図だったのか。
色んな所から一斉にお化け役の人たちが出て来て襲いかかって来た。
「フワァアアアアアッ!!!」
ゾンビがヘッポコ丸に襲いかかろうとする。
しかし、ヘッポコ丸はそれをヒョイとかわして「何すんだ!」と叫んでゾンビを蹴った。
ゾンビはドサッと蹴り飛ばされる
「うらめしや~!」
ろくろ首が破天荒に飛びかかる。
「オラよ!!」
破天荒はろくろ首をお化けたちの群れ目掛けて蹴り飛ばした。
ろくろ首によって多数のお化けたちが片付いた。
「ニャァアアアアアアアッ!!!」
「触るな」
襲いかかって来た化け猫役の人をランバダは無表情で蹴り飛ばす。
化け猫は壁に叩きつけられた。
「こ、コイツら強ぇ~~~!!!」
破天荒とランバダの蹴りの強さに恐れをなしたお化けたち。
お化けたちは破天荒とランバダをターゲットから外し、ヘッポコ丸を見た。
「なら・・・お前をやってくれるわーーっ!!」
お化けたちは一斉にヘッポコ丸に飛びかかる。
ヘッポコ丸になら勝てるとでも思ったのだろう。
様々なお化けたちがヘッポコ丸を襲い、ヘッポコ丸はそれをことごとく倒して行くのだった。
だが、数が余りにも多すぎて倒しても倒してもお化けたちは襲いかかって来る。
しかもタフだ。
「くっ・・・数が多すぎる・・・!!」
やや息が上がって来たヘッポコ丸。
「オイオイ、もうへばって来たのかよ」
「お前弱いな。普通この位で息は上がらんだろ」
丸で他人事のように意見を述べる破天荒とランバダ。
ヘッポコ丸はありったけの怒りを込めて叫んだ。
「だったらお前らも相手してみろよ!!!!」
「今そいつらはお前を相手にしてんだろ?だったらお前が片付けろよ」
「そいつらの意識を俺たちに向けさせる事が出来たらやってやるよ」
そう言いながら二人は近くの大きな石に座る。
そして、二人だけで会話を始めた。
「お前派閥とかあんの?」
「派閥?」
「ないんならハジケ組みに入らねーか?お前なら歓迎するぜ」
「・・・まぁ、考えておこう」
適当に流すランバダ。
そして、そんな三人の姿を影から見る者が一人―――
「クックックッ、弱った所を我が天然水真拳で・・・」
果たして、戦っている戦士と話しこんでる二人の戦士の運命やいかに・・・?
一方その頃、鏡のラビリンスでは・・・
「わ~~い!!宇宙だ~~~~!!」
ボーボボたちがハジケていた。
星であるのにも関わらず、数個の星でお手玉をするボーボボ。
「アハハ!!」と笑いながら金星で玉乗りをする首領パッチ。
ガシャーンと彗星をボウリングピンに充てて「ストライク!!」と喜ぶ天の助。
先程までの緊張感は全く無かった。
「ちょっと三人共!!何遊んでんだよ!?敵のテリトリーなんだからもっと緊張感持とうよ!」
ここに来てどっかから現れたビュティ。
「あ、ビュティだ~!無事だったんだ~!」
うきうき顔でボーボボはビュティに近づこうとした。
だが・・・
「ラビリンス真拳奥義『四方ガラスの非迷宮』」
声がしてビュティの周りを四枚のガラスが取り囲んだ。
「何これ!?ぼ、ボーボボ!!!」
ビュティはガラスを叩く。
しかし、ガラスは強度が高いらしく、叩いてもドンドンドンという音しかしない。
「ビュティ!!!」
ボーボボもガラスを強く叩くが壊れる様子はない。
そんな時、背後から声がした。
「そのガラスはちょっとやそっとの力で壊す事は出来ないわ。例え核を使ったとしても」
振り返ればラリスがいた。
ラリスは不敵な笑みを浮かべている。
しかし、それに対してボーボボは余裕な笑みを浮かべていた。
「フッ、それはどうかな?」
「どういう意味?」
「鼻毛真奥義『クレーンゲーム』」
ボーボボは奥義を唱えて巨大なクレーン車に乗り始めた。
そして、クレーン車を操作し、バーとなっている首領パッチをビュティの上まで下ろした。
「掴まれ!!ビュティ!!」
ボーボボに指示されるまま、ビュティは首領パッチに掴まった。
そしてそのままクレーンを上げてビュティを外に出した。
「しまった、そんな技が・・・!!」
「ボーボボ!!」
「ビュティ、無事だったか!?」
ビュティの無事を確認して安心するボーボボ。
そして、ラリスの方を振り返って宣言した。
「ラリス!!俺は例え女だろうが子供だろうがビュティに手を出そうとする奴は容赦しねぇっ!!
行くぞ!!首領パッチ、天の助!」
「「おうよ!!」」
三人は威勢良くラリスに飛びかかる。
が―――
ビッターーーーーーーーーーーン!!!!!
三人はラリスに攻撃出来る一歩手前で何かに激突した。
それはまるで壁のように硬い。
「「「な~ぜ~じゃ~!!?」」」
三人は悲惨な顔でずるずると崩れ落ちた。
ラリスはラリスで面白そうな顔をしている。
「クスクス、残念。ラビリンス真拳奥義『透明の迷宮』」
「『透明の迷宮』だと?」
「簡単に言えば見えないガラスのような物があるって事よ。それと上と下もね」
「だがしかし!!お前には貫通ダメージを受けてもうらぜ!」
いつの間にか遊○のコスプレをしている首領パッチが叫ぶ。
髪や目つきなんかそのまんまだ。
「行くぜ!!ところてんの戦士・天の助でダイレクトアタック!!」
「ええっ!?何で俺!!?ちょっ・・・体が勝手に・・・!!!!」
天の助の体は天の助の意に反してラリスの元へと走り出した。
「ふんっ!!」
ラリスは思いっきり天の助を殴る。
「ぶへっ!!!」
飛ばされる天の助。
「天の助君!!」
ビュティが叫ぶが天の助は伸びる一歩手前だ。
しかし、そこに首領パッチが追い打ちを掛ける。
「くそ、こうなったら俺は天の助を墓地に送り―――」
首領パッチが墓地送り宣言をすると、天の助の体は足から素早く光となって消えて行った。
「ええっ!!?ちょっと!!?」
天の助が何かを言おうとしたがそれは適わなかった。
「マジックカード・サウザンド豆腐を発動する!!いけ!!千個の豆腐よ!!!!」
すると、千個の豆腐が首領パッチの周りに現れた。
「豆腐!?天の助君を墓地に送ったのに豆腐!!?」
サウザンド豆腐
天の助を墓地に送ることによって発動する事が出来る。
相手に100のダメージを与える。
「攻撃力ショボッ!!」
「所詮は天の助だからな」
「ひどっ!!!」
真面目な顔をして答えた首領パッチにビュティはありったけの同情をこめてツッコんだ。
そんなやり取りをしている間にも千個の豆腐はラリスに突撃していた。
しかし、丸で壁にぶつかったかのように豆腐たちは弾け飛んで崩れた。
「効く訳ないでしょ?―――くらいなさい!!」
ラリスは慣れた手つきで幾つものナイフを投げた。
ナイフは空を切ってビュティたちに襲いかかる。
「きゃあっ!!」
ビュティは己の身を両腕で庇う。
幸い、ナイフは刺さらなかった。
「なんの!天の助ガード!!!!」
いつの間にか復活していた天の助を振りまわしてボーボボはナイフの攻撃を防ぐ。
しかし、それに反してナイフは天の助に刺さって行くのだった。
「ぎゃあ~~~~~~!!久々の拷問~~~~!!!!」
苦しむ天の助。
相変わらず報われないところてんだ。
ナイフによる攻撃が止んだ所でボーボボは勝算ありの顔をした。
「フッ、ラビリンス真拳見破ったぜ」
「何!?」
驚きに目を見開くラリス。
ボーボボは続ける。
「ラビリンス真拳、発動すればそれなりに厄介だが攻撃技が無い。勝負ありだな」
「確かに、ラビリンス真拳に攻撃技はないわ。でも、出口を見つけない限り
抜け出す事は出来ないわ!!」
ラリスはやや焦り気味に言い放つ。
出口など何処にあるのか皆目見当もつかないが、そんな事はボーボボに関係なかった。
「迷宮など、出られなければ壊せばいい!!」
「まさかっ!!?」
「行くぞ、首領パッチ!!」
「おう!!」
「鼻毛真拳協力奥義『ビック・バン』!!」
ボーボボは宣言して首領パッチと距離を取った。
そして、某マンガの主人公の必殺技のようなポーズをとって唱え始める。
「は~~な~~」
「は~~な~~」
「「げ~~~~~~~~っ!!!!!!!!!」」
突き出された二人の合わさった両手から眩い光が放たれる。
光は物凄い速さでぶつかり合った。
そして―――
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!
鏡のラビリンスの建物は吹き飛んだ。
ガラガラパラパラと建物の壁や破片などが散らばる。
「ぷはっ」
ガレキの中からビュティが顔を出す。
土埃がついているだけで無傷のようだ。
「ボーボボ!首領パッチ君!天の助君!」
ビュティが当たりを見回しながら三人の名を呼ぶ。
「ここだぜビュティ」
声がしてビュティは振り向いた。
そこには、ミロのヴィーナスの格好をしたボーボボがいた。
「何故にヴィーナス!!??」
「爆発と言えばヴィーナスだろ?」
「違うよ!―――それより首領パッチ君と天の助君は?」
ビュティはキョロキョロと見回しながら二人を探す。
そして、後ろを向くと・・・
「なぁっ!!!??」
考える人の像ならず考える首領パッチの像。
そして何かの将軍の石像をした天の助がいた。
「何故に石像関連!!?」
ビュティがボケを処理している間に、ガレキの中からラリスが出て来た。
しかし、様子からして戦意は無かった。
「私の負けよ。ラビリンス真拳は建物とかがあって初めて発動するの。
・・・どうぞ煮るなり焼くなり好きにして」
「俺はもう戦えない奴を傷めつけたりはしない」
「ボーボボ・・・」
ボーボボの優しさにビュティは自然と笑みを浮かべた。
「その代わり、エンドタワーのフリーパスを持ってるか?」
「ええ、持ってるわ。欲しいならどうぞ」
ラリスはポケットからフリーパスを出した。
ボーボボはそれを受け取る。
「確かに・・・ビュティ」
「何?」
「ヘッポコ丸たちに連絡だ」
「判った!!」
ボーボボに指示されてビュティはヘッポコ丸たちに電話する。
ボーボボVSラリス ボーボボの勝利
一方、お化け屋敷では・・・
「オラよっ!!」
「ぐはっ!!!」
ヘッポコ丸が最後の一体を倒した所だった。
かなりの大人数を相手にしたのでヘッポコ丸はへとへとだ。
「おー、お疲れさん」
「このくらいでへばるなよ」
破天荒とランバダは労いのような言葉をヘッポコ丸にかける。
ヘッポコ丸は二人を睨みながら抗議する。
「お前ら、少しは手伝え!!」
「何言ってんだ。そうやってすぐ人に頼るからお前は弱いんだよ」
「たかが大人数相手の組手で苦労するなんてこれじゃ隊長一人倒すのは無理だろうな」
「何だとっ!!?」
散々馬鹿にされてヘッポコ丸の堪忍袋の緒が切れそうになる。
だが―――
「そこまでだ!!」
誰かが叫んだ。
三人は声のした方を振り向く。
そこには、宙に浮いて胡坐をかき、侍の格好をしている男がいた。
補足すると、丁髷の部分が水の入っているペットボトルになっていることだ。
「何だお前」
別段驚いた風を見せずに尋ねるランバダ。
男は待ってましたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべて答えた。
「私の名前は火水 風雷。天然水真拳の使い手にしてこのお化け屋敷の責任者だ!」
「ああ?清水 風雷?」
「ちかーーーーーーう!!火水 風雷だ!!」
破天荒が間違えると火水はすぐに大声で訂正した。
そして気を取り直して続ける。
「そんな事より・・・―――貴様らもここまでだ」
火水は指をパチンと鳴らした。
すると、前後から壁が降りて来て道を塞がれた。
「壁が・・・!!」
「これだけではないそ!天然水真拳奥義『ナイアガラの滝』!!」
火水が唱えると、頭のペットボトルのキャップが弾け飛んで大量の水が滝の如く流れ出来てた。
ドドドドッという音を立てて水は溢れ出し、次第に地面に水嵩が出来て来る。
「マズイ、水が・・・!!」
「フハハハハハッ!!さぁどうする!!?」
高笑いをする火水だが、彼は腰に浮輪を装備していた。
「何で浮輪付けてんだよ!!??お前宙に浮いてるだろ!!!??」
「だって、30cmしか浮けないんだもん」
涙ぐむ火水。
ヘッポコ丸は呆れる事しか出来なかった。
しかし、こんな状況でも破天荒は火水に質問する。
「でもよぉ、浮輪してても出口がなきゃお前も危ないんじゃねーの?」
「フッフッフッ、心配は御無用。―――天井を見ろ!!!」
三人は天井を見た。
天井には人一人が抜けられるくらいの大きさの正方形の空洞があった。
外に出られるようだ。
「水位が上昇すると共に私は浮輪で上へと浮いて行く。そうすればあっという間に脱出さ」
「逆にお前を倒して止めたら?」
今度はランバダが質問する。
「いや、まぁそれは・・・非常用のボタンが一定間隔に設置されてるからそれを押せば何とか・・・」
「何故に一定間隔!!!?」
「何かあったら嫌じゃん?」
「慎重過ぎるだろ!!」
ボケとツッコミが炸裂するがその間にも水嵩は増していくばかりだった。
「なら、速攻で倒すしかないな!!」
ヘッポコ丸は構えた。
「オナラ真拳奥義『水無月』!!」
「何の!!天然水真拳奥義『水鉄砲』!!」
火水は頭を前に突き出す。
すると、溢れ返っている水の中から水球が飛び出して来た。
ヘッポコ丸のオナラの塊は水球とぶつかり、あえなく相殺する。
「くそ・・・っ!!」
「フハハハッ!!まだまだ!!天然水真拳奥義『水鮫』!!!」
火水が奥義を唱えると、溢れ出している水から水の鮫が形成された。
「行けぇっ!!水鮫!!!」
火水が命令すると、水鮫はヘッポコ丸に襲いかかる。
「この野郎っ!!」
ヘッポコ丸は水鮫にグーパンチをかます。
穴は開いたものの、すぐに水で復元された。
「無駄だ!水鮫はこのペットボトルから出ているマイナスイオンですぐに復元される!!」
「マイナスイオンで!!?」
以外な事実にヘッポコ丸は驚く。
しかし、その間にも水鮫との格闘は続く。
「勝つと思うか?」
「五分五分だな」
ヘッポコ丸の勝率について話し合う破天荒とランバダ。
その時、破天荒の携帯が鳴った。
因みに、破天荒の携帯には首領パッチのストラップが付いている。
着信でビュティからだった。
「俺だ。フリーパス見つかったのか?・・・ああ?繋がらない?
―――おい、嬢ちゃんが携帯繋がらないだとよ!!」
携帯を耳から外して破天荒がヘッポコ丸に向かって叫ぶ。
「充電切れてるんだ!!」
「充電が切れてるんだってよ。―――ん、判った」
破天荒はボタンを押して携帯を切った。
「フリーパス見つかったのか?」
「ああ、エンドタワーに集まれだとさ」
「じゃあ、行くか」
ランバダは壁に近寄ると、ポリゴン真拳奥義『オーラ・オブ・ポリゴン』で壁をポリゴンにした。
そして、ポリゴンになった壁を蹴って穴を開ける。
穴からは外の景色が見えていた。
「ええっ!!?ちょっ、ええ!!?反則だーー!!!」
まさかのランバダの行為に火水は驚いた。
しかし、ランバダは無表情で「何だよ?」と言う始末。
「お前!!幾ら何でも反則だろ!!」
「ここにいる必要が無くなったんだ。それの何が悪い?」
「ふざけるなよーーーーーっ!!!!」
火水は怒りに任せてランバダを殴ろうとする。
しかし―――
「失せろ」
ランバダの冷たい声と共に火水は思いっきり蹴り飛ばされた。
「ぐはっ!!!!!」
火水は吐血し、壁にめり込む。
それを確認してランバダは歩きだした。
「行こうぜ」
「ああ」
ランバダが壊した壁から二人は外へと出て行く。
そんな後ろ姿を茫然と見た後、ヘッポコ丸も壁から外に出たのだった。
ヘッポコ丸・破天荒・ランバダVS火水 風雷 ランバダの勝利
END