鼻毛スピリッツ

結婚式場


新郎のカナヅチと新婦のレムは既に席についていた。
しかし、誓いのキスはまだだ。

「えー、そんなレムさんにカナヅチ様は一目惚れした訳でございます。そして―――」

「その結婚待ったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

突然、会場の扉が開け放たれる。
現れたのはウェディング姿のボーボボと首領パッチだった。

「何故にウェディング姿!?」

すかさずビュティがツッコミを入れるが、二人は暴走する。

「どういうこと!?カナヅチさん!!」
「私と結婚してくれるんじゃなかったの!!?」

「なんだオメェらは!!?」

「何なのよあなた!!カナヅチさんは私と結婚するのよ!!」
「何ふざけた事言ってんのよ!カナヅチさんは渡さないわよ!!」

「黙りやがれ!!テメェらなんか知るか!!日曜大工真拳奥義『卓袱台返し』!!」

「ぎゃーーーーーーーーーーー!!!!!」

返り討ちに遭うおバカ二人。

「くっ、そうやって私たちを捨てていくのね!」
「いいわよいいわよ!だったらこれだけは言わせてちょうだい!」

二人はマイクを手に取って叫んだ。

「「リア充爆発しろーーーーーーーー!!!」」

「うるせーつってんだろ!!!」

「けっ!テメーなんかこっちから捨ててやらぁ!」
「後で後悔するんじゃないわよ!!」

二人は会場から去ろうとする。
そこをビュティがすかさず止めた。

「ちょっと、どこに行くの!?何しにここに来たと思ってんの!!?」
「ケジメをつける為だ」
「違うでしょ!!レムさんを取り返しに来たんでしょ!」

「レムを取り返しに来ただぁ!?」

カナヅチが驚いたような顔をする。
そして荒々しく立ち上がってレムの手を取って立たせた。

「させるかぁっ!俺はコイツと夫婦になるって決めたんだ!だから式は滞りなく進めさせてもらうぞ!
 最初はケーキ入刀だ!!」

カナヅチはレムの片手ごとナイフを握ってケーキ入刀をする。
が、サクッと切れた感覚がなく、むしろゼリーのような物を切った感覚がした。

「あん?」

違和感を感じたカナヅチはケーキを適当に切って中身を見た。
すると、中には天の助がいた。
ヘッポコ丸がツッコむ。

「お前何やってんだ!?」
「今時の結婚式つったらところてんケーキだろ?」
「んな訳あるか!!」

「テメェ、俺のケーキはどうした?」

カナヅチがフルフルと震えながら尋ねる。
天の助は平然と答えた。

「食ったけど?つか、結婚式のケーキが抹茶とかどーよ?」
「ところてんケーキもどうかと思うぞ!!」

「抹茶で何が悪ぃんだ!!!」

「ぶへーっ!!」

天の助は殴り飛ばされた。








「レムを―――」

「!」

「返せ!!!」

ランバダはカナヅチに踵落としを構したが、カナヅチは寸での所でそれを避ける。

「んだテメェは。次から次へと・・・!」

「レムを返しやがれ、クソッたれが!!」

「るせぇ!俺がレムと結婚するつったらするんだよ!!!」

「なんていう頑固者・・・」

今回の相手は凄く面倒そうだとビュティは思った。
カナヅチはレムを担ぎながら片手にノコギリを持って叫んぶ。

「野郎共!!後は頼んだぞ!」

『へい!!親方!!』

出席者たちは返事をして毛狩り隊の服に着替えた。

「日曜大工真拳奥義『ノコギリスラッシュ』!!」

カナヅチは背後の壁をノコギリで斬りつけた。
すると壁に切り込みが入り、カナヅチが蹴ると簡単に崩れた。
そのままカナヅチはそこから外に出て上へと逃げる。
ボーボボが叫んだ。

「ランバダ!ここはお前に任せた!」
「逆だろ!!」
「ぶふーっ!!」

ランバダはボーボボに蹴りを一発かましてから、カナヅチが出て行った壁から外に出て追いかけた。
ボーボボは憎々しげに呟く。

「くそっ、あの野郎・・・!」
「いや、ボーボボが悪いと思うよ」

「随分余裕ですね」

仲人の男はメガネをスチャッと直してボーボボたちに言った。
首領パッチと天の助が驚く。

「や、やべぇぞコイツ!」
「半端じゃねぇ力を感じるぜ!」
「ええ!?ただの仲人なのに!?」
「バカヤロウ、人は見かけに寄らねぇって言うだろ!」

「そこの太陽さん(?)の言う通りです。人を見かけで判断してはいけませんよ、お嬢さん。
 私はこう見えて数多くの式場という戦場を渡り歩いて来ました。
 自分で言うのもアレですが、その強さは計り知れずと言ったところです」

「実は凄い仲人だった!?」
「気を引き締めて行かないとやられるな・・!」
「ああ、頼んだぞヘッポコ丸!!行くぞビュティ、首領パッチ、天の助!」
「ええ!?どんな流れ!!?」

ボーボボはヘッポコ丸にその場を任せてビュティ・首領パッチ・天の助と共にランバダたちを追いかけた。

「いやいやいや!!一方的に任せてきたよね!?ていうか何で今回は執拗にカナヅチ追いかけるの!!?」

ランバダが目立ってしまうからに決まっている。

「言い切った!!」

そんな訳でヘッポコ丸は一人で仲人とその部下大多数と戦う事となった。








ヘッポコ丸を置き去―――じゃなくて仲人たちの相手を任せたボーボボたち。

「今置き去りって言おうとしたよね!?」

いったい何のことやら。
外に出て上を見ようとすれば、何本もの丸太が壁に刺さっており、階段のようになっていた。
恐らく急ピッチでカナヅチが作ったのだろう。

「奴はワンピ○スのフランキ○か!?」
「ボーボボ、伏字になってない!!」
「んな事より早く行こうぜ!じゃねーと俺たちの出番がなくなっちまう!」
「おう、そうだったな!野郎ども、急いで行くぞ!!」

出番の為にボーボボたちは丸太の階段を駆け上がった。

(下心丸出しだ・・・)

ビュティは複雑な気持ちだった。


















式場の屋上では激闘が繰り広げられていた。

「日曜大工真拳奥義『釘あられ』!!」
「ポリゴンシールド!!」

釘の雨をランバダはポリゴンの壁を作る事によって防ぐ。
しかしそれは囮で、カナヅチは一瞬にしてランバダとの距離を詰めてきた。

「日曜大工真拳奥義『頑固金槌』!!」
「ポリゴン真拳奥義『ポリゴン強化』!!」

巨大な金槌を出してきたカナヅチに対してランバダはポリゴン化した両腕でそれを受け止めた。
技名の通り、ポリゴンで強化されているがそれでもダメージは大きかった。

「ぐうっ!!」
「オラオラどうした!まだまだこれからだぜ!!」

「ランバダ!!」

ボーボボたちが屋上に到着した。
ランバダとカナヅチは戦いながら叫ぶ。

「手ぇ出すんじゃねぇ!!」
「これは俺たちの戦いだ!」

「カナヅチ様と少年の言う通りじゃ」

「誰!?」

声がした方を振り向けば、そこには杖を持った老人が立っていた。
ボーボボ・首領パッチ・天の助は驚く。

「あ、あなた様は!!」
「伝説の・・・!」
「名もなき老師!」
「誰それ?凄いの?」
「ばっか!老師は老師検定を全てクリアし、老師免許を皆伝した伝説の老人なんだぞ!!」
「そんな事も知らねーのか!?」
「知らないよそんなの!!」

「ふぉっふぉっふぉっ、知らなくともよい。それより、カナヅチ様の戦いが終わるまでワシが相手をしてやろう」

「あざーっす!!」
「老師と戦わせていただいて光栄の極みです!」
「手加減はしなくていいぜ!」
「どんだけこのおじいさん凄いの!?ていうか毛狩り隊の人じゃないの!?」

「バイトじゃバイト。気にせんでええ」

「バイト!?」

毛狩り隊はこんな老人も雇うのか。
人手不足なのか、それともただ老人が凄いからなのか。
ビュティには判らなかったし、判ろうとも思わなかった。








カナヅチとランバダ、三バカと老師の激闘が屋上で繰り広げられる。

「アチャー!!」

「アーチョアチョアチョアンチョビーー!!」
「ホアチャー!シチュー!!」
「アンカケチャーハン!」

「はいはい、今日は首領パッチ君のリクエストでシチューね」

ビュティはメモに買う材料を書いた。
首領パッチが喜びの声を上げ、ボーボボと天の助が悔しそうな声を上げる。

「ヤッチャー!」
「クッチョー!」
「マッチョー!」

「無理に拳法風にしなくていいから」

のんびりしたものである。

「お前さんら、そろそろカナヅチ様たちの決着がつきそうじゃ。見届けるとしよう」

「「「はい!老師!!」」」

老師に言われ、三人はカナヅチとランバダの戦いを見届ける事にした。

「日曜大工真拳奥義『大工の本気』!!」

カナヅチは多数の木材を取り出すと、金槌を片手に、釘を口に咥えて何かを作り始めた。
見守っていると、なんとガンダムのような物が出来上がった。

「「「かっけー!!!」」」

「ていうかガンダムっぽい物作るとか凄すぎ!!

「コックピットもあってちゃんと動くんだぜ」

「すげー!!木材だけでどうやって作ったの!!?」

「ちなみに、この空中都市クラウンは木で作った」

「木で!?」

「紙で出来たポマードリングには及ばねーよ」

ポマードリングとはこれまた懐かしい名前。
まぁ、材料が木だろうが紙だろうがとにかく大したものである。
そんな事は置いといて、カナヅチはコックピットに乗り込んだ。
そしてガンダムっぽい物を動かす。

「覚悟しやがれ!日曜大工真拳奥義『犬小屋舞』!!」

カナヅチが操作すると、ガンダムっぽい物はスムーズな動きでランバダの周りを回り始めた。
そして回るのと同時に出来立てホヤホヤの犬小屋をランバダの周りに積み重ねていく。
その動きはとても素早く、ランバダはあっという間に大量の犬小屋に囲まれてしまった。

「その犬小屋は特別製だ!ちょっとやそっとじゃ壊れねーぜ!
 日曜大工真拳最大奥義『ソウル・ハンマー』!!!」

カナヅチは先程よりも更に巨大な金槌を出した。

「このハンマーは俺の魂の分だけデカく強くなる!!これでしめーだ!!!」

ソウル・ハンマーが容赦なく振り下ろされる。
大量の犬小屋は、とてつもない破壊音と共に崩れていった。

「ランバダさん!」

「やったか?」

土煙が上がる中、カナヅチはソウル・ハンマーをどけた。
だが、そこにランバダの姿はなかった。

「何っ!?」

「ポリゴン真拳奥義―――」

ランバダがカナヅチの背後を取る。

「『オーラ・オブ・ポリゴン』!!」

ランバダがポリゴンオーラを放つとガンダムっぽい物はそれに包まれ、たちまちポリゴンロボットとなった。
間髪入れずランバダは渾身の蹴りを入れる。

「ぐぁあああああっ!!」

ポリゴンを壊すのは容易い事なので、渾身の蹴りは簡単にカナヅチに届いた。

「クソがっ!さっきのもその妙なオーラでポリゴンにして逃げたってのか!?」

「何気に頭いいみたいじゃねーか」

「舐めんじゃねーよ、ガキが!」

二人は睨み合う。
しばらくの沈黙の後、カナヅチが提案した。








「こうなったら互いの究極奥義でケリをつけるのはどーだ?」

「上等だ。一撃で沈めてやるよ」

二人は構えた。

「日曜大工真拳究極奥義『大工神・素戔嗚尊』!!!」

「ポリゴン真拳究極奥義『ポリゴニック・ルシファー』!!!」

二人の究極奥義が発動する。
カナヅチの素戔嗚尊は強大で強さが計り知れない。
対するランバダのポリゴニック・ルシファーは以前よりも凶悪になっており、一筋縄ではいかなそうだ。
どちらも半端ない威圧感があり、空気がこの上なく張り詰めていた。
しばらく見つめ合った後、最後の戦いの火蓋は切って落とされた。

「これで!」

「終わりだ!」

両者の究極奥義、両者自身の拳がぶつかり合う。
その瞬間―――

「「「「わっしょい!!!!」」」」

ボーボボ・首領パッチ・天の助の三人がカナヅチに、老師がランバダに飛び蹴りを構した。

「何やってんのアンタたち!!!??」

四人の飛び蹴りがあまりにも強かった所為か、カナヅチとランバダはダウンした。
が、ランバダは辛うじて起き上がる事は出来た。
再起不能なのはカナヅチのみ。




ランバダVSカナヅチ   ボーボボたちの乱入によりボーボボたちの勝利





「台無しだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」

















END
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