鼻毛スピリッツ

一方その頃、監獄の最上階では―――


「フッ、ようこそボーボボさん、我が監獄へ。最上級の裁きを貴方へプレゼントしますよ」

ボーボボたちは既に最上階へと連れてこられていた。
しかし―――

「ぐがぁ!ぐがぁ!ムニャムニャ・・・」
「ビュティおかわり!・・・ムニャ」
「・・・」

「って寝てるー!!」

折角ボスらしく登場したというのにボーボボ・首領パッチ・ランバダは緊張感のカケラもなく眠っていた。
首領パッチに至っては夢を見ている始末。
これに男は怒りで震え出し、中華鍋とおたまを取り出してそれらの背中をガンガン!とぶつけ合せながら叫んだ。

「起きなさい貴方たち!いつまでも寝ているんじゃありません!」
「んん~・・・なんだよかーちゃんうるせーなぁ」
「まだ起きる時間じゃないよぉ?」
「もっと寝かせろよな」

「お黙り!今日は遠足でしょ!?お隣のたっくんはとっくのとうに家を出てるわよ!!」

「やべ!今日遠足だった!」
「急いでおやつ詰めなきゃ!」
「オイコラ待て!それは俺のポッキーだぞ!」

「ほらほら喧嘩しないの!遅刻するから早く行っておいで」

「「「はーい!行ってきまーす!」」」

そのまま部屋を出て行こうとする三人。

「全く本当に世話がかかるんだから・・・ってちょっと待ちなさい!!!」

「はぁ?今度は何?」
「急いでんだけど?」

「上手く乗せたつもりかもしれんがそうはいきませんよ!」

「チッ、ダメだったか」
「ランバダの演技がポンコツだった所為だぞ」
「あ?ポンコツはお前だろ」
「んだとゴラァ!!?」
「ああ?やんのかテメー」
「上等じゃボケェ!格の違いを見せてやんよ!!」
「加勢するぞ首領パッチ!」
「お前らまとめて屈辱的にぷっ殺してやるよ!」

「勝手に話を進めないで下さい!いいですか!?
 私の名前はニルヴァーナ。ここは監獄で私と地下にいる私の弟を倒さなと貴方たちは―――」

「「「黙ってろ!!!」」」

「ぐはぁっ!!!」

本題に移そうとした監獄長―――ニルヴァーナを蹴り飛ばして三人は争いを始める。
既にやりたい放題だ。

「オラ来いよランバダちゃぁん?」
「俺たちがボッコボコにしてやんよ!」

バットを手に不良宜しくランバダを挑発する首領パッチとボーボボ。
チームワークもへったくれもない。
舐められたランバダは青筋を立てるとニルヴァーナの方を振り返って言った。

「おいお前!お前はトゲ野郎を抑えてろ!俺はボーボボをぶち殺す!!」
「ええっ!?いやいやボーボボを殺すのは私の役目―――」
「黙れ!!モタモタしてないで行くぞ!!」
「ええーーーっ!!?」

「オラ来いランバダぁ!!」
「来いやぁ!かかって来いやぁ!!!」

「行くぞ!!」
「こ、こうなればヤケです!!」

「「「「うぉおおおおお!!!」」」」

「ポリゴン真拳奥義『メテオ・オブ・ポリゴン』!」
「天罰真拳奥義『黄金の鉄槌』!」

ランバダの三角柱の巨大ないくつかのポリゴンとニルヴァーナの黄金に輝く槌がボーボボと首領パッチの上に現れる。
しかし二人はそれをダンサーになってカレーを片手に華麗に避けた。

「なんの!奥義『華麗なるダンサーのカレーなる回避』!!」

「チィッ、避けられたか!」

「続けて奥義『ウサギさんの餅つき』!」
「オラぺったん!」
「ホイぺったん!」
「もういっちょ!」
「あらよっと!!」

ボーボボと首領パッチはウサギの格好をするとポリゴンと槌を手に餅つきを始めた。
首領パッチがポリゴンの底面部分で餅をつき、ボーボボが槌で餅をつく。

「水つける係いませんけど!?」

「水がなければカレーをつければいい」
「カレー餅の出来上がりだぜ」

「何でドヤ顔!?カレーめっちゃ飛び散りますよ!?」

ニルヴァーナのツッコミに首領パッチとボーボボはドヤ顔のまま餅に先程のカレーをつけて餅つきを再開した。
その結果、ニルヴァーナの言う通り餅をつく度にカレーは跳ね飛び、二人のウサギ衣装を茶色く汚した。
そうして茶色いマダラ模様のカレー臭いウサギが出来上がる。

「言わんこやっちゃない!」

「え~?カレーウサギとかチョー可愛くなーい?」
「可愛い!」
「だよね~!可愛いわよね~!」
「カレー臭いんじゃボケェ!!!」

つい先程まで一緒になって体をくねらせながらカレーウサギ可愛いとほざいていたボーボボは急に掌を返して首領パッチを蹴り飛ばした。

「ぐばぁあ!!!」

「うごっ!」
「ぐはっ!」

首領パッチが蹴り飛ばされた先にはランバダとニルヴァーナがいて巻き添えをくらい、壁に激突する。

「お、おのれぇ・・・!」
「トゲ野郎抑えとけつったろ!!」
「ごはぁっ!!!」

ランバダの理不尽とも言える容赦ない蹴りがニルヴァーナの腹に入る。
この理不尽さはボーボボと然程変わらないようにも思う。

「おのれボーボボ!テメェだけは絶対許さねぇ!!オイお前!!オレとランバダがボーボボをやるからお前はボーボボを抑えてろ!!」
「また!?」
「ゴチャゴチャ言ってねーで行くぞ!遅れんなよ!!」
「俺に指図すんじゃねぇ!!」
「何故こんな事に!」

「ケッ、雑魚どもがどれだけ束になろうともこの俺に勝てると思うなよ!」

「やってみなきゃ分かんねーだろ!喰らえ!『煮干しパチンコ』!!」
「ポリゴン真拳奥義『ポリゴンボム』!」
「天罰真拳奥義『赤き十字架』!」
「死ねボーボボ!!」

殺意全開で叫ぶ首領パッチ。
その間にもいくつかの煮干しととポリゴン形の爆弾と真っ赤な十字架がボーボボに向かって飛んでくる。
いろんな意味で絶体絶命的な状況。
しかしボーボボは涼しい顔で笑うと女子テニスプレイヤーになってラケットを構えた。

「鼻毛真拳奥義『頂点を狙え』!絶対に頂点に立つわ!!」

するとボーボボは物凄い豪速球で煮干し・ポリゴンボム・赤い十字架を打ち返した。
煮干しはランバダに、赤い十字架は首領パッチに、ポリゴンボムはニルヴァーナに直撃する。
ちなみにポリゴンボムの方は直撃すると同時にポリゴンオーラが溢れ出すもので、ニルヴァーナはポリゴンになった。

「「「ゴフッ!!!」」」

「クソが!煮干し如きにこの俺が・・・!」
「ぐばぁーー!懺悔します!懺悔しますから血は吸わないでくれぇーーー!」
「か、体が動かない・・・!?」

「思い知ったかクズどもが!俺に勝とうなんざ1000年早いんだよ!!」

「あぁ!?舐めんのも大概にしろよテメェ!!」

「そこぉ!先生に向かって何て口の聞き方だ!鼻毛真拳奥義『校長の椅子ジェット』!!」

「ゴフッ!!!」

校長の椅子に座ったボーボボが椅子に設置されていたジェット噴射機の推進力を利用してランバダに突っ込む。
それによりランバダは物凄い勢いで壁に激突するのであった。
しかしそんなボーボボの背後に容赦なく首領パッチソードを持った首領パッチが攻め入る。

「死ねボーボボ!!」

「甘いな!鼻毛真拳奥義『伝説のスタンパー』!ホアチャァ!」

「ぐっ!?」

ボーボボは懐からスタンプを取り出して首領パッチの体に『よくできました』と印字された花丸のスタンプを押した。

「よく・・・できました・・・?」

首領パッチの中で時間がゆっくりと流れる。
その流れの中で体に押された判子を見てただ呆然とする。
脳裏に浮かぶは学生だった頃の日々。
あの時は首領パッチも若くて無茶ばかりしていた。
そして担任の先生にいっぱい迷惑をかけた。

『こら首領パッチ!何をしているんだ!』
『ヤベッ!バレた!!』

早弁をして怒られた。

『今日から俺たちでコンニャク部を始めるぞ』
『はい先生!』

二人でコンニャク部を作った。

『頑張れー!頑張れ野球部ー!!』
『俺たちコンニャク部がついてるぞー!!』

二人でコンニャクを持って野球部の応援にも行った。

『ふざけて腰ふりダンスをしてたら校長の大切にしてた壺を割ってしまったー!』
『先生落ち着いて!!』

バカやって問題も起こした。

『本当なのかね?』
『はい、生徒の首領パッチくんがやりました。私は止めたのですが・・・』
『ええっ!?』
『本当なのかね?首領パッチくん』
『イエス アイ キャン』

キメ顔でそう答えた結果、退学にされた。

「そりゃそーでしょ!!ていうか教師最低ですね!!?」

すかさずニルヴァーナがツッコむ。
スルーする事も出来たが我慢ならなかったようだ。








(先生・・・元気ですか?僕は今日も元気です。先生に押してもらったこの判子がある限りメイルリンは僕が守ります)

「意味分からん!」
「ちなみにメイルリンはこれだよ!」

無邪気な首領パッチがニルヴァーナにメイルリンを見せる。
メイルリンは―――ミミズだった。

「立派な名前のくせにミミズですか!?」

「ミミズを舐めるんじゃねー!!!」

横からミミズの着ぐるみを着たボーボボが体当たりしてきてニルヴァーナを吹き飛ばす。

「ごぁあああ!!!」

ニルヴァーナは壁に激突し、その勢いで壁を壊して土埃が上がる。
これを引き金にニルヴァーナの怒りが頂点に達する。
火山を噴火させるかの如くニルヴァーナは怒りの叫び声を上げた。

「おのれボ「おのれボーボボ!!!」
「えぇっ!?何で!!?」

ニルヴァーナのセリフを横取りしてボーボボが叫ぶ。
本当はニルヴァーナが怒りに震えたい所なのにそこもボーボボに取られてしまっている。

「テメーが仲間をぞんざいに扱うからボーボボに仲間がいなくなっちゃったじゃねーか!!」
「何言ってるんですか貴方!!?」
「野郎共!俺たちでボーボボをぶっ潰すぞ!」
「「おう!!」」
「いやいやいや!」
「大変だボーボボ!ボーボボ役がいねーぞ!」
「くっ、こうなれば首領パッチ、お前がボーボボ役をやれ!」
「よし任せろ!」

そう言って首領パッチは黄色のアフロとボーボボのグラサンを着け、最後に縄跳び二本を鼻の穴に入れてそれを振り回しながらボーボボの演技を開始した。

「うりゃ~~!俺がボーボボだぞ!はな~げしんっけん!!」
「テメーには荷が重すぎる!」
「ごばぁ!!」

「理不尽だ!!」

ボーボボ役をこなそうとした首領パッチをボーボボが容赦なく攻撃する。
これにツッコミを入れずにはいられないニルヴァーナ。
そしてボーボボの標的がランバダに変わる。

「こうなったらランバダ!貴様がボーボボの役をこなせ!」
「あぁ!?誰があんなクソ野郎の役なんかやるかよ!!」
「誰がクソ野郎だこのブタ野郎!!」
「ぐっはぁ!」

「この人やりたい放題だー!!」

ボーボボの鬼畜の所業に戦慄するニルヴァーナ。
仲間に対しても容赦ないと聞いていたがまさかここまでとは。
ノックダウンしてる首領パッチとランバダが哀れでならない。
だが、そんなボーボボの標的が今度はニルヴァーナにロックオンされる・・・。

「くるん」
「ひっ!?」
「じー」
「な、何ですか?私はボーボボの役なんかやりませんよ!!」
「最初から頼まねーよカスが!!」
「ぐはぁああ!!!」

まさかの門前払い。
ボーボボの鼻毛が炸裂してニルヴァーナは大ダメージを受ける。
ドサッ、とニルヴァーナが地面に背中を打ち付けるのと同時にニルヴァーナの中で怒りの糸が切れる。

「クソ野郎どもがぁーーーーー!!!さっきから黙ってれば好き放題暴れやがってーーー!!!
 私はこの監獄の看守長なのだぞ!!貴様ら罪人は大人しく断罪されてればいいんだよーーー!!!」

ニルヴァーナの叫びと共にニルヴァーナの背後に13人の騎士が現れる。
それぞれ一人ずつ違った武器を持っており、またそれぞれの顔は仮面に覆われていて窺い知る事は出来ない。
異様な雰囲気を纏う騎士たちであったが、一つだけ言える事がある。
それは、この13人は有名なナイツオブ―――

「ナイツオブランナーだな」
「ナイツオブラウンドだろ。走者の騎士ってなんだよ」
「ツッコミ28点!」
「ゴフッ!」

首領パッチのボケを冷静にツッコんだランバダだったが、あまりのキレのなさにボーボボが手厳しい飛び蹴りをかます。
これによってランバダは吹き飛んでナイツオブラウドの一人に当たり、早くも十三人の内の一人を撃沈させた。

「くっ!先手を打たれたか!まぁいい!行け、ナイツオブラウンドよ!罪人ども裁くのです!!」

「フン、ナイツオブラウンドを呼べるのはテメーだけじゃねーぞ」

「何っ!?」

「鼻毛真拳奥義『ナッツオブラウンド』!!」

「ナッツナッツ~♪」
「ピーナッツ~♪」

「ピーナッツが出てきた!?」

奥義を発動したボーボボの前に13個のピーナッツが現れる。
なんとも可愛らしい外見だが、勝てる見込みがゼロに等しい。

「全員整列!」
「ナッツ!!」

ボーボボの号令で13個のピーナッツが横一列に並ぶ。
その背後でボーボボと首領パッチが銃を構えた。

「行くぜ首領パッチ!」
「任せろ!」
「奥義『ワンナッツカーニバル』!!」
「ギャー!!」
「ウギャー!!」

ボーボボと首領パッチは荒々しくピーナッツを掴むと拳銃に装填してそれをナイツオブラウンド目掛けて発砲した。
一見貧弱そうに見えたピーナッツはしかし本物の弾丸以上の威力と貫通力を持って騎士たちの鋼鉄の鎧を貫いて轟沈させていく。

「ピーナッツ強っ!!?」

「その昔、とある偉人は言った。『ピーナッツは剣よりも強し』とな」

ドヤ顔で語るボーボボ。
その背景には剣に打ち勝つピーナッツの絵が浮かんでいた。

「何ですかこの絵!?」

「そしてとある偉人は言った。『ピーナッツを笑うものはピーナッツに溺れる』とな」

同じくドヤ顔で語る首領パッチ。
その背景にはピーナッツの海で嬉しそうに溺れる偉人の姿があった。

「いやこれ本当にピーナッツの海で溺れてるだけですよね!!?」

ここでニルヴァーナはある一点に注目した。
ピーナッツの海に喜んで溺れてる偉人のインパクトが強すぎて見落としそうになったさりげないもの。
それは―――ピーナッツの海で溺れ死にかけてる柿の種の姿だった。

(柿の種くん!!)

「テメーら柿の種の時代は終わったんだよ」
「これからはピーナッツオンリーの時代だ」
「柿の種オンリーの菓子袋は廃止してピーナッツオンリーの袋を売るぞコラァ!

「いや、貴方たち既にオンリーの袋売られてるじゃないですか!!」

柿の種を虐めるピーナッツ三人組にニルヴァーナがツッコミを入れる。
本当に何を今更。

「うるせー!柿の種をこの世から撲滅するんじゃ!」

「そんな横暴なこと言わないで下さい!柿の種の辛さがあるから貴方たちピーナッツの甘さが引き立つんじゃないですか!
 共存共栄の精神で―――」

「甘いわー!!」

ピーナッツたちを諭そうとしたニルヴァーナに甘納豆の姿をしたボーボボがまたもや激突する。

「共存共栄なんて言える甘っちょろい世界じゃねーんだ!この世の中食うか食われるかだ!即ち食われた方が敗者となるんじゃ!!」

「甘納豆うめぇ」

「貴方負け確定しましたけど!?」

やるせない顔で首領パッチに食べられる甘納豆ボーボボ。
一瞬キラリとグラサンを光らせると瞬時に鼻毛をニルヴァーナに繰り出した。

「証拠隠滅!!!」

「ぐはぁああああ!!!」

強烈な一撃をお見舞いされ、ドサッと床に叩きつけられるニルヴァーナ。
そこにボーボボと首領パッチの二人が立ち塞がる。

「そろそろ締めだ」

「ひっ!く、来るな!私はこの監獄の監獄長なんですよ!?貴方たち罪人は私に裁かれて―――」

「御託は聞き飽きた!行くぞ首領パッチ!!」
「おう!!」
「鼻毛真拳奥義―――」

ここはハジケ裁判所。
裁判長は首領パッチで被告人はボーボボ。
ガンガンガン!と首領パッチが木槌を叩いて判決を言い渡す。

「被告人ボーボボ。英語検定を受験した君を4級に認定する!」

「っ!!・・・あ、ありがとう・・・ありがとう・・・!!!」

口元を抑え、涙を流すボーボボ。
そして―――

「『英語検定裁判所』!!!」

『合格』の紙を広げながらニルヴァーナに強烈な鼻毛の一撃を喰らわせた。

「ぐっはぁあああああ!!!!」

(私ですら裁けない重罪人・・・だと・・・!?)


ニルヴァーナvsボーボボ ボーボボの勝利!!


「英検4級を取得してから出直してこい」
「テメーは人として出直してこい!」
「おぶっ!!」

ブチ切れたランバダの拳がボーボボに直撃する。

「やんのかテメー!!」
「今度こそテメーをぶっ殺す!!!」

「それじゃあみんな、また続きを楽しみにするっちゃよ!」




ビュティな首領パッチによって締められるのであった。






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