鼻毛スピリッツ
レムとランバダをどれい・・・じゃなくて仲間に迎えたボーボボ一行はとりあえず休息を取る為に宿で休んでいた。
そんな満月の美しい夜中。
「ん・・・トイレ」
トイレに行こうと起き上がるビュティ。
が、その時―――
「アビマ!!」
「バスタ!!」
「ドルフィ~~~ンヌッ!!」
「ええっ!!?何事!?」
奇声を上げるボーボボ・首領パッチ・天の助に驚くビュティ。
それだけでなく、三人は「ぐばぁっ!!」と叫んで盛大に吐血した。
「血吐いた!!?」
「うるせーな、何騒いでんだ」
「あ、ランバダさん大変なの!ボーボボたちが急に奇声あげて血吐いちゃって!」
「いつもの事だろ」
やや半ギレになりながらランバダは起き上がって電気を付けた。
すると、ボーボボたち三人は埴輪になっていた。
「あれれ!?三人とも埴輪になってる!!?」
「ふぅ、危なかったぜ。埴輪になってなかったらどうなっていた事か」
「ああ、だな」
「ちょっ、三人共!一体どんな夢見てたの!?」
「俺は夢の中で突然現れたミノムシと死闘を繰り広げていた・・・辛い戦いだったぜ」
「俺はレ○ブロック投げつけられる夢だ」
「俺なんかゼリーに裏切られてピンチだったぜ」
「しょーもなっ!!そんな事で苦戦してたの!?」
「ぐぁあっ!!」
「へっくん!?」
突然悲鳴を上げたへっぽこ丸にビュティたちは振り返る。
見ると、ヘッポコ丸はボーボボたちと同じように苦痛の表情を浮かべながら吐血していた。
「ぐっ!あぐっ、ぐはぁあっ!」
「起きてへっくん!起きて!!」
「いや~~!ビュティの為に起きてへっきゅん!!」
ドガッ!!(ビュティにコスプレした首領パッチが思いっきりヘッポコ丸の腹を殴る)
「何やってんの!!?」
青筋を立ててブチ切れるビュティ。
ヘッポコ丸はノックアウトしたものの、皮肉にも目を覚ます事が出来た。
「うっ、ぐ・・・夢、か?」
「大丈夫へっくん!?」
「お前血吐いてたぞ。ホラ、これで拭け。それから着替えのパジャマもあるぞ」
さりげなく『ぬ』のハンカチをと『ぬ』のパジャマを差し出す天の助。
しかしヘッポコ丸はそれを何の躊躇いもなく投げ捨てるのであった。
「チッ」と舌打ちする天の助。
そんなやり取りはほっといてビュティがヘッポコ丸に尋ねる。
「へっくん大丈夫?ボーボボたちみたいに夢のなかで何かあったの?」
「判った!ダイオウイカにカンチョーされたんだろ!?」
「んな訳ないでしょ!!」
首領パッチの発想にツッコむビュティ。
「みたい、って事はボーボボさんたちも誰かにやられる夢を?」
「ああ、ミノムシにな」
「ミノムシ!?」
「で?お前は誰にやられたんだ?」
「分かりません。でも、人にやられたのは確かです」
「ボーボボ、これって・・・」
「ああ―――レム」
「・・・zzz・・・」
寝ているのにどうやって意図を察したのかは判らないがレムは寝返りをうつのと同時にねむりん粉を撒き散らした。
撒き散らした。
それはもうかなり撒き散らしまくった。
もっと言うなら際限なく―――
「撒き散らしすぎでしょ!!」
頭にねむりん粉を積もらせながらビュティがツッコむ。
こうして一行は『レムスリープワールド』へと誘われるのであった。
レムスリープワールド内
「ここがレムスリープワールド・・・?」
「あ、そういえばへっくんは初めてだったね。ここはレムさんの究極奥義で作られた世界で、
この世界ではレムさんの力が20倍に跳ね上がるんだよ。私達は大丈夫だと思うけど、敵はこの世界で寝たら死んじゃうの」
「敵が寝る前に本人が既に寝てるぞ」
世界の空で目を3にして眠りこけるレムの寝顔を見ながらヘッポコ丸は言った。
「ああ、うん、まぁね・・・」
「おい、あっちに何かあるぞ」
「え?」
ランバダが何かを見つけたらしくその方向を指差す。
そこには―――
「なんじゃこりゃ!!?」
ところてんで出来た村、植木鉢にゴムボールが植えられている庭園(?)、コピー機を積み上げて出来た何かがそこにあった。
天の助はところてん村で、首領パッチは庭園で、ボーボボはコピー機を使ってそれぞれ作業をしていた。
「三人共何やってんの!!?」
「おうビュティじゃねーか。見ろよ、俺のところてん村」
「レムさんの夢の中でなんてもん建設してんのアンタ!!?」
「レムの為さ~」
「ゴムボールを植えた植木鉢の庭が!!?」
「うっふん♡今はコピー機オブジェの時代よ!」
「コピー機オブジェ!!?」
ドヤ顔の天の助とキラキラと澄んだ瞳の首領パッチと女っぽい喋り方のボーボボが自慢気に言う。
一体人の世界で何をやっているのやら。
そこにパチン、と鼻提灯を割って目覚めたレムが驚いたように言った。
「ハッ!どうりで最近この世界が騒がしいと思ったら―――!?」
「今更気づいたの!?もっと早く気付こうよ!!」
「クックックッ、やはり来たか、ボーボボよ」
「っ!?誰だ!?」
ヘッポコ丸が反応し、全員で声のした方を振り向いた。
声の主は薄い暗がりの中から徐々にその姿を表していく。
そうして現れのは獏に乗った一人の男だった。
「俺様は毛狩り隊特殊部隊隊員・夢使いのツルッテル。夢の中から貴様を倒しに来たぜ」
「貴様だな?夢の中でヘッポコ丸を襲ったのは」
「ヘッポコ丸?ああ、そこのガキか。お前を倒すついでにと思ってな」
「ゲス野郎が!!テメーは俺がぶっ潰す!」
構えるボーボボたち。
それに対してツルッテルは余裕の笑みで杖を出現させる。
「いでよ、ナイトメアステッキ。そして現れよ、ドリームシャドウよ!」
ツルッテルが杖―――ナイトメアステッキを一振りすると数多くの影の魔物たちが姿を現した。
「フン!魔法なら負けないわよ!!」
「アタシたちの魔法の力を見せてやるわ!!」
「喰らいなさい!!」
「「「いでよ、メルヘンラビット!!」」」
魔法少女のような姿になって対抗する三バカ。
三人同時に魔法のステッキを振った瞬間、眩い光と共にバニーガールの服を着たマッチョたちが現れた。
とんだ地獄絵図である。
「メルヘンのかけらもねー!!!」
ビュティの言う事は最もであった。
「やれ!ドリームシャドウ!」
「「「「「しゃぁあああああ!!!」」」」」
「いやー!怖い!!」
「助けてダーリ~ン!」
「きゃあ~~~~!!」
「うわぁあああ!?こっちくんなー!!」
ドリームシャドウに恐れをなしたメルヘンラビットたちはヘッポコ丸に助けを求めて迫る。
迫られたへっぽこ丸は遠くへと逃げるのであった。
「へっく~~ん!!」
「大変!私達の魔法が通じないわ!」
「一旦逃げましょ!」
「「それ~~!!」」
「ちょっとー!そっち俺が作ったところてん村なんですけどー!?」
子供のように駈け出したボーボボと首領パッチが入っていったのは天の助が作ったところてん村だった。
勿論、そんな二人を追いかけてドリームシャドウもところてん村へと入って行く。
もう嫌な予感しかない。
恐る恐る天の助が村の入口から中の様子を覗き見ると―――
「おりゃぁあああああ!!!」
「かかってこんかい!!!」
「何やってんのさ!!?」
大きな槍と首領パッチソードを振り回して暴れまくる二人の所為でところてん村は破壊尽くされていた。
「俺の村~!!」
「チッ、やはりこの程度じゃ駄目か。ならばこれでどうだ!『デスマシーン』召喚!!」
ツルッテルが再度杖を振ると今度はロボットが2,3体現れてボーボボたちに一斉射撃してきた。
ミサイル・マシンガン・レーザービームなどが絶え間なくボーボボたちに浴びせられる。
「「「ぐばぁああああああ!!!」」」
「フハハハハハッ!デスマシーンは無限に弾を発射し続ける!それこそお前らが死ぬまでな!!」
「嘘だ!そんなの都合良すぎる!」
「普通ならそう思うだろう?だがここは夢の世界!夢の世界はなんでもありなのさ!!」
「そんな・・・ボーボボ!!」
ボーボボたちを心配してビュティが振り返ると―――
「奥義『リフレク扇風機』!!」
三人は扇風機を構えてミサイルなどの弾を跳ね返していた。
「ええっ!?扇風機で全部跳ね返してる!!?」
「何ぃっ!!?扇風機で跳ね返すだとぉ!?」
跳ね返ってきたミサイルなどの弾はデスマシーンに直撃し、デスマシーンは大破した。
それを見てボーボボはニヤリと笑う。
「フッ、扇風機を舐めんなよ?」
「いやいやいやいや!普通の扇風機はこんな事出来ないから!!」
良い子のみんなは真似しないように。
「今度はこちらの番だ!鼻毛真拳奥義『カジキマグロ一本釣り漁船!!」
ドゴーン!と漁師の格好をした三バカが漁船に乗ってツルッテルに突撃する。
ツルッテルは突撃された衝撃でダメージをくらいながら獏の上から落ちてしまった。
そしてそんなツルッテルに首領パッチと天の助が追い打ちをかける。
「カジキマグロアターック!!」
「釣りたてアターック!!」
ドカッバキッ(鮭で攻撃している)
「それ鮭だよ!!」
「ぐはっ!!くそっ!獏、俺を助けろ!!」
「よーしよし、今日からお前もここの住人だぞ~」
獏はレムによって手懐けられてしまった。
「くっそ~!ならば奥の手だ!!」
ツルッテルは鮭で攻撃してくる首領パッチと天の助を振り払って杖を構えた。
そして大きく杖を振ると光と共にいくつもの扉が現れた。
「いでよ!『深層心理の扉』!!」
「『深層心理の扉』!?」
「この扉の向こうには貴様らが無意識に恐れているものが潜んでいる!
それを利用して貴様らを恐怖のどん底に落とし入れて絶望させてくれるわ!!」
「「「な、なにぃ!!?」」」
恐怖を露わにする三バカ。
「まずはところてん、貴様からだ!!」
「ええっ!?また俺ッスか!!?」
「開け!『深層心理の扉』!!」
開けゴマの要領でツルッテルが唱えると、天の助の『深層心理の扉』がゴゴゴという音と共にゆっくりと開いていく。
開かれた扉の向こうにあったのは―――
「・・・・・・寒天?」
一つの寒天だった。
「う、うぁぁ・・・ぁああああああああああああああああああああ!!」
「寒天にどんだけビビってんの!!?」
「ホレ」
バシッ(天の助に寒天をぶつける)
「ぎゃぁああああああああああああああああ!!!!」
寒天をぶつけられた天の助は絶叫して盛大に血を吐いて倒れた。
そんな天の助にビュティがツッコミを入れる。
「寒天ぶつけられただけで血吐くってどんだけ!?アンタどんだけ寒天怖がってんの!!?」
「か・・・寒天の野郎は俺やゼリーたちを豆腐連合軍に売った裏切り者で・・・克服したと思ったのに・・・」
何やらまた食品関連の過去を思い出しているようだが、ぶっちゃけどうでもいい。
一応天の助を倒したという事にしてツルッテルは次の標的を定めた。
「フッ、ところてんは始末した!次はトゲ小僧、お前だ!」
「う、うわぁああああああああ!!!!」
開かれた首領パッチの『深層心理の扉』の向こうには、ヤッくんと同種類だが金髪のカツラがついている人形があった。
「た・・・たたたたたたたタッくん!!?」
『夏の凍える思い出』
「何か始まった!!?」
***パチ美の回想***
あれは五年前・・・私がヤッくんと出会う少し前のこと。
私は『ねりわさび荘』というアパートである男と同棲していた。
そう、それが―――タッくん!
「ただいま、タッくん。今日もバイト大変だったわ」
「・・・」(←タッくん)
「え?いつもより遅かったって?そ、そんな事ないわよ!ちょっとバイト仲間と話してただけよ!」
タッくんはとっても疑り深い人で少しでもいつもと違った事があるとすぐに他に男がいるんじゃないかって疑ってきた。
暴力を振るわれる事もよくあって私はいつも怯えて、でもそれが彼なりの愛情表現だと言い聞かせて私は耐えていた。
そう、この時が訪れるまでは―――!
「本当よ!!私が嘘付いた事ある!?」
「・・・」
「た、確かに店長に言い寄られてた事もあったけど今はそんな事ないわ」
「・・・」
「ひ、酷い、タッくん!私が店長とこっそり出来てるなんていいがかりよ!」
ガシャガシャッ(自分で人形のタッくんを乱暴に動かす)
「いや!やめてタッくん!ごめんなさい!!でも本当よ!信じてタッくん!!」
ガシャガシャッ
「もう・・・いやぁーーー!!」
ガシャンッ!(タッくんを乱暴に叩きつける)
「私・・・私もう耐えられない・・・タッくんとの生活、耐えられない・・・さようなら!!」
こうして私はタッくんと別れ、その後ヤッくんと出会って心の傷を癒やしてもらったの。
***パチ美の回想終了***
「そ、そんなぁ!やっと忘れたと思ったのに!!」
「ホレホレ」
ツルッテルはタッくんの人形を揺らしながら首領パッチもといパチ美に迫る。
怯えるパチ美、呆れるランバダ。
「・・・何だ?この茶番」
「いつもの事だから気にしないで」
ビュティも呆れたようにため息を吐いた。
「さぁボーボボ、次は貴様だ!!」
「や、やめろぉおおおおおお!!!」
「開け!『深層心理の扉』!」
開かれたボーボボの『深層心理の扉』。
その向こうにあったのは―――ビーズだった。
「ええっ!?ビーズ!!?」
すかさずビュティのツッコミが入る。
ツルッテルも少し戸惑いながらボーボボにビーズを見せた。
するとボーボボは首領パッチや天の助と同じようにビーズに対して露骨に怯え始めた。
「ひぃいいいいいいいい!!ビーズだー!!」
「クックックッ、よく分からんがビーズがお前の弱点のようだな。ならば大量にビーズを出してお前を苦しめるのみ!」
杖を振って大量にビーズを出現させるツルッテル。
そして―――
「くたばれボーボボ!!!」
「いやぁあああああああああ!!!」
「ボーボボ!!」
ズザァァ(ボーボボにビーズをぶちまける)
・・・・・・
・・・・・・
「・・・あ、あれ・・・?」
「・・・」
「ど、どーしたボーボボ!?お前が真に恐怖するビーズだぞ!!それとも恐怖のあまり失神したか!!?」
「はぁ?何言ってのお前?」
「ええっ!?」
「普通ビーズなんかでビビるかよ。なぁ?」
「なぁ」
「全くだぜ」
白け顔のボーボボ・首領パッチ・天の助。
先程までの恐怖はどこへやら。
ツルッテルは慌てて寒天やタッくんを持って天の助と首領パッチに迫る。
「お、お前らまで何で復活してるんだ!?ほ、ホラ、お前らのトラウマだぞ!?」
「はぁ?何お前?」
「ただの人形と寒天じゃねーか」
天の助と首領パッチは寒天と人形を冷たくはたき落とした。
「ええっ!?ちょ、ええっ!!?」
「遊びは終わりだ!」
何が何だか分からず戸惑うツルッテルを他所にボーボボは構える。
「鼻毛真拳奥義『洗濯バサミの反乱』!!」
「ぐぎゃぁああああああ!!!」
ボーボボVSツルッテル ボーボボの勝利
「ボーボボさん!大変です!!」
勝利の余韻も束の間、ヘッポコ丸が焦った様子でボーボボを呼ぶ。
「どうした?へっぽこ丸?」
「現実モニターを見て下さい!俺達大変な事になってます!」
「何?」
レムが映し出している現実モニターにボーボボたちは集まる。
現実モニターを見ると、現実で眠っているボーボボたちは毛狩り隊に拘束されており、どこかに連れて行かれている所だった。
「ウソッ!?私達捕まっちゃったの!?」
「現実の世界が何だか騒がしいと思ったら・・・」
「目が覚めたら面倒だな。どうするんだ?」
ランバダが振り向くと、ボーボボ・首領パッチ・天の助は思いのままに遊んでいた。
「「「現実逃避~♪」」」
「何やってんの!!」
ビュティのツッコミがレムスリープワールドに木霊するのであった。
END
そんな満月の美しい夜中。
「ん・・・トイレ」
トイレに行こうと起き上がるビュティ。
が、その時―――
「アビマ!!」
「バスタ!!」
「ドルフィ~~~ンヌッ!!」
「ええっ!!?何事!?」
奇声を上げるボーボボ・首領パッチ・天の助に驚くビュティ。
それだけでなく、三人は「ぐばぁっ!!」と叫んで盛大に吐血した。
「血吐いた!!?」
「うるせーな、何騒いでんだ」
「あ、ランバダさん大変なの!ボーボボたちが急に奇声あげて血吐いちゃって!」
「いつもの事だろ」
やや半ギレになりながらランバダは起き上がって電気を付けた。
すると、ボーボボたち三人は埴輪になっていた。
「あれれ!?三人とも埴輪になってる!!?」
「ふぅ、危なかったぜ。埴輪になってなかったらどうなっていた事か」
「ああ、だな」
「ちょっ、三人共!一体どんな夢見てたの!?」
「俺は夢の中で突然現れたミノムシと死闘を繰り広げていた・・・辛い戦いだったぜ」
「俺はレ○ブロック投げつけられる夢だ」
「俺なんかゼリーに裏切られてピンチだったぜ」
「しょーもなっ!!そんな事で苦戦してたの!?」
「ぐぁあっ!!」
「へっくん!?」
突然悲鳴を上げたへっぽこ丸にビュティたちは振り返る。
見ると、ヘッポコ丸はボーボボたちと同じように苦痛の表情を浮かべながら吐血していた。
「ぐっ!あぐっ、ぐはぁあっ!」
「起きてへっくん!起きて!!」
「いや~~!ビュティの為に起きてへっきゅん!!」
ドガッ!!(ビュティにコスプレした首領パッチが思いっきりヘッポコ丸の腹を殴る)
「何やってんの!!?」
青筋を立ててブチ切れるビュティ。
ヘッポコ丸はノックアウトしたものの、皮肉にも目を覚ます事が出来た。
「うっ、ぐ・・・夢、か?」
「大丈夫へっくん!?」
「お前血吐いてたぞ。ホラ、これで拭け。それから着替えのパジャマもあるぞ」
さりげなく『ぬ』のハンカチをと『ぬ』のパジャマを差し出す天の助。
しかしヘッポコ丸はそれを何の躊躇いもなく投げ捨てるのであった。
「チッ」と舌打ちする天の助。
そんなやり取りはほっといてビュティがヘッポコ丸に尋ねる。
「へっくん大丈夫?ボーボボたちみたいに夢のなかで何かあったの?」
「判った!ダイオウイカにカンチョーされたんだろ!?」
「んな訳ないでしょ!!」
首領パッチの発想にツッコむビュティ。
「みたい、って事はボーボボさんたちも誰かにやられる夢を?」
「ああ、ミノムシにな」
「ミノムシ!?」
「で?お前は誰にやられたんだ?」
「分かりません。でも、人にやられたのは確かです」
「ボーボボ、これって・・・」
「ああ―――レム」
「・・・zzz・・・」
寝ているのにどうやって意図を察したのかは判らないがレムは寝返りをうつのと同時にねむりん粉を撒き散らした。
撒き散らした。
それはもうかなり撒き散らしまくった。
もっと言うなら際限なく―――
「撒き散らしすぎでしょ!!」
頭にねむりん粉を積もらせながらビュティがツッコむ。
こうして一行は『レムスリープワールド』へと誘われるのであった。
レムスリープワールド内
「ここがレムスリープワールド・・・?」
「あ、そういえばへっくんは初めてだったね。ここはレムさんの究極奥義で作られた世界で、
この世界ではレムさんの力が20倍に跳ね上がるんだよ。私達は大丈夫だと思うけど、敵はこの世界で寝たら死んじゃうの」
「敵が寝る前に本人が既に寝てるぞ」
世界の空で目を3にして眠りこけるレムの寝顔を見ながらヘッポコ丸は言った。
「ああ、うん、まぁね・・・」
「おい、あっちに何かあるぞ」
「え?」
ランバダが何かを見つけたらしくその方向を指差す。
そこには―――
「なんじゃこりゃ!!?」
ところてんで出来た村、植木鉢にゴムボールが植えられている庭園(?)、コピー機を積み上げて出来た何かがそこにあった。
天の助はところてん村で、首領パッチは庭園で、ボーボボはコピー機を使ってそれぞれ作業をしていた。
「三人共何やってんの!!?」
「おうビュティじゃねーか。見ろよ、俺のところてん村」
「レムさんの夢の中でなんてもん建設してんのアンタ!!?」
「レムの為さ~」
「ゴムボールを植えた植木鉢の庭が!!?」
「うっふん♡今はコピー機オブジェの時代よ!」
「コピー機オブジェ!!?」
ドヤ顔の天の助とキラキラと澄んだ瞳の首領パッチと女っぽい喋り方のボーボボが自慢気に言う。
一体人の世界で何をやっているのやら。
そこにパチン、と鼻提灯を割って目覚めたレムが驚いたように言った。
「ハッ!どうりで最近この世界が騒がしいと思ったら―――!?」
「今更気づいたの!?もっと早く気付こうよ!!」
「クックックッ、やはり来たか、ボーボボよ」
「っ!?誰だ!?」
ヘッポコ丸が反応し、全員で声のした方を振り向いた。
声の主は薄い暗がりの中から徐々にその姿を表していく。
そうして現れのは獏に乗った一人の男だった。
「俺様は毛狩り隊特殊部隊隊員・夢使いのツルッテル。夢の中から貴様を倒しに来たぜ」
「貴様だな?夢の中でヘッポコ丸を襲ったのは」
「ヘッポコ丸?ああ、そこのガキか。お前を倒すついでにと思ってな」
「ゲス野郎が!!テメーは俺がぶっ潰す!」
構えるボーボボたち。
それに対してツルッテルは余裕の笑みで杖を出現させる。
「いでよ、ナイトメアステッキ。そして現れよ、ドリームシャドウよ!」
ツルッテルが杖―――ナイトメアステッキを一振りすると数多くの影の魔物たちが姿を現した。
「フン!魔法なら負けないわよ!!」
「アタシたちの魔法の力を見せてやるわ!!」
「喰らいなさい!!」
「「「いでよ、メルヘンラビット!!」」」
魔法少女のような姿になって対抗する三バカ。
三人同時に魔法のステッキを振った瞬間、眩い光と共にバニーガールの服を着たマッチョたちが現れた。
とんだ地獄絵図である。
「メルヘンのかけらもねー!!!」
ビュティの言う事は最もであった。
「やれ!ドリームシャドウ!」
「「「「「しゃぁあああああ!!!」」」」」
「いやー!怖い!!」
「助けてダーリ~ン!」
「きゃあ~~~~!!」
「うわぁあああ!?こっちくんなー!!」
ドリームシャドウに恐れをなしたメルヘンラビットたちはヘッポコ丸に助けを求めて迫る。
迫られたへっぽこ丸は遠くへと逃げるのであった。
「へっく~~ん!!」
「大変!私達の魔法が通じないわ!」
「一旦逃げましょ!」
「「それ~~!!」」
「ちょっとー!そっち俺が作ったところてん村なんですけどー!?」
子供のように駈け出したボーボボと首領パッチが入っていったのは天の助が作ったところてん村だった。
勿論、そんな二人を追いかけてドリームシャドウもところてん村へと入って行く。
もう嫌な予感しかない。
恐る恐る天の助が村の入口から中の様子を覗き見ると―――
「おりゃぁあああああ!!!」
「かかってこんかい!!!」
「何やってんのさ!!?」
大きな槍と首領パッチソードを振り回して暴れまくる二人の所為でところてん村は破壊尽くされていた。
「俺の村~!!」
「チッ、やはりこの程度じゃ駄目か。ならばこれでどうだ!『デスマシーン』召喚!!」
ツルッテルが再度杖を振ると今度はロボットが2,3体現れてボーボボたちに一斉射撃してきた。
ミサイル・マシンガン・レーザービームなどが絶え間なくボーボボたちに浴びせられる。
「「「ぐばぁああああああ!!!」」」
「フハハハハハッ!デスマシーンは無限に弾を発射し続ける!それこそお前らが死ぬまでな!!」
「嘘だ!そんなの都合良すぎる!」
「普通ならそう思うだろう?だがここは夢の世界!夢の世界はなんでもありなのさ!!」
「そんな・・・ボーボボ!!」
ボーボボたちを心配してビュティが振り返ると―――
「奥義『リフレク扇風機』!!」
三人は扇風機を構えてミサイルなどの弾を跳ね返していた。
「ええっ!?扇風機で全部跳ね返してる!!?」
「何ぃっ!!?扇風機で跳ね返すだとぉ!?」
跳ね返ってきたミサイルなどの弾はデスマシーンに直撃し、デスマシーンは大破した。
それを見てボーボボはニヤリと笑う。
「フッ、扇風機を舐めんなよ?」
「いやいやいやいや!普通の扇風機はこんな事出来ないから!!」
良い子のみんなは真似しないように。
「今度はこちらの番だ!鼻毛真拳奥義『カジキマグロ一本釣り漁船!!」
ドゴーン!と漁師の格好をした三バカが漁船に乗ってツルッテルに突撃する。
ツルッテルは突撃された衝撃でダメージをくらいながら獏の上から落ちてしまった。
そしてそんなツルッテルに首領パッチと天の助が追い打ちをかける。
「カジキマグロアターック!!」
「釣りたてアターック!!」
ドカッバキッ(鮭で攻撃している)
「それ鮭だよ!!」
「ぐはっ!!くそっ!獏、俺を助けろ!!」
「よーしよし、今日からお前もここの住人だぞ~」
獏はレムによって手懐けられてしまった。
「くっそ~!ならば奥の手だ!!」
ツルッテルは鮭で攻撃してくる首領パッチと天の助を振り払って杖を構えた。
そして大きく杖を振ると光と共にいくつもの扉が現れた。
「いでよ!『深層心理の扉』!!」
「『深層心理の扉』!?」
「この扉の向こうには貴様らが無意識に恐れているものが潜んでいる!
それを利用して貴様らを恐怖のどん底に落とし入れて絶望させてくれるわ!!」
「「「な、なにぃ!!?」」」
恐怖を露わにする三バカ。
「まずはところてん、貴様からだ!!」
「ええっ!?また俺ッスか!!?」
「開け!『深層心理の扉』!!」
開けゴマの要領でツルッテルが唱えると、天の助の『深層心理の扉』がゴゴゴという音と共にゆっくりと開いていく。
開かれた扉の向こうにあったのは―――
「・・・・・・寒天?」
一つの寒天だった。
「う、うぁぁ・・・ぁああああああああああああああああああああ!!」
「寒天にどんだけビビってんの!!?」
「ホレ」
バシッ(天の助に寒天をぶつける)
「ぎゃぁああああああああああああああああ!!!!」
寒天をぶつけられた天の助は絶叫して盛大に血を吐いて倒れた。
そんな天の助にビュティがツッコミを入れる。
「寒天ぶつけられただけで血吐くってどんだけ!?アンタどんだけ寒天怖がってんの!!?」
「か・・・寒天の野郎は俺やゼリーたちを豆腐連合軍に売った裏切り者で・・・克服したと思ったのに・・・」
何やらまた食品関連の過去を思い出しているようだが、ぶっちゃけどうでもいい。
一応天の助を倒したという事にしてツルッテルは次の標的を定めた。
「フッ、ところてんは始末した!次はトゲ小僧、お前だ!」
「う、うわぁああああああああ!!!!」
開かれた首領パッチの『深層心理の扉』の向こうには、ヤッくんと同種類だが金髪のカツラがついている人形があった。
「た・・・たたたたたたたタッくん!!?」
『夏の凍える思い出』
「何か始まった!!?」
***パチ美の回想***
あれは五年前・・・私がヤッくんと出会う少し前のこと。
私は『ねりわさび荘』というアパートである男と同棲していた。
そう、それが―――タッくん!
「ただいま、タッくん。今日もバイト大変だったわ」
「・・・」(←タッくん)
「え?いつもより遅かったって?そ、そんな事ないわよ!ちょっとバイト仲間と話してただけよ!」
タッくんはとっても疑り深い人で少しでもいつもと違った事があるとすぐに他に男がいるんじゃないかって疑ってきた。
暴力を振るわれる事もよくあって私はいつも怯えて、でもそれが彼なりの愛情表現だと言い聞かせて私は耐えていた。
そう、この時が訪れるまでは―――!
「本当よ!!私が嘘付いた事ある!?」
「・・・」
「た、確かに店長に言い寄られてた事もあったけど今はそんな事ないわ」
「・・・」
「ひ、酷い、タッくん!私が店長とこっそり出来てるなんていいがかりよ!」
ガシャガシャッ(自分で人形のタッくんを乱暴に動かす)
「いや!やめてタッくん!ごめんなさい!!でも本当よ!信じてタッくん!!」
ガシャガシャッ
「もう・・・いやぁーーー!!」
ガシャンッ!(タッくんを乱暴に叩きつける)
「私・・・私もう耐えられない・・・タッくんとの生活、耐えられない・・・さようなら!!」
こうして私はタッくんと別れ、その後ヤッくんと出会って心の傷を癒やしてもらったの。
***パチ美の回想終了***
「そ、そんなぁ!やっと忘れたと思ったのに!!」
「ホレホレ」
ツルッテルはタッくんの人形を揺らしながら首領パッチもといパチ美に迫る。
怯えるパチ美、呆れるランバダ。
「・・・何だ?この茶番」
「いつもの事だから気にしないで」
ビュティも呆れたようにため息を吐いた。
「さぁボーボボ、次は貴様だ!!」
「や、やめろぉおおおおおお!!!」
「開け!『深層心理の扉』!」
開かれたボーボボの『深層心理の扉』。
その向こうにあったのは―――ビーズだった。
「ええっ!?ビーズ!!?」
すかさずビュティのツッコミが入る。
ツルッテルも少し戸惑いながらボーボボにビーズを見せた。
するとボーボボは首領パッチや天の助と同じようにビーズに対して露骨に怯え始めた。
「ひぃいいいいいいいい!!ビーズだー!!」
「クックックッ、よく分からんがビーズがお前の弱点のようだな。ならば大量にビーズを出してお前を苦しめるのみ!」
杖を振って大量にビーズを出現させるツルッテル。
そして―――
「くたばれボーボボ!!!」
「いやぁあああああああああ!!!」
「ボーボボ!!」
ズザァァ(ボーボボにビーズをぶちまける)
・・・・・・
・・・・・・
「・・・あ、あれ・・・?」
「・・・」
「ど、どーしたボーボボ!?お前が真に恐怖するビーズだぞ!!それとも恐怖のあまり失神したか!!?」
「はぁ?何言ってのお前?」
「ええっ!?」
「普通ビーズなんかでビビるかよ。なぁ?」
「なぁ」
「全くだぜ」
白け顔のボーボボ・首領パッチ・天の助。
先程までの恐怖はどこへやら。
ツルッテルは慌てて寒天やタッくんを持って天の助と首領パッチに迫る。
「お、お前らまで何で復活してるんだ!?ほ、ホラ、お前らのトラウマだぞ!?」
「はぁ?何お前?」
「ただの人形と寒天じゃねーか」
天の助と首領パッチは寒天と人形を冷たくはたき落とした。
「ええっ!?ちょ、ええっ!!?」
「遊びは終わりだ!」
何が何だか分からず戸惑うツルッテルを他所にボーボボは構える。
「鼻毛真拳奥義『洗濯バサミの反乱』!!」
「ぐぎゃぁああああああ!!!」
ボーボボVSツルッテル ボーボボの勝利
「ボーボボさん!大変です!!」
勝利の余韻も束の間、ヘッポコ丸が焦った様子でボーボボを呼ぶ。
「どうした?へっぽこ丸?」
「現実モニターを見て下さい!俺達大変な事になってます!」
「何?」
レムが映し出している現実モニターにボーボボたちは集まる。
現実モニターを見ると、現実で眠っているボーボボたちは毛狩り隊に拘束されており、どこかに連れて行かれている所だった。
「ウソッ!?私達捕まっちゃったの!?」
「現実の世界が何だか騒がしいと思ったら・・・」
「目が覚めたら面倒だな。どうするんだ?」
ランバダが振り向くと、ボーボボ・首領パッチ・天の助は思いのままに遊んでいた。
「「「現実逃避~♪」」」
「何やってんの!!」
ビュティのツッコミがレムスリープワールドに木霊するのであった。
END